気付けば雨が降っていた。
第一章
～僕の人生～
俺の名前は山本勇二。世間的には一番楽しいって言われてる17歳の高校二年。大学にはエレベーターで行けるし、将来はたぶん親父の会社を継ぐだろう。親父は世間の縦社会って言うのが嫌いで24歳で会社をやめた。その後、いったんは世間に復帰したのだがやはり耐えられなくなり、26歳で自ら店を出した。始めは母親も大反対したが親父の笑顔が増えた途端にそんなグチも言わなくなってった。だが、その店も二年でつぶれた。親父はハメられたって嘆いていたが誰も相手にしなっかた。その後、知人と小さな運送会社を勝手に始め、社長になった。社長って言ったって親父を入れて６人しかいない小さな小さな会社だ。だが親父はその会社を始めてからは、いつかの笑いが戻っていた。その笑顔を見て母親も笑っていた。親父の口癖は「愛はあるけど、金は無い！」で、どっかのドラマの決まり文句をパクったらしい。俺と言えばそんな訳わからん家庭で何も問題なく、勉強もそこそこ、スポーツもそこそこ、そして友達もそこそこいた。
今日は天気が良かった。やりたい事の見つからない俺はいつも屋上で寝てるか、ヘッドフォンをして街中を歩くかのどっちかで・・・。気が付けば名前も知らない川の土手で寝てる・・・なんて事はよくあった。そんな、風みたいにフラフラする性格が自分では嫌いだったがやめられなかった。これをやめたら自分がいなくなるような気がして・・・、だから今日も街を散歩する事にした。街には汚れた空気が流れ、自分の肺に入ってくるのが自然と分かってしまった。慌てて足元に目を落とせば、タバコの吸殻で溢れていた。いつもならココで腹が立ってしまうのだが天気のせいか、今日はそんな気分にはならなかった。ただ淡々と無個性な大人達の逆を歩いた。大きな信号を渡り右に曲がった。いつもなら真っすぐ進み、客が少ないコンビ二に入り、数分立ち読みをして缶コーヒーを買って出てくるのだが、今日は理由もなく右に曲がってみた。無理矢理、理由をつけるなら天気がいいから。そんな言葉ですべてが片付けられるぐらいの晴天だった。そして赤いスポーツカーの先に見たことの無い広い公園を見つけた。緑の芝生の真ん中に噴水がひとつ・・・、ションベン小僧のようにチョロチョロとやる気なく水を出している。右を見れば、小学生ぐらいの男の子がサッカーをやっている。せっかくの暖かい日なのにそれ以上人はいなかった。こんなに平和的な空間を見逃すとはやっぱ最近の人達はセカセカ生きすぎだなと思いながら木陰に近寄り、芝生が濡れてないか確認した後にゴロっと横になり本を広げた。本なんて好きな訳じゃないがただヒマつぶしに読んでるだけ。たしか・・・ギターリストのロバート・ジョンソンがどーたらこーたらってヤツだった気がする。半ページ読み進めた後、顔に本をかぶせて目を閉じた。頭の中には聞き慣れたメロディーが流れ、世界には自分しかいないような幸せを感じていた。
「へぇ～、ロバート・ジョンソン好きなの？」と聞き慣れない声がかすかに聞えた。確かこんなフレーズは無かったような・・・と耳を疑いながら、ヘッドフォンを外した。風が揺れる音を感じながら顔だけ、声が聞えた方に振り返った・・・。真っ赤なリボンに青のミニスカート、白いＹシャツは第２ボタンまで開いていた。制服のようだがどこの学校だがわからない。もしかしたら私服かも・・・。予想外の出来事に顔を見れなかったが最近の子って言うのだけは確認できた。
「下倉高校二年、山本勇一でしょ？ねぇ、聞いてる？何ニヤニヤしてんの？」
ニヤニヤしてるつもりなんてなかった。ただ、自分が理想してた女の子の顔にドンピシャだったのだ。「あ～！今、私の胸見てたな～！山本くんってスケベ？」・・・けど、即現実にもどされた気分だ。この子の性格は俺の理想の性格とは似ても似つかなかった。僕は静かに立ち上がった。「あー、何帰る？あっ、もしかして怒った？だって山本くんずっと下見てるからさ～、悪かったよ、ちょっとびっくりさせたかっただけ。許してよ。」
「君、何？って言うかなんで俺の名前知ってんの？」
「あー、ごめんごめん。私は由里香って言うんだ！ユリって呼んでね♪」
今思うと、なんでこんなノリの軽い女に・・・って思うが、もう振り返らないことにした。しかし、あの瞬間が僕の人生を大きく変える事になったのは紛れもない事実なのだ。
第２章
～変えられない未来～
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