私の沼

私の沼

黒い神様と黒頭巾ちゃん



 そこは、盛り場のはずれの、薄汚れたラブホテルのベッドの上でした。
 黒頭巾ちゃんは、黒い神様と、何度も何度も抱き合いました。
 そして、それが済んだ後、黒い神様は言いました。
「黒頭巾ちゃん。これから1000人の男とセックスをしなさい。そのときに、けしてお金や物をもらってはならない。そうすれば君は幸せになれる」
 黒頭巾ちゃんの体の中を、その言葉は何回もぐるぐると回りました。
 黒頭巾ちゃんは答えました。
「黒い神様。わかりました。その通りにします。でも、これだけは聞いてください。わたしは幸せになれなくても構いません。それよりも、どうか、もう一度わたしを抱いてください。わたしには、黒い神様しかいないのです」
 黒い神様は言いました。
「そうか。わかったよ。それじゃあ僕は、たまに黒頭巾ちゃんの近くに来ることにしよう。いつも違う姿をしているかもしれないけれど、きっと黒頭巾ちゃんはすぐに僕だと気がつくだろう」
 そういいながら、黒い神様は、黒頭巾ちゃんの髪の毛を撫で、ゆっくりと煙草に火をつけました。
 黒頭巾ちゃんは、だから時々、黒い神様と会うことができます。
 黒い神様は遠くにいたり、近くにいたり、宅急便を持ってきてくれたり、タクシーを運転していたり、一緒の電車に乗り合わせたりします。
 黒頭巾ちゃんが合図をすると、黒い神様はすぐに気がついてくれるのです。
 黒頭巾ちゃんは黒い神様ともう何度抱き合ったことでしょう。
 黒頭巾ちゃんは幸せなんかいりません。
 でも、黒い神様は、幸せにしてくれるというのです。
 まだ1000人には届きません。
 黒頭巾ちゃんを抱いてくれる男性が現れてくれるうちに、約束が果たせるのかどうか、黒頭巾ちゃんは自信がありません。
 しかし、聖なる言葉は、絶対なのです。







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