わんこでちゅ

10 ヤマダくんのダニな関係










ここ最近カーク君は病院にやってこない。毎日やりがいのある仕事を充実してこなしている筈なのに、なにかものたりない。

「ふへへへぁぁぁ~~っ。」

俺は大きなため息をついた。

「ヤマダせ~んせい、息つくひまもないくらい今日は忙しいんですよ。なのにため息ですかぁ~。」

しまった!みかちゃんにこの大きなため息をしっかり見咎められてしまった。しかもなにかというと、みかちゃんはひとことではすまないからなぁ。

「こんな状態でため息なんて、せ~んせい緊張感たりてませんよう。だいたい親の遺産かなんかで、ぽんとこんな病院つくっちゃうから、いけないんですよう。親が病院でもやってない限り、みんな苦労してんですからねぇ。」

確かにそうだが、親の遺産だけじゃないぞ。高校時代から必死に夢のためにバイトもしてたしな。それにこんな病院とはなんだ。こんな、、、とは。俺のような若いハンサムな男が、こういう状況でため息ついていれば、恋わずらいですか、、、。くらいに思ったり、心配してくれてもいいじゃないか。

「せ~んせいてば!早く薬だしてくださいよう。ごん吉くんがしびれきらして、飼い主ひきずりまわして、待合室かけずってますよう。」

うーーん、恋煩い?俺って誰かと付き合って、ため息なんてついたことがあるだろうか。会いたくて、会いたくてたまらなくなったことがあるだろうか。確かにデートの約束をすれば、うきうき楽しいことはあるが、忙しくて会えなくなったり、デートの約束がキャンセルになっても、こんな気持ちになったことはない。会いたい。無性にあいたい。ため息がでるぞ、、、、、、。

「せ~~~~~んせいってばぁぁぁぁーーーーっ!!!ちゃんときいてるんですかぁ?くすりぃーーーーっっっっ。早くしないとごん吉くんに待合室破壊されちゃいますよう!他の患者さんも迷惑してますってばーーーっ。」

「ああ、、、。」

俺はなにを考えているんだ。そのときだった。電話がなった。みかちゃんはごん吉くんの破壊工作の後始末におわれていそうなので、俺がでた。カーク君の飼い主からだった♪♪♪。ひととおり要件をきくと俺はこう伝えた。

「すみませんが、それもって明日休みなんで、僕の家まできてくださいませんか?みかちゃんにみつかるとそういうことにうるさいもんで、、。あ、できたらカーク君もつれてきてくださいよう。しばらくあってないから、是非顔みたいんです。楽しみだなぁ♪」

女性ひとりで男性の部屋を訪れるというのは、どうしても気兼ねするだろうから、俺はカーク君をつれてきてくれるように、ひとこと付け加えるのを忘れなかった。それにはもうひとつ理由があった。なにしろ中年女はやっかいなのだ。暇をもてあましてて、その上自分でなにもやらないくせにかまってもらいたくてしょうがなくて、てぐすね引いてまってる。ちょっとでもなにかかかわり合いでもできようものなら、まってましたとばかりにこちらの領分に毎日のようにせめこんでくる。今回たしかにお願いしたい要件はあるが、カーク君をつれてきてもらうように伝えたのは、予防線をはっておくという意味でも正解だろう。それに実はなにより、カーク君にもすごくすごく会いたいんだなぁ♪

「よ~し、やるぞう!」

待合室のかたづけがおわったみかちゃんがもどると、だーーーっと仕事をしはじめた俺をみて、びっくりしてこういった。

「せ~んせい、いきなりはりきっちゃってどうしちゃったんですかぁ?」












鴨をねらうカークとチャニ
鴨をねらうカークとチャニ

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