小玉智子のお買い物ブログ

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2010年01月29日
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 今回は、2009年公開作品の中からアメコミの実写映画化作品を2本ご紹介します。アメコミの映画化というジャンル作品であるが故に評価されないけれども、昨年の洋画ベスト10に入れたい名作『ウォッチメン』(2009年)と、日本では話題性が低かったけれど意外とよく出来ている『ザ・スピリット』(2008年)です。

 まずは『ウォッチメン』から。
 80年代のアラン・ムーアと作画家デイヴ・ギボンズによる傑作グラフィック・ノベルを、『300<スリーハンドレッド>』(2007年)のザック・スナイダーが監督。
 1940年代、凶悪犯罪に苦しめられるアメリカ国民を救うため、正体不明の仮面のヒーローたちが登場。当初、国民の喝采を浴びた彼らだったが、やがてその行動に疑いがもたれるようになる。そして1970年代半ば、ヒーロー活動を禁止するキーン条例が施行されることになった。こうしてヒーローたちは歴史の闇に消えていった…。しかし米ソの冷戦が頂点を迎えた1985年。ある殺人事件をきっかけに、正義のヒーローたち“ウォッチメン”は再び、行動を起こすことになる…。
 舞台になるのは、私たちが知っている現実とは異なるパラレルワールド。この世界では、ベトナム戦争でアメリカが勝利し、ニクソン大統領はウォーターゲイト事件で失脚せず、なんと連続5期の大統領の地位にあるのです。この設定だけでもアメリカ現代史を知っている人は興味津津になるのではないでしょうか?
 原作のグラフィック・ノベルは、SFの最高峰ヒューゴ賞をコミックとして唯一受賞し、タイム誌の長編小説ベスト100にも選ばれた作品。
 アメリカ現代史の中に、コミック・ヒーローを配し、時代の波に翻弄されるヒーローたちの苦悩を通して、アメリカの正義とは?アメリカン・ドリームとは?人間の本性とは?といった命題に挑んでいます。2009年、オバマ大統領誕生以前のアメリカは、世界中から非難を受け、愛国心と強大なパワーに支えられて築いてきた正義と平和が崩れつつありました。映画は時代の空気を無意識に表現すると言われますが、真の平和、真のヒーローを問う『ウォッチメン』は、まさに、そんなタイムリーな時期に製作されたのです。
 原作が、大人向けコミックのため、映画でもR-15指定の残酷描写があり、観る人を選ぶ作品ではあります。ですが、原作の世界観をそのまま表現しており、登場人物のキャラクター造形やヒーローたちの衣装やメイクのセンスが素晴らしく、ストーリー、CG映像、キャラクター描写、アクションシーン、挿入される音楽などのバランスも良く、全体的な完成度が非常に高い作品です。
 キャラクターの中では、ジャッキー・アール・ヘイリー演じるロールシャッハと、マリン・アッカーマン演じるシルク・スペクターが最高!刑務所でのシルクのアクション・シーンは文句なしのカッコよさです。
 また、映画の脚色が見事なので、原作を読んでいなくてもアメリカ現代史に詳しい方は楽しめると思います。観た後に原作に挑戦すると、作品の理解がさらに深まり、もう一度、映画を観直したくなります。版権問題等の諸事情があったようですが、本来なら、アカデミー賞脚色賞、監督賞にノミネートされても遜色ない作品だと思います。
 DVDは2種発売されており、特典ディスク付の2枚組スペシャル・コレクターズ・エディションと、番外編「Tales of the Black Freighter」が収録された3枚組コレクターズBOXがあります。


 次は『ザ・スピリット』について。
 監督は、『300<スリーハンドレッド>』(2007年)の原作者で、『シン・シティ』(2005年)では原作・脚本・監督・製作・出演をこなしたフランク・ミラー。原作は、アメリカン・コミック界の巨匠、ウィル・アイズナーによる30年代のコミック。
 『シン・シティ』では、『デスペラード』(1995年)、『グラインドハウス』(2007年)のロバート・ロドリゲスが共同で脚本・監督・製作を手掛け、さらにクエンティン・タランティーノもゲスト監督をしているだけあって、凝りに凝ったディープな映像世界を創り出していました。ブルース・ウィリス、ジェシカ・アルバ他、出演者も豪華で一部ファンの間では話題になりました。一方で、CG加工が入りすぎた画面は観ずらく、観る人を選ぶ作品となっていました。
 『ザ・スピリット』は、原作コミックにリスペクトした作品なので、フランク・ミラー監督もやり過ぎず、抑制を利かせながら物語と映像美をうまく両立させています。今回もロバート・ロドリゲスにアドバイスを受けたようですが、脚本・監督を一人でこなしているため、『シン・シティ』とは、かなり雰囲気の違う作品となっています。
 今作もモノクロ映像が中心ですが、主人公スピリットの赤いネクタイ、ブルーの瞳、白衣、研究室の明かりなど、一部分だけに配したカラーが効果的です。原作の土砂降りの雨に変わり、全編に雪が舞っている情景も美しく、映像センスは前作よりもアート性の高いものになっています。
 それは、美女たちの描き方にも表れています。『シン・シティ』ではコスプレでアクションさせるだけだったのが、今回は女優陣の美しさを強調して描写。ラテン系のエヴァ・メンデスには、身体にぴったりとしたスーツなどを着せて引きしまったお尻のアップ。スカーレット・ヨハンソンには三つ編みヘアにメガネっ子スタイルで、顔と胸のアップを多用。各女優の長所をうまく捉えています。
 物語は、セントラル・シティを舞台に元刑事のスピリットがマスクをかぶって巨悪犯罪に立ち向かうというヒーローもので、オフビートな笑いをまぶしつつ、フィルム・ノワールを意識した画作りで、エッジの効いたサスペンス・アクションを展開させていきます。劇中で徐々に明らかにされていく、スピリットの過去や恋愛、宿敵サミュエル・L・ジャクソン演じるオクトパスの秘密なども見どころです。
 同じアメコミ映画でも『X:MEN』や『スパイダーマン』のような、万人向けの作品ではありませんが、『ウォッチメン』ほど野心的ではなく、すっきりと決まるラストまでさらりと楽しく観られる“キュート”な作品になっています。


 次回は、2/5(金)より劇場公開予定の『インビクタス/負けざる者たち』にあわせ、“生きる伝説”クリント・イーストウッド監督作品を2本。2009年、洋画ベスト1であろう『グラン・トリノ』(2008年)と、同じくベスト10に入る『チェンジリング』(2008年)をご紹介します。





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最終更新日  2010年01月31日 17時21分39秒


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