「オリエントの神々」序章14・ギルガメシュ叙事詩の洪水伝説 ギルガメシュ叙事詩は、アッシリア語版だけでなく、それより成立の古い古バビロニア語版、シュメール語版、またヒッタイト語版、フリ語版などの断片が他のところから続々発見されていきます。其れ等の資料によって、アッシリア語版の欠落部分が補完されると共に、時代による内容の変遷などが明らかになり、叙事詩研究が更に進みます。それは創世記のノアの箱舟が、ギルガメシュ叙事詩を継承していること。創世記を編纂したユダヤ人が、ギルガメシュ叙事詩を知り得たのは、かの「バビロン捕囚」の可能性が大であること。それはイスラエルびとが、開放されるまでの六十年間を新バビロニアに抑留され、そこで過ごした間に、彼らがギルガメシュ叙事詩「古バビロニア版」あるいは「ニネヴェ版」に接した可能性です。事実そのイスラエルびとは、新バビロニア滅亡とともに開放され、祖国に帰還した後に旧約聖書とユダヤ教を確立しています。ギルガメシュ叙事詩は創世記より古いことは確かなようです。ギルガメシュ叙事詩は、今から僅か百年前まで通説であった地球最古の洪水伝説、ノアの箱舟伝説を覆します。 シュメール文学のギルガメッシュ叙事詩(Epic of Gilgamesh)では、エンキドの死により自分もいつかは死ぬと悟ったギルガメッシュが、永遠の命を求め更に冒険を繰り替えしますが、その最後に出てくるのが大洪水の話になります。そのギルガメシュ叙事詩おける記述では、「ウバルトゥトゥの子、シュルッパクの人よ。家を壊し、舟を造れ。持物を諦め、おまえの命を求めよ。品物のことを忘れ、おまえの生命(いのち)を救え。すべての生きものの種を舟に運びこめ。おまえがつくるべき舟は、その寸法を決められたとおりにせねばならぬ。その幅と長さとを等しくせねばならぬ。ウトナピシュティムがつくった舟は七階だてで、各階には九室あった。七日目に舟は完成した。洪水が起こると、彼は全財産、つまり銀や金、生きもの、家族、身よりの者、職人たちをすべて舟に乗せた。すると、六日と七夜、風と洪水がおしよせ、嵐が国土を吹きまくった。七日目になると、洪水をもたらした嵐は戦いに負けた。それは軍隊の攻撃のような戦いだった。海はしずまり、嵐はおさまり、大洪水はひいた。空模様を見ると、まったく静かだった。そしてすべての人間は粘土に変わっていた。見わたすかぎり屋根のように平らになっていた。天窓をあけると、光がわたしの顔にさした。わたしはうなだれ、坐って泣いた。涙がわたしの顔をつたって流れた。わたしは広々とした海を見回して岸を探した。十二の場所に陸地があらわれた。船はニシル山についた。山は船をとらえて動かさなかった。このようにして船は六日間ニシル山にとまっていた。七日目に、ウトナピシュティムはまず鳩をはなした。鳩は休み場所が見あたらずにもどってきた。つぎは燕をはなしたが同じ結果になった。そのつぎには大烏をはなしたところ、水がひいていたので餌をあさりまわって帰ってこなかった。そこで彼は山頂に神酒をそそぎ、神々に犠牲を捧げた。」となります。