女子高生Aの日記(仮)

女子高生Aの日記(仮)

輪違屋糸里

『輪違屋糸里』(上)(下)
作:浅田次郎
出版:文藝春秋

☆あらすじ
芸事を生業とする芸妓の町、島原。この京の町には、「壬生浪」として恐れられる新撰組が駐屯していた。
輪違屋の天神(←芸妓のクラス。上から2番目)、糸里は密かに土方歳三に想いを寄せていた。
しかし、そのころ新撰組内では、局長の1人・芹沢鴨の横暴に対する反発が強まり、土方派による粛清が決行されようとしていた。
土方のため、陰謀に加担する糸里。明日をも知れぬ情勢の中で、翻弄されていく、女性としての糸里、芸妓としての糸里。彼女の運命は…。

★ひとこと
浅田さんの作品はどれも、本当に描写が鮮やかです。色が見えるようです。
その描写力が、芸妓の装いの場面に遺憾なく発揮されて、とても美しかったです。

『壬生義士伝』の方でも書いたように、浅田さんの独特の新撰組観に基づいて描かれる新撰組は、とても魅力的です。
でも、今回は新撰組が主役ではないです。
あくまで、主役は糸里天神。そしてその周りの天神や太夫たち。

今回も、浅田さんの作品に多い「様々な角度からの視点」が使われてます。
何のことやら意味不明だと思いますが。
新撰組の中で、芹沢さん、土方さん、近藤さん、永倉さん、沖田さん…などなど、彼らがそれぞれ何を胸に秘めているのか、全部書いてくれるわけです。
「あぁ、すれ違ってる…」と(笑)。

芹沢鴨暗殺後の、現場の糸里の台詞。素敵でした。
新撰組の人たちは、元々武士ではない人が多く、武士にならなければと思っているようです。そんな彼らの抱える矛盾や歪みを、鋭く突いた、真っ直ぐな言葉でした。

全てが終わった後、糸里は太夫(1番上のクラスの芸妓)に昇格し、名前も変わります。
彼女が、自分の所属する店である輪違屋から、客の待つ座敷の角屋に向かう道中がラストシーンですが、これは最初の場面とも密接に関わっていて、いっそう素敵でした。

この作品には、女性が主要な立場で登場します。
彼女たちも、また時代に抗う術を持たない弱い人間です。でも、とてもそうは思えない。
少なくとも、屈折していない、真っ直ぐな行動が胸に迫りました。それも、何度も何度も転んで、傷ついたからこそ得た真っ直ぐさです。
新撰組は結局、真っ直ぐになれなかったような印象を受けました。

自分に正直に生きる。
言葉ほど簡単なことじゃありません。でも、この作品に見えるものはそれだと思いました。



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