シナリオ掲載・短編企画2本



1  マンションの一室。
    玄関に置かれた、一つのボストンバッグ。
    ジャージのズボンを膝まで捲り上げ、Tシャツを着た男がベッドの上で眠っている。
  男(アナ)「僕の朝ご飯。」
    コンロの上に置かれた、熱されたフライパン。
    一人の女が、それに卵を割りいれて蓋をする。 
  男(アナ)「目玉焼きは、黄身にまでしっかりと火がとうって無ければいけない。」
    蓋を開ける女、黄身が半熟の目玉焼きが出来上がる。
    それを皿に盛りつける女。
  男(アナ)「醤油を目玉焼きにかける奴がいるが、目玉焼きにはソースが一番おいしい。」
    目玉焼きにたっぷりの醤油をかける女。
  男(アナ)「トーストには、何も塗らずに置いておくこと。」
    焼きあがったトーストにバターを塗る女。
  男(アナ)「コーヒーはブラック。カフェオレなんてコーヒー牛乳。」
    コーヒーに牛乳を入れてかき混ぜる女。
  男(アナ)「最後にデザートのグレイプフルーツ。砂糖をかけるぐらいならオレンジを食べればいい。グレイプフルーツには砂糖は掛けない事。」
    グレイプフルーツにたっぷりの砂糖をかける女。
  女「うん、美味しそうに出来た。」
   テーブルの上に朝ご飯を綺麗に並べ、花瓶に生けた花を飾る女。
   シンクに放りだされたままの洗い物。
  女(アナ)「私が食べたかった、彼の食べたくない朝ご飯。これが彼の最後の朝ご飯」
   ベッドの方に行き、軽く男の体を揺さぶる女。
  男「(寝ぼけながら)どしたん。」
  女「私、今から出て行くから。」
  男「(寝ぼけながら)うん、いってらっしゃい。」
  女「朝ご飯作ったから、ちゃんと食べてな。」
  男「(寝ぼけながら)うん、ありがと。」
   再び眠ってしまう男。
   ボストンバッグを持って、出て行く女。
   鍵のしまる音。
   新聞受けから投げ入れられる鍵。
~END~                                          


タイトル:ビットインアップル。

1  テーブルの上に置かれた一口齧られた跡のあるリンゴ。
  マンションの一室。テーブルを挟んで一組の男女が座っている。
  女の手には果物ナイフが握られている。
  男はスーツを着ている。
 女「神様は七日間で世界を作ったらしいよ。」
 男「凄い、手抜きだったんだね。」
 女「そうね。」
 男「だから、僕と君は傷つけあうんだね。」
 女「それを神様のせいにするのは可哀想よ。」
 男「でも、神様が男と女を作ったんだろ。」
 女「そうだけど、傷つけあうのはアダムとイブが禁断の果実を食べたから
   よ。」
 男「禁断の果実を作ったのも神様だろ。」
 女「どうだったかしら。」
   立ち上がり、煙草に火を点ける男。
   リンゴの皮を剥き始める女。
   タバコを持ったまま灰皿を探す男。
   途中で何度も皮が切れるリンゴ。
   灰皿を見つけ、それも手に持ち立ったまま煙草を吸っている男。
   りんごの皮をむき終わる女。
 女「座ったら。」
 男「これ吸い終わったら。」
   煙草を灰皿で押し消し、女の前に座る男。
 女「リンゴの中って昔ヨーロッパでは魔女が使った縁結びの果物だったんだよ。」
 男「どうして。」
 女「リンゴの中に星が在るからだよ。」
 男「どんな星が在るん。」
女「見たい?」
男「見たい。」
手に持った果物ナイフでリンゴを横に真っ二つにする女。
断面を男に向ける女。
 男「微妙。」
 女「私達と一緒。」
 男「帰るな。」
   部屋を出て行く男。
   リンゴを手に取る女。
 女「食べにくいな。」
   リンゴを齧る女。
~END~

著作権は放棄していません。無断転載・勝手に実写化禁止。




© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: