ウクライナにしろパレスチナにしろ、戦乱の黒幕はシティとウォール街を拠点とする金融資本であり、東アジアで軍事的な緊張を高めているのも構図は同じ。シティとウォール街を拠点とする金融資本は緊密な関係にあるが、そうした構図を生み出しているのは19世紀にイギリスで作成された世界制覇戦略だ。
ところが、その戦略が大きく揺らいでいる。ウクライナでは金融資本の手先であるネオ・ナチ体制軍の敗北が決定的。ロシア軍は敵の要塞線を突破し、西へ進んでいる。
イギリスのベン・ウォレス前国防相は昨年10月1日、戦場で戦うウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えているとテレグラフ紙に寄稿した記事の中で指摘 している。前線で戦う兵士の平均年齢は42歳だと言われていたので、この話は正しかったのだろうが、今の状況はさらに悪化しているはずだ。
ガザではイスラエル軍が建物を破壊、住民を虐殺している。アメリカやイスラエルが「建国」する際に行なったようなことを繰り返しているのだが、ハマスとの戦闘は苦戦しているようだ。ウクライナに軍事支援してウラジミル・プーチン政権を倒し、ガザを原爆が投下された長崎や広島のようにして早く軍事作戦を終わらせろとアメリカのティム・ウォルバーグ下院議員は言っている。それだけ苛立っているのだろう。
アメリカやイスラエルは先住民を虐殺したり追放した後、自分たちの「国」を建設した。パレスチナに「ユダヤ人の国」をでっち上げたイギリスはアイルランドやスコットランドなどでも住民を虐殺している。
例えば、ピューリタン革命で実権を握ったオリバー・クロムウェルはアイルランドに軍事侵攻しているが、侵攻前の1641年には147万人だった人口が侵攻後の52年には62万人に減少している。50万人以上が殺され、残りは「年季奉公」や「召使い」、事実上の奴隷としてアメリカなどに売られたと言われている。
ピューリタンは1620年にメイフラワー号でアメリカへ渡った。この人たちはピルグリム(巡礼者)・ファーザーズと呼ばれているが、北アメリカでイギリスが植民した地域でピューリタンは「新イスラエル」を建設していると信じていたという。
ピューリタンの前からヨーロッパ人はアメリカ大陸へ移民している。1492年にはイタリアのジェノバに生まれたクリストバル・コロン(コロンブス)がカリブ海に現れ、グアナハニ島に上陸したが、その当時、北アメリカには100万人とも1800万人とも言われる先住民が住んでいたと推測されている。これだけ数字に幅があるのは、ヨーロッパからの移住者が先住民を何人殺したかが不明だからだ。1890年にウーンデット・ニー・クリークで先住民の女性や子供がアメリカ陸軍第7騎兵隊に虐殺された時には約25万人に減少、生き残った先住民は「保留地」と名づけらた地域に押し込められた。それを「合法化」するため、「強制移住法」が施行されている。
その間、1776年に「独立宣言」、そして81年に「建国」が宣言された。独立宣言では「すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」と謳っているが、先住民について「年齢・性別・身分を問わない無差別の破壊を戦いの規則とすることで知られる、情け容赦のない野蛮なインディアン」と表現、アメリカ・インディアン虐殺が始まる。
勿論、先住民でけでなく奴隷も人間として扱われていない。奴隷というとアフリカ系を連想する人が多いだろうが、アイルランドなどから売られてきた奴隷もいる。中国から連れてこられた「苦力」も一種の奴隷だ。アメリカの「民主主義」はその程度の代物だということである。
アメリカを「建国」していた人びとが敵視していたイギリスの支配層も似たようなもの。19世紀後半のイギリスを動かしていたのは金融の世界に君臨していたナサニエル・ロスチャイルド、その資金を使って南部アフリカを侵略し、ダイヤモンドや金を手にしたセシル・ローズ、そのほかウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレット(エシャー卿)、アルフレッド・ミルナー(ミルナー卿)たちだ。
この中で世界支配の戦略を立てたのはローズだと言われているが、この人物は1877年にオックスフォード大学を拠点とする秘密結社「アポロ・ユニバーシティ・ロッジNo.357」へ入会、その直後に「信仰告白」を書いている。
それによると、ローズはアングロ・サクソンが「世界で最も優れた種族」だと主張、そのアングロ・サクソンが住む地域が広ければ広いほど人類にとって良いことだとし、そうした戦略を実現するために秘密結社は必要だとしている。ローズは大英帝国を拡大させ、アングロ・サクソンをひとつの帝国にまとめたいと考え、その目標を実現するためにアメリカも支配したかったのだ。おそらく、その帝国の中にイスラエルも含まれている。