《櫻井ジャーナル》

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2024.05.16
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 ウラジミル・プーチン露大統領は中国政府の招待で5月16日から17日にかけて同国を訪問、習近平国家主席と会談する予定だ。3月に行われたロシアの選挙で圧勝したプーチンは5月7日に新たな任期をスタート、その最初の訪問先に「戦略的同盟国」の中国を選び、その絆を世界に示そうとしているのだろうが、10年ほど前まで中国とロシアはそのような関係になかった。

 1972年2月にリチャード・ニクソン大統領(当時)が中国を訪問、北京政府を唯一の正当な政府と認め、台湾の独立を支持しないと表明して米中は国交を回復させているが、それは中国とソ連とを引き離すことも目的のひとつだった。

 新自由主義は社会的な強者に富を集中させる仕組みであり、中国でも貧富の差が拡大、労働者の不満が高まる。社会は不安定化して胡耀邦や趙紫陽は窮地に陥り、胡耀邦は1987年1月に総書記を辞任せざるをえなくなり、89年4月15日に死亡した。新自由主義を支持する学生はその日から6月4日までの期間、天安門広場で中国政府に抗議する集会を開いた。

 1989年1月からジョージ・H・W・ブッシュがアメリカ大統領となったことも学生の動きに影響している可能性が高い。就任直後にブッシュはイギリスのマーガレット・サッチャー首相とソ連を崩壊させることで合意しているが、矛先は中国にも向いていただろう。

 ブッシュはジェラルド・フォード政権時代の1976年1月から77年1月にかけてCIA長官を務めているが、彼はエール大学時代、CIAからリクルートされたと言われている。同大学でCIAのリクルート担当はボート部のコーチを務めていたアレン・ウォルツだと言われているが、そのウォルツとブッシュは親しかった。しかもブッシュの父親であるプレスコットは銀行家から上院議員へ転身した人物で、ウォール街時代からアレン・ダレスと親しかった。言うまでもなく、ダレスはOSSからCIAまで秘密工作を指揮していた人物だ。ブッシュは大学を卒業した後にカリブ海で活動、1974年から75年まで中国駐在特命全権公使(連絡事務所長)を務めている。

 大学時代にジョージ・H・W・ブッシュと親しかったジェームズ・リリーは1951年にCIA入りしたと言われているが、そのリリーをブッシュ大統領は中国駐在アメリカ大使に据えた。リリーは中国山東省の青島生まれで中国語は堪能だ。そして中国で反政府活動が始まるが、これをを指揮していたのはジーン・シャープ。背後にはジョージ・ソロスもいたとされている。学生たちと結びついていた趙紫陽の後ろ盾は鄧小平だ。

 こうした動きはあったものの、中国労働者の新自由主義に対する怒りは強く、軌道修正が図られた。それでも地方の実力者たちは新自由主義を捨てず、中国ではアカデミーやビジネスの世界に対するアメリカ影響力は強いままだった。

 そこで、日本の「識者」たちはアメリカと中国との関係は絶対的で、壊れることはないと主張していた。アメリカの支配層は中国のエリートについて、自分たちに背くことはないと信じていたようだ。

 そうした考えをひっくり返す出来事が2013年11月から14年2月にかけてウクライナで引き起こされた。バラク・オバマ政権がネオ・ナチを利用して仕掛けたクーデターだ。このクーデターで東部と南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチ大統領の排除に成功した。

 このクーデターにはいくつかの目的がある。アングロ・サクソンの支配者が19世紀から計画していたロシア征服の実現がひとつの目的。ロシアからEUへ天然ガスを運んでいるパイプラインがウクライナを通過しているが、ウクライナを支配下に置くことで天然ガスの輸送を止め、ロシアとEUとの関係を壊そうとしたことも目的だ。ロシアの安い天然ガスを奪うことでEUを弱体化させ、EUというマーケットを奪うことでロシアの経済を破壊できるとアメリカの支配層は計算したと考えられている。

 EUの弱体化には成功したものの、ロシアは中国への接近を図った。ウクライナの状況だけでなく、2014年9月から12月にかけてアメリカとイギリスの情報機関、つまりCIAとMI6は香港で反中国運動、「佔領行動(雨傘運動)」を仕掛けたことも中国がアメリカへの信頼を失う一因になった。

 中国もロシアへの接近を図り、両国は戦略的同盟関係を結ぶ。その関係を強化するために天然ガスのパイプラインや交通システムを建設、両国は経済的に強く結びつくことになった。

 2015年には中国とロシアが「一帯一路」を「ユーラシア経済連合(アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、ロシア)」と連結させると宣言、中国とロシアを中心とするSCO(上海協力機構/上海合作組織)やBRICSは世界各国を引き寄せ、アメリカ中心の支配システムを揺るがしている。

 ところで、1991年12月にソ連が消滅した後、ネオコンはアメリカが唯一の超大国になったと考え、好き勝手に行動できるようになったと信じた。そこで米英の私的権力はロシアの富を盗むと同時に世界制覇プロジェクトをスタートさせる。

 その青写真とも言うべき存在が1992年2月に作成されたDPG(国防計画指針)草案。大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はディック・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツだったが、ウォルフォウィッツが中心になって草案は書き上げられた。そこで、この草案は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。

 目的のひとつは新たなライバルの出現を防ぐことにあり、警戒する地域には旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジア、西南アジアが含まれる。また、ドイツと日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に組み入れ、「民主的な平和地域」を創設するともしている。このプランに基づき、日本は1995年にアメリカの戦争マシーンに組み込まれた。

 日米欧の支配層は今でも自分たちを世界の覇者になったと信じているのかもしれないが、それは妄想にすぎない。核兵器で脅し、生物兵器の準備を進めているようだが、彼らの計画通りに進むとは思えない。






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最終更新日  2024.05.16 00:00:10


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