ロボザムライ( 飛鳥京香・ 山田企画事務所)

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ロボサムライ駆ける第四章剣闘士(3)


ロボサムライ駆ける■第四章 剣闘士(3)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikku.com/ 
第四章 剣闘士

第四章 剣闘士(3)
 主水は、地下坑道五-Bに送り込まれている。大阪にある機械城から、古代都市があると思われる方向に二十もの道が掘り進められている。ロボットは二〇時間労働であった。休息時間はわずかである。
 与えられるものは潤滑油と栄養液だけである。しかも両方とも、それが良質ではない。東京で与えられているものと段違いに品が悪い。主水は閉口した。やはり、これでは体の動きがスムーズにいかない。
 それに例の持病も気になっていた。作業中に空白の時間がくれば、掘削機に巻き込まれる恐れがある。
 それに落合レイモンもどうしているのであろうか。
 さらに東京にいるマリア、鉄、そして徳川の主上はどうなさっているだろうか。思うと、主水の頬に温かいものが伝う。
 人工涙滴である。弱気になっていた。
 主水は、安物の左手で涙を拭う。作業用に取り付けられた左腕である。死二三郎に切り取られた左腕は帰って来なかった。あの左腕は特別製である。今の左腕は動きが悪かった。 あるとき、主水は同じ作業しているロボットに尋ねた。
「どこへ向かって掘り進んでいるのだ」
「若いの、それは知らぬ方がよい」
 その老人のロボットは答えた。無数の傷が顔とボディにあるその老人は言う。
「いにしえにあったピラミッドと湖といっておこうかのう」
 表情を変えず、そう言った。
「ピラミッド、湖…それは心柱と関係あるのか」
 さらに主水は尋ねる。老人はいやな顔をした。
「若いの、知識がある奴が、長生きするとは限らんのじゃ……。知りすぎたロボットはのう、よう削岩機でつぶされとるんじゃ」
 苦い思い出があるらしい。
 数人のロボットが岩盤を掘り進んでいた。非力ながら、主水もドリルを持たされ、穴掘り作業を続けさせられていた。が、地中作業は、ロボットの表皮や間接部分の非合金を痛めることがある。数時間の水によるボディの洗浄と太陽光線照射が許されていた。つまり、地上での休息である。数人毎に纏められて地上に上げられる。
 が、ロボットたちのいる二〇平方メートルの『リクライニングゾーン』には、電磁ビームが張り巡らされていて、容易に逃亡できないようになっていた。
     ◆
 タコが東日本から西日本へ移動してきた。西日本のロボ忍のタコが国境を越えるタコを見つけて接近してくる。
 タコを囲む数機のタコ。
「何者だ。名をなのれ」
 西日本のロボ忍が叫ぶ。
「俺じゃ、花村一去じゃ。ほれこのとおり、徳川公を誘拐して参ったわ」
 東日本からきたタコから声が帰ってきた。「おお、これは、お頭。お役目ご苦労にございます」
「首尾よく、役目果たして参られましたか」「これにて、我々西日本の動き、具合よく運びましょうぞほどに」
「水野の殿が喜ぶ姿、目に浮かびましょう」 祝いの言葉が続々と浴びせられた。
     ◆
 その水野と斎藤は一室で話し合っていた。「心柱の位置、すぐさま見つけたのはさすがと言わねばなりませんな」
「が、レイモンをあまり付け上がらせてはならぬ」
 二人が話し合っているところに、折あしくレイモンが現れた。レイモンは、一人で歩く訳にはいかぬので、乳母車のような乗り物に乗っている。後ろで押しているのは夜叉丸である。
「これは、これは斎藤氏に水野氏。何か俺の話をしておられたのか」
「いえ、別にそうでは」
 斎藤が首を振る。
「お二方、お忘れなさるな。レイモン様は最高の霊能師でござるぞ。お二方の考え方など、お見通しじゃ」
 夜叉丸が言葉を告げた。青くなる二人。
「ふふう、どうやら俺の話が、ずばり的を得ていたようじゃな」
 レイモンはしゃべるたびに薬用チューブがジャリジャリと音を立てている。
「よいか、心柱発見の力、レイモン様の力と知られよ。あだや疎かにされるなよ。お二方」 夜叉丸が再び強い調子で続けた。威しをかけているのである。
「まあ、よいではないか、夜叉丸。お二方とも俺の力はご存じのはず」
 レイモンは含み笑いをしながら、悪意のある眼を二人に向けた。震え上がる二人。
「それではお二方、よろしくお願い申す」
 レイモンの乗る手押し車が揺れるたび、ちゃぷんちゃぷんと音がする。レイモンの薬タンクの中の薬液が揺れる音であった。
「ふふう、いつもながら恐ろしいのう、レイモンは」
 信長の顔をした水野が汗をかいていた。
「ところで水野様、あの夜叉丸ととかいう男、ロボットでござるか、あるいは…」
 秀吉顔の斎藤が尋ねる。
「わからんのじゃ。レイモン殿の話では人間じゃと申しておるがの」
「が、水野様。何かあやつ人間ではないような…」
 疑い深げな顔をして斎藤が言う。
「そんな気が俺もするが、またロボットでもないようなのじゃ」
 しばらく沈黙があり、斎藤が小さい声で言う。
「まさか、霊人間とかいう…」
「げっ、斎藤、恐ろしいことをいいよるのう」 二人は顔を見合わせ、背筋が冷たくなった。
(続く)
■ロボサムライ駆ける■
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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