オーディション詐欺



業界全体のイメージを利用して悪巧みを企む輩も多い。
デビューを餌にワイセツ行為を強要したり、事務所への登録料などの名目をつけては金を騙し取るといった事件は跡を絶たない。
芸能界-その華やかな世界に憧れる若い女性の夢を食い物にする悪党だ。

芸能界志望の若者たちから金を騙し取る手口の一つに、オーディション詐欺がある。
架空の芸能事務所を作って、「新人俳優募集」「出演者募集」といった広告を打ち、応募してきた人たちから審査料などの名目で金を取るのである。
実際のオーディションも、たいてい第一次審査は書類選考なので、そのを利用したものだ。

次いで、応募者全員に第二次審査費用という名目で再び送金させる。
被害額は一人あたり数千円から二、三万円というところだが、それが五十人、百人となればかなりの金額になる。
いつまでたっても第二次審査が行われず、応募者が詐欺だと気づいたときにはもう遅い。
犯人は金を持って行方をくらましているわけである。

もっと直接的なあくどい手口もある。
芸能界志望の女性の実家が裕福で、両親も娘の芸能界入りに積極的となれば、騙す側にとってこれほど最高のカモはいないはずだ。

某県出身の十八歳の娘と知り合ったその男、娘の実家が豪農であり、両親もまた娘を歌手にしたいと望んでいることに目をつけた。
そして、「歌手になるのはプロダクションに所属したほうがいい」と両親を説き伏せて、事務所の資金としてまず三百万円を出させることに成功する。
こうなればあとは名目をつけては金を出させるだけである。
プロデューサー連盟への支払い、映画出演料、テレビ出演料などなど、もっともらしい理由をつけては一回に数百万円から三千万円、計四十数回にわたっておよそ二億六千万円を騙し取ったのである。

この男の狡猾なところは、まがりなりにも娘に芸能活動をさせていたことだ。
自らを社長にした所属事務所を設立し、娘を所属歌手として流しで歌わせていたのだ。
これならしばらくは「なかなかチャンスがない」などと言ってごまかすこともできる。

約三年後、両親もさすがに騙されたと気づいたが、時すでに遅し。
男が要求する金額を用意するために、田畑もすでに売ってしまっていた。



© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: