全5件 (5件中 1-5件目)
1
日本では昨年2月よりFOXチャンネルで放映開始された米TVミュージカル・コメディ『glee/グリー 踊る♪合唱部!?』をご存知ですか? 全米では2009年の放映開始以来、TVドラマ部門の視聴率1位を独占。オールジャンルテレビ番組でも同時間帯の最高視聴者数1350万人を記録し、ゴールデングローブ賞やエミー賞を多数受賞。オバマ大統領一家もファンでホワイトハウスでパフォーマンスを披露し、「TIME誌」の表紙を飾り、“gleeks”という熱狂的ファンも出現。ファースト・シーズンの第15話ではマドンナが全面的に楽曲提供した「パワー・オブ・マドンナ」を放送。大物セレブ達が大挙して出演を熱望し、これまでにブリトニー・スピアーズ、スーザン・ボイル、グウィネス・パルトロウなどが出演。すでにサード・シーズンの製作も決まり、全米で社会現象となっている大型番組なのです。 パイロット版の評判いかんでお蔵入りもあり得るほどシビアな米TV業界にあって、これだけ受け入れられている番組が、日本人にも面白くないはずがありません。今回は、若者や女性に留まらず、ディスコ世代や洋楽世代、70年代映画ファンも楽しめる『glee』の魅力をご紹介します。 舞台はオハイオの田舎町にあるマッキンリー高校。スペイン語教師のウィル(マシュー・キリソン)は、かつてはグリー部の花形ボーカルで全国大会優勝経験もある人物。今では廃部寸前となっている母校のグリー部に輝きを取り戻そうと立ち上がります。現在のグリー部員は、ゲイや障害者、苛められっ子など学校でバカにされているマイノリティばかり。ウィルは、アメフト部のクォーターバックであるフィン(コーリー・モンテース)の才能を見出し、入部させることに成功。個性的な面々がそれぞれの夢を追い求め、歌と踊りに勝負をかける! グリー部の“グリー”とは「歓喜」「愉快」の意で、合唱部のこと。でも、アメリカでは“ショウクワイア”という合唱形式が盛んなので、歌だけでなく、映画やミュージカル、ディスコ・ミュージックから最新ポップスまで、ありとあらゆるジャンルの音楽を扱い、自由に歌って踊る事が出来るのです。 作品中、何度も登場するジャーニーの「Don't Stop Believin'」ほか、ヴァン・ヘイレン「Jump」、ボン・ジョヴィ「It's My Life」、クイーン、U2、ビリー・ジョエルで男子チームが踊れば、マドンナ、ビヨンセ、セリーヌ・ディオン、シンディ・ローパー、アヴリル・ラヴィーンで女子が対抗。ミュージカルからは「シカゴ」「レ・ミゼラブル」「ウエスト・サイド物語」といった名作が続々登場すれば、映画からは「グリース」「ドリーム・ガールズ」「キャバレー」などがラインナップ。毎話、披露されるパフォーマンスは最大の楽しみのひとつ。 でも、それだけではありません。登場人物たちのドラマに合った楽曲が選ばれ、歌詞がストーリーとリンクしているので、それぞれのキャラクターに、より感情移入することが出来るのです。 そして、『glee』の新しい所は、これまでの「ハイスクール・ミュージカル」のような明るく健全な青春ストーリーではなく、最近のアメリカン・コメディで流行りのヘタレ男子の情けない青春ドラマや、教師陣のドロドロ恋愛ストーリーなども組み込まれ、ドラマ部分に力を入れている事です。 「ハイスクール~」のザック・エフロンや「花より男子」の松潤が主人公では、男性陣は観る気がおきませんが、『glee』なら、必ず感情移入出来るキャラがいるはずです。 うちの主人が好きなのは、体育会系男子のフィン。彼は脳みそ筋肉系男子で、本来、「グリー部などゲイのやる事だ」と思い込んでいそうな男子なのですが、小さい頃から歌が好きで、カミングアウトします。彼につられて、アメフト部からも参加者が増え、盛り上がっていきます。 主人公の教師ウィルは、悪妻テリ(ジェサリン・ギルシグ)と、同僚で潔癖症の教師エマ(ジェイマ・メイズ)との間で心が揺れ動きます。その他、グリー部とバトルを繰り広げるチア部のコーチ、スー(ジェーン・リンチ)のキャラも強烈。 そんな中、私のお気に入りは、バーブラ・ストライサンドのようなスターを夢見るレイチェル(リー・ミッシェル)。彼女は、クラスの嫌われ者で、かなりKYな性格ですが、完璧主義で人一倍、努力家。これまでのドラマでは主人公になり得ないキャラです。でも、そうしたマイノリティたちや、ヘタレ男子たちが失敗しながらも、少しずつ成長し、成功を掴んでいく姿に、いつの間にか共感し、感動してしまうのです。 基本的には、『アメリカン・パイ』(1999年)的なブラックなアメリカン・コメディで、そこに、米リアリティ番組『アメリカン・アイドル』のようなグリー部の大会出場といったドラマと、毎話のパフォーマンスが組み合わさった新しいスタイルの音楽青春ドラマです。取り上げられる音楽は、若者だけでなく、小林克也さんの「ベストヒットUSA」世代や、『ロッキー・ホラー・ショー』(1975年)などのロック・ミュージカル映画世代にもたまらないラインナップ。 メインキャストのほとんどは、TV界では無名ですが、主に舞台で活躍している若者たちで、製作総指揮のライアン・マーフィーが何度も足を運んで口説き落としたそうです。それだけに、歌も踊りも演技も、高水準の実力派ばかり。 何より、太っていたり、背が低かったり、障害があったりというそれぞれに悩みを抱えたマイノリティたちが、それを自分の個性として、自信を持って大会に挑んでいく姿に感動します! まあ、とにかくDVDの「Vol.1」を観てみてください。ちなみに、『glee』の第1話目は、インターネットで無料視聴が可能なので、視聴環境がある方はそちらでどうぞ。1/7に発売されたDVD「Vol.1」は、通常、2話収録の所、4話が収録されています。ただし、この4話は人物紹介がメインで音楽的な見せ場は控え目です。5話目からパフォーマンス・シーンがぐーんと増えて来ますので、お楽しみに。 2/4には、ファースト・シーズン残りの5話から22話までを収録した「コレクターズ・ボックス」が発売予定。お早めに、ご予約ください。こちらのボックスには、「Vol.1」も収納可能です。 次回は、2/2にDVD&Blu-ray発売予定のフルCGアニメ『ガフールの伝説』(2010年)をご紹介します。
2011年01月30日
さて、それでは第2弾に続き眼から鱗!Blu-rayソフトを買うべきクラシックの名作をご紹介します。今回は、いずれもワーナー・ホーム・ビデオの2500円シリーズとして発売されている作品です。 Blu-rayデビューするならこの作品! 第1弾(ソフト編)はこちら 第2弾(ハード編)はこちら 1作目は『カサブランカ』(1942年)。 ハンフリー・ボガート&イングリッド・バーグマン主演。アカデミー賞作品賞・監督賞・脚本賞受賞作。第二次大戦下、モロッコの都市カサブランカでバーを経営するリックは、元恋人イルザと再会を果たす。彼女はドイツ抵抗運動の指導者ヴィクターと共に脱出の機会を狙っていた。イルザに助けを求められたリックは苦渋の選択を迫られる…。 「君の瞳に乾杯」など数々の名セリフを残し、主題歌「時の過ぎゆくまま」は今も歌い継がれる映画史屈指の名作。1940年代のモノクロ作品が、驚きの画質で蘇えりました。ピントもシャープで新作のようなクリアーな画面。これは、モノクロ作品に共通して言える事ですが、Blu-rayはモノクロ作品の再生能力が非常に高いのです。中でも昨年4/21に発売された本作のBlu-rayは、これまで劇場やテレビで幾度となく観て来た方でも「モノクロなのにここまで艶があるなんて!」と、びっくりするに違いありません。これまで観たことが無い画質による、本当の『カサブランカ』を体験出来ます。ぜひとも、この感覚を味わっていただきたいです。 2作目は『風と共に去りぬ』(1969年)。 マーガレット・ミッチェル原作のピューリッツァー賞受賞作を映画化しアカデミー賞9部門を受賞したハリウッドを代表する名作。南北戦争下のアメリカ南部を舞台に、アイルランド系移民の父と名家の母との間に産まれた気性の激しい娘スカーレット・オハラの半生を描く壮大な戦争メロドラマです。 このアメリカを代表する名作のBlu-rayソフトを発売するにあたり、ワーナーは、画素をレストアすることで従来は不可能だった1080pの高解像度に見合う映像を実現。その気合の入れようは、ジョージア州アトランタにある故郷タラと同じ土を取り寄せて色調整を行ったという逸話からも想像が出来ます。当時の色鮮やかなカラーを再現した事により、スカーレット演じるヴィヴィアン・リーのきめ細やかな肌、緑の瞳、黒髪が強調され、彼女が纏う衣装の豪華な刺繍や装飾が映えるだけでなく、スカーレットが愛するタラの燃えるように赤い夕景や、アトランタの街を覆う燃え盛る炎が迫力の映像で観る者に迫って来ます。また、戦争の傷跡を捕えるクレーン撮影シーンでは、おびただしい数の傷ついた兵士たち、どこまでも続く死体の山がクリアな画面に映し出され、CGの無い時代に撮影された、この大規模なロケに圧倒されます。 粗悪な画質のワンコインDVDでは決して味わう事の出来ないハリウッドの技術の粋を集めた高画質で本物の『風と共に去りぬ』を堪能してください。 3作目は『オズの魔法使』(1939年)。 カンザスに住む少女ドロシーは、竜巻に飛ばされ魔法の国に来てしまう。途方に暮れるドロシーの前に北の魔女が現れエメラルド・シティの魔法使いオズに会えば、帰る方法を教えてくれるだろうと助言する。ドロシーは愛犬トトと、旅の途中で出会ったカカシ、ブリキ男、ライオンと共にエメラルド・シティへ向かう…。 「虹の彼方に」他、スタンダード・ナンバーとなっている数々の名曲を生んだ、今なお、愛され続ける永遠のミュージカル・ファンタジー。2005年発売のDVDリマスター版もかなり綺麗な画質でしたが、やはり買い替え必至のタイトルです。本作の見所の一つは、スタジオ撮影によるイマジネーションに溢れた美術セットや衣装、特殊メイクや特撮技術など。セピア色の現実世界からたどりついたオズの国の鮮やかな色彩、ドロシーが履く赤い靴の眩しいほどの輝き、色とりどりの衣装に身を包むマンチキンたち、そのどれもが時代を感じさせないクリアな映像で楽しむ事が出来ます。約437分というふんだんな映像特典も見応え充分です。 4作目は『ドクトル・ジバゴ』(1965年)。 ロシアのボリス・パステルナーク原作を『アラビアのロレンス』(1962年)、『戦場にかける橋』(1957年)の名匠デビッド・リーンが映画化した歴史大河ロマン。アカデミー賞作品・監督賞ノミネート。脚色、撮影、作曲、美術監督・装置、衣装デザイン賞受賞。ロシア革命に翻弄される医師ジバゴと彼を愛した二人の女性、ラーラとトーニャの半生を通して激動の時代を描く戦争メロドラマです。 『風と共に去りぬ』が女性のためのメロドラマなら、『ドクトル・ジバゴ』は男性のためのメロドラマと言えるでしょう。モーリス・ジャールによる「ラーラのテーマ」など、クラシックの名画には、必ずといっていいほど、耳に残る名曲、名セリフ、名シーンがあります。本作の見所は何と言っても大規模なロケ撮影にあります。『アラビアのロレンス』では砂漠を、『ライアンの娘』ではアイルランドの自然をダイナミックに映し出したデビッド・リーン監督の、広大なロシアの大地を捉えた美しい映像が、Blu-ray画質で蘇えるのです。 次回は、第4弾に行く前に、1/7、2/4にDVD発売の米TVドラマ『glee/グリー 踊る♪合唱部!?』をご紹介します。
2011年01月16日
年末にはエコポイントの駆け込み需要も手伝って、Blu-ray一体型TVやフル・ハイビジョンTVへ買い替えた方も多いのではないでしょうか。わが家もフル・ハイビジョンTVを購入し、Blu-ray在庫も、益々充実してきました。 そこで、今回は2010年5月にご紹介した「Blu-rayデビューするならこの作品!」の第2弾として、Blu-rayを楽しむために準備段階として必要なハード面についての豆知識をご紹介します。 前回は、Blu-rayソフトの「画質/音質/価格」などソフト面についてでしたが、今回は「Blu-rayのおススメ視聴環境」「HDMI端子」「バージョンアップ」「読み込み時間」といったキーワードについて。 すでにBlu-rayソフトをご覧の方は、どんな視聴環境で観ているでしょうか?Blu-ray一体型TVの方は良いとして、TVとBlu-ray再生機を繋げている方は、別売りのHDMI端子で繋げていますか?私の周りでは、「Blu-rayソフトを観たけど、DVDとあまり画質が変わらないじゃない」と言っている人に限って、HDMI端子で繋げていない人が多いのです。HDMI端子で繋げないと、Blu-ray最大の特徴である高画質なフル・ハイビジョン映像を楽しむ事が出来ません。いくらTVと再生機がデジタルでも、繋げるコードがアナログでは意味がないのです。HDMI端子は1,500円くらいから購入可能ですので、ぜひ、ご購入ください。それだけで画質も音質も見違えるように綺麗になります。 同じ事がモニターにも言えます。Blu-rayをパソコンやアナログTVで観ている方は、ぜひ、フル・ハイビジョンもしくはハイビジョンTVと繋げてみてください。これまで観ていたものが、本当のBlu-ray画質ではなかった事がわかるはずです。 余談ですが、わが家のプロジェクターはフル・ハイビジョンではありませんが、スクリーンに投影する場合は部屋を暗くしますし、映像も大きく投影されるので、フル・ハイビジョンTVとは違った良さでBlu-rayを楽しむ事が出来ます(フル・ハイビジョンTV(42型)とスクリーン(80インチ)での画質比較)。フル・ハイビジョンでなくても、Blu-ray再生機とHDMI端子で繋げれば、DVDの画質とは比較にならない美しさで観る事が出来るのです。 また、「うちはBlu-ray再生機がないからまだDVDしか観られない」という方は、もしかして「playstation 3」をお持ちではありませんか?からかっているのではありません。私の身近にも「PS3でBlu-rayソフトが再生可能」という事をうっかり忘れている人がいたんです。PS3は、Blu-ray再生機と全く遜色ない画質、音質で視聴可能ですし、ネットに繋げている方は、バージョンアップが自動で非常に楽です。ゲーム好きの方なら、Blu-ray再生機を買わずにPS3の購入を検討するのも良いと思います。 「バージョンアップ」と言えば、2010年の11/26に発売された「アバター ブルーレイ版エクステンデッド・エディション」は、読み込みエラーが多くてネット上では苦情が飛び交っていましたが、これもバージョンアップをしていないため。通常のBlu-ray再生機でご覧の方は、定期的にインターネットに繋げて(PCまたはUSB、CD-Rから)最新バージョンへダウンロードをしてください。 最後にBlu-rayソフトの「読み込み時間の長さ」について。Blu-rayはDVDと比較すると、読み込みに相当な時間がかかります。DVDの感覚だと、ソフトの不良か、再生機との相性が合わないのか、などと不安になりますが、わが家でも、5分以上、読み込みに時間がかかるソフトもありますので、エラー表示が出ない限りは辛抱強くお待ちください。最新のSONYの再生機は、この読み込み時間がかなり改善されています。どのメーカーの再生機を買おうか迷った場合は、SONYをおススメします。【Blu-rayのおススメ視聴環境】・最強!こだわり派→フル・ハイビジョンプロジェクター+PS3+HDMI端子・現実派→フル・ハイビジョンTV+PS3+HDMI端子・ゲームしない派→フル・ハイビジョンTV+Blu-ray再生機+HDMI端子・面倒くさがり派→Blu-ray一体型フル・ハイビジョンTV 豆知識が長くなったので、目から鱗のBlu-rayソフトの紹介は第3弾にてお送りします。
2011年01月13日
2010年に公開された映画の中から選ぶ邦画ベスト10。1位『ノルウェイの森』、2位『告白』、3位『ボーイズ・オン・ザ・ラン』、4位『君に届け』、5位『十三人の刺客』につづき、6位~10位をご紹介します。1位~5位の紹介ページはこちら6位『カラフル』(公開:2010年8月~)アニメから唯一選びました。原恵一監督の作品は夢があってどれも好きですが、今回は森絵都の児童文学を映画化した、これまでにないシリアスな作品です。自殺した少年・小林真の魂と引き換えに生き返った主人公が、別の人生を体験し、自分の犯した罪に気付くという物語。クラスに一人はいそうな目立たぬ男子中学生が抱える家族や恋の悩みがリアルに描かれ、心に刺さります。多くの子供たちが傷つき、自殺未遂や援助交際に走る現在、原作者の「自殺してはいけない」「人は誰もがカラフルな面を持っている」という強いメッセージが伝わってきます。大人の立場で本作を観ると、社会の責任を一身に背負ってしまう子供たちの姿にやるせなさを感じます。でも、大人の中にも“小林真”がたくさんいるのかもしれません。7位『花のあと』(公開:2010年3月~)北川景子主演、藤沢周平原作の短編小説を中西健二が監督し映画化。剣術が得意な武家の娘と、娘を慕う二人の武士の誇りを持って凛として生きる姿を描く感動の時代劇です。2010年は、『必死剣鳥刺し』『最後の忠臣蔵』『桜田門外ノ変』など多くの時代劇が公開されましたが、本作は他の話題作とも遜色なく、特に女性にはおススメ。明るくお転婆な主人公・以登のキャラは北川景子にピッタリはまり、アクションもこなしているのでアイドル映画としても観る事が出来ます。晴々とするラストがいつまでも心に残ります。8位『書道ガールズ!!わたしたちの甲子園』(公開:2010年5月~)成海璃子主演、日テレ「ズームイン!」で紹介され話題となった実話を基にした青春ガールズ・ムービーです。“紙の町”愛媛県四国中央市を舞台に、音楽に合わせて身体全体で字を書く“書道パフォーマンス”大会に青春を賭ける書道部員たちの奮闘が描かれています。町おこしに立ち上がる高校生たちのコミカルな行動、各部員たちや先生、街の人々のキャラクターも魅力たっぷり。クライマックスの“書道パフォーマンス”の技は一見の価値が有ります。書道の魅力をしっかり伝えているのも評価したいところ。笑いあり、涙ありの老若男女が楽しめる王道のファミリー・ムービーです。9位『悪人』(公開:2010年9月~)芥川賞作家・吉田修一の原作を『フラガール』(2006年)の李相日が監督し映画化。ある殺人事件の加害者、被害者と、それぞれの家族の立場から事件を描き、誰が本当の悪人なのかを問う人間ドラマです。主演の妻夫木聡は、普段の美系青年とは正反対の犯人像を完璧に作り上げ迫真の演技をみせています。モントリオール映画祭最優秀女優賞を受賞した深津絵里は天使のような無垢な女性を儚げに演じる他、助演の岡田将生や満島ひかりの熱演も印象的。役者が揃った見応えのある作品ですが、メロドラマ中心で主役の二人を始めから好意的に描いている事には疑問が残ります。苦労人の犯人と金持ちのどら息子というような判りやすい設定は、『告白』や『カラフル』と比べるとテーマ性の追求に欠ける気がします。10位『孤高のメス』(公開:2010年6月~)現役医師・大鐘稔彦によるベストセラー小説を、『ミッドナイト イーグル』(2007年)の監督、『クライマーズ・ハイ』(2008年)の脚本を手掛けた成島出が監督し映画化。近年、医療ミスや救急患者のたらいまわし事件などが取り上げられ、医師という職業の評価が低くなっているように感じますが、本作は、改めて医師や看護師といった医療に関わる人々の苦労や偉大さを思い出させてくれます。天才外科医・当麻鉄彦(堤真一)の「患者の命を救いたい」という真摯な想い、それを見守る看護師・浪子(夏川結衣)に芽生えた看護師としての使命。医師という職業に限らず、「自分は人の役に立っているだろうか?」と考えさせられる感動のヒューマン・ドラマです。悪役の設定や説明の多い脚本には難ありですが、役者の名演と外科手術のリアルな描写は秀逸です。 次回は、「Blu-rayデビューするならこの作品!」の第2弾をご紹介します。
2011年01月07日
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします! 洋画に続き、2010年に劇場公開された映画の中から選んだ邦画ベスト10をご紹介します。 2010年の邦画興業成績では『海猿』『踊る大捜査線』『SP』『のだめカンタービレ』などフジテレビ製作×東宝配給作品が上位を占めました。TBSは『ハナミズキ』『SPACE BATTLE SHIP ヤマト』やアスミック(角川)と組んだ『大奥』など独自企画で勝負。そんな中、低予算の『告白』が大ヒットし、名作時代劇をリメイクした『十三人の刺客』も話題となり、莫大な宣伝費をかけなくても“優れた脚本”“面白い娯楽映画”を作ればヒットするという好例となりました。 まずは邦画ベスト5まで。1位『ノルウェイの森』(公開:2010年12月~)これを邦画に分類するなら文句なしの1位。親友キズキ(高良健吾)が自殺し、深い喪失感を抱えた大学生ワタナベ(松山ケンイチ)の青春と再生を描く文芸ドラマ。ヴェトナム出身でパリ在住のトラン・アン・ユン監督が脚色も手掛け、村上春樹の大ベストセラー小説を遂に映画化。アジア人が持つ本来の美しさを濡れる髪や肌、表情やしぐさから官能的に表現してきたトラン・アン・ユン監督。本作ではワタナベと直子(菊地凛子)の心情をブルートーンの森の中に表現するなど、日本の自然や四季折々の風景と共に監督がイメージする日本人らしさが描かれ、監督の新境地を観る事が出来ます。死=直子と生=緑(水原希子)の対比も鮮やか。原作の世界観をここまで素晴らしい映像でみせてくれたトラン・アン・ユン監督に感謝したいです。2位『告白』(公開:2010年6月~)2009年本屋大賞を受賞した湊かなえ原作のベストセラー小説を『嫌われ松子の一生』(2006年)の中島哲也監督が映画化。娘を殺されたシングルマザーの教師が、担任クラスの生徒である犯人AとBに対し自ら制裁を下したと告白。犯人AとBの告白により事件の真相が明らかになっていきます。学級崩壊、少年犯罪、女教師の復讐劇…と、ショッキングな題材を扱った、決して絵空事ではすまされない問題作です。中島監督は、全編をハイテンションな演出スタイルで圧倒しながらも、各章毎にサスペンス、ホラー、ファンタジーと変化を持たせ、さらに役者の見せ場を用意するなど、力技と緻密な計算を織り交ぜた絶妙の“中島ワールド”を展開。松たか子ほか役者陣の熱演は勿論、謎解きサスペンスの面白さ、イマジネーションに溢れた映像など見所満載の必見作です。3位『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(公開:2010年1月~)花沢健吾の原作コミックを、劇団ポツドールを主宰する三浦大輔が長編初監督し映画化した青春ドラマ。銀杏BOYSの峯田和伸が演じる主人公・田西のヘタレっぷりには大いに笑わせて貰いました。コミカルでテンポある演出が小気味よく、『タクシードライバー』から『ロッキー』まで、70年代アメリカン・ニューシネマへのリスペクトに共感。40~50代のニューシネマ世代に観て欲しい隠れた名作です。4位『君に届け』(公開:2010年9月~)多部未華子&三浦春馬主演。椎名軽穂・原作の少女コミックを『おと・な・り』(2009年)の熊澤尚人が監督し映画化。箱入り娘で純真な爽子を演じるキュートな多部未華子と、絵に描いたような爽やかな笑顔を見せる翔太を演じる三浦春馬に胸キュンしまくりの純愛ドラマです。熊澤監督は、上野樹里&市原隼人主演の『虹の女神 Rainbow Song』(2006年)などせつない恋愛ストーリーに定評があります。『虹の女神』には号泣させられましたが、今回は多部ちゃんのぽーっとしたキャラに笑いつつ、ホノボノとした味わいが楽しめます。攻め芝居の多部ちゃんと、それをキメ笑顔で受けまくる春馬君の男っぷりが好バランス。体育教師を演じるARATAも良い感じ。全編ゆったりテンポでやや緩急に欠けるのが勿体ない感じがします。5位『十三人の刺客』(公開:2010年9月~)オールスター総出演、工藤栄一監督による1963年の傑作時代劇を、三池崇史監督らしい遊び心を加えて現代に蘇らせた大型娯楽時代劇。オリジナルファンは、このいじり方に怒り心頭。でも、私の身近にいる若者たちはこぞって面白いと称賛。オリジナルの素晴らしさがあってこその本作ですが、鑑賞後に夫婦で2時間も3時間もオリジナルとリメイクを比べて語り合いました。それだけ会話が盛り上がった作品は2010年に観た劇場映画240本の中でこれ1本のみ。それこそが三池監督の狙い通りで、作家性がもろに出た作品と言えるかもしれません。“武士の一分”を描くオリジナルと、殿の残虐行為を強調し暗殺の正当性を主張するリメイク。現代にはその方が判り易く、共感出来るのだと思います。ぜひ、オリジナルと見比べて語り合って欲しい作品です。 次回は6位~10位をご紹介します。(6位~10位の紹介ページはこちら)
2011年01月06日
全5件 (5件中 1-5件目)
1