みんなのトレ場

三毛猫のひみつ


猫の毛色はいろいろありますね。真っ黒、真っ白、キジトラ、サバトラ、茶トラ、ぶち、サビ、三毛…他にもたくさんあります。
 これらの毛色は、たくさんの遺伝情報を集めて決められています。このうち、サビと呼ばれる黒と茶色が混ざった毛色と、三毛と呼ばれる白地に黒と茶色のぶちの毛色は、メス猫にしか出ない毛色である事をご存知ですか? そんな三毛猫のひみつを、今回はできるだけわかりやすく説明していきます。

遺伝ってなあに?
 まずは私達の血液型を思い出してみてください。
 A・B・Oの3種類から出来ていますが、優性遺伝という現象でAOなら「A型」、BOなら「B型」になります。

 これは、OよりもAとBのほうがでしゃばり(優勢)だからですね。ですからでしゃばりのいないOOの時だけ「O型」になって、どちらもでしゃばりの時は「AB型」となります。

毛色の遺伝基本
 毛色はいろいろな「どっち?」を組み合わせています。
 いくつか例をあげてみると、 以下のようになります。
真っ白-色つき
白ぶちを入れるか-入れないか
しましまにするか-しないか
黒-茶色
 他にも様々な「どっち?」がありますが、とにかくこの「どっち?」には引き分けがありません。

 両方とも出て来る事はできないので、どちらか一方だけが残る事になります。でしゃばりな方とそうでない方がありますので、例にあげたうちの上から3つまでは一つずつだったら前者がでしゃばる事になります。

 今度は、上の例を組み合わせてみましょう。

色つき+白ぶちを入れない+しましまにしない+黒= 真っ黒
色つき+白ぶちを入れない+しましまにする+茶色= 茶トラ
色つき+白ぶちを入れる+しましまにする+黒= サバトラ白
色つき+白ぶちを入れる+しましまにしない+黒= 黒ぶち
となります。

 この他にも一本の毛の途中から色が違うか全部同じ色か、とか、茶色の濃さがどのくらいとか、白ぶちの割合がどのくらいとか、情報は実に様々なのですが、あまりいろいろなことを言うと頭の中が先に「真っ白」になってしまうので、このくらいにしておきましょう。

遺伝子がどのように毛色を決めるか?
 ところが例にあげた4つ目の「黒か茶色か?」はどちらもでしゃばりなのです。
 ここで染色体の登場です。猫に限らず犬でも人でも、オスはXY遺伝子、メスならXX遺伝子です。そしてY遺伝子はX遺伝子よりも短くできています。


 教科書やテレビなどで、一度はご覧になった事があると思います。染色体は2本の紐のような物が縒り合わさって出来ており、これはお父さんとお母さんから1本ずつもらってきた紐です。お母さんは二つともX遺伝子ですから、お父さんからY遺伝子をもらったら息子さん、X遺伝子をもらったら娘さんという事になります。

 そして、遺伝子の上にはたくさんの椅子が並んでおり、毛色はもちろん全ての情報は、座っても良い席が決められています。全席指定なのです。


 X遺伝子にもY遺伝子にも一つずつ席が用意されていて、「どっち?」は縒り合わされた紐の上で、向かい合って座ることになります。
 そしてでしゃばりな方が立ち上がって採用され、個性となって表れるのです。これを表現型といいます。

遺伝子がどのように毛色を決めるか?
 ところが、「黒か茶色か?」が座る席は、短いY遺伝子にはありません。X遺伝子だけが持っている長さの部分に指定席があるのです。


 このため、XY遺伝子のオスには初めから黒か茶色のどちらかしか座っていないので、どちらかの色しか出てこないのです。

 一方メスはXXですから席は二つあります。血液型と同様、黒と黒なら黒になりますし、茶色どうしならもちろん茶色です。しかし、黒と茶色が一つずつ座ってしまったら…。


 ここから先は陣取り合戦です。勝ったほうの色がぶちとなって表れます。そして、例にあげた二つ目の白ぶちを入れるか入れないかで三毛になるかサビになるかが決まります。さらに黒や茶色の部分がトラになっている子は、その部分に例にあげた3つ目のしましまにするがでしゃばっているという事になります。

 「白ぶちを入れる」という情報は体全体のことですが、黒にするか茶色にするかは方々で陣取り合戦が行われるため、体のあちこちで勝敗が分かれることであっちは黒、こっちは茶色となります。しかし、「しましまにする」は一番初めにどちらかの色の味方につくため、その色が勝ったほうのぶちは全てしましまになるのです。
 そんなわけで、サビ猫と三毛猫は女性なのです。


 オスの三毛猫は稀です
 ところで、ごくごく稀にオスの三毛猫がいます。これは遺伝子を一つ多くもらってしまってXXYになってしまった結果で、「クラインフェルター症候群」といいます。


 この猫本体の健康には何の問題もありませんが、残念ながら繁殖能力がないため子孫を残す事は出来ません。完全な突然変異の遺伝子の奇形なのです。


 人間は男性の500人に1人がこの遺伝子3つさんなのだそうですが、猫は3万匹に1匹しかいないそうです。


まとめ
 このように猫の毛色は、自然の気まぐれがたくさん組み合わさってできた素敵な偶然なのです。


 もちろん他の毛色も同じように素敵な偶然なのですが、中でも生き残るのが難しく数が減ってしまった真っ白と、全員が控えめでないと登場しない真っ黒は数が少ないようで、幸せを呼ぶ猫の毛色として三毛猫同様「招き猫」の色として使われています。


 三毛猫は滅多にない色ではありませんが多くある毛色でもありません。ましてやオスならとても珍しい毛色です。医学的に解明される以前から三毛猫の特にオスは貴重な毛色として扱われ、幸せを運んでくるとか事故を防ぐといわれて大切にされてきました。


 みなさんも三毛猫を見たら確認しなくてもレディーとして接してくださいね。そして、失礼のないように、こっそり確認してみてください。

三毛猫の遺伝学
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