神の恵みか、友人の恵みか。
多分、両方なのだろう。
今年の5月に1969年に解散したイギリスのスーパーロックトリオ(と注釈を入れるのも変に感じるけれども)クリームの再結成コンサートがロンドンのロイアル・アルバート・ホールで行われた。
そのトリオのメンバーは、エリック・クラプトン、ジャック・ブルース、ジンジャー・ベーカーの3名で
そのアメリカ版が、今月の24日から3夜連続で行われる。
その話は夏前から入ってきていて、単純に「行きたい」と思った。
そして、その3夜連続で行けることになった。
マディソン・スクエアー・ガーデンのコンサートには何十回となく行っているけれども、こんなに「特別」にナニやら難しい掟のあるコンサートは初めて。
わたしは以前、クラプトンのコンサートに3夜連続で行って、3日目にはヘトヘトに疲れてしまい(しかし、ステージ上のクラプトンも3日目はかなり疲れていて、調子がいいとは言えない演奏だった)金輪際、3日連続でコンサートに行くのはやめよう…と思ったものだった。
今回も、25日と26日だけで十分!と思っていたのだけれども、縁あってというか、24日の招待があり、今さら断ることもできない状況になって、結局、3日連続ということになった。
わたしは子供の頃、ロックバンドらしきものを友達と作って(その当時はバンド名をIMO BAND(芋バンド)にしようと言っていた)クラプトンと同じギターを手に入れては、コビーして弾いていた。
けれども、その時点でクリームはすでに解散していて、彼等の演奏に触れられるのはライブ盤と数少ない記録フィルムのみだった。
クリームを生で観れるのはきっとこれが最初で最後だと思う。
いや、最後にしてもらわなくては困る。クリーム再結成バンドでワールドツアーなどやられたら、この感動が薄れてしまうではないか。
わたしのNYの知り合いの中の数人は、そのクリームの最後の全米ツアーに行ったという人もいる。その話を聞くと、フランシスコ・ザビエルに会ったことがあるよ、と言われているくらい、果てしなく昔で、果てしなく稀な感じを受けたものだった。
わたしは、あの不規則で、うまいのやらヘタクソなのやらさっぱりわからないドラムを叩くジンジャー・ベーカーが今でもドラムを叩くだけの体力があるのだろうか…という心配を一番にしたのだけれども、何やら最近はポロなどして、やたらと元気がいいらしい。そうなると、気掛かりなのはジャック・ブルースであった。ジャック・ブルースが歌う「Wrapping Paper」のボーカルの色っぽさはたまらなかった。ライブで聴けたらと思うけれども、多分、メジャーな曲ではないのでやらないだろう。
久しぶりにライブクリームVol.2を聴くと子供の頃にワープしてしまう。
わたしは特にこのライブ盤の中の「Politician」が大好きで、この曲をくり返しくり返し聴いていたら朝になっていたこともあった。
最近、さんまのスーパーからくりTVの中の「熱中少年物語り」(だったかな?)にチャーを憧れとする大阪のギタ-少年が出て来て子供らしからぬギターを弾いている。その子が言った言葉にはっとした。
「夢はずっと願ってれば、いつか叶うんや。ずっとずっと思ってたら、叶うもんなんや」
多分、夢は叶わない人のほうが多いだろう。
多分、夢を途中で忘れなくてはならない人のほうがずっと多いだろう。
叶うまで夢を追いかけて、願い続けられる人のほうがずっと少ない。
わたしはきっと、子供の頃の「憧れ」に、大人になる過程と、大人になってからもまた、触れる機会が多い幸運な者の一人だと思う。
それには、自分一人の力ではできなかったことのほうが多い。
誰かの助けがあって、縁あって、叶ったことがほとんどと言える。
クラプトンに会い、F1のワールドチャンピオンの運転するクルマに乗ったり、マルボロマクラーレンのF1カーに乗ってピットクルーに押してもらったり、ジャッキ-・スチュワートに会い、わたしのヒーローだったニキ・ラクダに会い、シューマッハを追い越したり・・・と挙げればきりがない。
夢は叶うものもあれば、叶わないものもある。
叶わなかったものを数えるよりも、叶ったものを数えるほうが心理的には有効なのだと思う。
それにしても、“Clapton is God”と壁にスプレーで落書きしたのは、他でもない、クラプトン自身なのではないか、と思っているわたしはちょっと推理が過ぎているのか。
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