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テロのリスク低下のためには、欧米が中東政策を変更するしかない。
最近の攻撃は「テロの逆流」と理解されるべきだろう。 欧米が中東やアフリカ、中央アジアで政府を転覆させ、自らの利害にかなう政権を樹立しようと綴り返してきた秘密または公然の軍事作戦 による意図せざる恐ろしい結果だ。
1979年以降、米中央情報局(CIA)は旧ソ連をアフガニスタンから追放するため多国籍のイスラム教スンニ派戦闘部隊「ムジャヒディン」(イスラム聖戦士)を組織した。この戦闘部隊とそのイデオロギーが、今でもISを含むスンニ派の過激派武装勢力の基盤になっている。
最近では、欧米はリビアのカダフィ政権を打倒し、エジプトでは選挙で選ばれたムスリム同胞団の政府を追放した。シリアでアサド大統領が11年に抗議デモを暴力で抑圧すると、米国、サウジアラビア、トルコ、その他の中東の同盟国が武装勢力による反乱を扇動し、大混乱に陥った。
こうした作戦は正当な政権を樹立するどころか、基本的な安定を作り出すことさえ、しばしば悲惨なほどに練り返し失敗してきた。混乱や流血の事態、内戦をあおってきたのだ。こうした混乱によって、ISがシリアやイラクの一部の領土を確保することが可能になった。
ISをはじめ暴力的な聖戦主義者を打ち破るには、3つのステップが必要だ。 まず、オバマ米大統額はCIAの秘密作戦を打ち切るべきだ。 CIAに起因する混乱に終止符を打つことが、テロを増幅している今の不安定、暴力、欧米に対する憎悪に歯止めをかけるために有効だろう。
第二に、米国、ロシアその他の国連安全保障理事会の常任理事国は直ちに内輪もめをやめ、シリア和平の枠組みを確立すべきだ。 反アサド勢力による闘争の即刻中止と停戦、米国ではなく国連が主導するシリアの政権移行と暴力によらない政治の再建が必要だ。
最後に、中東の不安定さを長期的に解決する方法は、持続可能な開発にある。 中東全体が戦争だけでなく、悪化する淡水不足、砂漠化、若者の高い失業率、劣悪な教育システムなど、深刻化する開発の失敗に苦しんでいる。
もっと戦争をしても、特にCIAが支援する欧米主導の戦争では、何の解決にもならない。中東と世界のより安定した将来のカギを握るのは、教育、医療、再生可能エネルギー、農業、インフラに対する内外の投資の拡大だ。
<解説> 融和説く努力を
サックス教授は 米国が過去30年以上、世界の脅威となる種をまいてきた責任がある と論じる。冷戦中の中央アジアから近年のアラブ圏まで、長期の視点を欠く情報工作がテロの温床になった面は否めない。ISはイスラムと欧米との対立をSNS(交流サイト)であおり、多くの若者を引き込む。それに比べ融和を説く中東・欧米政府の努力は不十分だ。教育、雇用支援と並行し、揺らぐ中東を見捨てない意思や共存尊重の価値観を多様な媒体で積極発信することが今の時代には重要だ。
(編集委員 中西俊裕)
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