NO-NAMEの隠れ家

NO-NAMEの隠れ家

Mr.Children(1)

Mr.Childrenって…!?

桜井和寿(Vo&G)、田原健一(G)、中川敬輔(Ba)、鈴木英哉(Dr)の4人組。
1992年デビュー。1993年11月発売の4thシングル『CROSS ROAD』が初のミリオンヒットを記録すると、1994年のアルバム『Atomic Heart』は当時の日本国内の邦楽アルバム歴代最高売上を記録。
桜井の高いソングライティング能力を中心に、その後も数多くのヒット曲を生み出す。1997年に活動一時休止も、1998年に活動再開。現在まで長きに渡り活躍を続けている日本を代表するロックバンド。
代表曲は、『Innocent World』・『Tomorrow never knows』・『名もなき詩』・『終わりなき旅』など多数。



作品レビュー

1stアルバム (ミニアルバム)
『Everything』
(1992.5.10)



Mr.Childrenのメジャーデビュー作。小林武史のプロデュースによるミニアルバムです。
まだまだ原石という印象ですが、あらためて聴いてみると、結構良い曲が多かったりします。
ジャケットやブックレットは、イラストと横文字で描かれ、人間臭さが皆無というか、まったくもってミスチルらしくないんですよね、これが。
このバンドがこれからどのような道を進んでいくのか、そんなことはまだ誰も知らないわけですが、デビュー作からいきなり桜井さんのポップス職人としてのセンスが光っています。

1.ロード・アイ・ミス・ユー ★★★☆

「初期ミスチル=ポップで明るい」というのが半ば公式化しているのですが、1stアルバムの1曲目であるこの曲は、いきなりマイナーコードから始まります。ちゃんと、その後の鬱期を予感させる要素があったりするんですね(笑)。
曲の展開もひねっています。桜井さんの職人気質が見られる1曲。

2.Mr.Shining Moon ★★★

ジャズやAORの空気も取り入れたスタイリッシュなポップス。デビューアルバムの曲とは思えないくらい完成度が高いです。

3.君がいた夏 ★★★☆

後に1stシングルとしてカットされます。譜割りに言葉を詰め込むようになる後のミスチルと対照的に、一つの音符に一文字しか載せない詞のつけ方によって、独特の間延びした雰囲気が感じられるのが特徴。なんとも言えないやるせなさとセンチメンタリズムを感じるナンバー。まぁ、シングルカットするならこの曲だろうなぁ。アレンジも爽やか。

4.風 ~The wind knows how I feel~ ★★★☆

個人的に今作で一番好きなのはこの曲です。大陸的なサウンドは他では聴けないし、「風は知ってるんだ 本当の事」というフレーズが神秘的で良いです。

5.ためいきの日曜日 ★★

ゆったりとしたテンポで進んでいくナンバー。
眠くなります。寝ちゃ駄目だ。

6.友達のままで ★★☆

軽快なロックンロール。
アレンジもシンプルで、聴いているとバンドがやりたくなるような1曲です。

7.CHILDREN'S WORLD ★★☆

インディーズ時代からの楽曲。若さが溢れるバンドサウンド。『CHILDREN’S WORLD』ということで、彼らのテーマ曲のような存在にするつもりだったのかはわかりませんが、現在はすっかり話題に上がることもない1曲となってしまっています。

総合 ★★★

(改:2007.10.6)










2ndアルバム
『KIND OF LOVE』
(1992.12.1)



前作から7ヶ月で届けられた2ndアルバム。初のフルアルバムです。2ndシングル『抱きしめたい』と同時発売。
ブレイク後に売り上げを伸ばし、約4年半をかけてミリオンに到達しました。最高位は13位。トップ10にランクインせずにミリオンに到達したアルバムは、B’z『BAD COMMUNICATION』と今作の2作品のみ。
とにかく、初期ミスチルの魅力が凝縮されたアルバム。特にどの曲が飛びぬけているというわけではないのですが、バランスのとれたポップスアルバムとして高水準の作品です。
以下に見ていくとわかるように、様々なタイプの楽曲が揃っていて、そのどれもがアルバムのトータリティを考えると重要な構成要素となっています。エバーグリーンな世界観が見事。
初期の代表作。

1.虹の彼方へ ★★★

初期のミスチルを代表するような底抜けに明るいポップナンバー。当時のお得意の作風ということで、1曲目に持ってくるのも納得といったところですね。

2.All by myself ★★★

クールなファンクロックで、サビのテンポの良さと裏声を巧みに用いた歌唱法は桑田佳祐の影響でしょうか。歌詞の一人歩き感が惜しい。
後に、3rdシングル『Replay』のc/wとしてカットされています。

3.BLUE ★★★

これもひとつの初期の彼ららしさ。まったりとしてムーディーなナンバー。
アルバム序盤からタイプの異なる曲がどんどん繰り出されていくのがすごいですね。

4.抱きしめたい ★★★★

2ndシングル。彼らの初期の代表的なバラードとして認知度の高い楽曲です。ただ、セールス的にはほとんど数字を残していません。ベストアルバム『Mr.Children 1992-1995』のライナーノーツでは、この曲の売り上げが大幅に水増しされていますが、実際の売り上げは6万枚程度。最高位も56位と低いです。
シンプルなアレンジと、「抱きしめたい~♪」というストレートなメッセージが、整合性よくハマっており、桜井和寿が歌ったときのその吸引力は見事。初期ならではのがむしゃらさや青臭さが楽曲に最高の形で投影されており、極上のラブソングに仕上がっています。スタンダードな名曲。

5.グッバイ・マイ・グルーミー・デイズ ★★★

1stシングル『君がいた夏』のc/wに収録されていた楽曲。
サビらしいサビのない、軽快なアメリカンポップス風のナンバー。歌詞の世界観はポリスター時代のL⇔Rと通じますね。
アルバムの流れとしても、真摯なバラードの後にこうした楽曲が来ることで、また一気にテンションが上がっていきますね。「トゥッ、トゥッ」というファルセットと「I want be happy~♪」の絡みがオシャレ。

6.Distance ★★★☆

これまでで最も重量感のある楽曲。吸い込まれるようなアレンジメントと桜井さんの声が良く合っています。間奏のホーンアレンジも秀逸。

7.車の中でかくれてキスをしよう ★★★

『抱きしめたい』とはまた違ったタイプのバラード。ピアノとアコギ中心の本当に静かなアレンジメント。好きな人はすごくハマるんじゃないでしょうか。やはり桜井さんの歌声の存在感がすごいです。

8.思春期の夏 ~君との恋が今も牧場に~ ★★☆

ドラマーの「Jen」こと鈴木さんがヴォーカルを務めるほのぼのとした楽曲。アルバムの流れの上で大事な楽曲でしょう。

9.星になれたら ★★★☆

旅立ちを描いた楽曲。桜井和寿と寺岡呼人の共同作曲。なるほど、真正面からのポップ感は、『STAR BLUE』あたりのジュンスカっぽい。
躍動感のあるメロディー、タイトなドラムスと煌びやかなキーボードによるアレンジは非情に爽やかな印象で、人気の高いナンバーではないでしょうか。
ベストアルバム『Mr.Children 1992-1995』にも収録されています。

10.ティーンエイジ・ドリーム (I~II) ★★★★

「The Beatles的」という意味では、次回作『Versus』収録の『LOVE』と双璧の楽曲。「I~II」としたタイトルからも分かる通り、2つの楽曲を1つにしたような曲構成になっています。中期The Beatlesの雰囲気のまま、前半部分では青春時代を回顧し、後半部分ではその青春時代にタイムスリップし、ほとばしる熱い想い(というか、欲望というか)を叫びます。
このアルバムの総括的な意義も果たしている1曲で、6分近い演奏時間も、全然長く感じられません。個人的にも、今作中で最も好きな楽曲です。

11.いつの日にか二人で ★★☆

ピアノとストリングスによるバラード。年上の女性への片想いを歌った楽曲で、高音部での丸く潰れるようなところも含め、一発録り的な生々しさのあるヴォーカルは、この楽曲が桜井和寿の本音であることを暗示する意図もあったのか、なかったのか。代名詞に「あのひと」を持ってきているのも異色です。
推測ですが、この曲を作る上で頭にあったのは、おそらくKAN『君が好き胸が痛い』か、もっと遡ってビリー・ジョエル『honesty』だったのではないでしょうか。ただし、それらには完成度的には及びません。中盤のやたらシンフォニックな部分は削り、もっと短くしたほうが良さが出たかと思いますね。

総合 ★★★★

(記:2007.10.6/一部加筆修正:2009.6.14)










3rdアルバム
『Versus』
(1993.9.1)



前作から9ヶ月という早いスパンでリリースされた3rdアルバム。
7月にリリースされた3rdシングル『Replay』は、グリコ「ポッキー」のCMソングに起用され、最高19位を記録するスマッシュヒットとなっていました。
密度やバランスといったアルバムのトータリティの面では前作より劣りますが、今回もサクサクと聴ける良質なナンバーが続くポップスアルバムになっています。後のベストに選曲された『LOVE』や『my life』といった楽曲は今作に収められています。
『KIND OF LOVE』と『Atomic Heart』に挟まれて、なかなか話題に上がることのない可哀想な印象のアルバムですが、十分に楽しめる好盤。
まだまだ初期ポップサウンドですが、その後に繋がる鬱な要素がそろそろ顔を出し始めてきたことが、『Another Mind』や『蜃気楼』といった楽曲から覗えます。

1.Another Mind ★★★

自己についての苦悩を描いた暗いイメージの楽曲からアルバムはスタートします。サウンドも、冷たい感じがしますね。間奏がややスピード感が削がれて退屈な印象ですが、それを差し引いてもカッコイイ。

2.メインストリートに行こう ★★★☆

エルヴィス・コステロ風ロックンロール。軽快で、ライブでもとても盛り上がりそうですね。曲調は、後の『シーソーゲーム ~勇敢な恋の唄~』のプロトタイプか。

3.and I close to you ★★★★

これは、小林武史の技が冴え渡っています。手の込んだアレンジがすごい。
4thシングル『CROSS ROAD』のカップリングとして収録されることにもなります。

4.Replay ★★★★☆

3rdシングル。スマッシュヒットとなり、ブレイクの布石になりました。
爽やかでキャッチーなメロディーラインに思わず頬が緩みます。A→B→サビと、順を追って盛り上がっていくお手本通りの構成、15秒でキッチリおさまるサビなど、桜井和寿のポップス職人ぶりが表れていますね。「潮風が溜息を空に運ぶ~♪」というCメロの存在も効果的。
歌詞のテーマも良いですね。一度は離れたカップルがよりを戻すのを、「出逢った日の二人がReplayしてる」と表現するあたりは詩人ですね。
ミスチルのシングル曲の中では知名度は低いほうだと思いますが、魅力いっぱいな初期の傑作。大好きな曲です。

5.マーマレード・キッス ★★

アレンジを聴かせるムーディーなナンバー。『ため息の日曜日』~『BLUE』と続いてきた系譜かな。

6.蜃気楼 ★★★

ヘヴィなロックナンバー。これまでにはなかったタイプの楽曲。バンドとしてのエゴが出てきたことを感じさせます。

7.逃亡者 ★★★

出ました、Jenヴォーカル。作詞・作曲は小林武史が務めています。レゲェ風のアレンジの1曲。彼のヴォーカルは、こうしたコミカルな楽曲に良く似合いますね。

8.LOVE ★★★☆

ポップなアレンジが光る人気曲です。メロディー自体もキャッチーで、聴きやすい1曲。
歌詞は、なんか自己中な感じですが、こんな関係も良いですね。ストーリーは『抱きしめたい』のその後だとか!?

9.さよならは夢の中へ ★★★★

隠れた名曲!聴いていると、どっぷり曲の世界に浸ってしまいます。

10.my life ★★★

「62円の値打ちしかないの? 僕のラブレター~♪」という歌い出しが印象的な、これまたポップなアレンジを施した人気曲。『LOVE』とともに、ベストアルバム『Mr.Children 1992-1995』に選出されています。
歌詞は情けない感じですが、最後は前向きなフレーズで幕を閉じます。

総合 ★★★★

(記:2007.10.7)










4thアルバム
『Atomic Heart』
(1994.9.1)



J-POPを語る上で避けては通れない作品でしょう。真っ青なジャケットのこのアルバムは、当時の邦楽アルバム史上最高売り上げを記録。現在までに累計343万枚のセールス。いまや、スタンダード。

まずは背景を説明しておきましょう。
3rdアルバム『Versus』の後、1993年11月に4thシングル『CROSS ROAD』をリリース。日本テレビ系ドラマ『同窓会』の主題歌としてもON AIRされ、初登場9位を記録したこのシングルは、最高位6位ながら長期間に渡ってランクインし続け、最終的には125万枚を売り上げるという彼らにとって初のミリオンヒットになりました。このヒットが、Mr.Childrenを国民的バンドへと成長させるきっかけとなりました。
そして1994年6月、5thシングル『Innocent World』をリリース。CMソングとしてもON AIRされたこの曲は、実に190万枚を売り上げる大ヒットに。1994年の年間チャート第1位、同年末には第36回レコード大賞を受賞することとなります。『CROSS ROAD』のミリオンヒットで果たして彼らは本物かと囁かれていたのですが、『Innocent World』は、そんなMr.Childrenの実力を見せつけ、人気を決定的なものにした大ヒットでした。

そうした1994年の9月にリリースされたのが、この『Atomic Heart』。前作から1年ぶり4作目のアルバムです。シングル『CROSS ROAD』・『Innocent World』を収録。

バラエティ豊かなアルバムだなぁというのが最初の印象。ブレイク後のアルバムなのですが、きれいなポップ一辺倒というわけではなく、前作で少しだけ顔を覗かせていた鬱の要素が、ここでまた広がってきています。そういった意味では、ブームに乗って今作で初めてMr.Childrenを聴いたリスナーは面喰ったかもしれませんね。
SEの『Printing』を経てスタートする『Dance Dance Dance』は、以前にはない退廃的な要素をもった打ち込みナンバー。この曲に加えて、『ラヴ コネクション』・『Round About ~孤独の肖像~』など、社会派な歌詞が比重を増しています。このように、歌詞は恋愛以外のトピックにもテーマを広げており、『ジェラシー』・『Asia(エイジア)』・『雨のち晴れ』など、ラブソングが多かった以前の彼らの作品とは明らかに違う世界観を演出する楽曲が今作にはあります。実は『Innocent World』も、歌詞をしっかり読んでみると、日常的な悩みが描かれていて、上辺のサウンドだけ聴いていると騙されていたということに気付きます。ただ、そんな中でラストを飾る『Over』は、今でも失恋ソングの代表曲として支持されているのも頷ける、切ない歌詞が見事。
曲調も幅広く、今作で初めて顔を出すようなタイプの楽曲がちらほら。先に挙げた『Dance Dance Dance』以外にも、『ジェラシー』・『Asia(エイジア)』でのスケール豊かなサウンド、これまでになく攻撃的な『Round About ~孤独の肖像~』、脱力感をサウンドで表現したHIP-HOPの要素を取り入れた『雨のち晴れ』など、耳に新しい楽曲が豊富。そうした新境地の楽曲と、シングル2曲や『クラスメイト』に代表されるような以前からの彼らの持ち味であった耳馴染みの良いポップサウンドを更に昇華していったたようなナンバーが、ここには混在しています。
最初に「バラエティ豊か」と書いたけど、歌詞の面でもサウンドの面でも本当にその印象が強いです、今聴いてみても。構成もよく考えられている。SEを入れたことでもそれは分かるし、『Dance Dance Dance』のオープニング、『Over』のエンディングは、本当に適役だなぁと思います。『ラヴ コネクション』から『Innocent World』への繋がりもスムーズで心地良い。

満点にしようか悩んだんだけど、唯一、後半7~11の曲順に少しだけ不満があるので、この評価にしました。
でも、本当に、今でももちろん聴けるし、多分これからもずっと聴いていくでしょう。いつまでも大事にしていきたいアルバム。名盤保証。

1.Printing (評価なし)

SE。印刷音です。そのまま次曲へ。

2.Dance Dance Dance ★★★

これまでとは明らかに違うミスチル。当時これを聴いた人は驚いたのではないでしょうか。
デジタル音、社会風刺的な歌詞…。しかし、この雰囲気がまたカッコイイ。ファンにも人気が高いようですが、好みは分かれそうな1曲ですね。サビの転調が気持ち良いです。

3.ラヴ コネクション ★★★

ローリングストーンズを意識して作ったという、ブラスの入ったロック。桜井さんのヴォーカルも、以前の楽曲に比べて自由になっていますね。
前述の通り、この曲から次の曲への切り替わりがスムーズで非常に良いです。

4.Innocent World ★★★★☆

5thシングル。名曲です。レコード大賞を受賞するも、授賞式は海外でのPV撮影のため欠席という異例の事態に。
メロディーの良さは見事としか言いようがありません。普遍的なアレンジも、美しい。終盤、「その時は笑って~♪」と高音に転じる部分が素晴らしいですね。桜井さんも、よくこんな難しい歌を歌いこなせるもんだなぁと思います。
爽やかなサウンドの裏で、歌詞は自己と向き合うという、鬱の要素が顔を覗かせています。

5.クラスメイト ★★★★☆

もしかしたら、僕がMr.Childrenで一番好きな楽曲かもしれません。これは本当に好きです。
初期のテイストを残す、以前からの系譜の楽曲。アダルトなミディアムナンバーで、ブラスがまたお洒落な雰囲気を醸し出しています。
「明け方の歩道「じゃね またね」と彼女 走り去るTAXI」・「マンションのベランダに立って手を振る僕」…あぁ、切ない。サウンドと相俟って、歌詞の切なさが更に引き立てられます。

6.CROSS ROAD ★★★★

4thシングル。彼らにとって初のミリオンヒット。今の彼らの地位を築き上げるに至った原点ともいえる楽曲です。
ビートルズを下敷きにしたようなスタンダードなアレンジが良いです。ちょっとひねくれたサビメロ、「抱き合う度にいつも~♪」からの展開も、桜井和寿のポップス職人としての力量を感じさせます。3枚のアルバムを経て、初期サウンドの総決算といえる楽曲かも。
歌詞は、あらためて歌詞だけで読んでみると、ちょっと哲学的なことを言っています。「真冬のひまわり」というフレーズの喚起するイメージが強烈ですね。

7.ジェラシー ★★★☆

ここまで3曲、従来の彼ららしいナンバーが続きましたが、ここで再び新境地的な楽曲が登場。スケール豊かなサウンドに挑戦した意欲作。アレンジで聴かせます。
歌詞カードのこの曲のページも宇宙をイメージさせるものになっていますね。

8.Asia(エイジア) ★★★

壮大なイメージの楽曲が続きます。こちらはJen作曲のナンバー。歌詞は、混沌とする世界の中で守るべきものを問うた、今までになく鋭いテーマ。今作の一方の極ともいえる楽曲。
ただ、『ジェラシー』の陰に隠れて、いまいち印象に残りづらい1曲かもしれません。

9.Rain (評価なし)

次曲『雨のち晴れ』への橋渡し的なSE。

10.雨のち晴れ ★★★

当初はJenが歌う予定だったというこの曲。
サラリーマンの男の悲哀を、客観・主観を織り交ぜて細やかにコミカルに描いた歌詞が秀逸で特徴的。ポップかつ脱力感のある曲調で中和されていますが、のしかかってくる現実は重い。それでも、最後は前向きに終わるのが救われます。
シングル『【es】 ~Theme of es~』のc/wに収録されたリミックスバージョンも必聴。

11.Round About ~孤独の肖像~ ★★★

イントロが格好良すぎます。まぁ、歌謡曲っぽいといえばそうなんだけど、キレのある激しい演奏という点では、今作中最も突出しています。

12.Over ★★★★

ラストを飾る名曲。シングル曲ではないですが、失恋ソングとしてファン以外にも認知度は高いです。
正調バンドサウンドとビーチボーイズ風コーラス。メロディーはKANの『言えずのI LOVE YOU』をヒントにしたもの。出だしとラストのメロディーは『まゆみ』か。
そして、歌詞。普通の失恋ソングにありがちな、別れた相手の美化というものをしていません。それが逆に生々しくて涙を誘います。

総合 ★★★★☆

(記:2007.10.11)










5thアルバム
『深海』
(1996.6.24)



『Atomic Heart』の後、1994年11月には、6thシングル『Tomorrow never knows』をリリース。この曲はダブリミリオンを突破し、Mr.Childrenにとって最大のヒット曲となりました。12月には7thシングル『everybody goes -秩序のない現代にドロップキック』をリリース。タイアップなしにもかかわらず、この曲もミリオンヒット。年末には『Innocent World』がレコード大賞を受賞。
1995年になっても勢いはとどまることを知らず、まず1月には桑田佳祐とのコラボレーション作品『奇跡の地球』、5月には8thシングル『【es】 ~Theme of es~』、8月には9thシングル『シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~』が全てミリオンヒット。ミスチル人気は社会現象となりました。
1996年は、2月にリリースした10thシングル『名もなき詩』が、史上最高の120.8万枚の初動売上を記録。4月には11thシングル『花 -Memento-Mori-』をリリース。この曲も100万枚を突破し、シングルは8作品連続ミリオンヒットとなりました。
そして6月、前作『Atomic Heart』以来、実に1年10ヶ月ぶりとなる5枚目のアルバムである今作『深海』がリリースされました。

Mr.Childrenにとって初のコンセプトアルバムとして、1994年の暮れ及び1995年のシングルは全て収録を見送られ、統一感のある作風となっています。
前作『Atomic Heart』に驚いたファンも多かったと思いますが、今作でも更にファンは驚いたことでしょう。SEの『Dive』を経てスタートする『シーラカンス』から、いきなり激しいバンドサウンドが轟きます。オルタナ色も顔を覗かせます。清涼感のあるラブソングを演奏するMr.Childrenの姿は、もうここにはありません。
アルバムは全体としてアナログにこだわったサウンド。生のバンドサウンドの感触が伝わってきます。前半はまだポップな質感も残っていますが、前半のヤマである『名もなき詩』を越えたあたりを境に、楽曲の印象もどんどんディープになっていきます。
そして、歌詞。『Versus』あたりから少しずつ見え始めていた鬱の要素が、ここで頂点に達します。人間の闇の部分と徹底的に向かい合っていきます。
こう一言で表すのはどうかとも思いますが、やはり言うなれば「重い」作品ということになりますね。

アルバムの流れも、小品のトラックを効果的に挟んでいたり、切れ目なく次の曲へ繋がる仕様を一部で施しているなど、アルバム一枚をひとつの作品としてしっかりまとめあげています。そう簡単に何度も聴けるような雰囲気のアルバムじゃないけど、聴く時はやっぱり一枚通して聴きたいですね。
よく絶頂期にこんなアルバムを出せたものだなと思います。彼らの作品はどれも完成度が高い名盤ばかりですが、今作はまた特別な意味での名アルバムでしょう。

1.Dive (評価なし)

水の中に潜っていくSE。アルバム全体のオープニングの役割を果たし、そのまま次曲へと繋がっていきます。

2.シーラカンス ★★★

当初は、この『シーラカンス』をアルバムタイトルにする案もあったとか。
暗い歌い出しから、狂気に満ちたシャウトへと変貌するヴォーカル、鬼気迫る演奏。メロディーよりもグルーヴを重視するザックリとしたバンドサウンドで、今作がそれまでのMr.Childrenとは違うことを印象付けるナンバー。

3.手紙 ★★★

前曲『シーラカンス』と次曲『ありふれたLove Story ~男女問題はいつも面倒だ~』を結ぶ役割を担う、3分弱の満たないミディアムナンバー。控えめなメロディーが美しくも儚い。

4.ありふれたLove Story ~男女問題はいつも面倒だ~ ★★★

メロディーは従来の彼ららしいポップな仕上がりを見せているものの、オケの重さがやはりこの作品ならでは。愛情の脆さが描かれています。コミカルな描写になっていたり、最後は「一切合切飲み込んで未来へと進め」と前向きに締められているところは、『雨のち晴れ』とイメージ的には近いかな。

5.Mirror ★★★☆

アルバムの中で数少ない、というか唯一のホッと出来るようなラブソング。歌詞もすごく桜井さんらしいなぁ。目立たないけど、良いですね、この曲。
ベストアルバム『Mr.Children 1996-2000』にも選出されました。これはちょっと意外だった!

6.Making Songs (評価なし)

その名の通り、楽曲制作の様子を録音した場繋ぎ的なトラック。次作『BOLERO』に収録されている『タイムマシーンに乗って』の原型のような音も入っています。
最後は『名もなき詩』のデモ(?)音源が1フレーズ流れ、アルバムの構成も実際に次の『名もなき詩』へと繋がっていきます。

7.名もなき詩 ★★★★☆

10thシングル。フジテレビ系ドラマ『ピュア』主題歌。日本音楽史上最高の120.8万枚の初動売上を記録し、1996年の年間チャートでは、globe『DEPARTURES』に続く第2位となりました。累計売上は230万枚。『Tomorrow never knows』に続いて、2作品目のダブルミリオン。シングル2作品でダブルミリオンを達成したのは、CHAGE&ASKA(『SAY YES』・『YAH YAH YAH』)に続いて、史上2組目。
まずは記録の面ばかり色々書いちゃったけど、やはりこれだけの数字を叩き出すに相応しい完成度を持った楽曲。この曲に、この歌詞。ケチをつけるのもやぼったいです。サビまでの構成もヒネっています。
「成り行きまかせの恋におち~」からの早口の部分も印象的。これは、楽曲のメッセージ性をより強く打ち出すためのアイデアだそうで。
アルバムの流れは、この曲を境に、更に深いところへと向かっていきます。

8.So Let's Get Truth ★★★☆

アコギによる社会風刺ナンバー。演奏時間は短め。ヴォーカルのイメージは桑田か長渕か。
こういった曲でも、メロディーの耳馴染みの良さは流石というべきか。

9.臨時ニュース (評価なし)

場繋ぎ的トラック。テレビのチャンネルを変える音。『名もなき詩』のc/wとして収録されている『また会えるかな』が聴こえる箇所もあります。

10.マシンガンをぶっ放せ ★★★

イントロなしで始まる退廃的なロックンロール。字あまり気味に言葉を乗せて早口で歌われることで歌詞では、世の不条理への怒りがあらわにされています。
後に12thシングルとしてカットされます。確かに、アルバムの雰囲気を一気にディープな方向にもっていくという点では今作中でも重要な役割を果たしていますが、曲として聴くという点に関しては単体で聴いたほうが好印象な気がします。

11.ゆりかごのある丘から ★★★★

アマチュア時代に作られたという楽曲。メロディーは美しいのですが、醸し出す世界観、悲しい結末が描かれる歌詞が、リスナーを鬱な気分にさせます。終盤は、サックスが物悲しく、そして狂気に満ちたように吹き荒れます。
今作中でも、最も暗いと言ってよい楽曲かもしれません。演奏時間も8分52秒と長い。完成度は高いです。

12.虜 ★★★

どことなく物語的な面もあった『ゆりかごのある丘から』に比べて、この曲の歌詞はもっと現実的な描写が特徴的。
重いサウンドの上でヴォーカルが悲痛にも似たシャウトを見せますが、後半はゴスペルシンガーによるコーラスが入ってきて、どことなく諦観に似たものが感じられます。

13.花 -Memento-Mori- ★★★

11thシングル。副題はラテン語で「死を覚悟しろ」の意。
「負けないように 枯れないように 笑って咲く花になろう」というフレーズも、「死」を想うゆえなのかなと考えると、なんともいえない気分になります。この曲も、「暗い」というイメージの楽曲に分類してしまうなぁ、僕は。

14.深海 ★★★★

『シーラカンス』と連動した楽曲。演奏は力強く展開し、最後は水の中を行く効果音でアルバムは幕を閉じます。果たして、これは、深海から浮上していく音なのか、更に深く潜っていく音なのか…。

総合 ★★★★

(記:2007.10.14)










6thアルバム
『BOLERO』
(1997.3.5)



1995年6月に『深海』をリリースした後のMr.Childrenは、8月に『深海』からのシングルカットにアウトテイク2曲を加えた12thシングル『マシンガンをぶっ放せ -Mr.Children Bootleg-』をリリース。73万枚と、4thシングル『CROSS ROAD』より続いていた連続ミリオンヒットは、8作でストップ。
しかし、1997年2月の13thシングル『Everything (It's you)』は再びミリオンヒット。
そして3月に入り、6thアルバム『BOLERO』がリリースされました。
前作『深海』からわずか半年ほどで届けられた今作は、『深海』に収録されなかった1994年末と1995年のシングル4作と『Everything (It's you)』を収録。発売時期の違う楽曲が一枚のアルバムに収められたということで、ファンからは「アルバムの流れに合っていない」等の意見も多くみられました。オリジナルアルバムというより、セミベスト的な一枚と捉えるのが良いのかもしれませんね。

さて、シングルの発売時期の違い等による違和感を抜きにすれば、今作は本当に良い曲が連発される一枚。当時の「ミスチル現象」というものが、この一枚で幾分理解できるのではないかと思います。
彼らの最大のヒットナンバーである『Tomorrow never knows』や自身の映画用に書き下ろした『【es】 ~Theme of es~』といった大作志向のシングルから、コステロ風ロックンロールの『シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~』やグルーヴ感溢れる『タイムマシーンに乗って』といったナンバー、社会風刺の『傘の下の君に告ぐ』、攻撃的な『Brandnew my lover』、荒涼とした世界に光が湧くようなアレンジメントが印象的な『ALIVE』、初期の彼ららしいミディアムポップスの『幸せのカテゴリー』等々、次から次へと佳曲・良曲の連発は、『Atomic Heart』にもひけをとらないバラエティ豊かさ。「アルバムとして」という点では負けるでしょうが、1曲1曲の豪華さという側面では、過去最高の作品であることは間違いないでしょう。
順調に売上を伸ばした今作は、『Atomic Heart』に次ぐ2度目の300万枚突破となりました。

そして、この直後、彼らは活動休止を宣言。充電期間に入ります。

1.prologue (評価なし)

今作もインストでアルバムは幕を開けます。そのまま次曲へ。

2.Everything (It’s you) ★★★★

活動休止前最後のシングルとなった13th。日本テレビ系ドラマ『恋のバカンス』主題歌。「愛すべき人」への想いを歌ったロックバラード。温もりの感じられるサウンドになっていますね。AEROSMITHをイメージして作ったんだとか。叫びに近い「STAY~♪」というサビが印象的。二番では、この「STAY」と「捨て」とで韻が踏まれていて、落研出身の桜井さんの面目躍如といったところか(笑)

3.タイムマシーンに乗って ★★★★

グルーブ感溢れるロックナンバー。歌詞は社会風刺で、『深海』からの流れを汲んでいます。今作に収録されたアルバムオリジナル曲は、製作時期も『深海』とほぼ同じですからね。
詞曲ともに高いレベルでまとまった1曲。

4.Brandnew my lover ★★★

ダークな切り口のロックナンバー。ただ、ダークとはいえども、『深海』のような鬱の雰囲気ではなく、もっと人口的な、アレンジとしてのダークさというべきか。
「Fu×kする豚だ」なるフレーズが凄い。

5.【es】 ~Theme of es~ ★★★★

8thシングル。自身の記録映画である『【es】 ~Mr.Children in FILM~』の主題歌として書き下ろされたナンバー。
フォークギターによる序盤から、バンドサウンド、オーケストラが加わっていくという大作。「es」とは心理学用語で、自我の一種ということ。
ライブでは演奏されることは少ない楽曲。

6.シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~ ★★★★

9thシングル。大作志向の楽曲が続いていた中で、アップテンポなナンバーをシングルリリースしてきました。ノンタイアップにもかかわらず、180万枚近いセールスを記録。
元々は「シーソーゲーム」と「She So Cute」の掛け言葉から製作がスタートしたそうで。エルヴィス・コステロ風ロックンロールで、『メインストリートへ行こう』の発展版ともいえるかも。恋愛を皮肉ったような歌詞になっており、初期の爽やかラブソングとは、そのあたりで違ったものになっています。

7.傘の下の君に告ぐ ★★★

こちらも社会風刺。今アルバムは、サウンド面では前作のような重さはないものの、歌詞の面ではまだ『深海』を抜け切れていないことがわかります。
サックスで上手く味付けをしたアップテンポで小気味良いサウンドと、韻を踏みまくる歌詞が特徴的。

8.ALIVE ★★★☆

打ち込み色の強いサウンドから、後半に行くに連れて明るくなっていくというアレンジメントが聴き所。デジタルとアナログの対比は、まるで陰と陽、絶望と希望を描き分けるかのよう。

9.幸せのカテゴリー ★★★☆

しばらくご無沙汰していた、Mr.Childrenらしいミディアムポップス。初期はこの路線も多かったけど、この時期ではこういった楽曲もめっきり少なくなっていたので(『クラスメイト』以来!?)、この曲に歓喜したファンも多いのではないでしょうか。
…で、上辺だけ聴いていれば、そんな感じでオシャレなんですけど、歌詞を読んでしまうとね。こんな曲でも皮肉交じりでリアリティのある痛烈な歌詞が乗っかっているのが、また…ね。

10.everybody goes -秩序のない現代にドロップキック- ★★★★

7thシングル。元々は『Tomorrow never knows』のc/wとして製作されていたものの、あまりの出来の良さに思い入れが勝ってしまい、シングルA面としてリリースされることになりました。ノンタイアップでミリオンヒット。
ライブでの盛り上げ用ナンバーとして作られたこともあり、現在でもライブでは頻繁に演奏されます。この曲のヒットは、彼らの幅を広げましたね。「水平チョップ」って単語なんて、今までの彼らの楽曲には絶対登場しませんでしたから(笑)

11.ボレロ ★★☆

スペインの民族舞曲であるボレロを彼らなりに料理した意欲作。悪くはないのですが…個人的には苦手、かな。

12.Tomorrow never knows (remix) ★★★★★

6thシングル。フジテレビ系ドラマ『若者のすべて』主題歌。現在までに276万枚を売り上げている、Mr.Children最大のヒットシングル。オーストラリアで撮影されたPVも話題となりました。
あの印象的なイントロから始まり壮大に展開する楽曲、そして痛みを抱えながらも希望へ向かって歩き続けようという歌詞が、多くの人々の共感を呼んだからこそ、これだけの大ヒットに繋がったのでしょう。まぎれもなく、名曲。満点。
今アルバムへの収録にあたって、シングルでは打ち込みであったドラムを生音で録り直しています。後のベストアルバム『Mr.Children 1996-2000』にも、今作からの音源が収録されているため、シングルバージョンは現在までアルバム未収録。

総合 ★★★★☆

(記:2007.10.15)


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