小玉智子のお買い物ブログ

小玉智子のお買い物ブログ

2011年12月26日
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 落石に右腕を挟まれ、たった一人で断崖絶壁に取り残されたら…。青年登山家が体験した驚愕の6日間を『トレインスポッティング』(1996年)、『スラムドッグ$ミリオネア』(2008年)のダニー・ボイル監督が映画化。今回は、1/7にDVD&ブルーレイが発売予定のジェームズ・フランコ主演作『127時間』(2010年)をご紹介します。

 27歳の青年登山家アーロン・ラルストン(ジェームズ・フランコ)は、金曜日の夜、いつものように一人でユタ州のブルー・ジョン・キャニオンへ出かけた。ところが、ロッククライミングの最中に落石に右腕を挟まれ、身動きできなくなってしまう。誰にも行き先を告げていない。水は150ccしかなく、軽装で装備も少ない。持てる知識と経験を総動員して脱出を試みるが、岩を削ればさらに腕が食い込み、ますます自体は悪くなるばかり。大声で叫んでも誰も気づかない。アーロンは、はじめて自分勝手に生きてきた自分の半生を振り返る。両親、友人、恋人、彼らの事をもっと想いやるべきだった…。衰弱しながらも、生きたい、もう一度、生き直したいという想いが強くなる。アーロンは夢とも現実ともつかない世界を見ていた。やるしかない-。生きるためにアーロンは究極の決断を下す。

 アカデミー賞作品賞、主演男優賞、脚色賞等、主要6部門にノミネートされながら、惜しくも受賞を逃した2010年洋画ベスト10に入る必見作です。

 まだ観ていない方の中には、この過酷で悲惨な6日間を観る勇気がないと躊躇している人もいるかもしれません。でも、この作品の監督・製作・脚本は『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー賞8冠に輝いたダニー・ボイルだと言う事を忘れてはいけません。『スラムドッグ$ミリオネア』は、貧しく悲惨な子供時代を送った青年が最後まで夢と希望を持ち続け、未来を勝ち取っていく成功物語。そんな作品を作る監督が、悲惨で暗い作品を作るはずがありません。
 『127時間』は、ある青年が、どんなに過酷で苦しい状況でも決して諦めず、たった一人で逆境に立ち向かい、奇跡の生還を果たすという愛と勇気の物語です。鑑賞後には、誰もが明るく前向きな気持ちになれる感動作なのです。

 ではなぜ、これほどまでに人々に感動を与える作品を作る事が出来るのか…。その答えは、これまでのダニー・ボイル作品の中にあります。

 ジェームズ・フランコ演じるアーロンが元気いっぱいにブルー・ジョン・キャニオンへと向かうオープニングは、1996年のボイル監督の出世作であるユアン・マクレガー主演の『トレインスポッティング』を思い起こさせます。分割画面を多用し、軽快な音楽とテンポの良い編集で、陽気でエネルギッシュなアーロンの若さに溢れた魅力が存分に表現されています。観客の誰もがアーロンに親しみを感じた、開始から15分が経った頃、衝撃の展開が始まります。そう、アーロンの右腕が岩に挟まれるのです。このダニー・ボイルのストーリーテリングすなわち語り口の巧さは見事です。

 ボイル監督は、絶望的な状況に転じても冒頭のアーロンの心の高まりを持続し続け、決して暗いトーンの物語にしません。岩に挟まれてからも、アーロンはあらゆる知識を総動員して岩を取り除くための様々な方法を試します。夜には体温保持に努め、ロープにぶら下がりながら身体を休めるなど、山岳のプロらしく冷静に行動するので観ていて安心感があります。

 その後もじわじわと時は過ぎていき、寒さや飢え、嵐など、彼には様々な難題が降りかかります。この、どうすれば現状から抜け出せるのかという、主人公を追い込むサスペンスフルな展開は、『ザ・ビーチ』(1999年)や『28日後…』(2002年)でも描かれています。

 自信に満ち溢れたアーロンは、他人を顧みず、ロッククライミングに対しても若さゆえの過信がありました。でも、死を意識する中で、家族や友人など大切な人々の存在に気づき、ビデオカメラに記録しながら必死に精神の冷静さを保とうとします。
 ダニー・ボイル監督は、回想シーンを交えながらアーロンの心の変化を刻々と描き出しています。そして、遂には極限状態に陥った人間だけが到達する夢とも現実ともつかない世界が描かれていきます。

 原作者であり、この体験をした本人であるアーロン・ラルストンのインタビューによると、アーロンとプロデューサーのジョン・スミッソンは、当初、映画化するならドキュメンタリーしかないと考えていたようです。でも、監督に決まったダニー・ボイルと長い時間をかけて信頼関係を築き、ドラマ仕立てにすることを了承したそうです。
 もし、ドキュメンタリー映画を作っていたら、冒頭のアーロンの人柄を説明するシーンも、リズミカルな編集も、サスペンスフルな体験も描かれず、ただただ、厳しく辛い数日間を描いたシビアな作品になっていたでしょう。

 ダニー・ボイルは、この作品を通して、人と人との繋がりの大切さや、人間の生命力の強さ、生きることの素晴らしさを表現しようとしました。彼の計算された脚本や演出によって、一人の青年の体験談が、誰もが心の底から感動し、勇気をもらえる普遍的な作品へと形作られていったのです。

 そして、本作の成功に欠かせないもう一つの要因は、アーロンを演じたジェームズ・フランコの熱演です。
 ジェームズ・フランコは1978年4月、カリフォルニア州生まれ。UCLA在学中に演劇に目覚め、大学を中退。TVの2時間ドラマ『DEAN/ディーン』(2001年)でジェームス・ディーン役を演じ、ゴールデン・グローブ賞主演男優賞を受賞。『スパイダーマン』(2002年)で主人公ピーターの親友ハリー・オズボーン役で世界的に知られる若手俳優となりました。その後、『ミルク』(2008年)、『スモーキング・ハイ』(2008年)などに出演し様々な賞を受賞。コロンビア大学で修士課程を修了し、現在、イエール大学に在学中。
 彼はほとんど出ずっぱりの90分の間に、人間の持つありとあらゆる感情を演じきり、見事、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされました。アーロン=ジェームズ・フランコの生命力の強さと不屈の精神に心を打たれます。

 人生には思わぬ災難が降りかかることがあります。でも、アーロンは、絶体絶命の危機に直面しても、最後まで諦めずに行動し、よりよい未来を手に入れることが出来ました。実話であるだけに、考えさせられる事が多い作品です。

 次回は、2011年の洋画ベスト10をご紹介します。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2011年12月26日 23時30分48秒


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: