ロボザムライ( 飛鳥京香・ 山田企画事務所)

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ロボサムライ駆ける第六章 古代都市(3)


作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
■第六章 古代都市
   (3)
 心柱のある場所はここまでの化野よりももっと広大だつた。
「なぜ、こんな広大な場所が地下にあるのだ」「これが…」主水は思わずつぶやいていた。『そうじゃ、これが心柱じゃ。日本の心柱。これを数千年にわたって探していた者がおるのじゃ』落合レイモンの声が再び響いてきた。「レイモンさま、ご無事ですか、お助けにまいりましたぞ」
 その柱は直径二十メートルほどあり、天井部分は、はるか霞んで見えなかった。同じ太さで地中に植わっている。
 その柱は輝いているが、がその色は数刻ごとに七色に変化していた。そして、まるで生き物の皮膚のようにぬめりとしていた。
     ◆
『機械たちよ、私の命令に従え』
 日本ロボット軍団の皆の心の中に、この言葉が、突然侵入してきた。
「こ、この声は…」
 侍ロボットの一人が尋ねた。
『私は超生命『心柱』である。この日本を日本たらしめている生命体である。日本列島誕生より、この日本に住み着き死んでいった生命の残留意志集合が私なのだ。古代より続くこの日本の地に霊として結集し、形をとったのだ。
 私を、ロセンデールとか申す外国人によって支配させるでない。日本ロボットの諸君、皆私の前に集まれい。私を保護せよ。日本古代よりの霊の結合体と、地下に眠る地球意志ネットワークが融合したのが、私だ』
「おはしらさまが、古代都市に結界を張っていたわけか」
 主水がつぶやく。
『そういうことだ、主水。私が動けば、古代都市を復活させることができる』心柱が答えた。
「皆、みはしらさまの前に集まれい」
 心柱を背にロボット奴隷戦士が、円陣を組んでいた。
 シュトルフ率いる聖騎士の一団が、主水たちに襲い掛かってくる。
「ここが踏ん張りどころぞ。こやつら異国の者ばらに、日本の心柱を占領させてなるものか。方々、これが日本のロボットの力の見せ所ぞ」
 主水が声を張り上げていた。
 パワードスーツの一団、聖騎士団は、レザーサーベルを抜き放つ。
「かかれ…、日本のロボットなど、奴隷の一団。おそるるにたりん。我らが聖騎士、ゲルマンの神の御加護があらん。攻めて攻め滅ぼせい。力押しじゃ」
 大夫シュトルフが、赤ら顔の表情を一層険しくして怒鳴っていた。地下巨大空洞に、怪しい光がみちみちた。
 日本の心柱を巡って、ロボットとパワードスーツがいり乱れて戦い始めた。
 そのとき、地下空洞の地面から地下水が、急に噴出してくる。
 見る見るそれは湖となる。
「これが、古代大和湖か」
 主水は戦いながら関心した。湖の色は不思議な瑠璃色だった。その中に生命が溢れているように感じた。僅か数刻で水が満ち満ちるとは。
 その地下湖から姿を現すものがある。
 小型潜水艦である。
 横腹に『水鏡(すいきょう)』と書かれていた。地下水流に乗ってきたのだ。
「あるいは……」主水は期待をもってその潜水艦を見る。
 サイ魚法師が、ハッチをあけて顔を出した。「おお、戦いの真っ最中ではないか。とんだところに出くわしたものじゃ」
 そのサイ魚を見たロセンデールは味方につけようとした。
『サイ魚法師、早く我々の手助けをするのです。シュトルフを助けなさい。あとで礼はつくします。空母を沈めたことも許しましょう』 ロセンデールの声が、サイ魚法師に響いた。「サイ魚法師、我々に味方しろ。日本対外国の戦いじゃ。どちらに味方すればいいか、おのずからわかろう」主水も声を振り上げる。「おおっ、皆元気のいいことじゃ。こんな地下でも戦争とは大変じゃのう」
 サイ魚法師は知らぬ顔をする。
 どちら側についてもおいしい話なのである。この戦いの力のバランスを崩すことができる。キャスティングボードを握っているのが、サイ魚であった。
「え、あなたが、有名なサイ魚法師ですかー」 そばで見ていた知恵が、調子外れにすっとんきょうな驚きの声を上げ、羨望の眼差しでサイ魚を見る。
 はぐれロボットにとって世界を放浪するサイ魚法師は、伝説のロボットなのである。
「サイ魚法師様、ぜひ私を弟子に。貴方様は我々ロボットのあこがれの人、伝説の人です。どうぞお願いしまーすー」
 知恵が、まるでアイドルに対するようにサイ魚法師に言う。
「おいおい、知恵。戦いの途中じゃ。私はどうなるのだ。よいのう、サイ魚法師、ファンがいて」むくれる主水。
「おじさん、嫉妬だねー」
 主水を見て、あざける知恵。
「サイ魚法師、頼む」
「しかたがないのう、主水、貸しは二つぞ」

(続く)
■ロボサムライ駆ける■第六章 古代都市
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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