ここは民宿炎、つまり葉たちの家。
「ほらっ!さっき『え~っ!?』って言ったやつ、電気イス10時間よ!!」
炎の亭主的存在美人若女将アンナ。今日もまた、この家の日課ともいえる『地獄の特訓』を行っていた。
「ったく、こんなことやってられるかよ・・・!」

ギン!

ホロホロが少し愚痴をこぼしたその瞬間、アンナの険しい眼差しがホロホロを捕らえた。
「ホロホロ、あんた電気イス5時間追加。」
「何ホロ~~~!!!!!!!!!」
ホロホロはショックのあまり大絶叫した。半日以上電気イスのままなんて、絶対ありえない。
「お兄ちゃーん?がんばってね~!!」
ホロホロをひやかすように応援する妹ピリカ。ホロホロは何か言いたそうな顔をしたが、また何か変な事を言ったら今度は1日中電気イスになりかねないため、諦めたようだった。
「あはは!」
ピリカはそんな兄を見て笑わずにはいられなかった。

やがて、ピリカの笑いは収まった。
「それじゃアンナさん、お兄ちゃんを宜しくお願いします♪」
そう言うとピリカは、炎の中へ消えてった。
アンナは少し微笑み、腕組をしながらピリカを見送っていた。
ピリカは居間に向っていた。しかしその居間には先客がいた。
「あれ?蓮さん?」
ピリカが居間に着いたとき、その先客の存在に気付いた。
「ん!?おう、ピリカか。」
居間には蓮が先に居て、卓袱台の近くにどっしりと座っていた。
「蓮さんはお兄ちゃんや葉さんたちと一緒に修行しないんですか?」
ピリカは蓮に何気なく問いかけた。
「俺はあんな馬鹿共と一緒に修行する気はない。」
蓮はピリカの問いかけにキッパリと答えた。
「あははー・・・。」
ピリカは苦笑いした。確かに兄、ホロホロは満身創痍のバカだが、ピリカにとってはとても優しく、頼りになる兄だ。
そんな兄をピリカは人一倍強く思っていたため、そこまでキッパリ言われてしまうとかなり落ち込むだろう。
『少し、言い過ぎたか・・・。』
察しのいい蓮は、ピリカが自分の一言で落ち込んでしまったというのにすぐ気付いた。
「ピリカ。」
蓮が口を開いた。
「あ、はい。何ですか?」
ピリカはきょとんとした表情で返事を返した。
「よかったら、俺の修行を見てくれないか?」
「えっ?//////」
ピリカは少し赤面した。蓮の目がいつになく優しい眼差しだったのもあるが、その他にも理由がありそうだ。
「いやならいいが・・・。」
「いえっ!ぜひ!!!!」
蓮の言葉にピリカははっとなって速答した。
「そうか、すまんな・・・。」
蓮は笑顔で答えた。その笑顔は、誰も見たことのないような優しい笑顔だった。
そして、蓮は畳から立ち上がった。
「それじゃ、庭に出よう。」
2人は庭に向って歩き出した。

そのころ、2人が一緒に自分たちの方へ近づいてきていることをまだ知らない地獄の特訓メンバーは―――

「ねぇアンナさん・・・。」
電気イス真っ最中のまん太がアンナに問いかけた。
「何よまん太、今忙しいんだから手短に話してちょうだい。」
アンナは腕組みしながら自分より遙かに小さいまん太を見下ろした。
『どこが忙しいんだ!!』と、まん太は心の中でツッコミを入れていた。
「何でアンナさんは蓮に電気イスをやらせないのかなーって・・・。」
まん太の言うとおりだった。本来のアンナなら、いくらあのわがままな蓮でもすぐに手なずけ、地獄の特訓に参加させてしまう。
しかし、ピリカが居間に向うまでは、蓮だけはずっとそこでくつろいでいた。
そしてまん太は何かあると気付き、ホロホロと一緒に電気イス15時間を覚悟して、アンナに質問したのだ。
「バカね、その内解るわよ。」
アンナは不気味な笑みを浮かべながらまん太に答えを返した。
「・・・けっ!どうせ蓮と夜な夜なアブナイことしてんだろ!!」

「女将パンチぃ!!!!!!!!」

「げごほっ・・・!!」
まだ理性のはたらく少年少女に対しての禁句をアンナに放ったホロホロ。その言葉にアンナはキレ、ホロホロに女将パンチを喰らわせ見事に瞬殺した。哀れホロホロ・・・
「ホロホロ、あんた今日1日中 ずーっと 電気イスね。」
ホロホロはすでに気絶、いやひん死の状態だったので、アンナの言葉は耳に入らず反応しなかったが(反応できなかったが)、その他の葉やまん太、竜はビクビク怯えていた。
「あっ、アンナさん。お兄ちゃんがお世話になってます♪」
ちょうどそのとき、ピリカが蓮と一緒に庭へ出てきた。
「この状態からして、ホロホロはパンチを喰らって即死したってところか・・・。」
蓮はそのホロホロの哀れな姿を見て、ホロホロが倒されていくところを想像した。
「よぅよぅ、蓮にピリカちゃんのお2人さん。仲良く並んで来ちゃって、これからデートかい?」
竜が蓮とピリカが一緒に来た事をいいことに、2人をひやかした。
そのあと指を口に銜え、ピューピュー鳴らした。

むくっ

変な擬音と共に、頭から血をだらだらと垂らしたホロホロが起き上がった。
その様は、1度死んだ人間がまた魂を与えられ、生き返ったようにも見える。
「オイ蓮、ピリカとデートなんてオレが許さねぇぞ・・・。」
ホロホロは蓮とピリカのデート(仮)を阻止するために起き上がったのだ。死に際で。
ホロホロがシスコンなのは今わかったことじゃないが、ここまでシスコンだったとは・・・
妹を想う気持ちがここまで強いのだ。これはピリカへの優しさなのか、独占欲なのか、この答えはホロホロにしかわからないだろう。
「お兄ちゃん!蓮さんに失礼でしょっ!!?」
ピリカは怒った。自分とデートするんじゃないのに、勝手にホロホロが勘違いをして。蓮にケンカを売っているのと同じようなことだ。
「ピリカ、いい。」
蓮はピリカの肩を後ろから優しくたたいて、ピリカを止めた。何の目的で止めたかは、アンナを除いて誰にもわからなかった。
「蓮・・さん・・・?」
ピリカは何がなんだかわからなくなった。
そして、蓮がピリカの前へ出た。
「そうか、それなら力ずくでもピリカとデートさせてもらおうか。」
「「!!!?」」
ピリカはもちろん、葉、まん太、竜も驚いていた。・・・馬孫も阿弥陀丸も蜥蜴朗も・・・
蓮がこんな言葉を言えるほど素直なやつではないことをみんな知っていた。
『霊でも取り付いてるんじゃ・・・?』という顔を全員していたが、ピリカだけは、顔を真っ赤に染めていた。
「てめー、やっぱりピリカのこと狙ってやがったか。」
ホロホロは立ち上がって、来ていた修行服の中からイクパスイを取り出し、オーバーソウルをして身構えた。
「俺と戦うつもりなら止めたほうがいい。貴様はこれ以上攻撃を喰らったら死ぬからな。」
蓮も馬孫刀を取り出し、同じようにオーバーソウルをして、馬孫刀をホロホロに向けた。
「へっ、そんなこと言っときながらお前もやる気まんまんじゃねぇか。」
ホロホロは笑って言った。
「貴様が止めない限り、俺もオーバーソウルを解かない。」
蓮は真剣な眼差しで答えた。
「そうか・・・。」
ホロホロは俯いて呟いた。
「そんじゃ先手必勝だ!!!!!!」
ホロホロがイキナリ蓮に向って飛び掛かかった。だが・・・

「ヤメテ!!!!!」

ホロホロが飛び掛る直前、蓮の前にピリカが飛び出してきた。ホロホロは止まりざるを得なかった。
「ピリカ!!早く退け!!!」
ホロホロが大声で怒鳴った。『邪魔だっ!』と言わんばかりの顔である。
「イヤっ!!絶対退かない!!!」
ピリカも負ないくらいの大声で怒鳴った。その目には、涙が湧いてきていた。
「私の大事なお兄ちゃんと、私の大好きな蓮さんが私のせいでケンカするなんて絶対イヤっ!!!」
ピリカは顔をぐしゃぐしゃにするほどの大泣きをしながら必死に訴えた。
「ピリカ・・・。」
ホロホロはそんな妹を見て、困らずにはいられなかった。
どうしたらいいのか、今考えているようだ。

「解った。」

そして長考の末、ホロホロの頭が出した答え。
「蓮、ピリカとのデートは許してやる。だがそれ以上のことをしたら今度は絶対許さねぇ・・・。」
ホロホロは蓮を睨みつけながらそう言うと、炎の中へ消えていった。

ホロホロが居なくなった後、炎の庭は長い沈黙になった。

そしてその沈黙を最初に破ったのは、意外にもアンナだった。
「ほらっ!何ホゲーッとしてんのよ!!サボった罰として、ホロホロ以外の全員電気イス18時間!!!」
「えぇ~~っ!!!!?」
アンナの言葉に、地獄の特訓メンバーは大ブーイングをした。

「文句ある?」

アンナはその一言で、メンバー全員を凍りつかせた。
そして地獄の特訓メンバーは、しぶしぶ電気イスを始めた。
「あんたたちは・・・。」
アンナはそう言いながら蓮とピリカに近づいてきた。
「2人で 一緒に 修行してなさい。」
蓮とピリカは顔を見合わせた。
最初は何がなんだか解らない、というような顔つきだったが、次第に笑顔になっていった。
そしてピリカはアンナの方を見た。
「はいっ!!」
ピリカは満面の笑顔でアンナに答えた。

蓮とピリカはそのままアンナたちから離れていった。
そのとき、蓮とピリカが手を繋いでいたことには、アンナにしか解らなかった。


~END~


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あとがき

初★蓮ピリ小説!!!
ホロ受・攻以外の小説もコレが初めてでした!
だからすっごく力を入れた(つもり)んですが、なんだこの終わり!
蓮とピリカが手を繋ぐところをもっと詳しく書けばよかったですね・・・
それにこの小説に、アンナさんが重要人物になっている気が・・・
まぁこの話は疲れるのでこの辺で。
ここまで読んでくれた方、本当にありがとうございました♪



4/21 水山遥@管理人



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