里の種

里の種

2009/08/01
XML
カテゴリ: 戯言
半透明のミズクラゲが大量に うわうわと浮かんでいて
まだ小さい弟は海に入るのを嫌がった
兄は構わず入っていった
大量のクラゲがぬめりのあるビニールのように
足にまとわりつくのは気持ち悪かったが
心配そうに見ている弟の視線を気にして平気な振りをしていた
兄は弟の名を呼んで手を振った
弟は波打ち際まで来て手を振り返していた
兄は屈んでミズクラゲを掴まえ始めた
そうして 小さいミズクラゲを掬っては浜にいる弟の方に投げつけた
足の近くに落ちて破裂するように砕け散る度に
弟は悲鳴のような歓声をあげて飛び退いた
兄は弟の笑い声を久しぶりに聞いた気がした
次第に慣れてきたのか
弟は投げたクラゲを自分の身体で受け止めようとし始めた
それに気づいた兄はクラゲを弟の体に向けて放り出した
弟はそれをドッジボールを受けるように両手を差し出して
受け止め切れずに足元に不器用に落としては
照れくさそうな笑顔を兄に向けていた
クラゲの爆弾を受けながら弟は笑っていた
その内 ひとつが弟の顔にまともに当たって砕けた
その拍子に弟は後ろに倒れ尻餅をついた
兄は はっとして動きを止めた
顔を濡らした弟はしばらく きょとんとしていたが
直ぐに立ち上がって顔を腕で拭うと
また 大声をあげて兄を呼んだ
笑っている
真昼の太陽が暑く地上を照らしていた
痩せて青白い弟の肌が濡れて光っているのを眩しそうに見ながら
このときが永遠に続けばいいのにと兄は思った





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2009/08/01 08:47:03 PM
コメント(1) | コメントを書く
[戯言] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


兄弟いいですね  
クラゲには気の毒ですが・・
いい想い出になったのかな?

(2009/08/01 09:39:01 PM)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: