本丸より (26)

in my life

コートダジュール

I love you more.

子供の頃
ビートルズの歌を歌いたくて
ビートルズと同じように歌いたくて
何よりも英語を理解できるようになりたいと思った。
多分それが、
私の言葉への欲求への始まりだった。

いつしか私は彼等の歌う言葉のほとんどを理解するようになったけれども、
本当の意味での“理解”を得るようになるには、
まだ沢山の波や風やハードルを越える必要があった。

何十年も流れて
何百回も歌い
何千回も耳にしていても、
ある時、
言葉にそっと耳を傾けると
流れる言葉の中に、
それまで気付かずにいたことに気付く。
大切なものをずっと見過ごしていたように。

きっと
ビートルズのとてもシンプルな英語の詩は
そんな風に始めから出来ていたのだろうに
何年経っても
何度耳にしても
こころが目を覚す一節と出会うことができる。

映画「I am Sam」の中で。

“ポール・マッカートニーが作りかけの“ミッシェル”をジョン・レノンに渡したら、そこにジョンは
 " I love you.
  I love you.
  I love you. "
の3行とそのパートを付け加えた。
だから、1970年4月10日、ビートルズが解散した時、世界中の人が泣いたんだ。”

もうかなり前のこと。
ニューヨークのある精神分析医がこんなことを私に語ってくれた。

例えば作家は、そのストーリーが違っていても、
結局、ある一つの事をずっと書き続けているものなのだと。
無意識の深層心理に刻まれたテーマは永遠に変わらない。

それが本当だとしたら、ジョン・レノンはきっと
ただ一言、

  I love you  


ずっと歌っていたかったんだって、
そんなふうに思う。

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