月の旅人

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長距離移動の末のコンヤ

長距離移動の末のコンヤ




トルコ旅行5日目。この日は朝が早かった。
7時に出発のため5時半にモーニングコールが鳴り、用意を済ませてスーツケースをドアの外に出し、6時過ぎには夕食を取ったレストランで朝食となった。
みきちゃんが朝食の前に昨日のハマムの精算を済ませておくと言うので、フロントへ向かう。納得いかなかったためハマムのおじさんに交渉して料金を安くしてもらったらしく、そのことを伝えるがフロントのお兄さんとイマイチ会話が噛み合わない。こういう時が、言葉の壁というものをものすごく分厚く感じる瞬間である。
みきちゃんは電子手帳を取り出して伝えたい単語を英語に変換し、それをフロントの人に見せる。それでも伝わらないのか、フロントの人が私に視線をくれて助け舟を求められたが、私も英語は(英語も?f^_^;))さっぱりである。
途方にくれかけた時、はたと閃くものがあった。請求書の料金はすでに交渉料金になっていて、フロントの人はその割引料金からさらに下げてくれと言われていると思ってそれ以上は無理だと首を横に振っていたのだ。それがわかり、互いに笑顔になる。伝わって良かったとフロントのお兄さんが「ホッ」と胸をなでおろす仕草をし、目を向けられて私も同じ動作をして笑った。


無事に精算を終え、レストランで夕べと同じ場所に席を確保して、恒例のビュッフェから好きなものをお皿に盛っていく。朝はやっぱりパンが豊富で、他にシリアルやクリームチーズ類、ヨーグルト、ハムに、コーヒーや紅茶、フルーツジュースなどが並んでいた。
私は前日もやってみておいしかったシリアルにヨーグルトと牛乳をかけ、それにジャムを少し入れてみた。それにホット紅茶、クリームチーズにパンが2個。朝は少食なため、これでも多いくらいだった。
1つのパンが小さいとはいえ、みきちゃんはシリアルの他に5種類ほどのパンを取り分けてきて、おいしいと言って食べていた。たくさん食べられる人って、旅行に出たとき特に羨ましく感じる。いろいろ食べられていいなぁ。入らない自分の胃が恨めしい。(-"-)


丘の上から見渡す限りの綿畑を見下ろし、うしろ髪を引かれながら見えない石灰棚に別れを告げてパムッカレを後にする。
この日も雲ひとつない空を映して、石灰棚はさぞ綺麗で優美な様を誇っていたことだろう。
どうやら朝に改めて石灰棚を観せてもらったツアーもあったらしいことを聞き、私たちもほんの5分か10分でもいいから展望台から見せてほしかった……と何度も残念に思った。
そんなことを思っている間にもバスは進み、男たちだけが集うカフェのような質素な建物の前でおじさんたちに見上げられながら通り、パムッカレの小さな村を瞬く間に過ぎ去る。
この地方ではもっぱら働くのは女性で、男性は日がな一日カフェに集って水タバコとおしゃべりをしているらしい。所変われば生活も変わるけど、男性たちは暇じゃないんだろうか……。なんとなく、早くボケそう。(笑)


この日第一の目的地コンヤへ向かって、バスはひたすら走る。約420kmもあるらしい。
いちばん大変なのは運転手のGさんである。代わりの運転手さんが乗っているわけでもなく、ず~っと1人で運転するのだ。相当疲れるに違いない。
まずは2時間ほど後、ディナールという地で休憩となった。カラフルな布やパシュミナを販売している売店のある休憩所である。お手洗いを済ませるなり女性陣はパシュミナ選びに夢中になった。なんといっても安いのが魅力だった。色もまあまあ豊富で、それぞれ好みの色を1枚1000円でゲットしたみきちゃんやOさんたち。いくら物価が安いトルコとはいえ値段が値段だけにニセモノかもしれないことは承知のうえである。でも色も手触りもよく、みんな納得して購入していた。それが1000円なのだから大いに満足に違いない。
売店の横のテーブルでは、Eさんが何やら平皿からスプーンですくって食べていた。訊くと、ヨーグルトに蜂蜜をかけたものらしい。ひと口もらったが、なかなかにおいしかった。これまでの食事に出されたデザートは甘々だったのに、甘味は蜂蜜だけなのか控えめな甘さなのだ。
「そこで買えますよ」
布が吊るし売りされている所の横に小さなカウンターがあり、そこにおじさんが1人いてこちらを見ていた。そこで買えるらしい。飲み物も売っている。でも休憩時間もそろそろ終わろうとしていたため、急いで食べるのもなぁ……、と思ってやめた。もう少し早く気づけばよかったな。( ̄□ ̄)チッ


うさぎうさぎさらに2時間ほど後、再び休憩を取った。フェレという場所まで進んだらしい。どこだかイマイチ把握できていなかったが。f^_^;)
足を伸ばすためバスを降りた途端、みきちゃんが「あっ!!」と声を上げた。何事かと思った私を手招きし、「ウサギがいる~♪」と側溝を指差してそこにしゃがみ込んだ。
そんなところにウサギが……?
不思議に思いながら覗き込むと、確かにいた。しかも3匹も。黒斑2匹と茶色の斑1匹だ。側溝の側面に開いた穴が巣穴らしく、そこから出入している。掌に乗るくらいのミニウサギだった。
「可愛い~っ(*^^*)」
側溝に嵌め込まれた鉄柵の隙間から指を入れてなでようとしたが、微妙に届かない……。何人かが私たちと同じように側溝を覗き込んでウサギを眺めていた。そのうちMさんと私たちだけになり、そこへ奥のテーブルでEさんとくつろいでいたGさんが近づいてきた。
いつからかよく目が合うようになっていたGさんが私を見てにこりと笑い、ウサギのいる側溝を覗き込むようにして屈むなり、側溝の脇に少し積んで置かれていたハコベに似た草を取って柵の間から差し入れた。するとウサギたちが鼻をヒクヒクさせて顔を近づけ、それをむしゃむしゃと食べ始めたのだ。
「ウサギのえさやったんか~Σ( ̄- ̄*)」
Gさんはそれを教えに来てくれたようだった。やっぱり、予想通りいい人だ。(^^)
Gさんが笑顔でウサギにえさをやっている様子が妙にほほ笑ましくてデジカメに撮っておこうと思ったのだが、ケースからデジカメを出して電源を入れている間にえさをやり終えてしまったGさん。「もう1回えさあげて(^^)」と言いたかったがどう言えばいいのかわからず、残念だが諦めた。せっかく、それまでの堅いイメージを覆すいい表情をしていたのに、ほんとに残念。
私たちもGさんを真似てウサギに草をあげているうちに、Gさんはバスに乗り込んでしまた。でも相変わらずご機嫌な様子なので、運転席の横に立ってこちらを見ているGさんにカメラを向けると、両手をポケットに入れて鼻下のヒゲが平行になるくらいにほほ笑んでカメラ目線をくれた。パシャリと1枚写し「サンキュ~(^o^)」と言うと、Gさんは照れたように手をひらりと振って運転席に座った。
もしやGさん、ただ言葉が通じないから無口なだけで、実はお茶目な人なのでは?
と思いながら再びウサギに草をあげていると、出発時間がやってきた。
バスが動き出したあともGさんとバックミラー越しにふと目が合い、なんだか今度は私が照れてしまった。(*_ _)ヾ 言葉が通じたら、Gさんと友達になれたかなぁ?


雄大で美しい風景を眺めつつバス移動が続き、パムッカレ出発から5時間半ほど後、丘の上を走るバスの車窓からコンヤの街が一望となった。見下ろす街の向こうには街が続き、まるで建物の海のように果ては地平線だった。そのあまりの広大さに、口々に「おぉ~っ!!」という歓声が洩れて車内を満たした。
コンヤ車窓から写真を撮る人が何人かいて、もちろんその中に私も含まれていた。どんどん丘を下って見渡せる域が限られてくるため、急いでシャッターを切る。パノラマにできるように連続して2、3枚は撮りたかったが間に合わず、1枚で精一杯だった。
その場所から10分と経たずに街中に下り、信号待ちもしたのに10分後には本日最初の観光場所となる『カタライ神学校』に到着した。
この建物は1251年に高官カタライが神学校として設立したものだが、今はモザイクタイルの博物館となっているそうだ。イスラムの象徴といえる青タイルや花や鳥を描いた美しいタイルなどが多数展示され、明かり採りの窓がある広間の天井のドームも美しいらしいが、私たちは建物の外からの写真ストップだけで中に入ることはできなかった。見学はツアーに含まれていなかったらしい。ガッカリ……。
5分というあっけない写真ストップが終わってすぐにバスに乗り、トルコの国旗の星の部分にさらに4つの星を星型に並べて配置された旗が車道や建物にたくさん吊るされた街中を進んでいく。何かイベントがあるらしく、大勢の人が手に手に国旗を持って集まっていた。マントのようにして国旗をまとった少年やトランペットを持った学生、制服姿の女子学生や警備のためか兵隊の姿もあった。

そんな賑やかしい街中を抜け、10分後に昼食を取るレストラン『TILSIM』に着いた。西洋風のお洒落なレンガ壁の建物だ。時刻は13時10分。少し遅めのお昼である。
入ったときには先客がいたためか奥の部屋に通され、少し暗くて狭いその部屋には席が足りずに困っていると、しばらくして表のフロアに戻るように言われた。奥の部屋には一番最初のほうに入室し、並んで座ろうとMさんの奥さんが窓辺の席を確保してくれていたが、出るときには最後になってしまったためすでに4人が向かい合って座れる席がなくなってしまっていた。
「また今度一緒に座りましょ」
と言って仕方なく分かれて座る。私たちは大学生2人組みの前の席になった。彼女たちとは意図したわけでもないのに、よく席が向かい合うなぁ。
まずは粉チーズの降りかけられたトマトスープが出され、その最中にEさんとOさんがドリンクの注文を聞いて回った。私たちはこのときもまたアイランを注文した。エルマチャイ同様、すっかりトルコのヨーグルトドリンクの虜である。
バイキングその他はまたバイキングで、それぞれに平皿に取り分けて食べた。最後に甘~いメロンも食べたのだが、食べるのが遅い私が取りに行った頃はもうあまり残っていなくて、少ししか食べられなかった。(T_T) みきちゃんは食べるのも早くて羨ましい。特にこういうバイキング形式では半ば競争のようなもの。早くないと食べたいものを逃すハメに……。
それでも満足のいく味におなかも気分も満たされ、気になってしきりと目が行って仕方がなかったウェイターさんとレストランの表で一緒に写真を撮ってもらった。
何が気になったかというと、その見事な眉毛のつながり具合が。f^_^;) ウェイターさんは可愛い大学生の子にも見られて“勘違い”をしているようだったけど。(笑)
気になっていたのは大学生の2人や私たちだけではなかったようで、私たちが表に出たときにはすでに入れ替わり立ち代りおばさんたちと記念撮影が行われていた。楽しそうに始終笑顔だったウェイターさん、ごめんなさい。<(_ _)>

レストランを出ると、ポケットティッシュ売りの少年たちが「100エン、100エン」と連呼しながら寄ってきた。ふと見ると彼らもみんな眉毛がつながっている。トルコ人には非常に多いようだ。デジカメを向けると、少年は人懐っこい笑顔でしっかりと写真に納まった。
みきちゃんは、ポケットティッシュは買わずにもらうもの、と何度も言いながら(笑)少年たちの間をすり抜けて歩道に寄せて停めてあったバスに乗り、私は乗る間際に車道と歩道の間に立っている木の下で少年2人と1人の恰幅のいいおじさん相手に腕組みしながら笑顔で話しているGさんを見つけ、その風景を隠し撮りしてから乗車した。(笑)



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