第一話『深淵』



「まあまあ、だったな」

結局、あの竜は一撃で倒してしまった。
意外と呆気なかったな。
戦利品も大したものじゃなかったし。
今度、蒼に売ってやるとしよう。

「おや、聖じゃないですか」

俺と同じくらいの髪の長い着物の少女が俺の前で立ちどまる。
少女はキョロキョロと辺りを見渡した後、俺と向き合う。

「セイバーは、何処ですか?」
「その声は、由香か。あいつなら、赤姉に捕まってるから朝まで開放されないと思うが」
「…そうですか」

由香は寂しそうに目を伏せ、呟く。
すぐに少女は顔を上げ、こちらを見つめる。

「オラクル、あの……セイバーに伝えといてもらえないでしょうか?」
「…何をだ?」

めんどくさい…そう思いながらも、由香の目をきちんと見る。
軽く俯きながら顔を真っ赤にしながら由香は言う。

「えっと…今度、一緒にイベントに参加しませんかって伝えてください」
「…近い内にイベントでもあるのか?」
「か、カップル専用のイベントですけど……その、欲しいアイテムとかがあるので…」
「そうか。じゃ、伝えておくよ」

また、めんどくさいイベントが。
志亜や菫が聞いたら、連れてけって煩いだろうな。
俺は小さく由香に背を向けて小声でがんばれ、と告げる。

「じゃ、俺は家事が残ってるから。またな、アゲハ」
「あ、はい。また学校で、聖」

由香――アゲハは手を振りながらニッコリと微笑む。
俺はその笑顔に後ろ向きに手を振って別れを告げた――。

















「――にぇー…お兄ちゃん、お腹減ったー」
「兄さん、ご飯……」
「すぐ出来るから、もう少し待ってくれ」

俺は妹たちの文句に答えながら、きちんと味付けした料理を皿に盛っていく

「というか、そこで脱力してないで少しは手伝え」

皿に盛った料理を次々と妹二人の前に運んでいき、軽く小突いてやる。
二人とも痛そうな演技をして見せたが、すぐに笑顔で笑いかけてくる。
そして、それぞれの目の前に箸を置いて俺の席に着く。

「さて、食べようか。いただきます」
「いただきま~す」
「いただきます」



「…? お兄ちゃん、何かいい事でもあったの?」

聖に少し容姿の似て髪を二つに結った少女――志亜が不思議そうに聖を見る。
そして、お茶碗を聖に渡す。
聖は志亜のお茶碗に適当にご飯を盛って、返しながら答える。

「ん、いや…なんか、幸せだなって思ってさ」

志亜よりも大人びた少女が、微笑みながら言い返す。

「当然ですよ。可愛い妹二人に囲まれて、尚且つ美味しいご飯があるんですから」
「その美味しいご飯を作ったのは俺だけどな」
「それを言っては駄目ですよ、兄さん」

少女は優しく笑い、聖は呆れたように溜息を吐く。

「菫も、少しは手伝わなきゃ駄目だよ」

志亜が箸を置きながら、自分よりも大人びた少女――菫に言う。
菫は笑いながら

「姉さんも人の事を言えないですよ」
「志亜は洗濯とか食器洗いとかを手伝ってるから良いの」
「手伝ってるだけで、全部俺が結局関わってるんだけどな」

聖は困ったように笑い、志亜は少し拗ねた様で頬を膨らませてそっぽを向く。
そして、菫はそんな二人を見て楽しそうに微笑んだ。



そんな、ささやかな麻生家の日常。
変わらないと信じ願う少年少女の“とある世界”







---あとがき---

ま、というわけで第一話終了。

蒼「とことん、ボクの出番が無かったね(--;」

まあ、良いじゃないか。
脇役なんだし(ぁ

蒼「脇役っていうなーーー!」

HAHAHAHAHAHA!!

蒼「で、次回はどうするのさ?」

一応、リメイクって事忘れてませんか?

蒼「ああ、そういえばそうだったね」

まぁ、旧クレストを元に作成するだけでまったく同じではないのですが

蒼「そりゃそうでしょ」

あ、いい忘れてたけど。
次回も、君の出番は無いよ?

蒼「なんでっ?」

次回は、黒き閃光の物語りだし

蒼「…だれ?」

それは、次回のお楽しみ。
では次回、『黒き閃光』。

蒼「ボクの出番をっ!」

まあ、考えなくも無い(ぇ


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