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2006北海道マラソン
2006北海道マラソン
2006年8月27日(日)
『今年こそは』
感動号泣のフィニッシュだった2004年は太腿の痙攣で2度、カーボローディングに失敗した2005年はエネルギー切れにより4度コース上で立ち止まった北海道マラソン。徐々にゴールタイムを縮めてはいるものの、その事実は私の心の奥に常にわだかまりとして残っていました。
(なんとしてでも今年は初めてのコース完全走破で大会自己ベストを樹立したい。そのためには暑さ対策だ) そう感じた今年は例年以上にコース試走に注力しました。1度目は8月5日。2度目は8月12日。最後は8月15日。いずれの日も好天高温快晴無風。伴走を申し出てくれた人もおり、バテはしたものの本当に良い練習ができました。その頃の私の胸中(これはイケる)。
大一番が近づくと横断幕や、
看板が市内のあちこちで目に付き始めます。
大一番前週の20日には走友会の練習会兼大会壮行会があり、申告タイムと実際のタイムの誤差を競う楽しいルールのゲームに参加しました。そこで用紙に書き込んだタイムとは(3時間38分30秒)。一昨年が3時間55分台で去年が49分台の私にとって思い切ったタイムです。まして今年も去年以上に猛暑の中のレースが予想されていたので。しかし私には心中密かな自信がありました。 (太腿の痙攣を回避できればイケるはずだ)と。
7月は月間自己最長距離の310km。8月は24日まで207km。春先から再開した筋力トレーニングも大会3日前の24日を最後に打ち止めます。当日に疲労を一滴も残したくなかったからです。そして2日前の25日からカーボローディングと称したドカ喰いと禁酒開始。この2日間はとにかく食べました。酒を飲まず、ただひたすらに食べまくりました。とある理由により大会前日にロクに食事をせずに休んだことが災いし、レース中にガス欠を起こした去年の事実がトラウマになっていたからです。
同じ市内在住の両親と、家族に数ヶ所での差し入れを依頼。コース10kmと19kmで両親に塩水とバナナ。新琴似一番通りでは家族にも塩水とバナナ。走友会の私設エイドステーション(27km付近)にはゼリー飲料を1個預けました。更にアミノバイタルプロをナンバーカードの裏にセロテープでベッタリと貼り付けレース中に摂取することとしました。仮に(完全走破)の夢が破れたとしてもガス欠を理由にだけはしたくなかったので。
『スタートまで』
大会前日に開催されるアディダスランニングセミナーには去年参加したので今年は不参加。早い時間に中島公園へ出向いたのでゴールゲートを作成している珍しい場面に遭遇できました。
中島公園入口でもパチリ。横の重機が邪魔。
パークプラザでは走友会のメンバーを含めて大勢の知り合いと再会。ナンバーカードの入った袋を渡されると気合いが充実してきます。
用事を済ませてパークホテルを後にしようとした私の目を釘付けにしたのは連続五輪メダリストのエリック・ワイナイナ選手でした。とにかく細くて精悍。漆黒の肌は美しいとしかいいようのないほど。今年も上位入賞は濃厚なのでしょう。
帰宅してからは休養第一。普段から家では何もしないグータラ亭主の私ですが、この日ばかりはそれに拍車がかかっていました。その後も明日の用意をするだけでダラダラゴロゴロ。夕食は初物のサンマの塩焼きで大盛り飯を3膳。去年とは対照的な大一番前夜です。
公約通り2日間禁酒し、大会当日は4時30分に自然な目覚め。一昨年去年のような不安と緊張は皆無です。3度目の参加で初めて(不安)ではなく(期待)を抱いて出走できそう。
今日は走友数名と9時30分真駒内駅集合の約束。近隣の走友2人とは最寄りの地下鉄駅ホームで8時50分に待ち合わせをしました。ここを出るときはチラホラしか見えていなかった(いかにも大一番に臨む)風情の人達が地下鉄の駅ごとに増えていきます。この光景を眺めるのは自家用車での真駒内乗り入れを禁止される唯一の大会(北海道マラソン)のみ。1年ぶりの経験です。
私を含む数名が真駒内駅に集結したところで出発。余計なお世話と思いつつ今年初参加の走友へいろいろとアドバイスをします。「スタート後の真駒内競技場内では転倒に注意する」「最初の上りでは無理をしない」「その先から13km付近まで続く緩やかな下りで勘違いしてオーバーペースにならない」「足を止めてでも水を摂る」等々。これは走友へのアドバイスであり自分自身へも言い聞かせているのでした。
約20分の徒歩の末に到着した真駒内公園ではタケダファミリーマラソンが開催されています。3年前の今日、私はこの中の一人でした。10kmに参加し自己計時44分42秒でゴールしてそのまま真駒内競技場に居座り、その荘厳さに鳥肌を立てながら北海道マラソンのスタートシーンを瞼に焼き付けたのです。そしてこう誓いました。(俺も来年は必ず北海道マラソンに参加するんだ)と。その想いは幸いにして今年も3度目の参加として実現しました。ありがたいことです。
真駒内競技場が近づいたところでここまで行動を共にした仲間といったん離別し走友会の集合場所へと向かいます。そこは事前に案内されていた通り、2階コンコース付近。酷暑の今日は特にありがたい陣取り場所でした。
タケダファミリーマラソンでごった返す競技場内。
ブルーシートが敷かれたベテラン選手の多い我が走友会の陣地はみな落ち着いていてとても居心地が良かったと記憶しています。
メンバーに挨拶してさっそくエネルギー補給。私的には中サイズ、一般的には大サイズのおにぎりを2個。上新粉を練り合わせた餅状の食べ物を3個。カステラを1個。その間にも手製のアミノバリューを補給します。27km付近で待ってくれている走友会のバックアップスタッフにゼリー飲料も手渡しました。軽くストレッチをしていると尿意出没。用を足して自席へ戻ろうとすると快速ランナーのKさんと現在函館へ単身赴任中のWさんに再会。Wさんとはそれまで連絡を取る術がなかったので、咄嗟にメールアドレスを手持ちのメモに書き込んでもらいました。Kさんも目標のタイム達成に準備万端の様子。新琴似一番通り辺りでエールを交換できると良いのだけれど。それには私の奮闘が必須なのが明白です。
お互いの健闘を約束してその場を離れ自席へ。軽いストレッチを終え、内股と脇の下にたっぷりとワセリンを塗り、私の課題である太腿の痙攣防止用に自宅から持参した食塩を飲み込むと走友会恒例らしい記念撮影。上の画像のように人並みでごった返している通路での撮影だったので撮影者は大変そうでした。声を出さないまでもメンバーで気勢を上げ、主催者側から渡されたビニール袋へ入れた手荷物を預けて競技場内へ。のつもりがほんの3~4分直射日光に当たっただけでめまいがするほどの暑さに音を上げて競技場入口付近の日陰に待機することにします。無駄な体力は一切使いたくなかったためです。
それでも走友会のメンバーに促されて10分ほど待機の末いよいよ競技場内へ。真夏の陽射しが容赦なく参加者を照り付けます。ものの例えではなく大袈裟でもなく本当にめまいがするほどの暑さ。アップは不要と判断し、今日のこの日だけ開放されるトイレ入口の日陰で直射日光を避けます。横には走友会のメンバーがいて心強いことこの上なし。3度目の参加でも横に知り合いがいるのは安心です。ふと前を見ると夫婦でこの大会のご参加のHさんの姿が。別の知り合いに挨拶をしておいでです。ご夫婦そろって引き締まった実に良いコンディションのご様子。
この大会は2年前から徐々に参加人数が増え、今年はついに4,800人超。真駒内競技場内は人でごった返していてアップも困難な状況。私は決めました。体力温存でアップなしで出走しようと。自分のナンバーが記されたプラカードのある位置に向かおうとしても辿り着けません。これだけの人数を競技場内に押し込むのは限界ではないかと思いつつ横を見ると、埼玉県から参加の走友Kさんの姿が。洞爺湖マラソン以来の再会です。相変わらず引き締まった身体と穏やかな笑顔が印象的。二言三言言葉を交わしてお互いの健闘を約束しトラックへ。
そのときです。私が目を奪われたのはちょうど1年ぶりに見る柔和な表情の楽友Kさん(川崎市在住) 感激の握手と近況報告。ナンバーが数十番違いでしかないので同じ位置からスタートできるのです。とても安心感がありました。勤務先の関係で多忙な日々を過ごすKさん。ご出身地を物語る柔らかな関西弁は去年の通りでした。中島公園でお逢いしましょうと固く誓い合います。
上空のヘリコプター、無数の幟、青い空、高い気温・・・、全てが1年ぶり。特に故障もなく今日に至ったことに感謝しなければ。今日の目標は完全走破、いわゆる完走。食塩を服用もしたし途中では家族の援護で食塩水を3ヶ所さし入れてもらうことにした。きっと俺はできる。やってやる。今までの鍛錬を結実させてやる。今日の目標は5分/kmペースを30kmまで死守してそれ以降も粘りに粘り、3時間30分台でのフィニッシュ。
号砲一発。
『軽快そのもの』
ロスタイムは20秒。傍らにいた川崎市在住のKさんの後ろ姿が遠のいていきます。スタート位置は去年と同じ辺りなのにスムーズに流れています。競技場を出てすぐに右折。急に道幅が狭くなるここは転倒に注意しないといけません。両脇の人から「いってらっしゃ~い」との声がかかります。真駒内公園を出ると右折して五輪通りへ。ジリジリ焼け付くような陽射しにはこの木陰がありがたい。更に右折すると前半名物ダラダラ上りが始まります。しかしまがりなりにもこのコースは2度目の上、試走もしっかりと終えている私には恐るるに足らず。自信を持ってこの上りに挑みます。1kmはロスタイム込みで5分40秒程だったと記憶しています。
前後左右の人と接触しない、転倒しないことだけを考え去年までのように知り合いがいないかキョロキョロ探すような愚挙は控えます。この辺りに知り合いがいてくれる可能性はゼロなのだから。道営真駒内団地周辺で沿道の人並みが途切れるのに呼応するかのように私の周辺でも各々のペースをつかんだ選手達が落ち着き始めます。3km付近の上りを終える直前、長身の選手2人に追いつきます。お揃いのランシャツ・ランパンでどこかの大学生のよう。(これだけマラソンに嵌る人生を送るならばこれぐらい若いうちに出逢っておきたかった)というボヤキは封印しましょう。長い人生何が幸いし何が災いするか誰もわからないのだから。
ダラダラ上りを終えると左折後平岸街道へ。この先の下りは注意しないと。15kmまで続くこの下りでついつい「今日の自分は調子が良い」と勘違いしかねないのだから。重心を後ろにかけて自然と上がろうとするスピードをセーブ。これぐらいでちょうど良いのです、ここは。
真駒内駅前通過。大声援が飛びます。お目当ての選手はもう通過したことだろうに。故にありがたい。すっかり自重ペースをつかんで好調。
5km地点通過:25分39秒。
給水ポイントがありました。3日前からウォーターローディングに努め競技場内にも小さなペットボトルを持ち込んで給水していたにもかかわらず喉が早くもカラカラ。これは去年以上に給水が大切だと悟ります。水を1杯首筋にかけスポーツドリンクをも手に。予想外に多い量に少々まごつき、傍らを疾走中の走友Sさん(深川市在住)に残りを進呈。Sさんはこの申し出を快諾してくれました。Sさん、この先も奮闘しましょうね。
急激な下りの先を右折。真駒内アイスアリーナが左手に。ここでも街路樹の日陰を選んで走ります。しかしこう考えるのは私だけではないらしく歩道側走路はちょっとした混雑状態。体力の消耗をなるべく控えたい選手達共通の考えです。右折後緩やかな上りを走っていると後方から私同様の長身ランナーが颯爽と追い抜いていきます。アイスホッケーが好きで、ボランティア活動にも熱心なHさんです。声をかけると振り向いて会釈してくれました。Hさん、余計な気を使わせてしまい申し訳ない。
「○○(本名)さん!」
ん!と左の歩道を見ると同じ職場の後輩Kの姿が。
「おうっ!」と軽く手を上げ挨拶を返します。(K、どうもありがとう。わざわざここまで応援に来てくれたのか・・・。)
早くも右太腿に違和感を覚えます。痙攣の兆候です。
(そうだっ!アミノバイタルプロ服用を忘れていた!でも仕方がない、こうなったら25km過ぎで摂ろうと思っていたナンバーカード裏に貼り付けたアミノバイタルプロを早めに摂取することにしよう)
10km地点通過:50分10秒。この5km:24分31秒。
この地点名物、平岸小学校ブラスバンド部の曲が聞こえてきました。数日前の新聞に今年演奏してくれる3曲が記載されていましたが、2曲は全く知りません。唯一知っている曲が(ロッキーのテーマ) 私は神に願いました。(どうか俺が通りかかる時にはロッキーを演奏していてくれ)と。するとその願いが通じたのかラスト5秒を耳にすることができ私は鳥肌が立ち目が潤みました。(この暑い中をありがとう、みんな。先頭ランナーが通過してから20分は経過しているだろうに。俺、絶対に最後まで走り切るよ。ありがとう)
2ヶ所目の給水ポイント。ここでは焦る必要はありません。その先で両親が塩水を手に待ち構えてくれているので、欲張らずに1杯だけを手にします。去年も一昨年もこの辺りで応援してくれていたという得意先の女性を探しますがこっちがダンゴ状態ならば沿道も同様。そうそう探し当てられるものじゃありません。去年はあまりにこの女性を探そうとして舗道の割れ目に足を取られて軽く捻る失敗をしてしまったので潔く諦めました。すると人間が幸いするかわかりません。自然とこの女性の姿が目に飛び込んできました。しかしこの人はあさっての方向を見ています。私は叫びました。
「○○さん!」
彼女は声の主を目で追っていますがまだ視線はあさって。やむにやまれず、
「○○!」
得意先の、それも年上の女性を呼び捨てにする暴挙に出た甲斐(?)があり、ようやく私に気付きます。
「頑張ってよ~」
「は~い!」
大一番後約3週間経過。幸いなことに私はこの得意先へ出入り禁止になっていません(笑)
その先で予定通りに母から塩水を渡されグッと喉へ。更に30m先で構える父へ空いた紙コップを手渡します。サンキュー。(実家がこの辺りで助かるよ、親父とお袋。いつまでもこの大会に出たいと思うから親父とお袋もいつまでも応援に来てくれよ)
有名なラベルライターメーカーの前を通過。今日は日曜日。当然ながらシャッターは下ろされています。北海学園大学前を通過。ここには私の得意先の男女2人がスタッフとして沿道にいてくれるはず。そんなことを思い出しつつチラチラと沿道に目をやっていました。するといたいた、善良なオヂサンとオバサンが(失礼)
「○○さん!」
「おーう、頑張れよ~」
「はいっ!」
50m先には女性の姿が。
「○○さん!」
「頑張って下さいよ~!」
「ありがとうございます!」
この得意先と親しくしていて本当に良かった・・・。
国道36号線通過。(今年もいてくれるのかな。えりママは・・・) いました。今年も「59」の看板を胸にして。愛するご主人と我々の完走とを願いつつ貴重な休日に。ありがたい。手を振って感謝の意を伝えます。
一条大橋に差し掛かります。ここには走友会のメンバーで先程とは別の得意先に勤務する女性が声援を贈ってくれると聞いていたのでまたもやキョロキョロ。落ち着きのない男です(汗) いましたいました、Sさんが。両手を大きく振って猛アピール。
「○○さん、頑張って~!」
「は~い!頑張りま~す!」
おかげで軽い起伏のある一条大橋を軽快にクリア。
15km地点通過:1時間14分29秒。この5km:24分19秒。
JR線を通過すると公園横が3ヶ所目の給水ポイント。ここいらから壮絶な光景が幕を開けます。無数の紙コップが路上に散乱して足の踏み場もないほど。それを踏むことで足をとられることはないにせよ気になるものです。あまりの惨状に手にした空の紙コップを舗道側のゴミ箱に入れる努力をいつも以上にします。もしくはキチンと折りたたんで捨てるよう。その前でもらってランパンの腹の部分に挟んでおいたスポンジにも水を浸し、また腹に挟みます。一滴の水も無駄にせぬよう。ここで心ならずもナンバーカードの裏に貼り付けてあったアミノバイタルプロを服用。予定よりも大幅に早い服用。
北24条通りを左折。時は概ね午後1時40分。真正面から照りつける強烈な陽射しが路面に反射し陽炎が見えるほど。周りのランナーの荒い呼吸が聞こえてきます。しかし私は苦しくないのです。不思議と苦しくないのです。今日のこの日の為に繰り返し行った試走の効果なのは明白。暑い時季の暑い時間帯を敢えて選んで走っておいて本当に良かった、助かった。今大会中唯一「○○○-○○ガンバ~」と走友会名を名指しで応援されたのがこの辺りだったと記憶しています(かなり曖昧)
19km付近まで地下鉄で移動してきてもらった母にバナナ1本と塩水を手渡されます。まずは塩水をグイッ、そしてバナナを頬張ります。空いた紙コップは折りたたんでこれもランパンの腹へ。塩水は本当に効果満点。人の3倍汗っかきの私には特に効果覿面です。サンキュー。
20km地点通過:1時間39分35秒。この5km:25分06秒。
右折後新川通りへ。ここからしばらくは日本人にとって不慣れな右側通行。学校の先生らしき人が給水スタッフの学生からすごい数の応援を受けています。本人はうらやましいやら照れくさいやらでしょう。
中間地点通過:1時間45分06秒。5分/kmの設定ペースを遵守。
右折後琴似栄通りへ。例年ここで先頭集団とすれ違うのが恒例。今年も例外なし。しかし去年のように左手に目を奪われるのではなく、ひたすらにまっすぐ前を凝視しています。
左折後新琴似一番通りへ。まもなく女房と次男の姿が見えてきました。お菓子か何かが入っていたらしい空箱に大きく(真水)と書かれた紙コップを乗せています。手に取ると女房が一言。「すぐ先に○○(次男)がいるから~」 グイッと飲み干して次男へ渡します。サンキュー。
弱風が背中を後押ししてくれすこぶる好調。典型的なランニングハイですね。ガス欠で苦しんだ去年とは大違い。勤務先でわずか2m先の席に座っている大先輩も応援に駆けつけてくれていました。
スタート前にじっくりと話すことができた快速ランナーのKさんの姿を見つけます。大声で「Kさんガンバ~!」Kさんは大きく手を振ってそれに答えてくれました。目標達成に向けまっしぐらの様子。知り合いの高速ランナーが他にもいるはずですが今年はまっすぐに前だけを凝視。
25km地点通過:2時間04分43秒。この5km:25分08秒。今日の最高気温32度を記録。
ところがこの辺りで少々空腹を覚えてきました。19km付近で母にバナナを1本さし入れてもらったにもかかわらず。驚異の胃袋。ストロングストマック。しかし今日の私には頼りになる援護者がいてくれます。家族に加えて入会させてもらったばかりの走友会の私設エイドステーションです。預け入れたゼリー飲料を冷やして援護者が待ってくれていることでしょう。そして右折すると幟がとても目立つエイドステーションの姿が。私は大きく手を振り胸のナンバーを指し示して自分の品を手渡してくれるよう猛アピールします。上手い具合にそれを手にできてふたを開けニュルニュルニュルっと。ご飯1膳分のエネルギーは私にこのあとも走り通す意欲と気力を与えてくれました。やはり人間腹が減っては戦をできません。
第一折り返し地点通過。左回りをしながら、記念に赤い三角錐のコーンにタッチ。この先はしばらく前を行くランナーと後続ランナーを一望できる貴重な区間。走友会の仲間を必死に目で追いますがどうにも見つかりません。
稲積橋の上りを快調にクリア。下りの中央分離帯に熱心な応援者がいて大声で「給水!200メートル先!」と教えてくれています。ところが実際には200メートルを遥かに上回る先に給水ポイントがありました。我々を励ます意味でのエールだったのでしょう。
第二折り返し地点通過。先程同様左回りしつつ三角錐のコーンにタッチ。ここで足底筋にピリッと痛みが走りました。しかしそれはごく軽いもの。同じ部位の痛みに苦しんでおいでの走友Kさんに比べたらどうってことなし。
某得意先の出先が右側に見えてきました。ここは主催者側からの依頼で参加者にトイレを開放しているのです。一昨年初参加した際にここで応援してくれた総務次長が今年も駆けつけてくれるという話を聞いていたので楽しみにしていたのですが、その姿はなし。
「最初は私が建物の施錠開錠をするはずだったのですが、年に一度の建物の検査が偶然この日と重なり、ここの責任者が出るというので私は見送ったんですよ」(後日談)
2度目の稲積橋上り。わずか十数分前とは足腰にかかる負荷が段違いである事実を実感しないわけにはいきません。
30km地点通過:2時間30分31秒。この5km:25分48秒。なんとか持ち堪えています。(残り12kmとちょっとを6分/kmまで落ちたとしても3時間42~3分。よ~しよし)
『胸突き八丁』
新琴似一番通りに右折して戻る手前で最終ランナーが第一折り返し地点へと向かう後ろ姿を確認できました。そのすぐ後ろには終末車と白バイが。私の位置とは約3.5kmといったところでしょうか。そして今年も聞こえています。無味乾燥な、
「こちらは終末車です。最終ランナーがただいま通過しました。交通規制を解除します。皆様のご協力ありがとうございました」
のアナウンスが。
本当に幸いなことに私はこのアナウンスを自分の背後で聞いた経験がありません。しかしこの悪魔?車の影を感じつつ懸命に走り続けるランナーの胸中は察するに余りあるというもの。これに捕捉される人数が1人でも少ないことを願いました。
新琴似一番通りを右折。ここでいよいよおいでになりました。新琴似一番通り名物アゲインストの風です。この通りは北西⇔南東に延びた道。不思議と道の方向と同じ向きの風が吹く特異な区間なのです。今日も例外ではありませんでした。まともに自分に吹き付ける風が煩わしくってなりません。しかし今日の私は今までの自分とどこか違っています。
(この程度の風がなんだってんだ。路面からの猛烈に暑い照り返しを和らげてくれているのじゃないか。さっきよりも涼しさを感じられるじゃないか)
万全な仕上がりが快調なペースを呼び、発想までもが陽転思考をできているのですね。いつもこうだったら良いのに(笑)
といいつつもこの先しばらくは記憶が飛んでいます。とにかくただただひたすらに前を行く人の背中を見ていたことと、北海道に本社のあるコンビニエンスストアのオリジナルスポーツドリンクの青いペットボトルが時折り散乱していたことぐらい。
(そうか、そうだったのか・・・。今日の給水にはあのスポドリも加えられていたのか・・・)
突然路面に印刷された白い線が目に入ってきます。瞬時にして北海道マラソンのコース図が脳裏に浮かびました。5kmごとの関門に加えて31.6kmと33.7kmにも打ち切りポイントが設けられていたことを。ここがその1ヶ所目、31.6kmだったのです。非情極まりないルール。しかし走者の健康面と交通規制による市民への影響を鑑みて設定されたルールを我々は遵守する必要があるのです。それが一般公道を使用する大会の掟なのですから。悲しいかな。
ここでさすがにラップが落ちてきた実感があります。足が上がらず身体が前へ進み出てくれません。ついに胸突き八丁を迎えたようです。しかしここで私に元気を与えてくれたのが家族でした。女房と次男がまだ私を待ってくれていたのです。先程と同じお菓子か何かが入っていたらしい空箱を手にしながら。そこの上にはバナナも乗っていたらしいのですが何故かそれには気が付かず、塩水入りの紙コップを手にして空になったコップを次男に戻します。
(2人共このクソ暑い中こんな長時間待ってくれていてありがとう。俺、絶対に完走することを手土産に帰宅するからね)
33.7kmの打ち切りポイント通過。(1人でも多くの人がここを通過してくれ~)
得意先の女性が柔和な笑顔をたゆたえて今年も来てくれていました。これで3年続けて。ありがたいことです。JRの高架をくぐって右折後琴似栄通りへ。ここで去年の私はガス欠と太腿の痙攣兆候が出て精根尽き果て、ついに立ち止まってしまったのでした。しかし今年は3ヶ所で手渡された塩水効果で痙攣の兆候は皆無。加えてレース中に服用したアミノバイタルプロも効果があったのでしょう。お盆に飴や氷砂糖を乗せて立っている温かい人の姿がこの辺りから目立ち始めます。ここの近所に住んでいる人にすると恒例行事なのかもしれませんね。
35km地点通過:2時間57分12秒。この5km:26分41秒。(ジリ貧。しかし走友会で宣言した目標の3時間38分30秒更新は濃厚だぞ)
左折後新川通りへ。左折地点は大観衆。先頭集団が走り去ってから1時間半近く経過しているだろうにこの暑い中を。頭が下がります。バナナを数本手にした女性(だったはず)の姿が目に入りありがたく1本拝受します。これでバナナ1本、アミノバイタルプロ1袋、塩水3杯、真水1杯を家族から、善意の第三者からバナナ1本。今年の洞爺湖マラソンで私は拙い歴史上初めての無給食完走を成し遂げましたが今日はこれだけの摂取量。真夏のフルマラソンは水分と共に給食も必要とするのですね。それともこれは胃腸の丈夫な私だけに限ったことなのかな(笑)
北24条通りを渡り石山通りへ。去年私を感激させた札幌工業高校応援団の姿は見えません。あの黒装束でこの酷暑の下応援し続けるのはあまりに不健康なので正解です。
午後3時20分。右斜め後方から照り付ける陽射しはいまだ強烈で帽子の向きを小まめに変えて首筋に直射日光が当たらないよう注意します。その直前の給水ポイントにあった氷を3個手にして1個を口へ、2個は手づかみで首筋~肩~両腕~太腿を冷やし少しでも体温上昇と痙攣を防ぐよう努めました。おかげで足底に重篤なダメージを覚えつつも痙攣の兆候は皆無。3度目の参加にしてこんな経験は初めてのこと。スクワットを主とした地道な筋力トレーニング効果なのでしょうか。
ふと左の歩道を見ると勤務先の専務が夫婦連れで観戦中。部署が全く異なるのでこの人は私を知る由もありません。一瞬迷った末振り向きながら、
「I専務、○○(部署名)の○○(本名)ですっ!」
するとI専務は大きく頷いてくれました。この期に及んでこんな大声がよく出たものだと我ながら感心しきり(笑) しかしこのオーバーアクションで前方のランナーと軽く接触してしまい、走りながら謝罪しました(汗) 今年も仕事の都合で無念の不参加だったサブスリーランナーのUさんが寸前まで(でもないのかな)声援を贈ってくれていたであろう付近を通過。今年もUさんの休憩時間中にここに辿り着くことはできませんでした。
去年はこの辺りから風雲急を告げ突然の土砂降り。結果的にそれが太腿の痙攣を抑止してくれ恵みの雨となったわけですが今年は相も変わらずのピーカン。しかし私の意気は上がる一方です。JR高架線をくぐり北大植物園横を通過。照り付ける陽射しは強烈。しかし妙に冷静な判断をできた今年の胸中は(えりママが今年もこの先にいてくれるかも) するといてくれたのです、この暑い中「59」の看板をぶら下げて。(ますたー、今回こそはゴールできると良いけれど・・・)
左折して大通北側コースへ。わずかでも日陰を求めてコース右側を懸命に走ります。ここを大会コースとして走るのは去年に続き2度目の私。今年は全体的に言えることですが余裕があります。沿道の声援が耳に入ってきます。去年のこの辺りは半ば意識朦朧。40km関門のピ~音で正気に戻る有様でした。ですが今年は絶え間なくかけられる声援に軽く会釈をして40km関門を目指す肉体的心理的余裕があったのです。
40km地点通過:3時間24分34秒。この5km:27分22秒。落ち込みを最小限度で抑えられました。
『ヴィクトリーロードを行く』
突如
「○○(ファーストネーム)!」
父です。
「あと2kmだぞ!」
「わかった!なんとかいけそうだ!」
続いて、
「○○さん、頑張って下さい」と黄色い声援。知り合いかと思いそちらに目を向けると参加者名簿を手にした女子高校生らしき風情の2人連れ。ありがとう。
右折後ヴィクトリーロードの札幌駅前通りへ。札幌マラソンハーフ折り返し地点に利用される中央分離帯の切れ目に冷静に目をやる自分がいます。パルコ横では左側から「お帰りなさ~い」と猛烈な声援が飛び、私はもううれしくて楽しくて無意識のうちにそれら全てに手を振り答えていました。(声援が飛ぶ)⇒(手を振って答える)⇒(また声援が飛ぶ)⇒(うれしさのあまりまた手を振る)の繰り返し。まさにヴィクトリーロード。
千秋庵前に設置されたラストの給水ポイントでスポドリと真水を両方受け取ります。後日いろいろと耳にはしたものの今年もスタッフの熱心さが伝わってくる給水ポイントでした。お世話になりました。
すすきの交差点で後方から物凄い勢いで私を追い抜いていく人がいます。それは同じ走友会のMさん。走力では私を遥かに上回るこの人が何故ここにいるのか不可解。
「お腹の調子が悪くなって途中でトイレタイムをとったんですよ」(後日談)
10秒ほど並走しましたがとてもついていけません。みるみるその後ろ姿が遠のいていきます。脱帽。
今日3度目登場の母の姿が見えてきました。去年も一昨年も残り2km付近で飲み物を用意して待ってくれていたのですが、それを手にするためにほんのちょっぴり迂回をする余力がなく受け取ることができませんでした。しかし今年は違います。しかとそれを受け取ってお礼を言う余裕まで。「今年もありがとう」と。
そしてついに、ついにここまで戻ってきました。(King of VictoryRoad)中島公園です。
石畳に足を踏み入れた瞬間いろんなことが頭を過ぎりました。この日の為に、と言っても良いスノーターサーを履いての冬道ラン。地味で苦しい筋力トレーニング。雪解け後は義務的ではないほぼ毎週末のLSD。仕事面での悩み。様々な協力を得て猛暑の中行った北海道マラソンコース試走会。家族・両親・走友会スタッフ・見知らぬ人からのさし入れ。先輩・同僚・得意先の人・見知らぬ人からの大声援。本当に今年も頑張って良かった。
コース右側から走友会メンバーの大声援がかかります。この酷暑の中、走友会に入会して1ヶ月とちょっとの私が完走するのを予想した人はあまりいなかったはず。期待以上の走りを体現できた満足感で思い切り両手を振って応えました。
ボート乗り場の横を通過し前方に北海道立文学館が見えてきました。
この横を通過するといよいよフィニッシュライン。
恒例行事で帽子とサングラスを外しラスト100メートルを全力疾走。完走者最高の晴れ舞台。先行するランナーを目標に最後の力を出してスパート。順位を上げるためではなく1秒でも大会ベストタイムを更新するために。三角錐のコーンが置かれて男女ごとに分けられているのであろう走路。一瞬どちらに入ろうか迷いましたが先行するランナーと同様左側を選択。一昨年は号泣、去年は歓喜。そして今年は苦悶と若干の余裕が織り成す気合いのフィニッシュ。
よっしゃ~~~~っ!!!!!
3年連続3度目のフィニッシュ。最大の目標であるコース完全走破も達成。
5km:25分39秒。
10km:50分10秒。(24分31秒)
15km:1時間14分29秒。(24分19秒)
20km:1時間39分35秒。(25分06秒)
25km:2時間04分43秒。(25分08秒)
30km:2時間30分31秒。(25分48秒)
35km:2時間57分12秒。(26分41秒)
40km:3時間24分34秒。(27分22秒)
42.195km:3時間35分49秒。(11分15秒)
~ハーフ地点:1時間45分06秒。
ハーフ地点~フィニッシュ地点:1時間50分43秒。
頑丈な肉体に感謝。
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