聖歌397(遠き国や)



聖歌397(遠き国や)
聖歌「とおきくにや」は、この大震災の夜に作られました。
作詞・作曲をしたJ.V.Martinは、大阪市立高等商業学校(現 市立大学)の英語講師として大阪に住んでいました。この日たまたま東京に来ていた彼は、被災者を見舞うために、芝白金の明治学院のグランドへ向かいました。夕闇せまるグランドには大勢の人たちが、肩を寄せ合うように集まっていました。数は十分ではなかったでしょうが、グランドで夜を過ごすために、蚊帳(かや)と、ろうそくが支給されました。

9月になったばかりで、まだまだ残暑が厳しい時期、しかも、まだあちらこちらで火がくすぶり、時折襲ってくる余震に怯えながら、愛する家族を、帰る家を失い途方にくれた人々からは、すすり泣く声しか聞こえてこなかったでしょう。
Martin自身、深い悲しみの思いを抱いて、瓦礫と化した街を通りながら、その絶望と悲しみに包まれたグランドに近づいて行きました。その彼の目に飛び込んできたのは、暗闇の中に浮かぶ十字架でした。

もちろん、それは本当の十字架ではなく、蚊帳の中で灯されたろうそくの光でした。でも、彼にはそれが絶望の闇に光り輝く十字架に見えたのです。Martinはその場でペンをとり、すぐにこの詩を書きしるし、大阪に戻って、曲をつけ完成させたのでした。

1.遠き国や 海の果て いずこに住む 民も見よ
  慰めもて 変わらざる 主の十字架は輝けリ
  慰めもて ながために 慰めもて 我がために
  揺れ動く地に立ちて なお十字架は輝けリ

2. 水はあふれ 火は燃えて 死は手ひろげ 待つ間にも
  慰めもて 変わらざる 主の十字架は輝けリ
  慰めもて ながために 慰めもて 我がために
  揺れ動く地に立ちて なお十字架は輝けリ

3. 仰ぎ見れば など恐れん 憂いあらず 罪も消ゆ
  慰めもて 変わらざる 主の十字架は輝けリ
  慰めもて ながために 慰めもて 我がために
  揺れ動く地に立ちて なお十字架は輝けリ 

関東大震災では、もう一つあまり公けになっていない悲しい歴史的事実があります。それは、この大地震が、当時 朝鮮から移住してきた人や社会主義者による綿密に練られたテロ行為というデマが発端でした。

この地震を契機に、「朝鮮の人が大暴動を起こす」というデマに躍らされて、政府も加担。軍・警察・自警団となった民間人などがあちらこちらで、朝鮮の人々を連行、そして惨殺するという恐ろしい事態に発展したのです。その犠牲者は6,000人とも10,000人とも言われています。
 心のオアシスより




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