BLUE ODYSSEY

BLUE ODYSSEY

特別編 『アリスの大豪邸』 ACT.30




そして「はいはいどうぞご自由に」と言いました。アリスはニセアリスの行動に少しあきらめが出ていました。

ニセアリス「だーーー!
これだからアタシは行動の遅い連中とは話が合わないんだよ!」

ニセアリスはすっとんでこの家の扉から出て行きました。

ニセアリス「はあーー!かせがにゃー!!!」

バタン!



ニセアリスがあわてて出て行った後、ウサギさんは落ち着いた感じで腕を組んでこう言いました。

ウサギ「とにかくあのお屋敷の中を見てみる事が先決です。
そうしないと話が先に進みませんから。
とにかく現地に行ってみましょう!どこからか中に入れるかも知れません。」

アリス「では急いで出発しなくては。今から出発しても現地に着くのはだいたい2時半ぐらいではありませんか?」

ウサギさんは柱時計を見ました。

ウサギ「そうですね。もう時間があまりありません。」

アリス「でも行ってみて、もし建物が気に入った場合はどうするのですか?」

ウサギ「それは現段階では考えていません。
私の考えでは建物自体に何か問題があるのはないかと思っています。あの価格は”何か問題があるから”つけられたように思います。
だから内部を見てそれで話が終わるんじゃないかと思っています。
そしてその結果をあの”あわててお金を稼ぎに行かれた方”に報告すれば、それでなっとくされると思います。」

アリスはウサギさんの考えになっとくしました。

ウサギ「ではまいりましょうか?
とにかく屋敷の窓からでも中をのぞいてみましょう!
あのお屋敷の1階には全て鎧戸があったようですが、あれだけ窓がある建物ですから、一つぐらいどこか閉め忘れているかもしれません。」

アリス「わかりました。私も行きます。」

するとタッキーが、

タッキー「では私が建物の内部を見に行ってきましょうか?」

ウサギ「え?」

アリス「は?!」

由美「そういえばタッキーさんは!」

ウサギ「壁をすり抜けられる!」

そうです。”ゴースト”であるタッキーなら、壁をすりぬける事が出来るのです。

ウサギ「そうか!どうして今まで気付かなかったんだろう!
ではもうしわけありませんが、ごそくろうねがって我々といっしょに汽車で行ってもらえますか?」

でもタッキーは……、

タッキー「私はキップを買いません。空を飛んで行けばいいだけですから。
キップ代がもったいないです。」

ウサギ「なるほど、そうですか。」

タッキー「では私は先に出発します。
そうしないと、銀行が開いている時間にどのみち間に合わないかもしれませんから。」

ウサギ「そうですね。一応銀行が閉まる前に結果を見た方がよいでしょう。銀行が閉まってしまえばそれで話は終了ですから。
じゃあ、よろしくお願いします。」

こうしてタッキーはウサギさんのお家の屋根をすり抜けて飛んで行きました。
アリスやウサギさんは天井を見上げてその姿を見送りました。

ウサギ「こうしちゃいられない。
我々もすぐに出発しますか!」

アリス「ええ!」

「(でも、もしあの建物に何の問題もなかったら、その時はどうするのかしら?)」とアリスは思いました。





ここで特別編 『アリスの大豪邸』 ACT.31


ミルキー「アリスタン、ついにミルキータンがかつやくする時が来たよ!」

ふいにミルキーがそんな事を言いました。

アリス「え?」

ミルキー「ミルキータンは”ちょうこうそくいどう”ができる”のりもの”に乗って行くよ。それですぐにむこうにつくから。」

そしてミルキーはその”のりもの”を指さしました。

モグモグ「ピピッ?」

”のりもの”は首を傾けました。

ミルキー「ミルキータンがたてもの中を見て来るよ。」

確かにモグモグの速さはじんじょうではありません。
でもそんな速さであの小高い山を越えた建物まで行くのは危険です。
モグモグの背中に乗ったミルキーが振り落とされるかもしれませんから。
だいたいむこうまで距離がありすぎるのです。いかに速いモグモグでもそうとうな時間モグモグの背中に乗っていなくてはなりません。

アリス「ミルキーさんは私といっしょに来てください!」

ミルキー「いえ、ミルキータンもみんなのおやくにたちたいです。
だからミルキータンはあの”のりもの”に乗っていくのです。」

アリス「ダメです。そんな長時間モグモグの背中に乗っている事は危険です。ミルキーさんは私といっしょに来てください!」

ミルキー「そんな!ミルキータンがせっかくかつやくできる時が来たのに!」

アリスは止めました。
そしてミルキーとモグモグは汽車で行くことになりました。



アリス、ミルキー、ウサギさん、由美、モグモグは現地に向かって出発する事にしました。
ミッチーは”黄金の家”の中にいるようですが、置いていく事にしました。
思慮深く、しかもよく常識を知っているミッチーのことですから、きっと反対されるに違いありません。こんな危ない物件を買おうかどうしようか検討していること自体注意されるかもしれませんから。





こうしてまた汽車であのお屋敷を見に行く事にしました、
でもけっこう遠いのです。
それでもみんなはあのお屋敷めざして出発しました。





そして4時間半ほどかかってやっと着きました。
今、草ぼうぼうの門の前にいます。

ウサギ「うわあ、やはりこれはすごいですね。」

この間、周りの草を刈ったとはいえ、それは門の所だけです。
塀はその大部分が草に埋もれていました。

ウサギ「植物が建物内にダメージを与えていなければいいのですが。」

ウサギさんとアリスは広い庭を隔てた奥の建物を見ました。
植物に覆われていてどこまでが建物だかわからなくなっていました。

アリス「ええ、そうですね。」

ウサギ「とにかく急ぎましょう!もう2時30分です。
建物内にはタッキーさんがいるはずですから。」

こうしてこの間切り開いた道を行きました。ウサギさんが先頭に立ちました。





ここで特別編 『アリスの大豪邸』 ACT.32


そしてやっと建物玄関までたどり着きました。

ウサギ「玄関に来るまでだいぶ時間がかかりました。」

とても広いです。サッカーグランドを横切った感じでした。
アリスは息が切れました。由美も両膝に手をついて「はあはあ」やっていました。
でもウサギさんは息を切らしてません。さすが”ウサギ”です。走る事に関しても”プロ”です。
ミルキーもモグモグの背中に乗っていたので大丈夫でした。
モグモグも息を切らしてません。モグモグは走る事に関しては以前「東洋の奇跡」と呼ばれていたぐらいですから(ウソ)。

アリス「タッキーさんはどこに?」

タッキーの姿が見当たりません。

ウサギ「きっとまだ建物の中でしょう!」

そう言ってウサギさんは背中にしょってきたリュックをそっと地面に降ろしました。
中にはいつも愛用しているノートパソコンが入っていました。
これはいつも仕事に使っている物です。ウサギさんは丁寧にリュックの中からノートパソコンを引き出しました。

ウサギ「あと10分ほどで3時になります。」

アリス「え?もう間に合わないのではありませんか?銀行にも行けませんし。」

ウサギ「とにかくタッキーさんの報告を待ちましょう!」

ウサギさんはその場でノートパソコンを広げました。その時、ウサギさんの携帯電話が鳴りました。

ウサギ「おっ、タッキーさんからの電話だ!」

しかしそれはなんとニセアリスからの電話でした。
ニセアリスがどこかの公衆電話からかけてきたらしいのです。

ニセアリス「おい!あの屋敷は押さえておけ!アタシが買うから!」

ウサギ「お金は用意できたのですか?」

ニセアリス「できてない。まったくの無一文になった。」

ウサギさんはずっこけました。

ウサギ「ではそちら様は今回買うのは無理ということで。」

ニセアリス「いいや!相手セールスマンにはアタシが”買う”と言ったんだ!
押さえておけ!」

ウサギ「でもお金が用意できてないのでそちら様は買うのは無理ということで。」

ニセアリス「いいから、セールスマンに連絡して押さえておけ!」

ウサギ「ええ、セールスマンにはお金が用意できなかったから購入は無理と伝えておきます。」






ニセアリス「 いいから押さえておけーーーーーー!!






ウサギさんは電話を切りました。


ガチャ!


ツーーーーー!ツーーーーー!ツーーーーーー!


ウサギ「はあ~~~~~!」

現在ウサギさんのノートパソコンで見る限り時刻は午前2時55分でした。

アリス「ああ、もう無理なんですね。」





ここで特別編 『アリスの大豪邸』 ACT.33


するとまた電話が鳴りました。
ウサギさんはさっそく電話を受けました。

プッ!

ウサギ「はい、もしもしい!!」

今度はタッキーが携帯でかけてきました。

ウサギ「はい!お待ちしていました!どうでしたか?
はい!はい!
え?なになに!
そうですか?!
はいはい!」

ウサギさんは肩と頭で携帯電話をはさみながら、パソコンを操作していました。

ウサギ「はい!はい!
なんとそうですか!
はい!」

ウサギさんはいつになくテンションが高いです。
それにテキパキとしゃべっています。
銀行が閉まるまでもう時間がないからでしょう。いえ、もう閉まったかもしれません。

ウサギ「わかりました!
ではそうします!」

そして…………、
電話は終了しました。

ピッ!

ウサギ「ふう、」

アリス「……………………。」

アリスはタッキーからの報告がどうなったのか気がかりでなりませんでした。

アリス「…………あの、ウサギさん?」

ウサギ「では帰りましょう!」

アリスやミルキーはその言葉を聞いて驚きました。

ミルキー「え?おうちは?このおうちはどうなったの?」

ウサギ「とにかく街まで行ってタッキーさんの報告を聞きましょう!」

アリス「え?街まで行って?」

タッキー「はい、そうです。
そこで落ちついてお話してくれるそうです。」

アリスはやはり何か建物に問題があったとさとりました。

ちょうどその時、タッキーが屋敷の中から出て来ました。
上空から現れたのです。

タッキー「私はもう少し屋敷の中を調べておきます。
みなさんはごくろうさまですが先に街まで歩いて行ってください。」

ミルキー「えーーーー!それよりお家の方はどうなったの?」

タッキー「街まで行って落ち着ける場所でゆっくりお話します。」

ウサギさんを見るとうんうんとうなづいていました。
それでアリスはタッキーの言う事に従うことにしました。
タッキーは壁をすり抜けて再び建物の中に入りました。

ウサギ「タッキーさんは空を飛んで来るので私たちより少し後に出発しても追い付きます。
さあ、それでは我々の方は出発しましょうか?」





ここで特別編 『アリスの大豪邸』 ACT.34


アリス「ではもう”ゆっくり行って”もいいのですか?」

ウサギ「たしかに”行き”は急ぎでしたが、”帰り”はゆっくりでかまいません。」

アリス「……………………。」

あれから時間が経ちましたのでもう3時は過ぎています。
アリスはなんだかがっくりしている自分に気が付きました。
目の前の大きな建物はその大部分が草にうもれていましたが、アリスは「お掃除すれば見違えるようになるかもしれない」と思っていました。そしてなんだか大きなお屋敷を買い逃したことに少々落胆している自分がいることがわかりました。
たしかに大きなお家には夢があります。中は広くて何にでも使えるでしょう。
大きなベッドルーム。広々としたキッチン。あるいはリビング。
そんなところで過ごすと心まで広々としてくるでしょう。





ミルキー「えーーーー、街まで行くの?
ミルキータン、もうつかれたよ!」

ミルキーがそんな事を言いました。

アリス「まあ、ミルキーさんはモグモグの背中にゆられていたのですからまだマシですよ。」

ミルキー「そんな!」

アリス「由美さんや私は”歩き”です。」

ウサギ「とにかく街まで行きましょう!
おいしいコーヒーショップがありますから。そこでみんなで何か飲みましょう!」

するとミルキーはとたんに喜びました。

ミルキー「あの”コーヒーせんもんてん”だよね?そこに行くんだよね?」

どうやらミルキーはそこのコーヒー専門店で一度飲んでみたかったらしいです。

ウサギ「そうです、コーヒーショップ『スタークルーザー』です!」





こうしてみんなは「裏手の道」を行きました。
ここを2キロほど行くと道沿いに大きな店舗が建ち並んだ場所に出るはずです。

アリス「ふうふう、かなり歩くのですね。」

由美「安いハズですね。はぁはぁ………。」

ミルキーはモグモグの背中に揺られていました。

ミルキー「うとうとうと……、」

アリス「ミルキーさん!モグモグの背中でいねむりしてはいけません!おっこちてしまいますよ!」

ミルキー「はう!」

ミルキーは目を覚ましました。





50分ほど歩くと先ほどの田舎とはまるで違う都会的な雰囲気の大型店舗が立ち並ぶ道沿いに出ました。

ミルキー「はわわわわわ!」

アリス「これは開けてますねえ!」

ウサギ「ホントに”都会”のようです!」

アリスたちはお店の建ち並ぶ道を歩きました。
途中で女の子が喜びそうな品揃えのブテックがあり、由美がガラスごしに店内を見ていました。

ミルキー「ゲームセンターがあるよ!ゲームセンターがあるよ!!
アリスタン、ちょっとのぞいて行こうよ!」





ここで特別編 『アリスの大豪邸』 ACT.35


アリス「ミルキーさん、ゲームセンターはまた今度にしましょう。」

ミルキー「”こんど”って、いつ来るの?」

そういえば、もうここに来る事はないかもしれないとアリスは思いました。
でも目の前に広がる都会的な街並みは魅力的でした。アリスたちが住んでいる場所から遠くなければちょくちょく来れたかもしれません。でも、ここはアリスたちが今住んでいる場所から少なくとも4時間半ぐらい時間がかかる距離にありました。


街並みには道にはみ出すようにいくつもの看板が出ていました。
そしてここは活気にあふれていました。多くの動物や人間たちがこの街を歩いていました。
自転車も急がしそうに通っていました。
道には数は少ないですがたまに”自動車”も通っていました。そこに乗っている人は楽そうでした。
アリスは自動車があれば、あのお屋敷にも楽に着けるのではないかと思いました。そして買い物にここまで来れるのではないかと思いました。
でもこの不思議の世界ではまだまだ自動車は多くあるものではありません。
自動車の価格はかなり高く、アリスにはとても買えるものではありませんでした。

アリス「……………………。」




やがて、オシャレなカフェを見つけました。

ウサギ「ではここに入りましょう!」

中はオシャレで広々としていました。そして日光が差し込み、店内はとても明るくなっていました。くつろげそうです。
ちょうど『ワンドリンク100ゴールドセール』がしていました。
みんなそこで思い思いの品を注文しました。
でもコーヒー専門店なのでウサギさんはニンジンジュースが頼めませんでした。

ウサギ「カフェオレ!」

アリスはミルキーの為にキャラメルをたらしたカフェオレを注文しました。そして自分も同じ物にしました。由美は少し大人の感じのする物を注文しました。エスプレッソです。

モグモグは……、

モグモグ 「ピィーー!ピィーー!」

モグモグはカウンターのおねえさんに向かって羽ばたきをして自分の注文を伝えようとしました。



バサッ!バサッ!バサッ!バサッ!バサッ!!



でも言葉が通じません。
ミルキーが言うにはモグモグはココアを飲みたがっているということでした。
それでアリスがモグモグに代わってココアを注文しました。

アリス「あら?タッキーさんの分は?」

ウサギ「あっ、それは来られてからでいいでしょう。
タッキーさんは”通”ですから。 ご自分で注文されると思います。」

ウサギさんはタッキーにお店に着いた事を連絡しました。
タッキーはそろそろみんなが街に着く頃だと思って自分もそれに合わせて街の上空に来ていました。それで数分もしない内にお店にタッキーが現れました。
タッキーはさっそく自分のコーヒーを注文しました。

タッキー「オリジナルブレンド!」

そして受け取ったカップにミルク多めでシュガーを少し入れました。
そのカップを大事そうに抱えてタッキーが席にやってきました。
みんなは丸いテーブル席を2つくっつけてそこで飲んでいました。
タッキーがその輪の中に入りました。





ここで特別編 『アリスの大豪邸』 ACT.36


アリスはあの建物の内部のことが聞きたくてうずうずしていました。

アリス「あの!タッキーさん!」

しかしタッキーは持って来たカップのコーヒーを眺め、そして一口つけました。
するととたんに顔がほころびました。

タッキー「あーーーー!うまい!なんてうまいんだ!『スタークルーザー』のコーヒーは実にうまいですね!」

ウサギ「そうですね。」

ウサギさんがゆったりとした感じで答えました。
ウサギさんたちの朝のコーヒータイムと同じ雰囲気です。
とにかくアリスは結果がどうなったのか早く知りたかったのですが、ウサギさんたちはゆったりとくつろいでいました。

アリス「あのお屋敷の中はどうでしたか?」

タッキー「それがですね。」

タッキーはまたカップを口に持って行きました。
そしてゆっくり飲みます。コーヒーを楽しんでいるようでした。

タッキー「まあ、まず大掃除は必要です。
そして中にはいろんな品が残されています。どれも”ガラクタ”ばかりですが。」

アリスはうんうんとうなづきました。

それだけ言ってタッキーはまたカップに口をつけました。
話し方は実にゆっくりです。

アリス「それ以外では?」

タッキー「雨もりは数カ所あります。」

アリス「まあ!」

タッキー「でも直せない事はないでしょう。あれだけ大きなお屋敷にしては少ない方ですね。」

アリス「そうですか!やはり大きなお屋敷でしたか?」

タッキー「かなり大きいですね。」

アリス「後はなにか?」

タッキー「とにかく1にも2にも”かたづけ”をしなくてはなりません。
かなりしんどいですよ。量がじんじょうではありませんから。
それに建物の周りには空き缶や空きビンが散乱しています。
それは馬車に積んで行かなくてはならないぐらい量があります。」

アリス「そうですか!」

でもアリスはもっと他の事が聞きたかったのです。
あのお屋敷はなぜ値段が安かったのか。どんな問題があるのか。

アリス「他には?屋根が崩れていたり、壁が崩れていたりはどうでしょうか?」

タッキー「外壁には少し崩れた跡があります。ヒビもいくつかあります。しかし大型の建物にしては少量です。」

アリス「では何がダメだったのですか?」

タッキー「そうですね……。」

タッキーは目を見開いてこう言いました。

タッキー「”地下水”の問題があると思います。」

アリス「”地下水”?」

タッキー「それに建物自体の”老朽化”です。
水道管はヤバイでしょうね。それに電気関係も。」

アリス「まあ!」

タッキーがそこまで話した時……、





ここで特別編 『アリスの大豪邸』 ACT.37


なんとそこへニセアリスが現れたのです。

ニセアリス「あれはアタシのモンだ!誰にもわたさない。」

すごいけんまくでした。欲にうもれるような目付きにもなっていました。(笑)

ウサギ「でもあなたは入金するお金がありませんでしたから。」

ウサギさんは落ちついて言いました。

ニセアリス「ええい!今からセールスマンに電話しろ!
金はかならず作ると言え!
これから日に10万ゴールド以上かぜぐ!それなら40日で400万ゴールドかせげる!」

またニセアリスがムチャを言い始めました。

アリス「ニセアリスさん、いったい何をしてお金を得るというのですか?」

ニセアリス「あの街の商店街のパチンコはアタシが一日で”11万ゴールド”かせいだので翌日はしめやがった。
だから今日は隣町まで行かなくてならなかった。
今後は街を渡り歩くぞ!そして400万ゴールドかせぐ。」

アリスは怒りました。

アリス「そんなお金のかせぎ方はいけません。」

ウサギ「げんに今日”無一文”になられたとお聞きしましたが?」

ニセアリス「フン!
チミたちには想像もできん金の使い方をしただけだ!
アタシはあの屋敷を買うぞ!セールスマンに連絡しろ!」

ウサギ「もう別のお客様が買われましたが。」

ニセアリス「なに?」

アリス「え?」

ミルキー「え?」

ウサギ「”ギャンブラーさま”は本日の3時までに入金できませんでしたから。」

ニセアリス「あれはアタシが先に買うと言ってたモンだ!」

ウサギ「でももう別の方が買われました。もう無理です」

ミルキー「そんな!
ねえねえ、アリスタン、買えなかったの?」

アリス「……………………。どうもそのようですね。」

ミルキー「うそだよ!
うええええええええん!うええええええええん!
じゃあ、ミルキータンのゲームセンターは?
お家にゲームセンターは?」

「お家にゲームセンターを作る」というのはどうかと思いましたが、アリスもあのお屋敷が買えなかったと聞き正直落胆しました。

アリス「……………………。」

由美も普段無表情ですが、この時もやはり無表情でした。そして何も言いませんでした。

由美「……………………。」

ニセアリスはお店を飛び出して行きました。





ここで特別編 『アリスの大豪邸』 ACT.38


アリス「……………………。」

ウサギ「では帰りましょうか?」

ウサギさんは明るくそう言いました。ニセアリスのことを全然気にしてない様子です。

ミルキー 「ウエエエエエエ~~~~~ン!!ウエエエエエエ~~~~~ン!!」

ミルキーの声が店内に響き渡りました。
なのでアリスは早々にお店を出なくてはなりませんでした。

アリス「……………………。」

アリスは最後にあのお屋敷を一目見て帰りたいと思いましたが、あまりに遠いので言い出せませんでした。みんながさらに疲れると思ったからです。

タッキー「ここから駅まではだいぶあります。
この街からも汽車が出ているのはいいのですが。」

ウサギ「わかりました。我々は歩いて駅に向かいます。」

タッキー「では私はこれで。先に帰って調べ物をしています。」

ウサギ「お願いします。では、ごくろうさまでした。」





こうしてタッキーと別れたアリスたちは駅に向かいました。

ミルキー 「ウエエエエエエ~~~~~ン!!ウエエエエエエ~~~~~ン!!」

ミルキーはモグモグの背中の上で泣いていました。
「行き」は感じませんでしたが「帰り」は非常に足取りが重いです。

アリス「(ああ、なんだか知らず知らずの内にあのお屋敷に住んでみたいと思ってたんだわ)」

モグモグ「ピピィ?」

そしてモグモグは何が起こったのかわかっていません。モグモグは元気でした。
由美は無言でいつものようにマイペースで歩いていました。
そしてウサギさんは足取りが軽かったのです。さすが”ウサギ”です。走ることも歩くことも苦にならないようです。

ウサギ「ルンルンルン~~~♪」

鼻歌まで出ていました。





駅に着くのに30分もかかりました。
気が付きますとミルキーはモグモグの背中で泣き疲れて寝ていました。

ミルキー「ぐうぐう…………。」

しかたなくアリスはミルキーの身体を抱き抱えたまま汽車に乗りました。
そして汽車に揺られ…………、
とてもとても気が重い帰路につきました。






そして4時間半ほどかかってやっとお家に着きました。
お家の中にニセアリスはいませんでした。
代わりにミッチーがみんなを出迎えてくれました。

ミッチー「お帰りなさい。お食事を用意しておきました。」

アリスはこれから食事を作るのは大変だと思っていただけに少し「助かった」と思いました。





ここで特別編 『アリスの大豪邸』 ACT.39


アリスがミルキーの身体を玄関先に置きますと、ミルキーはうつぶせになって倒れました。

アリス「ミルキーさん!」

ミルキー「ぐすぐすぐす!」

ミルキーはまだ泣いていました。そして起きてこようとしないのでアリスが再び抱き抱えて家の奥まで運びました。
ミッチーが用意してくれた食事はすでにテーブルの上に並べられていました。
それはごちそうばかりでした。

ウサギ「うわああ!これはどうもすみません!」

あまりの豪華さにウサギさんはきょうしゅくしました。まるでお祝いの席のような感じの料理の数々でした。実においしそうな料理が品数も豊富に並べられていました。

アリス「ミッチーさん、どうもすみません。」

アリスは深々と頭を下げてお礼を言いました。

ミッチー「さあ、みなさん、お疲れだったでしょう。食べてくださいな。」

ミルキー「……………………。」

でもミルキーは食事はいらないと言いました。
ミルキーが食事をいらないなどと言うのはよっぽどの事です。

アリス「ミルキーさん、身体の調子が悪いんですか?」

ミルキー「ううん。ミルキータン食べたくない。」

その時、





バタン!





大きな音がして扉が開きました。
ニセアリスが帰って来たのです。

ニセアリス「あーーーーー!もう!
飯!」

ニセアリスはいらいらしている様子でした。

ニセアリス「あーーーーーー!もう!」

ニセアリスはテーブルの上に並べられた実に豪華な食事を見つけました。
そしてすばやく席に座って勝手に一人で食べようとしました。

アリス「ニセアリスさん!それはミッチーさんが作ってくれたお料理ですよ!!」

それを聞いたニセアリスの動きは止まりました。

ニセアリス「うぐ!」

そして「食べていいんだろ?」と”アリス”に聞きました。
さずがにニセアリスはミッチーにはいちもく置いているようです。アリスの作った物ならすでに何も言わずにガツガツやっているところです。
ミッチーは「はい、いいですよ」と答えました。

ニセアリスが両手を合わせ「いただきます」と言いました。普段はけっしてこんな事はしません。
アリスは驚きました。

そして……、

ニセアリス「ガツ!ガツ!ガツ!ガツ!ガツ!ガツ!

うめえ!」

みんなを差し置いて一人で食べ始めました。

ミッチー「さあ、みなさんもどうぞ、お腹が空いたでしょう?」

アリスは席に座りました。

そしてウサギさんも。






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