前作からわずか半年でリリースされた2ndアルバム。アマチュア時代の楽曲を収めた1stに対し、今作ではデビュー直後に制作された楽曲が中心となっています。スタイル・カウンシルやシャディー、マット・ビアンコといった、「カフェバー音楽」的なサウンドを作るというコンセプトで、前作とは違ったカラーのムーディーな一枚になっています。アレンジでは、同い年の松本晃彦氏を迎え、共同作業で制作されました。歌詞はまだ提供のものが多いですね。 アダルトな雰囲気の漂うこのアルバムは、ふり返って聴いても、どうにもKANさんらしくない感じがして、僕はあまり好きではありません。確かに、雰囲気としては、コンセプトがしっかり表現されているとも言えるのですが…。楽曲水準としては、ポップですっきりとしたアレンジの『今夜はかえさないよ』、隠れた名曲『BRACKET』、メロディーメーカーとしてのセンスが感じられる『ONE NIGHT KISS』・『ALL I KNOW』や、ライブの定番となった『NO-NO-YESMAN』など、様々な角度から注目したいナンバーもあるのですが、総じてみるともうひとつ。特に、後半は充実していますが、2曲目~5曲目あたりの流れがどうも苦手です。
3rdシングルとしてアルバムと同時リリースされたナンバー。はっきり言って名曲です。ビリー・ジョエル節全開のピアノサウンドで、サビの「I’m all right」の歌い方や、終盤のフェイクなどもビリー・ジョエルそのもの。しかし、全体的な雰囲気は似せながらも、しっかりとKANさんなりの楽曲に仕上げています。歌詞がまた良く作り込まれていて高ポイント。情けなくも真摯で前向きなKANさんの恋愛観が見事に歌われています。
「あーーーー」といういきなりの歌いだしや、楽曲全体の雰囲気など、アルバム『GIRL TO LOVE』の延長線上のようなポップな仕上がりですが、アレンジは後に米米CLUBのメンバーとして加入する林部直樹氏と共同で行われており、よく聴いてみれば一味違った出来。サビのコーラスの重ね具合がお洒落です。歌詞は「性」の問題に取り組んでいます。
前作『GIRL TO LOVE』は、KANさん自身にとっても自信作だったようで、これが売れなかったことでKANさんは精神的にも落ち込んでしまいます。打ち込み色が強く、歌詞もやたら考えすぎているようなものが多いという印象。この時期のKANさんの精神状態が感じ取れるような一枚です。『GO PLAIN』・『FOREIGNER』・『A MAN IN DISSATISFACTION』などは、KANさんのレパートリーの中では異色とも言えるような暗さと難解さ。せめて楽曲だけでも明るく…ということで作られたナンバーもあるようですが(『君から目がはなせない』・『REAL REACTION』など)、いつものKANさんとはやはり違ったものを曲からも感じますよね。 楽曲のほうは、遂に全曲をKANさん一人で作詞・作曲という形に。編曲は、それまでの共同アレンジ方式をやめており、KANさん単独でアレンジしたものもあれば、松本晃彦・奈良部匠平・大谷幸の各氏にそれぞれ依頼したものもあります。 前後の『GIRL TO LOVE』・『野球選手が夢だった。』という各作品とは違った次元に位置しているような作品です。 全単独での作詞・作曲達成と並んで、それまではペラ紙だった歌詞カードがブックレット化されたことも、KANさんにとって喜ばしいことだったようですが、「あやふやで可哀想なアルバム」というのが今作への自身の評。 ただ、『REGRETS』はいつ聴いても切なくなる名曲。これは本当に良いです。
1.UNIT OF SOCIETY
★★★
作詞・作曲・編曲を全てKANさん単独で手掛けています。今作を象徴するような打ち込み色の強いナンバー。サウンド面だけでなく、歌詞もやたら悲壮感が漂っています。最後の「さあ 勇気を出して Unit of Society♪」というフレーズが展開していくところや、女性コーラスと重ねたヴォーカルなどは面白いですね。 元々は、このアルバムのタイトルも『UNIT OF SOCIETY』とする案もあったようですが、難しすぎるということでやめたそうです。
2.OLD FASHIONED GIRL
★★★☆
この曲は、わりと『GIRL TO LOVE』からの正統な流れの中にある曲だと言っていいと思います。ハネたポップナンバー。自由奔放なヴォーカルも楽しそう。編曲は大谷幸氏。 歌詞カード2行目の「oh」がナナメってますが、これを誤植と捉えるか、意図したものと捉えるか(笑)。
やはり、精神的に落ち込んでいる中で作られた楽曲ということで、どうしても『GIRL TO LOVE』のような明るさは見られません。ポップな楽曲なんですが、出来上がりの雰囲気からは、やはりKANさんらしさはあまり感じられないんですよね。 ただ、馴染みやすく知的な感じもするこの曲のメロディーは、僕はかなりお気に入りです。「アクション♪」・「リアクション♪」のクールなコーラスもマル。