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2011年3月12日に開通したばかりの九州新幹線をモチーフに、小学生漫才コンビの“まえだまえだ”が主演で贈る感動のファミリー・ムービーが11/9にDVD&ブルーレイ発売。今回は『誰も知らない』(2004年)の是枝裕和監督が同じく子供を主演に描く『奇跡』(2011年)をご紹介します。 九州新幹線の全線開通の日、博多から南下する“つばめ”と鹿児島から北上する“さくら”の一番列車がすれ違う瞬間に奇跡が起きて願いが叶う…。そんな噂を聞きつけた小6の航一(前田航基)と小4の龍之介(前田旺志郎)の兄弟は、離婚した両親ともう一度家族4人で暮らすため、奇跡を起こそうと計画する。兄は母(大塚寧々)と祖父母(橋爪功、樹木希林)と共に鹿児島で、弟は父(オダギリジョー)と福岡で暮らしているが、兄弟はそれぞれ両親に新しい恋人が出来ないかと監視したり、お互いに連絡を取り合ったりしながら、旅行のための資金をためていた。そして決行の日、二人の兄弟と仲間たちの冒険が始まる…。 両親が離婚し、離れ離れに暮らす兄弟が、仲間たちと起こした奇跡とは…。子供たちに癒されるのは勿論、彼らを見守る大人たちの優しさにも心が温かくなる、一人でも多くの方に観ていただきたい邦画の一押し作です。 監督は、母に置き去りにされた兄弟4人の実話を描いた『誰も知らない』で高い評価を受けた是枝裕和。長男の明を演じた柳楽優弥(当時14歳)は、カンヌ国際映画祭最年少主演男優賞を受賞し話題となりました。 本作は、同じく子供を主人公にした作品ですが、自身も父親になったという是枝監督は、今度は“まえだまえだ”の兄弟を主演に、オリジナル脚本で『スタンド・バイ・ミー』(1986年)のような子供たちの冒険と成長の物語を描き出しました。 本作の一番の魅力は、何といっても主演の“まえだまえだ”二人のパーソナリティにあります。二人は映画初主演だそうですが、普段から漫才の舞台に出ているだけあって、自然体で堂々たる演技をみせています。是枝監督はオーディションで彼らを気に入り、彼らのキャラクターに合わせて、脚本を書き変えたほど。真面目でしっかりした性格の兄と、人懐っこくてクラスの女子からも人気者の弟という、よくありそうな兄弟の対比が鮮やかに描き分けられていて、二人は息の合った演技で微笑ましい兄弟愛を見せてくれます。演技を超えた二人の絆の強さや、持ち前の明るさと行動力に、誰もが元気をもらえる作品です。 ただし、物語は二部構成になっていて、彼らの冒険の前には、兄弟たちが現在、置かれている状況や、家族それぞれの暮らしぶりが淡々と描写されています。 是枝監督は、これまでも『誰も知らない』や『歩いても 歩いても』(2007年)で、現在の家族の姿をドキュメンタリー・タッチに綴っており、今回も、単なる子供たちの冒険物語ではなく、あくまでも現代のある家族の肖像を描写する事が、一つのテーマとなっています。 離婚後に鹿児島の実家に出戻り、シングルマザーとなった母。和菓子職人としてもう一度、和菓子作りに挑戦したいと試作品作りに夢中の祖父。売れないミュージシャンで、定職につかず、仕事を転々としながら夢を追い続ける父。 兄弟二人は、そんな大人たちの様々な思いを子供ながらに受け入れつつも、本当は家族4人でもう一度暮らしたいと願っています。そんな健気な二人の起こした行動に、胸が熱くなります。 そし後半、子供たちはついにそれぞれの友達と共に冒険の旅に出発します。 友達のキャラクターはあまり深くは語られませんが、彼らもそれぞれに家の事情を抱えていたり、将来の夢があり、兄弟と同じように奇跡を起こしたいと考えています。『誰も知らない』で子役の扱いにも慣れている是枝監督は、それぞれのキャラや特徴を短いエピソードに上手く盛り込み、個性を出しています。 冒険中の出来事は、まさに現実に起きた奇跡と言えるもの。仲間たちと旅をし、様々な経験をしながら、子供たちは自分たちの想いについて考え、成長していきます。彼らの夢は叶わない夢だったり、実現可能な夢だったりと様々。 果たして、彼らは無事に一番列車がすれ違う場所に辿りつけるのか…、そして彼らに奇跡は起こるのか…。 ぜひ、この結末をご自身の眼で確かめてください。 11/9に発売されるDVD&ブルーレイは全3種。1.「奇跡DVD限定版(初回限定生産)」(DVD2枚組+封入特典)2.「奇跡DVD通常版」(DVD1枚組)3.「奇跡Blu-ray」(Blu-ray1枚組)DVD限定版は、特製スリーブ、インナージャケット仕様でブックレットやポスターが封入。特典ディスクには、メイキングや岸田繁(くるり)と是枝裕和監督の対談などの映像特典が満載です。 次回は、11/2にDVD&ブルーレイが発売される、ロアルド・ダール原作の「すばらしき父さん狐」をアニメ映画化した『ファンタスティックMr.FOX』(2009年)をご紹介します。
2011年10月30日
世界中で愛されているキャラクター、スヌーピーは、2010年に生誕60年を迎え、ますます人気が高まっています。今回は、そんなスヌーピーと仲間たちが活躍する名作アニメをご紹介します。 ビーグル犬のスヌーピーは、アメリカのチャールズ・モンロー・シュルツが生みだした連載コミック「ピーナッツ」に登場するキャラクターです。コミックでは、スヌーピーの飼い主であるチャーリー・ブラウンを中心に、妹のサリー、友人のライナス、ルーシー、ペパーミント・パティといった個性的な子供たちが繰り広げる愉快な日常生活が描かれています。 まずは、「ピーナッツ」の歴史を少しだけ、ご紹介しておきましょう。 1950年に新聞連載が始まり、数々の賞を受賞。1965年には初のアニメーション番組「A Charlie Brown Christmas」が製作され、エミー賞を受賞したのを始めに、5度のエミー賞に輝きました。 国民的キャラクターとなったチャーリーとスヌーピーの名前は、1969年、アポロ10号の指令船と月着陸船の名前に採用されるまでになりました。 1984年には、「ピーナッツ」の連載コミック掲載紙が2,000紙に到達し、ギネスブックの世界記録に公認。1996年には、ハリウッドのウォーク・オブ・フェイムにチャールズ・シュルツの“星”が登場。故ウォルト・ディズニーの横に今も並んでいます。 日本では、1967年に詩人、谷川俊太郎の翻訳でコミックが出版され、1968年からサンリオがキャラクター商品を販売開始。1972年には、NHKで日本語吹替え版のアニメ放送が開始されました。この吹替え版は、谷啓がチャーリー、うつみ宮土理がルーシー、野沢那智がライナス、松島トモ子がサリーを担当するなど、当時、観ていた方にとっては思い入れの深い吹替えシリーズになっています。 小粋なピアノジャズが流れたり、大人には台詞がなく、変わった擬声音で表現するなど、演出もかなり斬新なものでした。 「ピーナッツ」の主人公は子供たちですが、描かれている世界は意外とシュールです。失敗ばかりのチャーリー、いじわるなルーシー、勉強嫌いのパティなど、それぞれの欠点もしっかり描かれています。スヌーピーも、ちゃっかり者で食いしん坊だったりと、ただのかわいい飼い犬ではない所が魅力。コミックは新聞連載されていただけあって、実は大人になってから読んだ方が、より深く楽しめる人生訓が盛り込まれています。 今回ご紹介する名作アニメは、その中から大人も子供も楽しめる3作品です。 1作目は、ハロウィンに家族で観たい『スヌーピーとかぼちゃ大王』(1966年)。 お気に入りの毛布をいつも手放さないライナスは、ハロウィンにはかぼちゃ大王が現れると信じて、かぼちゃ畑で待ち続けます。チャーリーの妹サリーも仮装行列に参加せず、大好きなライナスにつき合います。一方、チャーリーはみんなと一緒に仮装して街に繰り出しますが、ついていないチャーリーは果たしてお菓子をもらえるのでしょうか…。 ハロウィンをそれぞれに楽しむピーナッツの仲間たちを描く一篇。子供たちにとって、一大行事であるハロウィンの1日が垣間見られて楽しい作品です。 2作目は、アメリカの祝日、感謝祭を描く『スヌーピーの感謝祭』(1973年)。 チャーリー・ブラウンは、毎年、おばあちゃんの家で感謝祭を祝うのを楽しみにしていますが、今年はペパーミント・パティがチャーリーの家で感謝祭のパーティーをすると決めて、みんなを集めてしまいます。スヌーピーは、大量のジャムサンドとポップコーンを作ってみんなにふるまいますが、結局は全員でおばあちゃんの家に行くことになり、スヌーピーはお留守番をさせられます。がっかりするかと思ったら、スヌーピーはちゃっかり、自分用の七面鳥を隠していたのでした…。 スヌーピーが大活躍する作品です。チャーリーは、今回も自分の考えを言えずに、人の意見に押し切られてしまいます。子供の世界とは言え、悩み多きチャーリーや仲間たちを見ていると、大人は笑いながらも共感してしまいます。 3作目は、初アニメ化作品の『スヌーピーのメリークリスマス』(1965年)。 いつもながら、仲間たちから馬鹿にされっぱなしのチャーリー・ブラウン。何をやっても失敗ばかり。でも、世の中はお金じゃないとばかりに、チャーリーは小さなもみの木を買って家の前に飾ります。最後には、そんなチャーリーの事を見直した仲間たちは、みんなで仲良くクリスマス・ソングを歌います…。 クリスマスの商業主義を皮肉ったブラックな作品です。チャーリーには気の毒なエピソードですが、最後には、仲間たちにも認められ、クリスマス・ソングで締めくくるクリスマスにぴったりのいいお話です。 どの作品を観ても、自分の子供時代を思い出してほーっと癒されます。それぞれDVD&Blu-rayが発売されています。 また、「ピーナッツ」のコミックに興味を持った方には、入門編として50周年記念で出版された「スヌーピーの50年 世界中が愛したコミック『ピーナッツ』」がおススメです。 キャラクター商品しか知らないという方は、ぜひ、コミックやアニメに触れてみてください。 次回は、11/9にDVD&ブルーレイが発売される是枝裕和監督の感動ドラマ『奇跡』(2011年)をご紹介します。
2011年10月17日
『ぼくの伯父さん』(1958年)のジャック・タチが娘のために遺した脚本を、『ベルヴィル・ランデブー』(2002年)のシルヴァン・ショメ監督がアニメ映画化。今回は、10/8にDVD&ブルーレイが発売されるジブリ公認のハートフル・ストーリー『イリュージョニスト』(2010年)をご紹介します。 1950年代のパリ。老手品師のタチシェフは、寂れた劇場や場末のバーを巡るドサ回りで細々と暮らしていた。ある時、スコットランドの離島のバーで、貧しい少女アリスと出会う。アリスはタチシェフの手品を見て魔法使いだと思い込み、島を離れるタチシェフについてきてしまう。エジンバラにやって来た二人は、言葉が通じないながらも一緒に暮らすようになり、タチシェフは働いたお金で服や靴を買っては、アリスに魔法の呪文と共にプレゼントするのだった…。 かつての栄光は消え去り、落ちぶれた生活を送る孤独なタチシェフの前に、突然現れた純粋な少女アリス。タチシェフは、自分を慕ってついてきてくれたアリスに、実の娘の面影を重ね、アリスとの生活によって、生きる張り合いを取り戻していきます。やがて、アリスは美しい娘へと成長し、恋を経験します。アリスが恋人と幸せそうに歩く姿を見届けたタチシェフは、ある決意をするのでした…。 この美しくも悲しい物語を書いたのは、フランスのエンターティナー、ジャック・タチ(1907年10月9日-1982年11月5日)。 若い頃からパントマイムで舞台に立ち、1936年の短編映画『左側に気をつけろ』に出演し映画の道に入りました。長編映画デビュー作『のんき大将脱線の巻』(1947年)を監督・脚本・主演し、その後、タチの自作自演による“ユロ氏”のキャラを確立。ユロ氏が様々な騒動を起こす『ぼくの伯父さんの休暇』(1953年)はアカデミー賞オリジナル脚本賞にノミネート、続く『ぼくの伯父さん』(1958年)はアカデミー賞外国語映画賞を受賞。その他、10年がかりで莫大な予算をかけて製作された『プレイタイム』(1967年)、低予算の『トラフィック』(1971年)などがあります。 ジャック・タチは、自ら演じたユロ氏のひょうひょうとして、憎めないキャラクターとはうらはらに完璧主義者だったそうで、共演者たちへの演技指導や、舞台美術、衣装などにこだわり、タチならではのエスプリを感じさせる作品世界を創り上げていったといいます。 そんな完璧主義者のタチが娘のために遺した脚本は、実写での映画化は不可能に久しく、これまで半世紀にわたってフランス国立映画センターに眠っていたのだそうです。 その脚本を、詩情豊かな美しいアニメーションとして世に送り出したのは、『ベルヴィル・ランデブー』(2002年)がアカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートされたシルヴァン・ショメ監督。 シルヴァン・ショメはフランスのアニメーション作家。“バンド・デシネ”と呼ばれる大人向けのコミックを製作しながらアニメーターの仕事を初め、1991年、初のアニメーション映画『老婦人とハト』がアカデミー賞短編アニメーション映画賞にノミネート。続く『ベルヴィル・ランデブー』が世界で高い評価を受け、日本ではジブリが、優れた外国アニメーションを紹介するコレクションの1本としてDVD化しました。 シルヴァン・ショメ自身がジャック・タチの大ファンということで、ジャック・タチのご遺族も、ショメの作風を気に入り、アニメーション製作が決定したのだそうです。 そうして出来あがった作品は、ジャック・タチのファンにとっても涙が出るほど、素敵なものでした。タチシェフのキャラクター造形は、まるでユロ氏=ジャック・タチが蘇ったかのように見事に表現されています。 そして、シルヴァン・ショメが創り上げた映像世界のノスタルジックな美しい情景。50年代のロンドン、パリ、スコットランド、エジンバラと、それぞれの自然や街や、そこに暮らす人々の温かさ…。 シルヴァン・ショメの手書きによるアニメーションでなければ、ここまで再現する事は出来なかったであろうイマジネーションに溢れた映像に、ただただ、ため息が出るばかりです。 『ベルヴィル・ランデブー』とは全く異なる、ファンタスティックでゴージャスな映像を楽しむ事が出来ます。このタチとショメが融合した絵画のような美しい作品は、今年必見の1本です。 次回は、ハロウィン、クリスマスなどを題材にしたスヌーピーの映画作品をご紹介します。
2011年10月07日
死に直面し心に深い傷を負った人々が、死と向き合い生きる希望を見出すまでのヒューマン・ストーリー。今回は、10/5にDVD&ブルーレイが発売予定のクリント・イーストウッド監督作『ヒア アフター』(2010年)をご紹介します。 パリで活躍する美人キャスターのマリー(セシル・ドゥ・フランス)は、恋人とのバカンス中に東南アジアで津波にのみ込まれる。マリーは奇跡的に助かるが、呼吸が止まった時に見えた“ヴィジョン”が頭から離れず、自ら調査を始める。サンフランシスコで暮らすジョージ(マット・デイモン)は、霊能者として活躍していた過去を封印し、孤独な生活を送っていた。ロンドンに暮らす少年マーカス(フランキー&ジョージ・マクラレン)は、交通事故で双子の兄、ジェイソンを突然失う。マーカスは兄ともう一度話すため、霊能者を訪ね歩くがいずれも偽物だった。そんな時、閉鎖されたジョージのウェブサイトを見つける。そして、マリーとジョージは、運命に引き寄せられるようにロンドンへと向かった…。 オリジナル脚本を手掛けたのは、『クイーン』(2006年)がアカデミー賞脚本賞に、『フロスト×ニクソン』(2008年)がアカデミー賞脚色賞にノミネートされたピーター・モーガン。製作総指揮のスティーブン・スピルバーグはこの脚本を気に入り、クリント・イーストウッドに監督を依頼。スピルバーグとイーストウッドという二大巨匠による、『硫黄島からの手紙』(2006年)以来のタッグが実現しました。 物語の冒頭、東南アジアでマリーが津波にのみ込まれるシーンがありますが、これはインドネシア西部スマトラ島沖地震津波をリアルに再現したものです。 日本では2月より劇場公開されていましたが、東日本大震災の発生を受けて、このシーンがふさわしくないということで、公開が打ち切られました。 これを受けて監督のクリント・イーストウッドは「日本が直面している惨状と喪失は理解の範疇を超えている。(省略)」との声明を発表し、『ヒア アフター』のDVD収益の一部が義援金として日本赤十字社に寄付されました。 クリント・イーストウッド監督の前作『インビクタス/負けざる者たち』(2009年)は、マンデラ大統領の半生を軸に、スポーツを通した人種対立の克服を描いた陽性のハリウッド作品でしたが、今回は“死後の世界”を描き、前作とは全く趣の異なる作品となっています。 しかしファンタジー色やオカルト色が強いかといえば、そうでもありません。確かに“死後の世界”があるとは肯定し、人々の身近にいつも死者の存在がいると思わせる描写がありますが、本作のテーマは、それよりも、それぞれに死を間近に感じた三人を通して、生きることの大切さを描いた人間ドラマにあるのです。 主人公の霊能者ジョージを演じるのは、前作『インビクタス/負けざる者たち』からイーストウッド映画連続出演のマット・デイモン。ジョージは相手に触れただけで、その人の身近にいる死者の存在や彼らの想いを感じる事が出来るという特殊能力を持っています。でも、その能力のために、人々から好奇の目で見られ、彼の兄でさえ、ジョージの能力を商売に利用しようとします。 しかしジョージ自身は、霊能者であることを隠し、人並みの静かな生活を望んでいます。ある日、料理教室でブライス・ダラス・ハワード演じるメラニーと出会い、つかの間の幸せを手にするのですが、ジョージの能力が原因で、メラニーは去ってしまいます…。人の良さそうなマットが演じるジョージとメラニーはお似合いだっただけに、観ている方はがっかりの展開です。 一方、 キャスターのマリーを演じるのは、『スパニッシュ・アパートメント』(2002年)でオドレイ・トトゥと共演したセシル・ドゥ・フランス。津波に巻き込まれ、生死の境をさまよっている時に見た“ヴィジョン”を確かめようと、自ら取材し、本を書きますが、周囲の目は冷たく、彼女もまた、ジョージと同じように変人扱いされてしまいます。 また、マリーが訪れるホスピスの医師役には、『ブラック・サンデー』(1977年)で炎のテロリスト、ダーリアを演じたマルト・ケラーがゲスト出演し元気な姿をみせています。 そして、三人の中でも一番、感情移入してしまうのが、双子の少年マーカスとジェイソン。兄のジェイソンが突然の事故で亡くなり、母からも引き離されて里子に出されたマーカスは、兄の形見の野球帽を片時も離さず、霊能者を訪ね回ります。双子を演じたのは、フランキー&ジョージ・マクラレン兄弟。クリント・イーストウッド監督は、『チェンジリング』(2008年)など毎作、子役の使い方が抜群です。フランキーとジョージも、双子であることを活かして二人二役を演じているそうで、二人とも活発な兄のジェイソンと、おとなしい弟マーカスをうまく演じ分けています。マーカスが霊能者を訪ねるシーンは、霊能者のウソを笑い飛ばす、ちょっとした息抜きシーンになっています。 前半は、三人それぞれの胸が痛くなるようなエピソードが交互に描かれ、観客は彼らの行く末がどうなるのかとヤキモキさせられますが、そこはクリント・イーストウッド監督のこと。前半は『真夜中のサバナ』(1997年)に近いゆったりとした語り口で、これでもかと三人に感情移入をさせておいて、後半で『グラン・トリノ』(2008年)の如く、一気に物語が急展開します。そして、観客の意表を突く感動のクライマックスへ…。 三人がロンドンで出会い、どのような関わりを持つのか?彼らにはどんな運命が待ち受けているのか?クリント・イーストウッド監督は、意識的に省略を多用しているので、三つの物語の時間経過やつなぎは判りずらい部分もありますが、上映時間の2時間はあっという間。ラストには「もうこれで終わってしまうの?」「その先がもっと見たい!」と思わせてくれます。 ちなみに本作はチャールズ・ディケンズの小説が脚本の隠し味となっています。マット演じるジョージはディケンズが好きな設定で、マーカスのエピソードは「オリバー・ツイスト」を思わせます。そして最後には「クリスマス・キャロル」のようなハッピーエンドがあなたを待っています。 ハリウッドの生きる伝説、クリント・イーストウッド監督が贈るラブ・ファンタジー。元気が欲しい方におススメの心温まる感動作です。 次回は、10/8にDVD&ブルーレイが発売予定のシルヴァン・ショメ監督が贈るアニメーション『イリュージョニスト』(2010年)をご紹介します。
2011年10月04日
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