小説のプロローグ&photo

ボヘミアンズ・ノート

プロローグ

「人生は旅」という。
 誕生が出発で、死が終着か。
だとしたらその終着点は、少なくとも自分にとっては最高のものでなければならない。
思い残すことは何一つなく、あるのはただ溢れ出る感謝と、それを包みこむ静寂―。
死ぬときはこうありたいものだ。
 だが、僕にとっての旅には常に終着点がない。
いわゆる「放浪」タイプの旅を好む。
いうまでもなく、放浪はそれ自体が旅の目的であり、最終目的地をもたない。


normad
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「人生は放浪」
 僕についていえば、この表現の方が適しているようだ。
だが、こちらの方が常に終着点にいるようなものだから、一瞬たりとも気を抜けない。
なぜなら「今・この瞬間」が臨終の瞬間と同じ価値を持つからだ。
「自分はどこから来てどこへ行くのか」
 そんなことは宗教家に任せておけばいい。
何よりも、今ここに自分自身がいることが現実なのだから。
空想よりも現実―
この小説は、僕が人生という放浪の中で書き留めたノートである。


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