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怠惰の箱庭2nd
第3章 能力
声が聞こえる。
「聞こえてるだろ?起きろよ」
ああうざったい。俺は寝ていたいんだ。静かにしてくれ。
「能力やお前が殺した奴について聞きたくないのか?」
能力?殺した?そんなことあったか?記憶を探る。思い出したのは、
命乞いをする柊を冷静に、この上ない程残酷に殺し血に濡れて微笑を浮かべる自分の姿だった。
「アアアアアアアアァァァッッッ!」
跳ね起きる。周りを見渡しさっきの声の主を探す。
「叫びながら起きるのがお前の習慣なのか、刃の能力者」
壁際に寄りかかっている少年――卓とかいう奴が言った。にしても偉そうな口調だ。
「刃の能力者?何だそれ」
そのまんま聞き返す。
「お前の能力の形が刃だからだ。モノから剣を創り出すなどそれ以外に考えられない」
「だから何なんだ、能力者って。そこから説明しろ」
警戒しつつ質問する。
「はぁ。自覚が無かったのか。・・・・まあいい。能力者は科学では説明のつかないような超常現象を起こす事が出来る亜人間の事だ。もっとも、能力を制御出来ずに死ぬ奴や、頭が狂ってしまう奴の方が多いがな」
淡々と説明されてもよく分からない。
「能力者って何者だ?亜人間ってどういう事だ?」
「そこから説明しろと?面倒な奴だな。いいか、能力者とは今から約2000年前にそのころの最高のテクノロジーを使って創られた人造人間―ホムンクルスの最終調整体である‘アマツビト’の精製の際に出来た残りカス、世界の全てを自由に操る能力があったとされるアマツビトの能力が、一つづつ分かれてその能力だけが発達した‘カリビト’の子孫の事だ」
やれやれと首を振りながら気だるそうに卓は言った。
「‘カリビト’の子孫・・・・・・」
実感がわいてこないが、状況は掴めた。
「ところで、俺の刃の能力って具体的にどんな物だ?」
最初に感じた疑問をぶつけてみる。
「そこにあるペンを持って念じろ。『破壊する』とな」
言われたままにペンを握り念じる。ペンが次第に熱を持ち始め、一瞬光った。
まぶしさに目をつぶる。手の中でペンが形を変えていくような気がして目を開けると、自分が握っていたのは小ぶりなナイフだった。
「うわ、何だこれ・・・本物か?」
そう言いつつ壁に投げてみると、ナイフは根元まで音も無く壁に突き刺さった。
「凄い・・・・」
驚いている間にナイフは再び光を発してペンに戻っていた。
「分かったか?お前の能力は物質から刃を造り出す事だ」
卓が言う。
「そうか・・・これが、俺の能力・・・」
自分の手を見つめてそうつぶやいた。 手を見つめて惚けていたらドアが乱暴に開いて倉見が入ってきた。
「目ぇ覚ましたのか?どこまで話した?」
倉見は少し慌てた様子で卓に聞く。
「話したのは能力者の事だけだ。それよりお前どうしたんだ?そんなに慌てて」
倉見の慌て方に尋常ならざるものを感じたのか、卓が訊く。
「ああ。草麻靖司<くさまやすし>――ゴーレムの能力者がこっちに向かっているらしい」
落ち着きを取り戻した倉見が答える。
「まずいな。ゴーレムが相手だとこちらは戦い辛い」
卓の顔に陰が差す。
「なあ。お前らの能力って何なんだ?その草麻ってのはそんなに厄介な奴なのか?」
話が読めない俺はそう訊くしかなかった。
「お前には選ぶ道が二つある。一つはここで世界から完全に消え去るか。もう一つは俺たちと協力してここに来る能力者達を倒す―もとい殺す事だ」
俺の質問には答えず、卓が言った。
「待てよ、卓。こいつを仲間にしたって危険だし、意味が無いじゃないか」
卓に反論をする倉見。
「まあ待て、秋。こいつはまだ未熟だが、かなり腕が立つ。柊を見たろう?能力の発現の直後にあそこまで出来る奴はそうは居ない。それに次の相手は恐らく草麻だ。なら出来るだけ人数が多いほうがいい」
そう卓が返すと、倉見は何も言わなくなった。
「俺は仲間になるよ。こんなとこで死にたくないしな」
俺は言った。なんとなくその方がいいと思ったのだ。
「そうか。だが能力者との戦いは十中八九殺し合いとなる。それでもいいのか?」
「ああ。仕方ねえさ。殺されるよりよっぽどいい」
卓の質問にノータイムで答えを返す。
「わかった。お前を仲間として受け入れよう。俺の名は萩乃卓<はぎのすぐる>。卓と呼んでくれ。能力は翼。ほら、この通り」
卓の身体が光ったと思ったら、卓の背中に大きな翼が生えていた。
「凄え・・・・」
俺はただ唖然とするだけだった。
「さて。交代だ秋。お前の名前は知ってるだろうから能力の説明をしてやれよ」
卓が翼を仕舞って倉見に言う。
「俺の名前は知ってるよな。俺の能力は身体の強化だ。お前も卓に自己紹介しろ」
倉見がまだ少し棘のある言い方で言う。
「俺は谷田樹。能力は物質から刃を造り出す事・・・・らしい」
煮え切らない口調で答える。
「そう、樹と言うのか。よろしく、樹」
卓が手を差し出す。
「ああ。よろしく卓」
差し出された手を握る。
「連絡は秋がしてくれる。あとここは俺の家だ。作戦なんかを作ったり話し合いのときはここに集まるから、道を覚えておいてくれ」
卓が倉見の方を指しながら言った。
「くれぐれも能力者についてはなにも漏らすなよ」
倉見が付け足した。
「おう。分かった」
そして俺達は仲間になった。 /続
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