北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

2009.07.27
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『China Joy』
中国のネットユーザーは3億3,800万人(CNNIC:09年7月発表)。内64.2%がオンラインゲームを利用しているので、単純計算すると 中国のオンラインゲーム・ユーザーは、2億1,700万人 と言うことになります。

ChinaJoy観衆
ラッシュ時の通勤電車並みに大盛況のChina Joy会場


China Joyでは、中国の有料ユーザー数が1,100万人を越える超人気のオンラインゲーム『World of Warcraft(魔獣世界)』の元オペレーター"The 9(第九城市)"と新オペレーター"Netease(網易)"が隣り合った位置にブースを構え話題になりました。
『World of Warcraft(魔獣世界)』は、アメリカのBlizzard Entertainment社が開発し、美しい3Dグラフィックながら低スペックのパソコンでも楽しめるため、アメリカはもちろんのこと、ヨーロッパや韓国、そして中国で巨大な固定ユーザーを抱える超人気オンラインゲームに成長しました。
中国市場で『World of Warcraft(魔獣世界)』を大きく育ててきた"The 9(第九城市)"が、Blizzard Entertainment社からこの5月に突然中国でのオペレーション契約の打ち切りを告げられました。ポータルサイトを運営する"Netease(網易)"が、非常識なレヴニューシェア(収入の分配率)を提示して、中国でのオペレーション権を奪い取ったのです。"The 9(第九城市)"の『World of Warcraft(魔獣世界)』は6月で運営が中止されました。"Netease(網易)"はユーザーアカウントの移行作業に手間取っていて、7月末にようやくベータ版での運営を始める見通しとのこと。この1ヵ月半、ユーザーはゲームを楽しむことができない状況にああり、新オペレーター"Netease(網易)"への不満は爆発寸前でした。
そうした中、China Joyの会場で"Netease(網易)"は"新生"『World of Warcraft(魔獣世界)』を必死にアピールしていましたが、ユーザーの反応は冷めた感じのものでした。きっと固定ユーザーを大きく減らしての再スタートとならざるを得ないでしょう。いっぽう『World of Warcraft(魔獣世界)』というキラーコンテンツを奪われた、向かい側の"The 9(第九城市)"のブースは、FIFA公認サッカーゲームを中心にプロモーション展開していましたが、『World of Warcraft(魔獣世界)』が抜けた穴を挽回するのは不可能でしょう。

ChinaJoy2社争い
因縁のThe 9とNeteaseのブース


日本では、ファミコンやプレステなどのコンソール・タイプのゲームが"テレビゲーム"のマーケットを作り、PSP、DS、PS3、Wiiなどに受け継がれて、オンライン対応となっていきました。『ドラゴンクエスト9』は任天堂DSを持っていなければ遊べません。しかも、スクエア・エニックスが販売するソフトウェアの収入の一部が任天堂に入って、ハードウェア事業の損失を補填(利益を上積み)する、と言う 典型的な"囲い込み型"のビジネス・モデル でした。プレステ2で『ドラクエ8』を遊んでいた人が、『ドラゴンクエスト9』を遊ぶには、ハード(任天堂DS)とソフトで2万円以上の出費を余儀なくされるのです.....。

エンタテインメントの初期費用に2万円も3万円も出せるのは、世界的に見ればごく少数の富裕層でしかありません。
いっぽうパソコンとインターネット環境があれば楽しめるオンラインゲームは、初期費用はほぼ無料。パソコンを持たない人たちでも、韓国ならPCバン、中国ではネット・バーと呼ばれる"インターネット・カフェ"で、1時間100~200円程度で楽しめます。ゲームそのもののランニング・コストも、結構遊んで1ヶ月1,000円~2,000円くらいが標準です。新興国ではパソコンやインターネットの普及にあわせて、オンライン・ゲームの市場が発展してきたのです。中国でもPSPやWiiを楽しんでいる人たちがたくさんいますが、この人たちはあくまでも"富裕層"であって、 世界的にみれば、オンラインゲームのマーケットのほうが圧倒的に大きい のです。

そんな中、China Joyに出展していたゲームの中で、日本製はたった一つ(コーエーの『三国無双オンライン』)。しかも、中国のローカル・オペレーターへのライセンス供与と言うことで、日本ブランド(メーカー)としの出展は一社たりともありませんでした。
7年前北京で開催されたChina Joyでは、日本のゲームソフトの会社が何社か出展していました。ファイナルファンタジーなど、日本のゲーム・キャラのコスプレ姿の来場者もたくさん目にしました。ところが、ことしのChina Joyでは日本産ゲーム・キャラは姿を消しました。オペレーター・ブースのステージでのデモンストレーションは、中国産か韓国産のゲームキャラクターのコスプレ。かつてのぎこち無さも消えて、メイン・トレンドとして確立した感すらあります。
ゲームと言えば日本というのは、すっかり過去のお話 になってしまいました。

ChinaJoyキャラクターショウ
中国製ゲームの中国製キャラクターの中国人によるコスプレ・ショウ


コミック、アニメ、ゲームなどのコンテンツが、日本の基幹産業になる、などとおっしゃっている方がいますが、このままでは終わっちゃいますね、少なくともゲームは。コミックやアニメも同様の運命を歩むことになるかも知れません....。
例えば、宮崎駿のアニメは中国でもたいへんな人気がありますが、正式に映画館で上映されたことも無ければ、正規版のDVDが流通しているわけでもありません。その理由をシンプルに言ってしまえば、海賊版やまがい物が横行する中国では、版権ビジネスで収益を刈り取るのが困難だ、と思い込んでいるからです。この考えは間違っています。日本ほど厳格に版権を収益化できないかも知れませんが、中国なら中国なりの収益化ビジネスモデルは存在するのです。

かつて日本製品の輸出は、欧米など先進国向けに成功しました。そして、各国に一定比率で存在する"富裕層"向けに高品質の製品やサービスを提供することで成功をおさめてきました。中国マーケットに対しても、 「富裕層を狙え」みたいな合言葉が日本企業内で浸透 しているようです。
中国の富裕層は確かに増えています。でも1億人とか2億人でしょう。インドは?中東は?アフリカは?と考えていくと、マーケットとして巨大かつポテンシャルが高く、 真に魅力的なのは、 新興国の富裕層ではなく、ボストン・コンサルティング・グループが"ネクスト・ビリオン"を呼んでいた、 新興国における富裕層と貧困層の中間層向けマーケット なのだと思います。数年後には10億人規模の市場を形成するので"ネクスト・ビリオン"なのですが、 このボリューム・ゾーンを狙っていかなければ、経済大国としての日本のプレゼンスは無くなってしまう でしょう。

<『ドラクエ9』が日本で何百万本も売れたし、アメリカやヨーロッパでもそこそこ稼げるから、それで良しにしよう><コミックやアニメなど日本のポップカルチャーは、版権収入が確実に確保できる欧米のみに絞って輸出攻勢を強めていこう>などという考えのままでは、日本のアニメやゲームなど日本のポップカルチャーもいずれは衰退してプレゼンスを失っていくことになるでしょうし、ビジネスとしても風化してしまうでしょう。

ご存知の通り、日本のケータイは端末もコンテンツも世界的には苦戦を強いられています。
端末メーカーは、通信オペレーターが決めたスペックに基づいて端末を用意し、コンテンツ・プロバイダーもほぼ統一された端末機能に最適化されたコンテンツを用意して、通信オペレーターが"公式サイト"というお墨付きを与える。こうしたビジネスモデルは、総務省(郵政省)や経産省(通産省)の強力な行政指導と、新興国の中間層一人当たりの月収と同じくらいの通信費やコンテンツ代を支出可能な富裕層が居てこそ成り立つわけで、島国ニッポンの特殊モデルに過ぎないのです。そんなビジネスモデルに甘んじてきた日本の端末メーカーもコンテンツ・プロバイダーも、海外では競争力が無いのです。

日本型或いは先進国型或いは富裕層向けのビジネスモデルを見直すことこそ、沈み行く日本を立ち直らせるための唯一の処方箋 ではないでしょうか。
117億円もかけて"国立メディア芸術総合センター"を作ろうとする構想は、過去の遺物・産物を懐かしむ程度のものにしかなりません。日本の主幹産業として、アニメやゲームを育てていくと言うのであれば、ビジネスモデルの構造改革を側面から支援していくことこそ重要なのだと思います。それは貧困アニメーターを救い上げるなどと言う単純な話ではありません。単純労働の人件費など所詮新興国に敵うわけが無いのですから、指導系に切り替えていくとか。
繊細なものづくりの部分は日本人固有の価値として尊重し保持しつつも、海外の非富裕層向けのビジネスを早急に整えていかなければ、家電、半導体、IT製品などに続いて、日本の誇るアニメやゲームも衰退化していくようで心配です。

ChinaJoy女の子
おまけ(China Joyのキャンペーン・ガール)






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Last updated  2009.07.27 21:45:51
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