Busters-EN BLOG

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「Lucifer」





『天使』
人はそう聞いたとき、何と思うだろうか。
…いや、もちろん大抵は同じようなことを思うんじゃないだろうか。
容姿なら、金髪で、蒼い瞳。白衣を着て、弓矢を持っている。
純白の翼と、頭に浮かぶ丸い輪。顔立ちは丸く、ふっくらしている。
そして、どちらかというと子供。幼い笑顔で良人に幸運を与える。
だいたい、そんなところだろう。…では。
『悪魔』
人はそう聞いたとき、何と思うだろうか。
…いや、もちろん大抵は同じようなことを思うんじゃないだろうか。
速攻で前言撤回。悪魔は浮かばないな。まあ、俺は、
銀髪で、赤い瞳。黒衣を着て、先が三つに分かれた槍を持つ。
蝙蝠の翼と、頭に生える少し曲がった角。で、鼻が高く、牙がある、なんて思う。
これで、そんなにズレてもいないだろう。
『天使』と『悪魔』この二つは必ず対なる形で表される。
表と裏。白と黒。朝と夜。日と月。善と悪。陽と陰。天と地。生と死。
類似する類のものは多数ある。
天使の裏は悪魔。悪魔の裏は天使。さまざまに言われる。
漫画なんかでも、主人公の気持ちを表すのに出てきて戦ったり…。
これはどうでもいいか。
天使がすむのが天国。
悪魔がすむのが地獄。
人はもちろん、天使の天国を選びたいだろう。
人はもちろん、悪魔の地獄は選ばないだろう。
俺もそうだ。当たり前だ。
天使ってのは余りに良いイメージがありすぎるのだ。
悪魔ってのは余りに悪いイメージがありすぎるのだ。
俺もそうだ。当たり前だ。
まあ、色々言ってるけど、つまりは天使と悪魔は人々にどう思われてるのかって話。
天使が善で悪魔が悪だろうけどね。悪魔なんてまんまだし。
最近は、街中で天使を良く見かける。
といっても、まさかその辺を飛んでるわけじゃない。
今はクリスマスシーズン。
装飾やらで使われていたりするんだ。
サンタにトナカイ、ソリに煙突はどうした、とかいうツッコミをする奴は居ない。
さっきの話じゃないけどまさかクリスマスに悪魔を使うところはないだろう。
そんなところがあったら相当な悪趣味だ。
いやまあ、あったらあったで逆に見てみたい気もするが。
……で、俺は今、そういうことで天使と悪魔について考えてたりする。
なんだかテレビでよく見るどうかしちゃってる人みたいでおかしいと自分でも思うが、なんだか止まらない。
子供のころもなんで動物は、下手したら死ぬかも知れないというのに地面を歩くのか。
植物のように地面に立ち続けているだけでも生きる事は出来るのに。
むしろ樹木のように何百年も生きられるではないか。
なんて事を延々と考えてたりもした。こういう変な事を考え出すと終わりがなくなるんだ。
そんな意味不明なこと、人に話すことなんて到底できそうにもない事を考えているのは
ここに居る、ただそれだけの男。
年齢は敢えて言わない。こんな事を考えているのは、そしてそんな事を考えていられるのは大体相場は決まっているだろう。
幼いわけはないし、年老いてるわけもない。そこそこの年齢。
……といっても中年というわけでもない。ここまで言えばなんとなくな年は浮かぶだろう。
そのくらいとして捕らえてくれれば不満はない。
天使と悪魔の話はとりあえず、区切ろう。
さっきも言ったように今はクリスマスシーズン。12月下旬突入ってところだ。
ちなみに今は、この街ではそこそこの規模を誇っているデパートの前。
クリスマスキャンペーンをやっていて、その宣伝か大きな看板が据えられている。
区切ったくせに話を戻すと、その看板に天使の絵が描かれていたのでさっきみたいな事を考えていた、というわけだ。
で、なんでデパートなんかにいるかというと。
そりゃあ、アレだ。クリスマス。だから、うん。
サンタになりたかったりするんだ、年頃だし。
つまりはあと数日でやってくるクリスマスのプレゼントを買いにきた、って事だ。あんまり言わせるな。
誰に贈るって、まさか友人の男どもに贈るわけはないし、女だとしても、女友達に贈ってやるような余裕はない。
贈るのは一人。というか、一人が限界だ。経済的に。
プレゼントは想いがあれば、とかなんとか言ってるやつがいたが、男としてはそれなりに頑張ってみたいところもあったりする。
意地だ意地。なんとも無駄な。明らかに利益など無く、損害ばかりついてくる意地。
でも、それでも、なんとしてでも、彼女には送ってやりたい。
そうだよ、ああ、そうだとも。『女』に贈るんだ。ただし友達じゃない。
……恋人だ、一応。
キザな事ながら、彼女の笑顔が見たい、とかいうふざけた理由だ。
こんな俺を選んでくれるようなやさしい娘だから、というのも付け足し。
と、とりあえず、そういうことにしておいてくれ。
俺はおかしな妄想から頭を解き放ち、正常に戻してから店内へ。
さすが大手だけあり、商品はかなり充実している。
さらにクリスマスだという事もあり、何割引きセールだの、クリスマス限定キャンペーン商品だので、客も店員も大賑わいだ。
あちこちでプレゼント用に特別な包装紙で商品を店員が包む姿が伺える。
少しそわそわしながら包装の完了したプレゼントを受け取る青年。
大きなぬいぐるみを、プレゼント使用の赤い袋、緑のリボンで包んでもらっている夫婦。
たぶん子供、ぬいぐるみだから娘へのプレゼントだ。サンタさんが来てくれた。という会話がいずれ行われるのだろう。
やはり自分には妄想癖があるようだ。夫婦の見てもいない娘を想像し、笑顔の家庭を脳内で作り出している。
そんな馬鹿な考えを払って、自分の目的の売り場へと向かう。
実を言うと、何を買うかなんて決めていない。目的の、というには少々間違いだ。
来てみたのは、先ほどの夫婦に触発されてかぬいぐるみ売り場。
クリスマスシーズンでなければ男がこんなところに一人でいるのはかなりおかしい。
俺はざっと辺りを見回してみる。
ぬいぐるみとはこんなにも色々とあるものなんだと改めて知る。
アニメキャラクターなど、特定の物を除いても、種類はかなりある。
一般的なものはやはりクマだろうか。
大中小、さまざまだ。色は基本、茶色……黄土色?いまいち説明のしにくい色だ。
多くに首にリボンや鈴、蝶ネクタイが付いている。
体制は足を前に出し、手を下げて座るかたち。小さなぬいぐるみは立ち姿のものもあるが、大きいものは全て座っている。
そうしているのか、やわらかさから重みでそうなるのか、わからないが愛らしいとは思う。
どうするか、彼女にぬいぐるみを贈るか?
あまりいないだろうが、彼女はぬいぐるみ嫌いではない。部屋にもいくつかあったはずだ。
しかし、下手に大きいと邪魔になってしまうかもしれないし、かといって小さいとなんだかケチったように思われそうだ。
実際、値段に大きな差がある。
よし、とりあえず候補に入れておこう。ぬいぐるみのほかにも良いのはあるかもしれないし、まだ一個目だ。
速攻で決めてしまうのもどうかと思うし、しっかり吟味してからのほうが良いだろう。
俺は別の売り場へと歩き始める。
ぬいぐるみコーナーを出てから、そういえばと思い出したことがある。
彼女はオルゴールが好きだったはずだ。以前はなしていた事がある。大好きだ、と。
そう話していたとき、いくつかコレクションを見せてくれた。7、8個だったか。ほんの一部だといっていたが。
そのオルゴールは当たり前だが、色々と曲があった。
軽快なメロディーを奏でる楽しげな物、静かなメロディーを歌う穏やかなもの。
驚いたのが、かなり暗く、低いメロディーで、まるでホラーにでも出てきそうなおぞましげな曲が流れるものもあった。
どうやらオルゴールなら、曲調はあまり関係ないらしい。出来のよさを見ているのかもしれない。
そういえば、何の因果か静かなメロディーのオルゴールには天使の羽根が、
暗いメロディーのオルゴールには角の生えた髑髏の装飾が施されていた。
こんなところにも、天使と悪魔の紛いがでてくるとは。
なんだろう。天使と悪魔に選ばれた特別な人間かなにかなんだろうか?
あ、また話が天使と悪魔に戻ってしまった。
……で、どうしようか。
といってももう大体オルゴールで決まりだ。
あとはどんなのにするか。さいわい、オルゴールなんて特定すぎるもの、置いてあるか心配だったが意外にもたくさん置いてあった。
デパートの店内でもそれなりに目立つ場所にオルゴールコーナーが設けられていた。
俺はそこに並べてある幾つものオルゴールに目を通す。
白を貴重にハート型をしたもの。
赤と緑の入り混じる楕円形のもの。
黒を中心とし、シックな感じを漂わせるもの。
青系統のもので統一しているもの。
さらには透明で中の機械が見えるもの。これはこれで良いかもしれない。
と、ぬいぐるみ同様、同じようで色々ありすぎるため、迷ってしまう。
どんなデザインが良いか、色は?形は?大きさは?重さは?ああ、そういえば一番重要なメロディーは?
オルゴールというのは簡単なようで何気に難しいものらしい。
音をならそうと、ゼンマイを回すために探してみるが見つからず、
あとでオルゴールが置いてあった台の上に別においてある事に気づいた。
他にも、ロックが掛けられていてはずさないと音がならないもの。
何のためなのか、いくつかの場所にゼンマイを回さないといけないもの。
一番驚いたのが、これはオルゴールなのか!?といえるほど音の大きかったもの。
小さな突起をはじく楽器のはずが何故こんな大きな音が?
大きい音を出すためになにか細工でもしてあるのだろうか。実際なにかしてあるような雰囲気を出すぐらい大き目のオルゴールだった。
幸いロックが付いていて…いや、こういうものには付いていて当然か。で、自分の反射神経もあってか、1秒かからずとめられた。
一瞬でも周りの人たちに見られるのは良い気分ではない。しかし、これで第二の俺はしばらく生まれずにすむだろう。
一通りのオルゴールを聞き終わったあと、俺はゆっくりと考える。
どれがいいだろうか?男である自分にはいまいちわからないが、どれもかわいらしいデザインだ。
奏でられるメロディーもいいものばかり。彼女の場合、そこが関係あるのかどうかが心配だが。
う~ん、と頭を斜めに構え考え、悩んでいると。
ふと、その店の一角に変なコーナーがあった。
店員と男性の客らしき人がピンクのクロスをかけたテーブルに向かい合って座りなにやら話し合っている。
店員は写真のようなものがプリントされた紙や、色々なデザイン、カラーのプラモデルのパーツのようなものを男性客に見せている。
客は、それらを指差したり手にとってあちこち眺めてみたり。
何をしているのか気になって近くまで行ってみると…
オルゴールだった。
写真はまさに多種多様のオルゴールのもので、パーツはよくみれば先ほどからみているオルゴールの一部とよく似た形をしていた。
視線を落とし、テーブルに貼り付けられているチラシのように見える紙を見てみる。
『このクリスマス、大切な人にあなたが作ったオルゴールを贈ってみませんか?』
つまり、どんなオルゴールを作るか話し合っているところなのだ。
これは良いかもしれない!幸いテーブルは席がひとつ開いている。
説明書きによれば曲も選べ、造るのはさほど難しくないようだ。
それでも、自分の好きな色やデザインにできるという。
値段も普通に買うよりは高いといえば高いが、大して苦にならない金額だ。
よし、これにしよう。
俺はオルゴールにすることに決めた。さっきのクマのぬいぐるみの事なんて既に頭から抜け落ちてしまっていた。
決めた以上は躊躇しないでさっさと店員に声をかける。
わかりました、ではあちらの席へ、といわれて席に着く。
すぐに資料やさまざまなパーツを持った店員が目の前に座る。
どういったものが良いか。細かく聞かれる。
俺はその場で頭に浮かぶイメージをそのまま選んでいく。
手作り、というのは本当に良いかもしれない。
そう思いつつ、自分よりはやく座っていた男性客よりも早く全ての確認を終えて組み立てに入る。
自分は不器用なほうではない。というより誇れるくらい器用と言える。
店員にも、飲み込みがはやい、と言われた。
かといってさすがにはじめての事だ。オルゴール作りなんて。予想以上に時間が掛かった。
オルゴール作成の工程自体は聞くだけなら簡単だった。
まずどんな風にするかを決め、さらに曲を決める。
いくつかの例の中から選び、決める。知っての通り丸い筒状のものに爪のような突起が曲ごとの並び方で付いているものだ。
ちなみにこの筒状のものはシリンダーというらしい。
次に櫛歯というオルゴールの音を出すための部分にそれを取り付ける。この櫛歯を爪がはじく事で音が出る。
これくらいなら知ってはいた。名前なんかは知らなかったが。それと櫛歯は何気に音程を調整するための工夫がされているらしい。
長さがたんたら、厚みが何たら。店員の説明は良くわからなかったがなんとか核部分は完成した。
その周りに自分なりのパーツをつけていく。そうしてオリジナルのオルゴールの完成だ。
やはり聞くと簡単だが、やってみるとなると意外に難しかった。
ネジをつける箇所を間違えたり、パーツを落としたり。
オルゴールの機械部分がなぜか回らなかったり。これはパーツが引っ掛かっていたせいだった。
そんな風にいろいろ苦労し、店員の言葉がお世辞であった事を悟って、何とか完成した。
自分ではかなり時間が掛かってしまった気がしたが結構早いほうだったらしい。
ゼンマイを巻いて、ちなみにこのゼンマイも少しだけ手が加えてある。
何処となく羽根をあしらったデザインにしてあるのだ。
そのゼンマイで巻いて、ロックをはずし音を確認する。
流れた曲はクリスマスソングとしては定番過ぎる曲。
明るいメロディーにアップテンポながらなぜか落ち着きを感じさせる曲だ。
視聴をしてみたとき、一発でこれにすると決めた。
変に気取った曲よりもいいはずだ。
音の確認も終わり、真の完成となった俺特製オルゴール。
どういう形なのかと言うと……
たまご型。手のひらに収まる小さなサイズで、
白いたまご型の本体に金色のリボンが巻きついたようなデザイン。
後ろ側にはゼンマイを巻く穴の横に鳥の様な白い羽根が付いている。
たまごに羽根が生えたという不思議な形ながらも、どことなく『天使』を思わせるデザインとなった。
また天使か。などと思ってみる。ちなみにもうすでに彼女のコレクションには天使的なものはあっただろうことは分かっている。
しかし、これを贈りたいと思った。
店員にプレゼント用に包装してもらい、会計を済ませる。
目的は達成した。あとはクリスマス当日、これを彼女に送るだけだ。
ルンルン気分でデパートを出る。
何気にかなり時間がたっていたようだ。外はもう暗くなり始めている。
それなりの都会はネオンで明るく照らされている中で数個だけ輝く星がとてもきれいだった。
今は冬だ。空気は冷たく乾燥し、夜になると吐く息は一層白くなる。
手袋などつけていない手は悴んでいた。
そう思うと家の温かい暖房が恋しくなり、それまでの間に合わせでだが手を吐息で温めながら家路をたどる。
途中いくつかの信号で止まり、歩き、止まり、歩き。
いい具合に緑になったり良いところで赤になったり。
赤、黄色、緑と色をかえる信号がなんだか面白く見えた。
こんなふうに信号を見たのは小学生以来ではないだろうか。
なんというか、トマトの様な。緑から黄色に、赤に。熟れていくというか。
そんなことを考えていると信号が緑に変わった。
まったく、この妄想癖は何とかならないのか。俺は脚を前に出し、歩き出す。
ふと、左のほうから甲高い小鳥の鳴き声のようなものが聞こえた。
同時に目の前を白い何かが通る。自分の右側から左側へと。
気になったわけでもない、ただつられて横を見てみただけ。
小鳥の声はそれ以上聞こえなかったし見えるはずはない。
白い何かも、もう見えなかった。見当たらなかった。
変わりに何かが目に入る。なんだろうか?
光っている。夜の道でも誰の目にも入るくらいに。
電灯ではない。色がある。では一体なん…………
ああ、そうか。信号だ。さっきまで変に考えていたではないか。
でも、違和感があった。なんだ?
その違和感は、すぐに解決された。
信号の色は、見間違えるはずはない。燦然と輝く『緑色』だった。
その間わずか2、3秒。
脚を踏み出し、鳴き声が聞こえ、白い何かが通り、顔を向け、信号が緑だった。
おかしい。
さっき、歩行者用の赤と緑二色の信号は緑だったはずだ。
なら何故、本来は赤になるはずの信号が緑になっている?
答えは出なかった。いや、
それ以上考えられなかった。
顔を向けている方向とは逆の方向からゴゴゴ、という音が聞こえる。
振り向くが、振り向ききる前に、視界は黄色っぽく、白い光に包まれる。
かすかに赤い光も別に見えた。
ブー、という音も聞こえる。何の音だかは理解できなかった。
最後に、高いのか低いのか分からない音が聞こえる。
これも、何の音だか分からなかった。
その間、同じく2、3秒。
音が聞こえ、振り向き、光が覆い、また音が聞こえる。音は全て違う音。
これも、答えは出ず、考えられもしなかった。
次の瞬間、体全体をこの世のものとは思えない激痛が襲ったのだから。
そうなってから、全て悟った。
色々と起こったことはあるが、起きた事はひとつ。
跳ねられたのだ、車、たぶんトラックか何かに。
なぜかもわかった。
信号が緑だったからだ。トラックの運転手もだからこそ、走り続けたのだろう。
交差する信号も、緑だった事には気づかずに。
そう、交差点の信号が、全て緑になっていたのだった。
緑だった信号は黄色に変わり、赤に変わる。そして赤だった信号が、緑になる。
この場合は最後に、赤になった信号が、緑になった。
ただの事故だろう。信号の色が同一になってしまうなんてあるのかは知らないが、そうなったんだろう。
身体が宙を舞っているのがわかる。
なぜか頭は冴えている。
ふと、視界の隅に何かが写る。
人間だった。
しかも見覚えがある。
さっきデパートの中にいた、となりでオルゴールを作っていた男性だ。
近くにいるような、遠くにいるような。
その男性の手に、自分と同じ、あのデパートの紙袋が握られているのが分かった。
へえ、やっぱり彼女へのプレゼントかなにかな?
そう何気なく思い、男性の見てもいないというか居るかもわからない彼女の顔を思い浮かべ、男性がオルゴールを贈る姿が頭に浮かんだ。
ふたりは笑顔で、彼女は大層喜んで。
ああ、自分もあんなふうに…
ただの妄想でしかないことに憧れを抱く。
最後に、白い何かが見えた気がした。
なんなんだろう、あれは。そう思ったところで俺の意識は途切れた。












が、ずいぶんと早く目は覚めた。
つもりではあった。自分的には目の前が暗くなってから目が覚めるまで1分にも満たなかったように感じる。
がそうでも無いらしい。ここは……
朦朧とする意識の中で、誰かの声が聞こえる。
目の前にあるのは、白い天井だ。端のほうに輝く電燈もある。
どちらも厳密に言えば目の前ではないが。
……こういうシチュエーションの場合、病室だ。
で、ここはベッドの上と。
どうやらあのあと……記憶はなんとも無いな。近くかどこかの病院に運ばれたらしい。
あの時に目に焼きつき、瞼の裏に自然と浮かび上がる光景を嫌々見つめている。
気のせいか、誰かの声が一層大きくなった。たぶん、一度目を開けたからだろう。
次に体に重くも軽くも無い重みが掛かる。そのまま少しだけ締め付けられる。
痛い。車、トラックに轢かれんたんだぞ俺は。
全身がひどい事に…
……抱き付かれているのか。
少しずつだが頭は冴えてきた。ものは考えられる。問題はなさそうだ。
次は体のほうの心配をする。とりあえず頭は冴えているのにガンガンするというなんともやり切れない状態だ。
他の所はどうだろうか。
腕は?
動く。
少しズキズキするが、シーツの外へ。
目は?
開く。
って、さっき天井が見えたじゃないか。
耳は?
聞こえる。
言葉とはいえない声が聞こえる。
声は?
でる。
しゃべっては無いけどさ。
よし、大丈夫だ。
俺は腕を上げ、目を開き、耳を澄ませ、声を出す。
そこに居るであろう人を。
いや、居るであろう、というよりもう確認した。よかった。不謹慎だが、この場で家族だったりするとあんまり嬉しくない。
腕で触れて、目で見て、声を聞いて、名を呼ぶ。
それは、愛する人。
「痛いっての。秋葉」




残念ながらたまごの天使は、あの時見たものとは違う『白い何か』に変わっていた。






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あとがき


どうも、こんにちは。

もしくは初めまして。

こんな駄文を最後まで読んでくださった方、ありがとございます。

そしてお疲れ様でした。

え~、この小説はですね……

天使と悪魔、これがテーマとなっています。

天使と悪魔、出て無いじゃんという意見もあると思いますが







お気になさらず(オイ

まあ恋愛ものと取っていただければ。

この作品は長編となる予定です。

まあフリーページ見ていただければわかると思いますが

長編をほかに二つも書き止めているんですけど。

なので、これはこれで一話完結といたします。

短編として見ていただければ。

天使と悪魔の件で色々と引っかかるとは思いますが。

「天使達がまったくでてこないのもそれはそれでありかと思います」

というご意見も某小説投稿サイト様から頂きました。


というわけで、改めてこの小説を読んで下さった方々に感謝を。

これから(も)よろしくお願いします。

でわw



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