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三千円の使いかた (中公文庫 は74-1) [ 原田 ひ香 ]昨年2月に葵わかな主演でテレビドラマ化され、楽しく観た作品の原作。そのあと、すぐに原作を読んだつもりになっていたらしい。娘におすすめの本は、と聞かれて本棚を探したけどなく、この備忘録ブログを確認したけど、読んでないらしい。早速購入した。ドラマと原作の違ったところは、原作では主人公美帆がお金を貯めるために自宅に戻って暮らしている、祖母琴子が真帆の両親とは同居していない、この2点。ドラマの俳優たちの顔と小説のキャラクターに違和感がまったくなく、気持ちよく読めた。いいドラマやったんやなあ、と改めて思った次第で。もう一度ドラマを観たい。DVDは作られていないようだから、NETFLIX?
2024.07.31
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とりかへばや物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫) [ 鈴木 裕子 ]何度となく読もう読もうと思いながら今日まで来て、遂に完読した一冊。角川ソフィア文庫であるからダイジェスト版でなのだが、粗筋は分かるようにまとめられていて、本当に初心者向けと言っていい秀作である。とりかへばや物語は、平安時代末期の作者不詳とされていながら、今日ある多くの男女とりかえ物語の原点となる作品。私が小学生の頃に刊行された「おれがあいつで あいつがおれで」が最初に触れた男女とりかえ物語。ズッコケ三人組の作者、山中恒の作品。次は、「俺、夕子」藤子・F・不二雄の小作品集の一つで、厳密には取替えではないが、一読の価値あり。最近では五十嵐貴久「パパとムスメの七日間」はガッキーと舘ひろしでドラマ化もされた。しかし、「とりかへばや物語」は、それらの作品を凌ぐ完璧なストーリーであった。これが1000年も前に書かれていたことが凄い!
2024.06.20
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【中古】 Lady,go / 桂 望実 / 幻冬舎 [単行本]【メール便送料無料】【あす楽対応】23歳の南玲奈は派遣会社に登録し、時給1400円の仕事を希望するが、資格も技術もないので1200円の仕事しか来ない。突然首になり、部屋のエアコンも突然壊れてしまい、切羽詰まってキャバクラに体験入店して2万円貰い、何とか糊口をしのぐ。また派遣に逆戻りしたが、本当にお金がない。そんな時同級生のお姉さんに偶然出会う。昔はおどおどした暗い感じだったのに。雰囲気が変わっている。なぜ?話をしたらキャバ嬢をしてる、しかもNo.1。誘われてもう一度キャバ嬢に挑戦、さあどうなる?キャバ嬢で成功するには、席に座ってます挨拶(第一印象)。水割り作って話を聞いて(聞き上手)、無口な客には話を振って(話し上手)。客との会話は忘れないようにないメモを取り(顧客管理)、送るメールは返信が来るよう工夫を凝らす(営業努力)。18年前に新刊で読んだ本。公立病院で頑張っていた時期。医者としては9年目で、自分のやりたい医療を手探りしながら実践していた。医者としての成功は、数多くの患者さんを助けることと信じて。でも、医者もサービス業。数多くの患者さんの信頼を得るために、初めにする努力はキャバ嬢と一緒だな、とその時も思った。今もそれは変わらない。サービス業のすべての人に読んでもらいたい作品☆☆☆
2024.02.11
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うつくしが丘の不幸の家妻と結婚して23年、今の自宅を新築して16年。農家中心の古くからある集落の、彼らの田圃を潰してできた新興住宅地に家を建てた。この小説は、どちらかというと都会のベッドタウンとしてできた、都会に通うにはいいが住むにはちょっと不便な新興住宅街でおきた出来事を描いている。美容師の譲さんと美保理さん夫婦は築25年の3階建ての一軒家を購入した。一階の部分を店舗に改装するのが精一杯で、住居部分は古いまま。それでもオープンに向けて頑張っていた。しかし、いつしか街の噂が聞こえてきた。二人は5代目の所有者になるらしい。前の4代はみな不幸になって出ていったから、「不幸の家」と呼ばれているらしい。その不幸な話とは・・・1代ずつの決して不幸とばかりは言えない人生譚を町田流に描き出した作品。さすが本屋大賞作家。最初の所有者と譲さんに繋がりがあるところが秀逸。オススメです☆☆☆
2024.01.07
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バカの壁 (新潮新書) [ 養老 孟司 ]バカの壁などの著作で知られる、元東京大学解剖学講座教授の新刊。心に刺さったフレーズ。ガンと告知をされる前と後では自分が変わってしまう、という内容を受けて、本当の告知問題と題した章なぜ自分が変わるという実感を持たないのか。たぶん、嫌なのでしょう。自分が変わることが嫌なのです。自分が変わるのがなぜ嫌か。それは当然嫌です。現在の自分が、部分的であれ死ぬからです。そして、変わった自分が世界をどう見るかは、今の自分ではわからないからです。これは怖いことです。何となくそうは思っていましたが、告知されることが小さな死なんだ、ということですね。
2023.12.08
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エイジ (新潮文庫 新潮文庫) [ 重松 清 ]15年前に読んだときもこのブログに感想を書いていた。3番目の子が生まれた直後であった。自分の中学時代を振り返り、子ども達の未来を案じていた。その子ども達も皆、この作品の主人公である栄司(エイジ)の歳を越してしまった。3人ともそれなりに反抗期もあったが、今はそれぞれ自分の未来を案じてジタバタしており、もう親としてはお金を出して見守るぐらいしかない。主人公エイジのクラスメイト・タカが、23件の通り魔事件の犯人として捕まり、少年法の中で裁かれた結果、学校に復帰するまでの間のエイジやその同級生達の様子を描いている。 1999年に出版された作品だから、登場する中学生は誰も携帯を持っていないので、コミュニケーションを取るには相手に会って直接話すか、手紙を渡すか、家の電話を用いるしかない。今の子どもたちがこの作品を読んだら、LINEができない時代って大変!という感想を抱くのだろうか。重松清もSNSでイジメが起きるこの時代にこの作品を書くとしたらどんな話になるのだろうか。15年前には考えもしなかったことを考えているわけで。
2023.08.13
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今日のハチミツ、あしたの私 [ 寺地はるな ]もし明日人生が終わるとしたら主人公碧は、中学の頃、自分が嫌いで、友達もおらず、自暴自棄で、明日なんか来なくて良いと思っていた。そんなある日、学校を抜け出して河川敷で空を見上げていた碧は、知らない女の人からハチミツをもらう。その美味しさに感動し、生きる勇気を貰う。30歳になった碧は、恋人の故郷へ行くものの、彼の父親に結婚を認めて貰えない。認めて貰う条件として、黒江養蜂場の借金の取り立てに行く破目になる。ハチミツは何かの縁と思い、黒江に弟子入りして養蜂を習い授業料を払い、それを借金の返済にあてて貰うことにした。さて、碧は彼と結婚できるのか?碧のハチミツ作りはモノになるのか?さあ、どうなる?誰かの支えになること、支えて貰うことで人は生きられる。これは普遍の教えなんだろうが、読みやすい作品でした。オススメ度は⭐️⭐️⭐️⭐️
2023.06.18
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コメンテーター [ 奥田 英朗 ]17年ぶりの最新刊トンデモ精神科医・伊良部、復活!エンターテイメントとして最高の作品ですな。これまでのシリーズ作品も全て読んでます。前作から17年もたっているんですね。ワイドショーに出演することになった伊良部とマユミ。放送事故寸前のコメントを連発するが、それは暴言か、はたまた金言か!タイトルとなった作品のほか理不尽な怒りがたまると過呼吸になる中年男性を描いた、ラジオ体操第2パニック障害からデイトレーダーになり10億を持つ男を描いた、うっかり億万長者真面目すぎて広場恐怖症になったピアニストを描いた、ピアノ・レッスン訛りが恥ずかしくて社交不安障害になった大学生を描いた、パレードの5話をおさめた珠玉の作品集オススメです⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
2023.06.16
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ヴァラエティ【電子書籍】[ 奥田英朗 ]筆者が珍しくあとがきを書いている。あとがきというよりは言い訳らしい。この作品集、出版までの数年間に編集者に頼まれたり騙されたりして書いたものを集めたものなので、ショートショートや対談も含まれており、何も作品間に一貫性はないのである、というようなことが書かれている。ただ、奥田英朗ファンにとっては、なんとも味わい深い作品に仕上がっている。お薦めです⭐️⭐️⭐️⭐️
2023.06.12
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ポトスライムの舟 (講談社文庫) [ 津村 記久子 ]書店で「講談社文庫 よむーくとめぐる本の旅フェア」を開催しており、そのなかに並んでいた。芥川賞受賞作は滅多に読まないのだが、推し女優である佐久間由衣主演の映画「君は永遠にそいつらより若い」の原作者と知り購入した。29歳、工場勤務のナガセは、食い扶持のために「時間を金で売る」虚しさをやり過ごす日々。ある日、自分の年収と世界一周旅行の費用が同じ163万円で、1年分の勤務時間を「世界一周という行為にも換金できる」と気づくが ・・・。ユーモラスで抑制された文章が胸に迫り、働くことを肯定したくなる芥川賞受賞作と裏表紙の紹介文就職氷河期になんとか新卒採用された会社を、上司のモラハラが原因でやめてしまい、傷が癒えた頃に薄給とはいえ居心地のよい工場に勤務できたナガセ。しかし、働いても働いても楽にならざるところにいた。工場内に貼られたポスターを見て、世界一周に行こうと決め、一念発起し節約に努めることにした。その一年後には163万円の貯金が出来た上に、友人にお金を貸すことまでできるようになった。ナガセは果たして世界一周に出かけるのか?芥川賞は純文学という先入観があったが、そうでもなかった。ただ、直木賞作家ほど売れている人がいないのは現実なので、やはり何か取っつきにくさはあるのかも知れない。
2023.05.06
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食堂かたつむり/小川糸【3000円以上送料無料】「ライオンのおやつ」で原作、映画ともに感動できたので、次は食道かたつむりに挑戦。今回は原作から。同棲していたインド人の恋人に突然いなくなられた主人公倫子。プロの料理人を目指して自分で買い集めたキッチン用品、家電などの家財道具、そしてその夜の献立の材料まで全てを持ち去られていた。その惨状に声を失い、本当に喋られなくなる凛子。唯一残ったのは祖母から譲り受けたぬか床だけ。そのぬか床を持って山あいの故郷に戻り、不仲な母親に借金を頼み込み、小さな食堂を始める。一日一組だけの完全予約制、料理はその人が食べたいものを聞き、地元の食材をアレンジして調理する。不倫の子と言われ続け、母親とは不仲なまま、15歳で飛び出した故郷に10年ぶりに帰ってきた倫子に、母親、街の人達が温かく迎えてくれる。それに応えるように料理を振る舞う倫子。彼女の料理は受け入れられるのか?彼女の生い立ちの真相は?がんに侵された母親とは和解できるのか?人生とはままならないものライオンのおやつと共通する人生観に立った作品。わたしは好きです。柴咲コウが主演の同名映画、酷評されているので観るのは少し怖いなあ。
2023.05.03
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ライオンのおやつ (ポプラ文庫 日本文学 455) [ 小川 糸 ]2021年6月にテレビドラマ化されたこの作品。ドラマをみる前に原作を読む機会はなかったので、何の先入観もなく観ることができ、良いドラマであると評価した。33歳で癌になり、懸命の治療にも関わらず癌は大きくなり、最期の時間を瀬戸内の離島にあるホスピス、「ライオンの家」で過ごそうと決意した雫という女性の話だ。私の仕事に関わる話なので興味深く、そして感動して観たので、原作はしばらく読まないでおいた。書店にフラりと立ち寄ったら、なぜか気になり購入し、一気に読んだ。ドラマのなかで雫、マドンナ、タヒチを演じた土村芳、鈴木京香、竜星涼の顔がすぐに浮かんできて、頭のなかで映像を思い出しながら読むことが出来た。小説が原作の映画やドラマは、それを監督した人間のフィルターがかかってしまうことは避けられない。フィルターとの相性が良いと研ぎ澄まされた味わいになるし、悪いと後味に苦味が残る結果になる。その点でライオンのおやつは原作もドラマも楽しめる良い作品であった。
2023.04.29
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Sports Graphic Number ある時期から野球、ラグビー、ボクシングに関しての号は購入し、保存するようにしている。さて、WBCに関して、2006年の650号、2009年の726号、2013年の臨時増刊号、2023年の1070号はは購入しているが、2017年の特集号がない。なぜ購入しなかったのか?メジャーリーガーもいなかったし、準決勝で負けてしまったし。でも、コレクターとしては失格である。一度古本で探してみることとしよう。それにつけても2009年の胴上げ投手、そして2023年の陰の立役者、ダルビッシュ有は2009寝んの特集号ではどんな風に書かれていたか。ダルに直接的インタビューした記事はない。「ダルビッシュが制球に苦しんだ理由。」という記事はあるが、ダルビッシュ自身の言葉はない。ただ、この記事の最後はこうまとめられている。「 連覇を決めた韓国戦 。延長10回、最後の打者のチョン・グンウを三振に仕留めたダルビッシュが挙げた雄たけびこそ、日本野球の適応力の高さを示す 象徴でもあったわけだ。」また、優勝監督、原辰徳のインタビューのなかで「 最後はコンディションを含めてブルペンで一番、優れている投手でいこうということです。『行くぞ』と言ったら、彼(ダルビッシュ)も『分かりました』と快く引き受けてくれました。」2009年はやはりイチローにかなりのページが割かれている。だからといって2023年にダルビッシュの記事は少なく、大谷がやはり多い。次回はどんな闘いになるだろう。
2023.04.08
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長いお別れ (文春文庫) [ 中島 京子 ]認知症になった男性が旅立つまで、妻と三人の娘たちがどう関わり、何を想ったかを時系列に綴った物語。最初の5年は緩徐に進行したので家族の負担はそうは大きくはない時間であったが、亡くなるまでの最後2年は介護を拒まれたり、突然いなくなられたり、骨折で寝たきりになられたりと、介護する者の覚悟を試される時間であった。私も父親の介護を経験したので、物語は自分のこととしても読むことが出来た。映画化もされているので、観てみようと思う。長いお別れ【Blu-ray】 [ 蒼井優 ]
2023.02.23
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水を縫う [ 寺地 はるな ]私が楽天ブックスで購入した第五刷の帯から普通の人なんていない。普通の家族なんてない。「男なのに」刺繍が好きな弟の清澄「女なのに」かわいいものが苦手な姉の水青「愛情豊かな母親」になれなかったさつ子「まっとうな父親」になれなかった全と、その友 人・黒田「いいお嫁さん」になるよう育てられた祖母・文枝この6人を描く6章からなる物語。おすすめです。河合隼雄物語賞 受賞作を一覧にしておく。第1回 西加奈子「ふくわらい」私にはピンとこなかった第2回 角田光代「私のなかの彼女」未読第3回 中島京子「かたづの!」未読第4回 いしいしんじ「悪声」未読第5回 今村夏子「あひる」未読第6回 松家仁之「光の犬」未読第7回 三浦しをん「ののはな通信」このブログで紹介したが私には良かった第8回 該当作品なし第9回 寺地はるな「水を縫う」本作品、是非読んでみて第10回 いとうみく「明日の幸福」未読未読の6作品を読んでいこうと思う。
2023.01.29
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ビオレタ (ポプラ文庫 日本文学 322) [ 寺地 はるな ]先日、三浦しをん『ののはな通信』を読んで、河合隼雄物語賞に目覚めた。第9回受賞作、寺地はるな『水を縫う』を読もうと意気込んで本屋に行ったが置いておらず。仕方ないので、彼女のデビュー作であり、第4回ポプラ社小説新人賞を受賞した『ビオレタ』を読んだ。主人公、田中妙27歳。婚約し、結婚の準備のために仕事も辞めた。なのに突然別れを切り出され、雨の中、道端で泣いていた。たまたま通りがかった菫さんに介抱され、彼女の店に連れていかれ、その店でバイトをすることになった。店の名前はビオレタ。スペイン語で菫という意味。雑貨屋さんなのだが、特徴が一つあって、棺桶を売っているのだ。人間のご遺体用ではなく、感情や記憶などとともに埋めてしまいたいものを入れるための箱。色々なサイズの物を作って売って、店の裏の庭に埋葬までしてあげている。そんな菫さんとの交流のなかで、自己評価の低い妙が成長し、婚約破棄の傷を癒し、新たな出会いを得る物語。妙の自己評価の低さは、待望の長女と長男の間に生まれた次女であり、親に期待されていなかったこと、希望とは違って就職した職場の上司に苛められたこと、そして自分より格下と思っていた男性にふられたこと、に起因する。新たな出会いが、それらの問題点を一つ一つ解き明かしてくれた。一期一会出会いを大事にしていくことで人生は豊かなものになる、それを教えてくれるいい話でした。
2023.01.24
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ののはな通信 [ 三浦 しをん ]葵わかな推しの三浦しをん四冊目は「ののはな通信」2019年の河合隼雄物語賞、島清恋愛文学賞を受賞した作品。高校二年生、「のの」こと野々原茜と「はな」こと牧田はな。教室でやりとりした手紙や、互いに送りあった書簡を、昭和59年から時系列に並べて、二人の間に起きた出来事を紡いだ小説。今、読んでいる箇所は昭和63年12月、二人は大学三年生。昭和天皇の下血に関して手紙を通して話している。私は当時高校二年生。医師を目指して勉強していた頃。年末から崩御されるまで連日、今日は 600ml下血、800ml輸血、というニュースを何の疑問を持たずに聞いていた。医者になってから、それは延命処置以外の何ものでもないとわかったが。それを小説にしている人がいるとは思っても見なかった。当時12歳だった三浦しをんは、そのニュースをどう受け止めていたのか、非常に興味がある。と、ちょっと興奮してしまったので、休憩してこれを書いている。第一章は高校生時代。第二章は大学生時代。取りあえず第2章の最後まで読もう。
2023.01.19
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まほろ駅前番外地 (文春文庫) [ 三浦 しをん ]推し女優である葵わかなが好きだからという理由で、三浦しをん作品を読み始めている。高校の同級生同士がひょんな事から再会し、雇い主と従業員という形で便利屋を営む多田と行天。多田は子供を亡くしたために離婚することになり、行天はLGBTsの友人のために偽装結婚をしたが、親バレしたために離婚した、という過去をもつ。第二弾はそんな二人の周りにいる人や依頼人たちの恋愛事情に焦点が置かれている。その人たちの多くは前作に登場しているので感情移入がしやすい展開となっている。病院で暮らす認知症のお婆さんの若かりし頃の恋愛話、小学生男子の通う塾講師が美人局に会う話、無理な依頼をしてくる岡さんの奥さんの話、二十歳そこそこで暴力団と渡り合う力をもつ星くんの話などなど。おすすめです。
2023.01.16
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まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫) [ 三浦 しをん ]推し女優、葵わかなのwikiに好きな作家として名前があった三浦しをん。彼女の直木賞受賞作を読んだ。東京郊外のまほろ市で便利屋を営む多田啓介と、そこへ転がり込んできた高校の同級生の行天春彦。ふたりが便利屋として一年のうちに関わった六人との物語。一人目は小学生の女の子、マリちゃん。夜逃げの際な捨てられたチワワと再会させてあげる話。二人目はルルさん。街角の売春婦.、いわゆるタチンボ。たちの悪い男との縁を断ち切らせる話。三人目は小四男子由良くん。親はちゃんとしてるけど、彼には愛されている実感がない。そんな彼は小遣い稼ぎに麻薬の運び役をしているが、そこから救う話。四人目はルルのルームメイト、ハイシー。タチンボの客からストーキングされているのを助ける話。五人目は女子高生清海。由良に麻薬を運ばせたチンビラしんちゃんの後輩。清海の親友が両親を殺害して逃げるのを手伝っているが、警察に幇助していることをばれないよう助ける話。六人目は北村さん。おそらく病院で赤ちゃんの取り違えがあり、実の親に会いたいという想いを助ける話。便利屋さんってこんなに大変なの?っていう感じ。どんなサービス業でも、余りにも客に入れ込みすぎると大怪我をするものである。適度な距離というのは難しい。
2023.01.14
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舟を編む [ 三浦しをん ]葵わかなが久々にドラマに登場。アート引っ越しセンターCM以来の推しである、wikiを見てみたら、好きな作家が宮部みゆき、伊坂幸太郎と書いてあり、「おっ、一緒やん!」と胸キュン。そしてもう1人、三浦しをんと書いてあり、「これは是非、なにか一冊読まなければ!」と思い立ち、すぐさま本屋へ。『まほろ駅前多田便利軒』で2006年第135回直木賞、『舟を編む』で2012年本屋大賞を受賞している作家である。生憎と小さな本屋なので、前者はなく、後者を購入し早速読んだ。荒木公平、玄武書房辞書編集部員。新しい国語辞典「大渡海」の編集に取りかかったものの、定年が間近に迫っている。自分の後釜を何とか見つけなければと奔走していた。そこに「真面目さん」と呼ばれる辞書作りにうってつけの人間が第一営業部にいるとの情報あり。早速会いにいって、「真面目さん」と呼ばれる所以を聞いたところ、自分の名刺を渡してくれた。そこには「馬締 光也」とあった。引き抜くのは大変かと思いきや、以外とはやく異動が決まった。どうやら営業部ではお荷物的な存在だったらしい。さて「まじめくん」の働きぶりは?辞書は完成するのか?私も子供の頃から辞書を読むのは好きであった。そして、今も諺、格言などを収集している。それは緩和ケア医師として役に立っている。作中、辞書の編集に協力してくれる松本先生と荒木が馬締に語りかける。 荒木「辞書は言葉の海を渡る舟だ。 ひとは辞書という舟に乗り、暗い海面に浮かび上がる小さな光を集める。 最もふさわしい言葉で、正確に、思いを誰かに届けるために。もし辞書がなかったら、俺たちは茫漠とした大海原を前に佇むほかないだろう」松本「海を渡るにふさわしい舟を編む。その想いを込めて、新しい辞書を大渡海と名づけました。」おススメです。
2023.01.11
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海の見える理髪店 [ 荻原浩 ]NHKBSPで12/30に放送されたドラマ、海の見える理髪店。直木賞受賞作は大概、書棚に置いてあるので、読み直した。受賞作品は短編6作が集録されており、そのうちの冒頭38頁。それが忠実にドラマ化されていた。ドラマを観てから読み直すと、台詞の一言一言に映像が甦ってくるほど。そんなに忠実なのも珍しい。
2023.01.05
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うちの子が結婚しないので (新潮文庫) [ 垣谷 美雨 ]12月1日は結婚記念日であった。妻のすきなケーキ屋さんで、五人家族の顔を思い出しながらケーキを選んで買って帰ったら、果たして私が予想した通りに選んでくれた。さてら、すきな作家の一人、垣谷美雨の2018年に雑誌で連載した小説を文庫本化した作品。28歳になった娘が、なかなか結婚してくれそうにない女性が主人公。自分は幸せな結婚をしたと思っている。ただ、独身を謳歌している友人、離婚してシングルマザーになっている友人などを見て、結婚が幸せとは限らないともおもっている。しかし、娘をみていると、「いつか出来ればいいや。」と思っているよう。それでは結婚は難しかろうと、自分が後悔しないよう、夫と共に娘のために親婚活を始める物語。
2022.12.03
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さよならの儀式 (河出文庫) [ 宮部 みゆき ]最近は時代小説ばかりでチェックが滞っていた宮部みゆき。本屋をブラブラしていたらたまたま見つけて即購入した。宮部みゆき、初のSF作品集と帯にある。初版の単行本を集めている私としたことが、どうしたことか。単行本は2019年7月に河出書房新社より刊行されているのだが、書店で見かけた覚えがない。まあ、仕方がない。読み出すとすぐ、宮部ワールドに引き込まれました。オススメです。
2022.11.08
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傲慢と善良 (朝日文庫) [ 辻村深月 ]説明友人と飲んでいた架の携帯が鳴る。婚約者・真実からだ。「助けて、家にストーカーが入り込んでいる、あなたの家に行っていい?」急いで自宅に帰った架。真美は安心したのか寝ている。翌朝、まだ寝ていた真美を残して仕事に出掛けた。その日から真美は姿を消した。真美はストーカーにさらわれてしまったのか。彼女を探す過程で、架は自分の知らない真美の過去を知ることになる。傲慢と善良というタイトルの意味とは?他人に対して抱く優越感、その態度はやはりある意味、傲慢である。ただ、それを傲慢と取られないように、精一杯善良を装う。しかし劣等感を抱いている相手にはすでに見透かされている。爽やかな読後感ではない。ただ、自分を見つめ直す糧にはなった。
2022.10.27
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リバー/奥田英朗【3000円以上送料無料】私の収集癖の一人、奥田英朗の最新刊「リバー」の初版本を購入した。6時間で読了してしまった。帯にはこうある。同一犯か?模倣犯か?十年前、渡良瀬川河川敷で相次いで発見された若い女性の死体。そして今、未解決連続殺人事件の悪夢が再び幕を開ける警察、マスコミ、容疑者、被害者遺族、容疑者家族……人間の業と情を抉る無上の群像劇、緊迫感溢れる圧巻の犯罪小説家!ぜひともご一読を
2022.10.10
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嘘つきジェンガ [ 辻村 深月 ]ロマンス詐欺、受験詐欺、サロン詐欺、三つの詐欺話からなる一冊。いずれの話も、今日どこかで起こっていてもおかしくない、そんな臨場感がある。なぜ、人は詐欺に引っ掛かるのか。ロマンス詐欺は満たされない思いに、受験詐欺は何かにすがりたい思いに、サロン詐欺はあなただけが知っているという特別な思いに、つけこんでいる。私も太陽光発電システム詐欺に引っ掛かりそうになったことがある。契約書を読んで、担当営業マンにおかしな点を3つ挙げ、これを解決してくれたら契約すると言ったら、本社に問い合わせます、と答えたきり、姿を見せなくなった。その本社に問い合わせたら、そんな営業担当者はいない、と回答。おー、詐欺かとそこで気づいた。契約していたらどうなっていたのだろう、と今でも思うし、契約した人はきっと、待てども待てども工事が始まらず、泣き寝入りなんだろうなあ、とも思う。
2022.09.07
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【中古】 仏教が好き! 朝日文庫/河合隼雄,中沢新一【著】 【中古】afbユング心理学者である故河合隼雄と宗教学者中沢新一の対談集。二人とも理系の学者を目指したが、見えている世界と目指している世界との違いに気付き、方向転換した点で共通項を持つ。そんな二人が科学に対する警告を発する。科学的根拠というには、ある仮説を立て、それを検証するためのデータを集め、その仮説が正しいと証明できたときに初めて成り立つものである。95%以上の確率をもって正しいとき、幾何学的根拠として良い。これが医学部をふくめ、科学的データのベースとなる。しかし、実際の臨床の場では、その95%から外れた人も治療の対象となる。河合隼雄はいう。不登校になる確率を調べると、長男は非情になりやすい。治療に来た人に「私、次男です。」と言われたら、『長男じゃないのにおかしい。』と言っても何も役に立たない。僕らはいろいろと話を聞いて「事例研究」発表をする。「不登校の子が二年かかって治った」話をすると、これはみんな、誰が聞いても意味があります。心理学も宗教学も個別性の高い学問である。我々の臨床医学も個別性の高い学問である。統計学で示される科学的根拠だけでは医療は出来ない。病気を有する個人、一人一人の背景、即ち個人の物語をきちんと聞くことが大雪、と言うことを河合隼雄は言っているのだと思う。
2022.08.11
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風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) [ 森絵都 ]直木賞受賞作品を含む作品集。娘が読書感想文のためにと購入してきた『カラフル』は野間児童文芸賞を受賞した。『DIVE!!』、『ラン』は何年か前に読んだが、あまり印象に残らなかった。カラフルと本書を立て続けに読んでみて、上手な作家だなあ、と初めて認識した。もう一度、DIVE!!と、ランを読み直してみよう。
2022.07.25
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戸村飯店 青春100連発 【電子書籍】[ 瀬尾まいこ ]瀬尾まいこの坪田譲治文学賞を受賞した作品。大阪の下町にある中華料理屋さん、そこで育った年子の兄弟の物語。大阪という町が嫌になって高校卒業後すぐに東京へ飛び出した兄。兄がいないのなら自分が店を継がなあかん、そう決心し、高校最後の一年に青春の全てを注ぎ込もうとする弟。二人は一年をどう過ごし、どう成長したのか、タイトル通り100連発で青春の日々を描いている。自分の高校時代はどうだったか、そんなことを考えてしまう作品。私自身は、高校最後の一年をよく覚えていない。春先の模試でE判定が出て自信を無くしてしまった私は、受験に対する焦りばかりが大きくなってしまい、青春を謳歌することなく自分の殻に閉じこもってしまった。人生やり直したいとは思わないが、あの一年だけやり直せるなら、高校の教師やクラスメイトに話しかけて助けを求めようかな、と今なら思える。
2022.07.21
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幸福な食卓 (講談社文庫) [ 瀬尾 まいこ ]「そして、バトンは渡された」に感銘を受けたので、暫くは瀬尾まいこを読もう、と思う。まずは、吉川英治文学新人賞を受賞した作品、「幸福な食卓」から。主人公である佐和子は決して幸福とは言えない。母親は家出して別居しているし、父親は突然「お父さんを辞める、仕事も辞める、薬剤師になるための勉強をする。」と言い出すし、兄は高校をトップの成績で卒業したのに、大学で学ぶことに意味が見いだせないといって、農業の修行をしているし。中3の佐和子自身も、塾で突然、お前には負けないからな、と大浦くんに勝負を挑まれたりするし。幸福な食卓とは縁遠い家庭環境なのだが、さて。というところから物語は始まる。食卓を囲もうという努力を皆がする、そこに意味があるんだよ、ということかな。孤食が多いと言われる現代社会。一人より二人、二人よりはそれ以上で食べる方が、ご飯はきっと美味しい。
2022.07.19
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歎異抄 現代語訳付き [ 本願寺出版社 ]歎異抄第三条善人ナヲモテ往生ヲトグ、イハンヤ悪人ヲヤ。善人とは仏教の教えを実践できる人、悪人とはそれができない人、の意味である。決して犯罪者の意味ではない。
2022.07.16
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仏教思想のゼロポイント 「悟り」とは何か [ 魚川 祐司 ]ようやっと読み終わりました。途中で挫けそうになりながらも、解脱とは何か、悟りとは何か、その答えが欲しい一心で読了した。では解脱とは何か135頁から抜粋する ゴータマ・ブッダとその下で「解脱知見」を得た弟子たちは、この渇愛の「完全かつ決定的な滅尽」を達成し、だからこそ「為されるべきことは為された」と自覚したのだということになる。 そして、それは事態の性質上、ある時点で明白に経験される実存(のあり方)の転換であり、その自覚でなければならない。続いて悟りとは何か137頁から抜粋するゴータマ・ブッダの悟りの内容は「三明」であると言われているが、それは「宿住随念智=自分の数多の過去生を思い出す智」、「衆生死生智=衆生の死と再生をありのままに知る智」、「漏尽智=煩悩を滅尽させて解脱を完成させる智」の三つである。私の解釈としては、三明と呼ばれる三つの智を得たと自覚出来た時が、悟りを得て解脱した瞬間=実存の転換、と言えるのであろう。
2022.06.22
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本日は大安なり (角川文庫) [ 辻村 深月 ]ここ暫くめまいが酷くて読書も殆ど出来なかったが、少し良くなったもので、久々に本屋に出掛けて選んだ一冊。エンタメ史上最強の結婚式小説、とブックカバー裏にあり、表も通常の表紙の上に角川文庫推しの表紙が重ねられていて、『何があっても前を向いて生きていこう、そう思わせてくれる物語でした!』とあった。21年前、自分も式を挙げたわけだが、大変だったなという想いが甦ってくるし、もう一度できるならもっと上手くやれるのにとも思うし、子供達の結婚式には口出しするやろうなあとも考えた。エンタメ最強とまではいかないが、読後感は悪くはないです。
2022.06.20
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[書籍のメール便同梱は2冊まで]/仏教思想のゼロポイント 「悟り」とは何か[本/雑誌] / 魚川祐司/〔著〕仏教が教えるところの苦とは何か「苦」という用語が単に苦痛のみを意味しているわけではなくて、むしろ欲望の対象にせよその享受にせよ、因縁によって形成された無常のものである以上、欲望の充足を求める衆生の営みは、常に不満足に終わるしかないという事態をこそ意味する実に分かりやすい解説である。苦とは「dukkha」と経典には記載されており、英語ではunsatisfactorinessと訳されているとのことで、さらにそれを日本語に訳すなら「不満足」となる。確かに美味しいものを食べてその場は満足しても、もっと美味しいものがあると誰かに言われてしまうだけで、満足感は損なわれてしまう。いつまでたっても満たされることはない、それが苦なのである、ということになる。
2022.05.26
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夜が明ける/西加奈子【3000円以上送料無料】新潮社、公式ページの紹介文15歳の時、高校で「俺」は身長191センチのアキと出会った。 普通の家庭で育った「俺」と、母親にネグレクトされていた吃音のアキは、 共有できることなんて何一つないのに、互いにかけがえのない存在になっていった。大学卒業後、「俺」はテレビ制作会社に就職し、アキは劇団に所属する。しかし、焦がれて飛び込んだ世界は理不尽に満ちていて、少しずつ、俺たちの心と身体は壊れていった……。思春期から33歳になるまでの二人の友情と成長を描きながら、 人間の哀しさや弱さ、そして生きていくことの奇跡を描く、感動作!ということで読了したが、サラバ、ほどの満足感は得られなかった。小説の舞台は現代日本ようなのだが、この小説のなかの日本はどこ?という感じでちょっと現実味がないのだ。次回作に期待しよう。
2022.04.30
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【新品】ハケンアニメ! 辻村深月/著ハケンは覇権である。1クール12回のアニメ番組で、どの作品がトップ(DVDやBlu-ray、関連グッズの売上を含めて)を取るのか、それを描いた作品。アニメプロデューサー香屋子は、アニメ界の伝説の人、王子千春を監督に据えて『リデル』を作っていた。同じクールには、期待の新人アニメ監督、斎藤瞳が人気プロデューサー行城理が組んで『サバク 』を作成。その両者から下請け仕事を受け、神と称されるアニメーター並澤和奈は、聖地巡礼で観光の活性化を期待する地方公務員と組み、サバクを後方援護。しかし、その地方とは王子千春の故郷でもあり・・面白い作品でした。映画化されましたが、どうなるか?コケないといいけど。
2022.04.21
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サラバ 上・中・下巻 合本版【電子書籍】[ 西加奈子 ]サラバを読み直した。簡単にいうなら、主人公 歩 の37歳までの自叙伝である。父親の仕事の都合でイランで生まれたが、記憶が定かにならないうちに日本に戻った。小学校に入学したのも束の間、父のエジプト勤務が決まり、4年生が終わるまでそこで暮らし、ヤコブという親友を得た。しかし、両親が離婚したため日本に戻ることになり別れざるを得なかった。高校時代に須玖という親友を得たが、その後の阪神淡路大震災を境に彼は変わってしまい、付き合いは途絶えた。歩は、自分の人生は住む場所からしてそうであったが、家族に振り回されていると思っていた。恋愛をして幸せと思える時期もあったが、手痛い別れにあい、不幸せと思える時間を長く過ごしていた。そんな彼を救ったものとは。人生を見つける方法とは。直木賞に相応しい大作である。人生に迷った若人がこの本に出会うと大きなヒントが得られるであろうし、迷った経験をもつ大人が読めば、そうか、そういうことか、と頷けるであろう。
2022.04.13
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青空と逃げる辻村深月の新たな家族愛の小説、ということで読んでみた。仲睦まじく暮らしていた三人家族の父親は一応は名の知れた舞台俳優。彼は交通事故に遭い入院。その時に乗っていた不倫相手が女優生命に関わる怪我を負い、その後自殺。その舞台俳優の妻と息子が女優の会社、そしてマスコミから逃げる姿を追うストーリー。ただ小説にしてもリアリティーが無さすぎて、感情移入が難しい作品でした。
2022.04.05
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噛みあわない会話と、ある過去について人をいじめた過去と、人にいじめられた過去と。この人間社会ではあり得る話である。大人になった時に、その復讐にあうとしたら、それも手酷くやられるとしたら。そんなテーマで書かれた4つの物語が収録されている。世の中ではいじめた方は覚えておらず、いじめられた方はいつまでも覚えている、と書かれることが多い。この物語では、いじめをした側も何らかの心の棘とはなってはいるが、その棘を適当に美化した状態でいじめられた側に会い、適当に美化していたことを酷く後悔させられる。実際はどうであろう。自分が苛めた人間から忌まわしき過去を暴かれるかもも知れない、という恐れは誰しも持っているのではないか。最近、社会的に成功した人間が、学生時代のいじめを暴かれて、その信用をなくしてしまう事例が起きている。自分に置き換えても、そうなったらとても辛い。自業自得となるのだろうが、自分の過去のことを妻や子供に知られたくない。私自身、今は故郷から遠く離れたところにおり、小、中、高の同窓会には一度も出席したことはない。私の時代にもいじめはあったし、私も多数側となっていた。だから、同窓会に出掛けて嫌な想いをする、嫌な想いを人にさせる可能性が高い。この本を読んで一層、同窓会にはいかないのが良い、その想いが強くなった。
2022.04.04
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冷たい校舎の時は止まる 上/辻村深月【1000円以上送料無料】辻村深月の処女作でメフィスト賞受賞作品。直木賞受賞作「鍵のない夢を見る 」は私にはいまいちピンと来ず、次に吉川英治文学新人賞となった作品「ツナグ」は面白く読めた。そして、かがみの孤城、凍りのくじら、スロウハイツの神様という代表作を読んで、辻村深月は藤子不二雄オタクかということが解っての処女作読み。しかしこれまたピンとこなかった。主人公は作者と同じ名前の辻村深月、高校3年生。雪の降る日に学校に来たのは深月を含む学園祭の時のクラス委員8人だけ。帰ろうとするがなぜか校舎の外に出られない。出られる手がかりを探しに学校中を探索する8人。深月と梨香は職員室へ。担任の榊の仕組んだいたずらでは、と担任の榊の机に何か手がかりが無いかを探す2人。そこには学園祭の時に学級委員と榊で写した写真。しかし、その写真には何か違和感があるが、何かはわからないまま探索を続ける2人。もう一度8人で集まり、お互いに見つけた手がかりについて話し合う。そこで皆に共通する手がかりとは、学園祭の最終日に自殺した生徒の名前が思い出せないこと。梨香は気づく、先程の違和感の正体に。学級委員8人で担任を囲んで撮ったはずの写真なのに、人間が8人しか写っていなかったこと。写っていなかったのは誰?ひょっとしたら8人の内の一人が自殺したけど、その一人が幽霊となって、復讐のために皆を集めたのか?もう一度写真を見に行く8人。しかし、梨香と深月が見た写真は無くなっていた。そして、そこから不可解なことが8人に襲いかかって来る。文庫本上・下巻あり、最後で種明かしがされるのだが、それがどうも腑に落ちない。読了感としては気持ちの悪い作品であった。
2022.04.02
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スロウハイツの神様 上赤羽環が所有するスロウハイツに集った千代田公輝、狩野壮太、森野すみれ、長野正義、黒木智志、円屋伸一の物語。手塚治虫のいるトキワ荘に集う藤子不二雄、赤塚不二夫、石ノ森章太郎らのトキワ荘物語へのオマージュ作品と思われては困る。平成、令和に舞台を移し、脚本家、作家、漫画家、画家、映画監督、雑誌編集者、ただの人になった7人の凄絶な愛の物語である。ぜひ読んで欲しい作品である。
2022.03.26
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凍りのくじら主人公、理帆子は高校2年生。読書が好きだが、漫画も読書の一部と考えており、一番のお気に入りは藤子・F・不二雄。「先生」と呼んでいる。先生にとってSFとは少し不思議な話。理帆子はそれに感化され、他人を少し○○なひと、として分類するのが好き。彼女は父親に突然失踪され、母親もがんで入院中。寂しいけれど、それを人付き合いで埋めることはしない。本のなかの世界が彼女を助けてくれていた。「私が、自分に名付けたのは、少し・不在。どこにいても、そこに執着できない。誰のことも好きじゃない。誰とも繋がれない。なのに、中途半端に人に触れたがって、だからいつも、見苦しいし、息苦しい。どこの場所でも、生きていけない。」不思議な3年生、別所あきらと出会い、理帆子の人とのつきあい方は少しずつ変わっていく。そして、25歳の理帆子はどうなったのか。ドラえもんの秘密道具もたくさん登場する。先日読了した、かがみの孤城、と同じく藤子不二雄ファンにはたまらない作品。
2022.03.21
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かがみの孤城【電子書籍】[ 辻村深月 ]素晴らしい作品でした。SFとしても、学園ものとしても。藤子不二雄Fのとある小作品集のなかの漫画がモチーフとして用いられています。幼い頃からドラえもんをはじめとした藤子不二雄作品をほぼ全て読んできた私にとっては、作者の藤子不二雄氏への愛を感じました。おすすめです。
2022.03.17
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[書籍のメール便同梱は2冊まで]/諦めない女[本/雑誌] (光文社文庫) / 桂望実/著桂望美 嫌な女、我慢ならない女に続く第三段として上梓された作品である。母親がちょっと目を離した間に、小学校入学間もない少女が姿を消した。誰もが諦めていた6年余りの時を経て、少女は母親の元に帰ってくる。そして、その後の数年の生活も含めて取材を続けていたノンフィクション作家である主人公桃子。人生を諦めなかった少女とその母親の心のあり方に迫る作品。世の中には理不尽な事件は沢山あるが、被害者、その家族の心の襞を丁寧に描いている。おすすめです。
2022.03.14
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ツナグ/辻村深月【3000円以上送料無料】直木賞作家、辻村深月。その直木賞を授賞した「鍵のない夢を見る」の2年前に上梓され、吉川英治文学賞を授賞した作品である。死者と生きているものをつなぐ使者、つなぐ。人はそれぞれ一度ずつの権利を持っているという。生きている間に一度、死んだ人間に会える。死んでから一度、生きている人に会える。第2話、実業家の男性は母親に会うことを決意する。その母親が生前、父親に会わせて貰ったことを非常に喜んでおり、人生に迷った時、あなたもその権利を使いなさい、と言われていたのだ。母親は騙されていたのか、本当なのか、その真偽を確かめたかったし、真実なら母親に会って確かめたいことがあった。果たして。仕事上、死を目の前にした人と毎日接している。ホスピスで過ごしていて、「亡くなった○○が夢に出てきた、お迎えに来てくれたに違いない、世話になったね、先生。」というような話をしてくれる人が時々おられる。そういった人は死を怖れず、それからを生きてくれて、安らかに旅立っていく死後の世界にもつなぐ人がいるのだろう、と思わせてくれる。死の不安におののいている人に、死後の世界から迎えに来てくれたら、きっと安心できると思う。
2022.03.08
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鍵のない夢を見る 文春文庫 / 辻村深月 ツジムラミヅキ 【文庫】2012年、第147回直木賞受賞作、ということで、読んだ。犯罪に巻き込まれた、ないしは巻き込まれそうになった女性の心理を描いた五つの短編集である。読後感が良くないと感じるのは私だけだろうか。
2022.03.07
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[書籍のメール便同梱は2冊まで]/ボックス! 上[本/雑誌] (講談社文庫) (文庫) / 百田尚樹/〔著〕文庫化された時に直ぐに購入して、久々に再読。その時も涙が出てきたが、今回もやはり泣いてしまった。大阪のとある高校の弱小ボクシング部が舞台。中学時代にボクシングジムへラーメンの出前に行き、天賦の才を見いだされたカブちゃんと、その彼に影響されボクシングを始めた幼馴染みのユウちゃん。そしてその2人の成長を見守る女性教師。何かをする際に、僅かな努力である程度のレペルまで到達出来ることが才能と呼ばれることが多い。大概の天才と囃し立てられる人は、そのある程度のレベルで満足し、頂点には届かない。努力を努力と厭わず、その道を追究出来ることこそが才能であり、その者だけがその道の頂をみることが出来る。それこそが真の天賦の才ではないか、そういったことを考えさせられた物語。また、ボクシングの歴史と面白さを伝える物語でもあった。努力する天才ボクサーとしては西岡利晃を思い出す。そして西岡を思い出すと同時に、四人のチャンプも直ぐに連想される。彼の目の前にはウィラポンという天才ボクサーがいた。ウィラポンは辰吉からWBCの王座を奪ったチャンピオン。西岡は四度、彼に挑戦したが一度も勝つことは出来なかった。それでも努力を続け世界チャンプとなった。若きドネアと対戦し王座を陥落するまで7度の王座防衛戦に勝ち続けた。そのドネアはWBOチャンプとして井上尚弥に破れて王座を明け渡した。井上尚弥は今もモンスターとして王座に君臨している。辰吉、ウィラポン、西岡、ドネア、井上と受け継がれた天才の物語。井上もいつか新たな天才に出会うことであろう。その日が来ることは切ないことながらも楽しみではある。
2022.03.06
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こころ/夏目漱石【3000円以上送料無料】夏目漱石 こころを読んでいる。三度目になるが、新しい発見があった。まずひとつ、後期三部作の後ろ二つ、行人とこころに共通点があり、それは、長い手紙を主人公が読む形で小説が終わること。二つ目 こころは主人公が慕う先生の手紙のなかに、本当の愛は宗教心とそう違ったものでない、というフレーズがあるが、明治の人間の倫理感、宗教感に満ち溢れた作品であること三つ目明治の知識階級の男性は、結婚後に恋をしたり、妾を持ったりはするものの、結婚までは晩生の者が多いこと。後期三部作のみならず、漱石の作品全般にいえるものであること。先生は主人公に、明治天皇が崩御し、乃木希典の自決をみて、自分も自殺を決意したことは、君の世代には理解できないだろう、と手紙に書く。昭和、平成、令和と生きている私には、死にたくなった理由はよくわかる。私は決してお金にも知識にも裕福ではないが、それなりに満たされている。今は50までにした経験という貯金で生きている。精神的に向上心のないものは、馬鹿だ、という台詞が今はこころに突き刺さる。向上心なく生き長らえることに疲れたとき、自死を選ぶかも知れない。
2022.02.28
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行人/夏目漱石【1000円以上送料無料】夏目漱石後期三部作 行人を読んだ。おも明治の資産家階級の人たちがどんな生活をしていて、どんな恋愛観を持っていたのか、そういう物語である。主人公二郎はそこそこの会社に勤める独身貴族である。ただ、実家に両親、独身の妹、兄夫婦にその子供もいる大家族の一員である。二郎が一郎から妻、二郎にとっては嫂(あによめ)、が一郎のことをどう思っているのか探って欲しい、夫としてどう思われているのか聞いて欲しい、と頼まれ、困り果てる話である。一郎と嫂の馴れ初めや、二郎と嫂の関係性などバックグラウンドが不明のまま話が展開するので、作者の意図するところがさっぱりわからないのである。とどのつまりは、恋愛下手な明治の男が、自分を分からぬまま妻をめとり、家庭というものがよく分からず煩悶し、弟を巻き込んで自滅する、そういう話である。
2022.02.26
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夢十夜/草枕 (集英社文庫) [ 夏目漱石 ]草枕を久々に読み直しましたが、初めて初期の作品であることを知りました。吾輩は猫である、倫敦塔、坊っちゃんに次ぐ第4作目であるらしい。画工(絵描き)の眼を通して観た明治大正の日本人を描いた作品。「山路を登りながら、こう考えた。」の冒頭は教科書にも載るぐらい有名ではあるが、小説一編を通して、明治から変わることの無い、流され生きていく日本人の憐れを書いた作品である。
2022.02.23
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