内的霊的衝動の写しとしての美術史 第1講 ドルナハ 1916年10月8日-LXVII 第67 ジオット派フラ・アンジェリコ-マリアの戴冠(Coronation of the Virgin) 記:例えれば、中世ヨーロッパ列強の女王戴冠式と見紛うばかりの豪壮華麗さ、聖母マリアは、ここ此の様に天の女王として迎えられたのです。真夜中に天の軍勢を従えて来臨したキリストの腕に抱かれて、聖母の魂は天に昇りました。そして三日後、復活したマリアは魂に肉体をともなって昇天します。そして、聖母の物語もクライマックスを迎え、彼女は天で戴冠するのです。天の讃歌が彼女を迎えます。天使や聖人たちが群れをなし、旧約の中の族長たちがこぞって祝福するなか、キリストが聖母を傍らの玉座に招き、彼女に冠を授けるのです。キリストの前にひざまづいたマリアは、天の女王にふさわしい豪華な衣をまとい、「来たれ、わが選ばれし御方よ。われ汝をわが玉座につかせん」というキリストの言葉そのままを静かに受け入れるのです。 フラ・アンジェリコは、生涯に少なくとも三回、この聖母戴冠をテーマに描いていますが、この作品は最も晩年のものです。ドミニコ会士であった彼の作品は、宗教主題に限られていました。師であるロレンツォ・モナコのゴシック的な優美さがフラ・アンジェリコの大きな特徴ですが、それに加えて人体や空間の三次元的描写、鮮明な色彩によって、ゴシックから一歩踏み出した彼独自の情感に満ちた画風を築き上げたのです。そして、その甘美な作風と高潔な人柄から「天使のような僧」と呼ばれ、キリストの磔刑(たっけい)図を描きながら涙を流したほどに信仰の篤い人物だったと伝えられています。そんなフラ・アンジェリコの描く戴冠図は、華麗な色づかいでまとめられながら、あくまでも夢見るように美しく、そして穏和でやさしい心地良さに輝いているのです。「聖母戴冠」は、聖母マリアが地上での生涯を終えた後、天国で天の女王として冠を授かる様子を描いたものです。この作品の主題は、聖母マリアが霊魂も肉体もともに天に昇(あげ)られた後に、父なる神、もしくは神のひとり子イエスから戴冠を受けるというものです。
第67: ジオット派フラ・アンジェリコ-マリアの戴冠(Coronation of the Virgin) 1432ウフィツィ美術館
参照図: フラ・アンジェリコCoronation of the Virgin-1434–1435年ごろ ルーヴルの聖母戴冠は、本来、1434年ごろのウフィツィ美術館にある「聖母戴冠」の数年後に描かれたとは考えられていない。ジョン・ポープ・ヘネシーなどの一部の美術史家は、代わりにドメニコ・ヴェネツィアーノの「サンタ・ルチア・デ・マニョーリ祭壇画」(1445年ごろ、ウフィツィ美術館)、またはヴァチカン宮殿でフラ・アンジェリコが描いたニコラウス5世礼拝堂フレスコ画 (1446-1448年)との類似点のために、フラ・アンジェリコがローマを訪れた1450年の制作としている。1395年出生-1455年2月18日 死亡。