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SAROMAN BLUE 鈴木健司
12サロマ湖100kmマラソン完走記~第2章~
まず荷物を受け取り、水を受け取り、荷物を広げる場所を探す。いつもならばお客様との会話も弾むが、今回は挨拶だけで短縮した。(皆さんすいませんでした!)出口に近い場所を確保し、まずはアンダーシャツを脱いで『OUTWET&肩バラシャツ』から『ファイントラック・フラッドラッシュスキンメッシュノースリーブ』に変更!この変更理由は、後半の気温の上昇に対応するためだ。昨年のように大失速はこのペースならば起こらない。ということは走れるペースで進めるので、体温低下は心配しなかった。アームウォーマーは携帯していたので、露出は防ぐことはできるという判断だ。万が一でウインドジャケットも重くはないので腰に付けていくことにした。
そしてポーチの中身を補充する。アミノダイレクト5500・ベスパハイパー・アミノプロテイン・塩熱飴そしてエレクトロライトショッツだ。フラスクは63キロスペシャルで交換予定だ。5分経過を確認し、荷物を預けて出口に向かう。直後の登り坂は積極的に歩く。55キロの先にある仮設トイレを利用しようと思っていたので、早めに出発した。直後の登りは早歩きで登る。
55キロ 6時間35分53秒 46分35秒
ここのトイレは小専用があり待ち時間もなく済ませるだけだったので、時間は掛からなかった。そこでグランディアでの休憩時間が短かったので、ストレッチの時間に充てることにした。アスファルトを避けて土の上だったので涼しかった。股関節を中心に3~4分掛けた。しっかりカラダを休ませていざ仕切り直し!50~55キロは40分で走れている。またこのトイレ休憩を入れても55~60キロを40分以内でクリアする自信はあった。ということで、60キロの到着時間を7時間15分とする。
お世話になっている宿舎悠林館を右に見ながら、サロマ湖沿い最後のアップダウンを走る。次のエイドは60キロ。その前には57.5キロの被り水がある。細かなアップダウンが繰り返されるが、58キロまで来ればあとは下りと平坦になる。下りの途中には楽天市場にもショップがある北勝水産があり工場からの応援に応えた。(楽天市場でもお世話になっています!)
再びサロマ湖湖畔に戻ると、一面にサロマ湖。そして対岸にはワッカ原生花園が遥か彼方に見える。また74キロの鶴賀リゾートも小さいが白い建物がはっきりと確認できる。あそこまではあと15キロだ。
前方の白いテントを目指して平坦になった道を走り始める。空にはまだ暗い雲が立ちこめていた。54キロ手前で崩れていたリズムは持ち直して59キロを越えてきたが、60キロを前にしてまたカラダが重くなってきた。そして60キロの通過。
60キロ 7時間15分12秒 39分19秒
関門をパスしてエイドに立ち寄る。後ろを振り返りながら補給していると、『健司くん!』と声が聞こえた。吉田さんだ。昨年のクリニックに参加頂いた吉田さんには、85キロで捕らえられていた。今年は20キロも手前だ。吉田さんは速く走れる走力を持っているが、楽しんで走っている感じだ。この時点での僕との差は歴然だった。その後も前後しながら次のエイドを目指して走り始めた。
60キロ通過は予定通り7時間15分。70キロ関門まで90分残せた。実際は遅くとも5キロ8分30秒で走らなくては貯金ができない。(70キロ予定8時間40分)キムアネップ岬へ向けて、まずは登り坂を行く。ここからが僕の課題となるコースだ。61キロ~64キロエイド。たった3キロの区間なのに、脱力感というか、怠惰感というか、今までの集中力はどこへやら?歩きが増えてしまう。先行する吉田さん達を追い掛けるが、追い付くだけで前に行くことはできない。写真を撮りながら走る吉田さんに追い付けなくなっていく。
そして63キロ過ぎのエイドに到着する手前で脱力感は吐き気に変わり、空腹の胃を痛め付けた。エイドとは反対側の草むらにしゃがみこむが、胃には固形物はないので何も出てこない。車の往来もあるので、係の方に促されてエイドに向かった。
ここはスペシャルを預けているエイドだ。ナンバーを確認し手渡ししてくれた。ここでは30キロからのフラスクの交換と、スペシャルの補給が目的だ。しかしスペシャルは受付そうもない。とりあえず、フラスクには1本分のショッツが残っていたが、ワイルドビーンの入った2つ目をポーチにしまった。そしてトイレ小を覗くと空いていたので済ませて、外に出た。
『ふぅ~・・・。』
焦る気持ちはなかった。この区間はいつものこと。この先の魔女森から白帆・70キロ・鶴賀リゾートまでは気を抜けない場所。ここだけは失敗なく走らなければいけない。エイドを離れる際に、まずはショッツを1本分流し込んでスタートした。
前方50メートル先に吉田さん達の姿が。そして64キロに到着する。時間は7時間52分を過ぎたところ。65キロを計算する。ここは単純に8時間でクリアすれば70キロまで40分で走れば良い。果たして予定通りクリアできるか?吉田さんの赤いTシャツを追い掛けてペースを維持するが、時折歩いてしまう。今回はダッシュではなく、キロ7分くらいで走っている状態。なんとか繰り返しながら、65キロに辿り着いた。
65キロ 8時間00分33秒 45分21秒
ちょっとだけはみ出したが、8時間で収まった。45分というラップには、60キロエイド・63キロエイド・トイレ小も含まれている。この後は魔女森を抜けた私設エイド・白帆を利用するだけなので、歩きが増えなければ40分では刻めるはずだ。まずはこの魔女森をリズム良く抜けていくことだ。1キロごとの表示なるので、出口は67キロ手前。サロマ湖ユースホステルが見えてくれば視界も開けて魔女森を離れる。昨年まではすぐの一軒家が私設エイドを出してくれていたが、今年は佐呂間大橋の近くだけだった。少しずつ雲の隙間から青い空が顔を覗かせる。冷たい水を1杯頂き、タイツ・バンダナも濡らす。
佐呂間大橋にはこんなモニュメントが!さすがかぼちゃの町だ!かぼちゃに和ませて貰いながら、白帆の私設エイドを目指すと、遠くから高石ともやさんの唄が聞こえてきた!『もう一歩!もう一歩!』思わずデジカメを取り出して動画撮影!ハイタッチを交わし、白帆に到着した。
2012サロマ湖白帆前高石ともやさん生歌
こちらの白帆エイドは冷たいおしぼりで迎えてくれる。顔を拭い、首を拭いてサッパリする。寒い時には暖かいおしぼりになるのも嬉しい!次の約1キロ先にある70キロエイドには立ち寄らないつもりだ。しかし白帆でガッツリ休むということもなく、ショッツを流し込んでスタートする。
再び国道に合流して今度は常呂町を目指して走り始める。ここから70キロまでが国道を走り、左折すると鶴賀リゾートへ向かっての直線道路になる。関門直後にエイドはなく、約600メートル手前の公式エイドか、72.5キロの被り水までは補給はできないのだ。
65キロからの時間の余裕はたくさん残ってはいなかった。しかし5キロ40分という数字は、今この状況の僕にとって十分過ぎる貯金だった。それは経験から来るものか?はたまたギリギリを楽しんでいるのか?
以前レスリングの吉田選手の凄さを科学的に追及した番組を観た時に、『集中とリラックスの両立が脳波から分かった』という内容だった。このバランスは普通の選手ではありえないと言う。
僕はお客様に『いつも制限時間に追われている走りなんか絶対にできないよ!どうしてできるの?』と良く質問を受ける。しかし僕にとってのギリギリは、『なんとか走ればこのペースで間に合うスピード』であって、時間は迫っているが『間に合わないペースではないことを知っている』ので、焦ることはまったくないのだ。これが吉田選手の脳で起こっている『集中とリラックスの両立』なのではないかと感じていた。
世界レベルの方と比べるのはおこがましいが、この感覚がまさにこの65キロ~80キロの間に起こっている気がする。そんな風に感じた。『走っていても苦しくない!・ランナーズハイ!』的な言葉の意味はこういった状態も含まれるのだろう。
70キロに向けて予定通り、エイドには寄らず走り抜ける。平坦であるだけにペースを維持することが大切だ。前方に左折するランナーの姿が見えてきた。この時点で8時間38分。予定通り通過できそうだ。
70キロ 8時間40分11秒 39分38秒
70キロを過ぎると立ち止まるランナーが目立つ。ちょうど日陰になった場所でストレッチをするランステの浅川さんを見掛けて挨拶をする。浅川さんの表情は『鈴木くん行っちゃった・・・』という感じ。毎年『鈴木くんにお世話にならないようにしなきゃ!』と言って頂いているのですが、今年はちょっと辛そうだった。僕はヨシ!8時間40分で通過!このまま次の被り水まではペースを守ろう。エイドに立ち寄って約40分ラップだったので、鶴賀での時間も含めると貯金を作りたい。
段々と雲は白くなり、隙間から青空が見えてきた。ようやく暑くなってきた感じだ。逆に朝懸念していた、ワッカでの寒さはあまり心配なさそうだ。完走率は上がるに違いない!鶴賀リゾートは74キロ手前になる。毎年計算をするのだが、73キロ地点と考えると『残り7キロを56分(キロ8分)』の余裕が欲しい。ということは、9時間04分には出発したい計算になる。でも実際は73.8キロくらいなので、8時間40分で70キロを通過していると難しい。プラス6分として9時間10分には鶴賀を出発することを決めた。72.5キロの被り水ではタイツに柄杓でたっぷり水を掛けた!そしてバンダナも頭も直に濡らして体温上昇を防ぐ。鶴賀に向けてスタートするが、直線道路なので遥か遠くに感じる。先程の時間を確認しながら走る。
ようやく辿り着いた鶴賀リゾート!今年もおしるこはたっぷり残っていたが、そうめんはなし。代わりになのか、誰かが雑煮があるようなことを言っていた。食欲がないわけではなかったが、写真だけでショッツを流し込む。時間は9時間10分になろうとしている。あまり休んではいられないが、トイレに行きたくなったので鶴賀を離れた先にで用を済ませた。74キロは9時間12分くらいだったか?75キロまでに8分はある。このペースならば大丈夫だ。しかし80キロではエイドが手前にあるので、少しだけ時間が欲しい。80キロ関門を過ぎてもエイドはないのだ。ワッカネイチャーセンターの交差点を曲がってから、意識してペースを上げる。
次のエイドは77.5キロの被り水までない。次の休憩場所をそこに定める。後ろでこんな会話が聞こえる。『80キロ間に合いますか?』『ペースが落ちなければ大丈夫ですよ!』僕はその会話の中には入っていなかったが、『この人から遅れなければ』と、指差し確認された気がした(笑)サイクリングロードが始まりフラットが続いた先に見えてくるのが75キロだ。
75キロ 9時間19分44秒 39分32秒
80キロまでピッタリ40分残せた。イメージ通りだ。この75キロは僕の中では本当に『ただの通過点』だ。鶴賀を抜けて、次のポイント被り水までにある標識。ペースの確認はするが脚を止めることはない。対岸に米粒のようなランナーの鮮やかウエアを見ながら、再びサイクリングロードに目をやる。
ここからは集中力の問題。どれだけ無理なく、リズム良くキロ7分で走れるか!被り水までは歩かない。後ろに人もいるから歩けない!速過ぎず一定のペースで行こう。ほんの少しの登りがあると、ランナーの列は長くなる。100メートルも続かない登りだがカラダはなかなか進まない。そんな状態になる距離を皆走ってきた。なんとか背中を追い掛けて来て欲しい。77.5キロはもう少しだ。被り水に向けても登り坂となる。後ろを追い掛けて来る影は遠くなり、足音は微かになった。
やっと止まれる。そんな気持ちで辿り着いた77.5キロ。この場所は僕にとって苦い経験をした場所でもある。1995年3回目のサロマ湖。この場所で僕はレースを諦めた。制限時間が過ぎたからではない。自らレースを辞めたのだ。翌年この場所を走り抜けることができて、リタイアの悔しさが込み上げてきた。以降も暑さにやられ、50キロ・69キロでリタイアをしているが、その悔しさが力になっている。
被り水は最高に気持ち良かった!頭から被り、バンダナを濡らしてタイツもCEPも濡らす。そして頭に被ってから後頭部のスペースに氷を挟み込んでスタートする。頑張って走ってきた反動でカラダは少し重い。しかし下り坂を利用してリズムを作り出す。
緩やかなカーブを抜けて78キロ。左の森が途切れた先に79キロとワッカへの入口であるエイドが見えてくる。長い・辛い・歩きたい・間に合わない!色々な思いが交錯する80キロ手前。今頑張ればワッカに間に合う。
いよいよ目指すべきワッカの入口が見えてきた。曲がり角を左に折れるランナーの流れと、左から右に速く動く人影が重なる。10時間を切れるかどうかのランナーだ。流れを作るランナーの数が明らかに違う。今年もギリギリで80キロを抜けるランナーがたくさんいるのだ。コーナーでは応援部隊の永藤さんに見送られてワッカへ向かう。80キロエイド到着!
ここで時間は9時間52分。残り後8分で制限時間となる。ワッカ入口からは登りになり歩きたかったので、スペシャルドリンクのシェイカーに水を入れて(ショッツやプロテインも中に入れたまま)歩きだした。そして入口からは、デジカメを取り出して動画撮影を開始する。
80キロ手前ワッカ入口
今回は少しだけ時間に余裕ができたので、竜宮台に引き続きリアル感をお伝えしたかった!約600メートルの映像だ。手にはスペシャルのシェイカーを持っているので、ランナーとのハイタッチはできない。途中、またまた『初サロマでブログ参考になりました!』と声を掛けて頂き、皆さんの背中を見送った。80キロの制限時間を目指すランナーは、まずはここはクリアしないと100キロのゴールが見えてこないので、自然とペースが上がる。僕はかなり置いていかれているのがよくわかる。
80キロ 9時間57分36秒 37分51秒
関門周辺ではトイレがなんと関門のマットより手前にあり、行きたくても行けない状況にある。うまくマットを避ければ行けるのだが、戻る気にはなれない。また関門をなんとか突破したランナーは道の左端に座り込む。そこにエイドはないのだが、必死で80キロを目指してきた姿がそこにはあった。僕も同様に左端にスペシャルを置き、後ろから来るランナーを迎える。ここでの作業は普段はスペシャル作りだが、今回は63キロに続き受付そうもない。そこでショッツのフラスクの交換と、もったいないのでスペシャル用のショッツとプロテインはポーチに詰め込んだ。
この付近になると知り合いのギリギリ常連さんが多い(笑)サロマンブルーの松村さんと友達の茂刈くんだ。2人とも制限時間1分前を切るタイムで80キロを越えてきた。松村さんはサロマ湖完走タイム平均は僕よりもギリギリのランナーだ。茂刈くんに喝を入れながら、『歩いちゃダメだ!行くぞ行くぞ!』と声を掛けているが、茂刈くんは厳しそうだ。気にしながら前を行くが、コーナーを曲がる度に姿が見えなくなってしまった。
80キロ通過は予定よりも速かった!75キロからの頑張りが、タイムに現れた感じ。エイドにもほとんど立ち寄らなかったし。結局はスペシャルサプリの詰め替えや、回復の為の歩きで81キロの通過は10時間11分まで掛かっていた。これもいつも通りだ。今年はプラス2分くらいは休み時間が長かった。このキロ9分に対して2分オーバーの借金を90キロまでに返そう。そのくらいの気持ちでいた。
いよいよワッカ原生花園にやってきた!逆光の中、ランナーの姿が遠くまで連なっている。そこへ有美さん登場!いちごパワーで頑張ってます!次々と知り合いのランナーが帰ってくる。
すると前方にチームへろへろのユニフォームを発見!『どうですか?アート鈴木です!』と声を掛ける。顔は知っていたが話したことがなかったので。『へろへろのたけしです!着いていきます!』アート鈴木とたけしさんは仲間になった!(ドラクエ風なBGM)
ここで計画を伝える。今82キロ地点での遅れは約3分。87キロまでにこの3分の借金を返せば良いので、走ったり歩いたりで行こう。走るペースは8分を切っているので、途中の坂道は歩いても良い。そしてまた平坦と下りで走れれば問題ない。今急いでも苦しいだけだから、走れるペースがどのくらいなのかを知れば、ゆっくりでも構わない。とりあえずはコースに合わせて歩きを入れる。
まずは折り返し95キロになるエイドに到着。ここから先がアップダウンの繰り返しで参ってしまう方が多いようだ。たけしさんと共に段々とリズムが出て走れるようになる。しかし呼吸を感じながら、ゆっくりにしたり、下りはスッと上げてみたりして走った。
僕は相変わらず皆さんに『ガンバです!』の声掛けを行う。特に知り合いが来ると、必要以上にはしゃいでハイタッチをしていた。追い越すランナーにも声を掛けていくと、まとまった集団になる。そしてワッカでは2つ目のエイドに到着。ここにはへろへろ応援団もいて『健司くん、たけちゃんを任せたぞ!』とたけしさんの完走請負人になった!『任せてください!絶対大丈夫!ゴールさせます!』このエイドではスイカを食べた!久しぶりの固形物!とは言ってもほとんど水分だが、とても美味しかった。そして更に奥の90キロへ向けて再スタートする。まもなく85キロを通過する。
85キロ 10時間47分20秒 49分44秒
リズムを作り出す為の走りをしているのにも関わらず、しっかりとしたペースで刻めている。80キロ通過は休憩をしていたので、実質10時間02分だった。それでもこのペースで走れていれば何の問題もなく90キロはパスできると確信した。
85キロを通過すれば、あと5キロ。折り返しは88.5キロ付近なので3キロちょっと我慢すれば復路に入る。またエイドが折り返しの手前にあるが、戻ってくる際に寄るようにすれば良い。
再びリズムを作り出し、また声掛けも続けると、たけしさんもランナーに向かって『ガンバ!』を発するようになる。『声出すと元気にならない?自分にガンバって言ってるんだけどね!』折り返しに向かうギリギリランナーから、ゴールへ向かうランナーに声を掛ける。相手も返してくれる。皆で走っている一体感を得られる。
ペースは安定しキロ8分を切るペースで歩きも少なくなった。87キロを90キロ制限時間25分前に通過した。あと3キロを25分、キロ8分で大丈夫。『いいですよ!このペースで速くならなくてこのままでいいですよ!絶対に間に合いますから!』集団は5人くらいになっていたようだ。皆さん無口になっていたのは、集中している証拠だ。いつまでも続くワッカ。『折り返しはどこ?まだ?』と不安になる。その不安を拭ってあげられたならば自分でも『いい仕事したな!』と思う。自己満足ですが。
折り返してくるランナーの中にお客様を見つけては写真を撮ってエールの交換!エイドのテントが遠くに見えてくると、俄然気持ちが高ぶってくる。そして『エイドは折り返してから寄りますよ!もうちょっと我慢です!』とオホーツク海とサロマ湖を繋ぐ河口に架かる橋を渡る。
すぐに砂利道となり折り返しまで少しの登り。不安定な足元と登りがダメージを受けたカラダには厳しいが、あと1.5キロで90キロだ。たけしさんも笑顔で折り返す。
再び橋を渡りエイドへ。頑張った分の休息の時間は1分程度だが、次の走りに繋げる為の補給だ。僕は水分とショッツだけで先に歩きだす。それぞれの体力の差は明らかだが、僕の見える位置ならば大丈夫!とゆっくりと走りだす。90キロに向けては気持ち下り勾配だ。登るところもあるが、往路よりは厳しくない。
89キロを迎えて9分を残したのを確認してまた声に出した。『このまま行きましょう!大丈夫!大丈夫!』と、たけしさんを先頭に『先に行ってください!』と集団を離れた。
ここからは僕らよりも遅れた方に声を掛けるようにした。90キロまであと少し!なんとか突破してもらいたい!クリニック参加の方や若いカップルランナーが、90キロを前に苦しい表情ながらも進んでいる。僕は先行し、タイムを確認してから後ろに向かって声を掛けた!『もうちょっと!間に合いますよ~!走って~!』僕自身も関門を22秒前に通過し、後続の方々を迎えた。『ナイスランです!』あと10キロ時間は90分だ。
90キロ 11時間29分38秒 42分18秒
90キロを過ぎてへろへろたけしさんはリズムが作れたようで、自らのペースをしっかりと刻んでいったので、その後ろ姿に追い付くことはなかった。他の方もゴールへ向けて確実に歩を進めている。僕は僕にできることをやることしかできない。脚の痛みを分かち合うことはできないので、とにかく前に進めるように声を掛けて前を走った。
普段の練習での10キロは皇居2周。しかし『あと10キロ』の響きはとても長い距離に感じる。僕は『見える範囲で着いてきてくださいね!』と残してギリギリのペースで進む。走っては歩き、歩いては走る。キロ8分のペースを刻み、エイドの休憩に使う。
ワッカネイチャーセンターとの分岐にあるエイドでは、スイカを豪快に頬張った!旨い!
あと何キロとは考えない。1キロごと加算される表示を見ながらタイムを確認する。左にオホーツク海を見ながら波音に耳を傾ける。リラックスしながらワッカを楽しみながら走っている。
出口に近づくに連れてアップダウンが目立ってくる。94キロを過ぎて下ればほぼ96キロまでは平坦となる。遠くに95キロのエイドのテントを確認する。あそこまで12時間15分でクリアすれば大丈夫。無理をせず走れる力を残しながら95キロを迎えた。
その手前のエイドでは4人の学生ボランティアが後片付けと、給水のコップの準備をしている。『もうそろそろいないんじゃない?』戻ってくるランナーの数を見ながらそんな会話をしていた。水を取り『いただきます!ありがとう!』少し会話を交わして『せっかくだから写真撮らせて!最高の笑顔で!』と僕。『ラスト頑張ってください!』こういった地元ボランティアに支えられて20回目のサロマ湖を走っている。
95キロ 12時間17分16秒 47分38秒
45分よりはみ出したが、今のペースを維持すれば40分では走れるので問題ない。ラスト4キロにある登りに向けて、平坦を頑張って走った。脚の状態は問題ない。前半気になっていた腰周りも違和感としてはまったくなくなっていた。サロマ湖を走るという目標にしっかりと集中している結果だったと思う。
ラスト4キロ。昨年はどうにもならなかったことを思い出す。歩くのもままならなかった。どれだけ立ち止まってしまったことか。それでも最終ラップは48分で刻めていたので、今のままラスト4キロ32分残したのを確認して問題ないと確信した。
今年のワッカを振り返ると花の印象がまったくない。毎年花の咲き方は気象条件に因って違っているので、今年は寒い日が多かったんだと感じ取ることができる。そんな余裕ができたのはここ数年の話だが(笑)花が咲き乱れるワッカ原生花園を来年は見られることを期待したい。
80キロの関門だった場所を抜ければあと3キロ。下り勾配となり、森を抜けると最後のエイドステーションに到着する。ここでも『最高の笑顔でお願いしま~す!』と3枚写真を撮っていると先生らしき方に『そんな余裕はないよ~!間に合わなくなるよ~!』と声が!『大丈夫です!ありがとうございました!』とエイドを離れた。
コーナーを曲がり、すぐにあと2キロの看板が登場!残り時間は17分ある。大丈夫大丈夫!ラストは富士五湖・野辺山と違って余裕がある(笑)前2大会は余裕がなさ過ぎた。ラン&ウォークではなく、確実にキロ8分で走れている。時間の余裕ももちろんだが、内臓の苦しさもなくダメージ自体が少なかった。ラスト1キロ。ここを17回走り抜けたことになる。18歳だったあの時から19年。37歳になって走り抜けた。あとこの場所に3回辿り着けば『グランドブルー』だ。まだまだ先に感じていた20回目完走の背中がようやく見えてきた感じだ。ラスト1キロは楽しみながら走り続けた。
側道に入るとランナーだけのウイニングロード!道の真ん中を堂々と走れる。また前後ランナーとの間隔を考えて走るのは、ゴール写真の為の位置取りだ。すると富士五湖112キロも完走されたKさんが迎えてくれて写真を撮ってくれた。ありがとうございます!
常呂町民センターが近づくにつれて応援の人垣が多くなってくる。この雰囲気がたまらない!いつかは動画で収めたいが、今は走ってきた者だけが味わえる瞬間として、次にとっておこう。お馴染みの皆さんが僕を迎えてくれる!『おかえりなさい!頑張った!またギリギリで~!(笑)速過ぎるぞ!』色々な声援とハイタッチで最後のコーナーを曲がる!最後は花束をまたまた頂きたくさんの知り合いの方からも声を掛けて頂いてゴールへ向かった!そして合計17回目・2002年から連続10回目のゴールテープを切った!
100キロ 12時間58分34秒 41分18秒
ゴールタイムは余裕の1分26秒前だった!富士五湖12秒前、野辺山ジャストタイム!に続いて、間に合わない・・・パターンもあるかと思ったが、知り尽くしたサロマ湖は僕なりに快走できた。今年はゴール後に渋滞ができていて、ゴールゲートは高台になっているのでゴール写真も撮られ大丈夫だが、なかなか前に進めない。周りには80キロ手前で声を掛けてくれた方もいて写真を撮ったりして会話を交わした。この男性の方の足元もNEWTONだ。17個目のメダルを貰ってクリニックに参加された方々とも色々話したかったが、すごい人混みで叶わなかった。
今回17回の完走の中で、ゴール後に1番お腹が空いていた!というよりも食べたいという気持ちになったのは初めてだった!いつもは飲み物すら受け付けない状態だが、今年は違った。ゴール後に貰った食券で引き換えられる時間を気にしていた(笑)18時30分までと記載してあったので、急いでサロマンブルーの控え室に行って荷物を引き取り、着替えもせずに仲間のいる広場へ向かった。暖かくなっていたので、着替えなくても問題はなかった。気温だけの問題ではなく、体調が良かったことも『力石モード』にならなかった要因だろう。
合流してから悠林館の迎えのバスが到着するまでの時間、わがままを言ってラーメンとカレーライスを持ってきて頂いた。ペロリと完食!まだまだ食べたい!すぐに夕飯のジンギスカンが楽しみになった。
悠林館に到着後は、アミノ酸ZENリロードとショッツを1本飲んだ。その後もお風呂でも体力を奪われることもなく、ジンギスカンを腹一杯食べて、ご飯もたくさんおかわりして22時くらいに眠りに就いた。
翌日は天気が良ければ幌岩山に登るつもりでいたが、朝6時前に起きた時点で昨日のようなどんより雲だったので、止めることにした。その後は朝風呂で水風呂との交替浴やストレッチを入念に行い、疲れを取ることを優先した。
帰りも旭川空港だったので観光はできる時間はなかった為、北見のトリトンで回転寿司を満喫し、帰り道に石北峠と層雲峡を駆け足で観光し(休憩)ギリギリに旭川空港に到着した。僕らの飛行機は最終便だったので、レストランで初のビールを飲み、豚丼を食べ、シメのパフェで満腹になった!
筋肉痛が火曜日以降に来るか来るかとオドオドしていたが、まったくない状態に驚いた。それだけ富士五湖・野辺山が無理をしていたということか。ゴール後にしっかりと食事を取れたこともリカバリー効果として高かったと考えられる。
最後に今大会を振り返って
昨年とは違い直前に起こしてしまったぎっくり腰の心配もあったので、とにかく冷静な走りを心掛けた。反省点を挙げるならば、トイレ休憩に時間を費やしてしまったこと。仕方のないことだが、1回目の小トイレをしっかりと済ませていれば、25キロ手前から45キロまでの間に3回は行かずに済んだはず。大は仕方ないとして、小2回目で10分以上掛かったことは前半の貯金をすべて使い切る形になってしまい、54キロの休憩時間を削らなくてはならなかった。合計で6回のトイレとなった。
レース中1番キツかったポイントは今年も60キロ~63キロのエイドまでだ。集中力の切れどころかと思うが、先程のトイレの理由で54キロでゆとりがなかったことがやはり原因ではないか。63キロエイドでは胃が痛くなった訳ではないが、気持ち悪さが急にやってきた。この状態は一瞬だけだったが、心搏数が70まで下がる程落ち込んだ。
逆に良かった点はその気持ち悪くなるのを察知して、20キロから出てくる固形物を一切摂らずにショッツだけでガソリンは補ったことだ。ショッツは前半30キロまでにグリーンプラム3本 ・54キロまでにマンゴーパッション3本・63キロからゴールまでワイルドビーンを4本摂取した。トータルで約10本だ。スペシャルドリンクは結局30キロの1回だけとなったが、野辺山から使用している『アミノプロテイン』が少量の水でも流し込めたので、お腹には溜まらなかったがリカバリー効果はあったと思う。
固形物を摂らないことは『今回の僕に合っていた』のだと思う。基本的に普段は3合のご飯を食べても問題ないのだが、運動時に内臓が上下することで消化不良などを引き起こしやすいのだと思う。しかし2008年のくびき野では、たくさんの食べ物を楽しみながら食べて12時間14分で完走している。両者に共通しているのは、『レース後に食べられたこと・力石モードにならなかったこと』だ。その時の体調次第で対応するべきだと思う。
また、メンタル面の話になってしまうが、100キロをどう走るか?100キロに対しての構え方・挑み方なども『レースを楽しむ・苦しさと向き合う』重要だと感じだ。特に昨年の自分自身との比較をすると、『この心拍数で走る!』ことを目標にしたことで、力を抜くことができずに後半80キロ以降で苦しい内容となり、力石モードにもなった。タイムは確かに12時間35分と20分以上は速かったが、代償というかリスクもありなにしろすべてを楽しめなかった。
一方今回は富士五湖・野辺山の練習不足でもなんとかクリアできた自信をもってスタートラインに立つことができた。昨年の辛いレースは懲り懲りだったので、意気込まず『集中とリラックス』が成り立っていた。すべてのランナーに当てはまることではないと思うが、感じたことを記しておきたい。
最後に2012年の僕のウルトラマラソンシーズンは終了を迎えましたが、今年もたくさんの方に出会い、楽しく走ることができました。一緒に走ることのできた方も、ゴールで迎えて頂いた皆様にも感謝致します。
まだまだ経験不足の僕ですが、クリニックの内容もバージョンアップした形で充実させたいと考えています。初めて参加頂いた方は、次のウルトラランナーデビューの方に紹介して頂ければと思いますし、ブログやウルトラマラソン攻略本も併せてよろしくお願いしたいと思います。
2012年7月現在勤務店舗はアートスポーツアネックス店(サイクル部門)になりますが、ご質問などは公式HPよりお寄せください。今後ともよろしくお願い致します!
第27回サロマ湖100キロウルトラマラソン完走記~第1章~
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