~Koharu日和~

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February 8, 2006
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カテゴリ: 天使ママになって
体の痛みで目が覚めた…。

夢を見ていたようだった。
確かめるようにお腹に手をやると、まだお腹が大きいような
感じがした。

だけど、それは傷口を覆うカバーで、
赤ちゃんの膨らみではないと、すぐに分かった。

「赤ちゃんは?」

上の子達が産まれた時と同じセリフだった。



「可愛かったよ…」「…カッタヨ。」

やっぱり過去形。
私はただただ薄笑いを浮かべていたらしい。

しかも来てくれていた優子さんに
「もう遅いから…大丈夫?」 なんて言ったらしい。

みじめだった。誰にも会いたくなかった。
ただ小春に会いたかった。

遠くで赤ちゃんの泣き声が聞こえてくるけれど、
私の小春はいない。

担当の先生が小春の事をおしえてくれた。

臍帯過捻転。1000人に1人に起こるお母さんと赤ちゃんを
つなぐへその緒のねじれから起こる症状で、栄養や酸素が
赤ちゃんに届かなくなるというもの。
へその緒は通常約50cm。私と小春のへその緒は30回以上も
ねじれていたらしい。

電話の受話器についているあのくるくるとしたコードの
ようだったらしい。

苦しかったんだね。ごめんね。こんなに苦しかったのに
10ヶ月近くも頑張ってくれたんだね。

精一杯お腹の中で生きていてくれたんだね。ありがとう…

次の日、看護師さんが薬を持ってきた。
母乳を止める薬、これを飲んだら赤ちゃんに
もうおっぱいをあげることはできないと思うと
飲むのをためらった。

まだ、あきらめていない自分がなんだか滑稽。
何にも考えていないのに一日中涙が勝手に流れてくる。

私の母も死産を経験している。
どうしても私と小春を会わせたくないらしかった。
「見ないほうがいい。」
「会わせてしまうとこの子が立ち直れなくなるから」
何度も何度もそう言った。

私は小春に会わなかった。
怖かった。家族、姉妹もそれを望まなかった。
何度も何度もパパに聞いた。会わないほうがいいのだろうか。

私は、なんて卑怯なんだろう。
最低のお母さんだった。
まだ動けない私の替わりにパパは、真っ白な
レースのおくるみに小春を大切に抱いて病院を退院した。
後で見せてもらった写真には、小さな小さな棺にキティちゃんの
赤いカバーがかけられ、供物は粉ミルクとたくさんのお菓子。
ちゃんと哺乳瓶もあった。
かわいい祭壇だった。

その日の夜パパに「お骨は…」と聞くと、
「小さすぎて残らなかったんだ…」

「ウソダ…」そう思ったけど、黙ってうなずいた。

私は、普通の人より死を感じる現場にいる。
お花をお届けするのは、お祝いだけではないから。
亡くなった方へ最初にお届けする枕花(まくらばな)もそう。

亡くなられた後何をするべきなのかは、すべて
頭に入っているのに、小春のお葬儀があって火葬もする
なんてちっとも思わなかった。

もう、会えない。顔も知らない。もう遅い。

「小春ちゃん、病院にいる時は、青白くて間違いなく
血が通っていないって分かるほどだったのに、
斎場でのお題目が終わって火葬場に行く時には、
驚くほど、ピンクの艶やかな顔になっていたよ。

まるで今にも泣き出しそうでどうして息をしていない
のか不思議なくらいだったよ」

周囲の誰もがそう教えてくれた。
それだけが救いだった。
「小春、成仏したの? ママを許してくれるの?」

小春の目に見える想い出は祭壇の写真ともう書き込むことの
できない母子手帳だけだった。

「どこが間違ってたの?どうして死んじゃったの?」


病室で小春じゃない赤ちゃんの泣き声が
響いて来る中で自分を責め続けた毎日だった。

気が狂いそうだった…。







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Last updated  February 9, 2006 03:08:40 AM
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