「霊魂論」エチカ詳解22 前成説の生物の形態が卵子や精子にあるとの古典的・宗教的な思考論は衰微しても、子の形態は見えない、生殖細胞に子供の構造そのものが観察できないとは云え、因子として何らかの成長構造のようなものがあり、それが発生に影響を与えるとすれば、ある意味で多細胞生物は前成説的であるとは言える筈です。その場合、直接に子の体の元になる卵細胞の因子が問題になります。19世紀には物理化学分野での進歩から、哲学のみならず生物科学にも機械論的傾向の風潮が強まります。其の機械論が生物発生学に反映した形が、新たな前成説論争の基を築きます。ここにフリードリヒ・レオポルト・アウグスト・ヴァイスマン(Friedrich Leopold August Weismann/1834年-1914年)ドイツの動物学者。オーギュスト・ワイスマンなどとも表記されています。フライブルク大学動物学研究所所長の職位を得、専門は生物の発生学・遺伝学を専門とします。エルンスト・マイアは彼をチャールズ・ダーウィンに次いで19世紀で2番目に重要な進化理論家であり、同時に自然選択を実験的に検証しようとした最初の一人であり、熱烈なナチュラリストでもあったアウグスト・ヴァイスマンはデテルミナントという粒子によって遺伝と発生を論じます。此の論は彼の言う「粒子」が発生の段階で分割されて行くことで最終的に各部分の分化が決定するというものであり、一種の前成説であるとも云えます。これを実証的に検証するために、ヴィルヘルム・ルーはカエルの二細胞期に一方の細胞を熱した針で焼き殺すことを数多く行い、そのまま育てたところ片側半身だけの胚を得ました。結果はヴァイスマンの説を裏付けるものとして受け入れられます。そのため、これをヴァイスマン・ルーの前成説と呼称されることにもなります。