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「アンドレス、どうかしたの?」
「え…いや…――」
「もしかして、今度の決戦のことで何か?
とても激戦になるって、私も聞いて……」
すっかり案ずる眼差しになって、顔色も蒼ざめてきたコイユールに、アンドレスは半ば焦って、「いや、そういうことじゃなくって……!」と、首を振った。
「じゃ、何なの?」
「――って、いうか、今、トゥパク・アマル様に見蕩れてなかった?!」
「え…っ!?」
コイユールは、くっきりとした目を大きく見開くと、混乱気味に黒い瞳を揺らした。
それから、先刻の自分の姿を思い出すかのように視線を漂わせ、やがてポツリと呟く。
「確かに、トゥパク・アマル様の方を見てはいたけど、私…別に見蕩れてなんか…!
アンドレスこそ、今日は、なんで、そんな言い方するの?」
戸惑いがちに己の顔を覗き込んだコイユールに、アンドレスは、つぃっと横を向く。
「だって、昔っから、コイユールは、トゥパク・アマル様には、いつもそんな目で……」
そう言いかけたまま耳元を染めている相手に、コイユールも、パッと顔を上気させた。
「やだ…!
アンドレスったら、まさか…妬いてるの?」
「ややややや妬いてなんかっ……!!!」
【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆
≪トゥパク・アマル≫
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪アンドレス≫
トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。
若くして剣術の達人であり、インカ軍最年少の連隊将。
スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。
英国艦隊及びスペイン軍との大決戦に向けて、ラ・プラタ副王領への遠征から、ペルー副王領のインカ軍本隊へと帰還を果たした。
≪コイユール≫
インカ族の貧しくも清らかな農民の少女(18歳)。義勇兵として参戦。
代々一族に伝わる神秘的な自然療法を行い、その療法をきっかけにアンドレスと知り合う。
アンドレスとは幼馴染みのような間柄だったが、やがて身分や立場を超えて愛し合うようになる。
『コイユール』とは、インカのケチュア語で『星』の意味。
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