☆.。.:*・゚ Cooral Reef ☆.。.:*・゚

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第1話




(また…来てない…)



間もなく授業が始まるというのに、拓哉の姿はどこにも見あたらない。



「夏輝。彼またサボり?」

友人の声に、笑顔を引きつらせた夏輝は、鞄を持ち立ち上がった。



「ちょっと拓哉、迎えに行ってくる…。先生にはテキト-にゆっといて!」

お願いね!笑顔で走り去る夏輝に

「…夏輝、大丈夫なの?」

「夏輝まで不良の道に引きずられなきゃいいけど…」

心配する友の声は届いていない…





拓哉はかなりの”問題児”だ。

かといって、”嫌われ者”という訳ではなく、むしろ女子からの人気は絶大で。

多少喧嘩っ早いのと素行の悪さが不評の原因か…



その拓哉と、優等生の夏輝…二人が付き合っていることは有名な話しだった。

誰とでも仲の良い夏輝と、夏輝だけしか眼中にない拓哉…

その二人のやりとりが、ひそかに注目されているのを

本人達は知らない…









その頃夏輝は、拓哉の住むマンションに来ていた。

家庭の事情で兄と二人暮らしなのだが、すでに社会人の兄は、滅多に帰ることはない。

今日もおおかた、一人寝過ごしているのだろう。





鞄から携帯を取り出し、ボタンを押した

…………

16回目の呼び出しに、ようやく



「…あ…おはよ-…」



寝ぼけた拓哉の声。



「な-にが ”おはよ-”よっ!今、何時だと思ってんの?」



「…え…え-と、10時23分だけど…」



「って!!時間聞いてるわけじゃないよ!!学校行くつもりあるのっ?」

思わず大声をあげてしまい、道を行く人から笑われてしまった…。



「おまえ、今どこ?まさか、迎えに来た?」



「そのまさかよ…。早く降りてきてよ。」



「…鍵開けとくから、とりあえず入ってこいよ。」



「ちょっとっ…って、もう切れてるし…」





携帯のストラップを振り回しながら、部屋へと向かう夏輝。

部屋の前まで来ると、ドアから顔だけ覗かせる拓哉。



「久しぶり…」



「ほんと。3日ぶり?午前中に起きてるあんたに会うのは。」



皮肉たっぷりの夏輝の言葉を、聞いているのかいないのか

「まっ、せっかく来たんだから、ゆっくりしていけよ。」

そう言うと

そそくさと、部屋に押しやられてしまった。





二人暮らしにしては、広い部屋。

物をあまり置いていないせいもあり、余計に広く感じる。

夏輝は、生臭い室内に、顔をしかめながら窓を開けた



「朝起きたら、カ-テン開けて、窓開けて、空気の入れ換えくらいしなさいよ…」



「してるぜ…。お前が来たときは。」





「もういいです…」



床に散らばった服をたたみ、ゴミを拾い、一通り片づけ終わると、やっと腰を下ろした。

(ホント…だらしないんだから…)







高校1年の時に、転校してきた拓哉は

夏輝に”一目惚れ”をした。

夏輝も同じようなもので。

思いが通じ合ってからは、毎日のように、この部屋で一緒にいる。





「で、何?」

ベッドに転がりながら、しれっと拓哉は言う



「学校行くのよ。何度言わせるつもり?…」

ここまでくると、怒る気も失せる…





「…進級出来なくなってもいいの?」



「…制服着るから待ってろ…」





怒ったような夏輝の声に、やっと腰をあげる拓哉は

何を思ったか


「よし、と。」



ベットに脱ぎ捨ててあった制服に袖を通す





と、いきなり振り返り



「あ-っ!藤田さん学校サボってるわ-っ!!」



「って、あんたを迎えに来たんでしょ-っ!!」 



(もう、やってらんない…)



軽い目眩を感じながら、ベットに背を預ける



拓哉の制服の横で反射していた手鏡をとり

左耳に付けた、拓哉に買ってもらったピアスを揺らしてみた





耳に付けてもらった時の事を想い出し

くすぐったいような気持ちにうかれながら、ふと、視線を下に移すと…



「…拓哉…早くしないと…。」




「早くしろって…。」



「…こんなじゃ…怒られちゃうよ…」



「じゃ、行くのやめるか?」





…これは…確信犯か?…

心なしか、ニヤニヤしてる、拓哉の顔





「…もう…いいよ。わたしの負け!明日は絶対学校行くんだよ!」



「…わかったよ…俺も、もう一年高2なんてやだからな…」

そう言いながら、後ろから、夏輝を抱き締めた





「あ-…腹減ったぁ…なんか食おうかな…」



「じゃ、コンビニ行こう。」



「おぅ…」




…………





「……………」





「…あのね、たく…」



「コンビニ行こうぜ」



夏輝の言葉を遮るように、脇に手を入れ、軽々と夏輝を抱え起こした



「…うん。私、プリン食べたい。」



「はいはい、買ってやるよ。」



財布の中身を確認し、少し目を細める拓哉を

しばらく見つめていた



夏輝の一番好きな、その表情



「…なんだ?誘ってんのかぁ?…」



少しいたずらに笑いながら、頭を軽く弾かれ

夏輝は俯いた





ごめんね、拓哉

私……まだ、話してないことがあるんだ…




でも…







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