オージー生活

オージー生活

交際中の波風



当時、私の遠距離恋愛の彼というのは、私よりひと回り以上年上で離婚歴のあるドイツ人で、ドイツと日本を行ったり来たりしてた。日本語がむちゃくちゃ上手く、現地で仕事してて仲良くなった。さすがヨーロッパ人というか、とにかく情熱的で、四六時中「愛してる」と言ってるようなひと。最初はそれこそドラマかよ?って位盛り上がった恋愛だったんだけど、だんだん違うかなあ,と思って来ていた。
なんというか、彼にとっては私はまだまだ指導が必要な生徒のような存在で、一方彼は頑固なドイツ人、

「僕の言う通りにしておけばあなたは間違いないよ」

と何度も言われたけど、それじゃ私の人生って何?とも思えて来てた。

このオーストラリア人の彼に英会話学校で知り合って遊びに行ったりしてることも、ドイツ人彼に言ったけど、余裕で

「ああ、楽しめるんならよかったね。年も近いから楽しいかもよ。日本に来たばっかりの外人は何でもめずらしいし。ところで今度僕が日本に行く日なんだけど。。。」

てな感じで、気にならない様子。
私も、彼女のいる彼に、自分だけ本気になってもつまらないので、まあ、いいや、なるようになるだろうと思うことにしていた。

ある日、いつものように英語のレッスンの予約をしようとオフィスに電話したら、私が行けるかな、と思った日の先生は彼の彼女の名前だった。

「はい、それ予約します」

と告げた私。彼に言うと、

「何でそんなの行くの?行かなくていいよ!」

と止めようとする。でも行きました。

なんと生徒は私一人。(私にとっては)大変気まずいプライベートレッスン。彼女は私の好みでは無いけど、綺麗かもしれないお顔。凄く小さい顔。でも身体付きはグラマーで、またオーストラリアそのままの格好なので、タンクトップにデニムのショートパンツといった、くらくらする露出。髪がお尻まであるくらい長い。教え方は丁寧。ことあるごとに、

「あなたはどこに旅行したい?私はカナダに行きたいの。私の彼氏も行きたいって言うし。。。」

と彼のことを言う。

「あなたの彼氏の授業うけたことあるわ」

と私が言うと、

「そう?私たち、オーストラリアで前に一緒に働いてて、彼の妹と3人で一緒に住んでたの」

とか教えてくれた。

さすがになんとも後味の悪い授業が終わると、私の持ってたPHSに、彼から電話が入って来た。

「もう終わったでしょ。これから会おう」

と言う。会うと、

「どうだった?なんか言いたいことありそうな顔だよ」

と聞くので、彼女の印象などを正直に話した。と、彼は、

「僕は彼女のことはもう彼女とは思ってない。ルームメイトか、一緒に旅して来た友達だ。でも、一緒に外国に来て、実際今一緒に住んでる訳だから、そう簡単にどちらかが出て行く訳にはいかない。もう少し待って欲しい。僕は君のことが好きだと思う」

と言われた。え、もう少しっていつ??と思いながらも、やっぱり嬉しくて、初めて、あ、私も自分の身辺整理をしなくちゃ、と思ったのでした。
ひとに言うなら、自分からね。

ちょうど、遠距離恋愛のドイツ人から連絡があり、もうすぐ日本に行けるかもしれないという。これはもう隠せないな、と思い、

今、前に話したオーストラリア人の彼のことが凄く好きになっている。悪いけどもうあなたを受け入れることはできない。

と告げた。迷いは無かった。このひとは私と一緒に成長してくれるひとではない。もう出来上がっているひとだ。私の力はいらない。何かを一緒につくりだすことはできない。。。。と思うのに、泣けて来た。
電話の向こうでドイツ人の彼は

「そんなに泣いてくれるなら、どうしてそんな悲しいことを言うんだ。。。僕は君との未来も考えてたのに。。。」

と、初めて私の真剣さを分かった彼も泣いていました。

自分の方に引け目がなくなったからか、私は前にも増して彼の彼女が気になるようになって来た。
それでも毎日は過ぎて行き、楽しかった。

そんなその年の9月、私は仕事で2度目のドイツ取材旅行に行くことになった。ドイツ人の彼に会う予定はない。もう1度目の仕事で彼と絡むのは終わっていたから。予定では2週間。私がそのことを言うと、

「そんな、2週間も会えないの。寂しい。どうしよう」

と言ってくれた。毎日のように会っていたので。手紙を出したいけど出したら彼女にばれるから、書いて持って帰ってくる、それを後で手渡す約束にした。出発前の留守電には

「I just want to say, I'm gonna miss you so much.Take care of yourself (凄く寂しくなるけど、気をつけてね)」

と入っていた。

ドイツに行くと、ドイツ人の元彼が私のいるところに、仕事仲間のドイツ人に聞いたと言って会いに来ました。でもま、おかげで、仕事のあとにまた涙の説明をして、本当にお別れできた。
その旅行中になんとなく気づいたのは、一日だけドイツ人の元彼が通訳を買って出てくれたことがあるのだが、交渉相手のドイツ人が

「あ、日本人ですね。英語で話しましょうか?」

というのに、元彼は

「いやいや、私が訳しますから」

と言って引き受けてしまい、ドイツ語で話し始める。そりゃあ私も英語で交渉ごとまでする力はないにしても、なんとか意味くらい分かるかもしれない。でもドイツ語だと全くわからない。すごい疎外感があるし、私の仕事なのに、なんて役立たずなの、、と思うと、元彼がホントに訳してくれてるのかさえ疑わしくなってくる気持ちさえ湧いて来てた。彼にしてみれば、自分の存在感をアピールしたかったのかもしれないが。
と、ああ、オーストラリア人の彼も、私や他のひとがが日本語でしか話さないとき、こんな疎外感を感じるのね。。と気づいた。

当時彼がアフターシェーブローションでつけてたのがドイツメーカーので、同じ香りをさせているドイツ人に会うと、ドキッとしたりもして、ああ、私はホントにあの彼が好きなんだなあ、と実感していた。

日本の留守電をチェックしてみると、彼が、私がいないのを知ってるのに毎日のようにメッセージを入れてくれ、一度はレッスンの予約生徒に私の名前を見つけて、帰って来てるのに連絡くれないなんて、と怒って行ってみたら人違いだった、というようなことも留守電に入っていた。

帰って来て、交際熱はいよいよ高まって来た。でも相変わらず彼女は彼の家にいるし、私がキレて、彼がもう少し待ってくれ、となだめるのの繰り返しがあったのだが。。。



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