おばさんが作った死語ブログ。人生いろいろに語ります。

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鈴木さんの指が見つからない (上)



 今回お話しする「ピット」とは、例えば、よくGSでオイル交換をする際に車の真下に空間がある。あの「ピット」をイメージすればいい。もう少し具体的に言うと、自動車部品を製造している製造ラインにはでっかい成形機(またはロボット)が数台設置されている。その各成形機の真下には、人が一人位入れる地下室がある。地下室といっても、その工場のフロアを建設する際にはちゃんと図面に入っているきちんとした作業場なのだ。

 その「ピット」の役目は保全関係に主に役立つ。成形機を修理したり、その調整を確認したりするのに、便利らしい。が、製造業の成形機はメカゴジラみたいな大きさにキングギドラの雄叫びの如くの騒音(成形音)だから、その「ピット」の中に入れる勇気はちょっとない。照明なんて付いてないから、なんだか怖い。二度と出て来れないような気がする。

 さて、時としてその「ピット」は変貌する。
 成形機の多くは「油圧」というもので動いているが、その油が漏れることがある。漏れるどころかピューピュー噴水の如く吹き出ることもある。当然水も油も上から下に流れるので、その「ピット」は油の部屋になる。そんな時、おがくずを撒いて油を吸収させる。それを初めて聞いた時、「うむ、なるほど」と思ったのは、おばさんだけだったろうか。
 また、税務署が来るというので、こりゃまずいという状況になった時、そこは資産の隠し場所となる。帳簿に矛盾のある物品はここに隠す。「会社ぐるみ」とはこのことで、皆必死になる。といっても、必死の形相は経理と役員だけで、詳しいことを知らない一般作業者は、子供の頃秘密の隠れ家に、内緒で買ったアダルト雑誌を隠すような雰囲気で、楽しそうにも見える。「そんなことをしてはいけない!真実はねじまげてはいけない!」と言える日本人が多ければ、日本も雪印ももっとよくなるだろうに。

 ある時、作業中に怪我人が出た。鈴木さんだ。成形機に左中指を鋏まれた。鋏まれたと言うより、指がちぎれた。誰だって鋏まれれば痛い。痛いからその手を引く。引くからちぎれる。
 よくこの業界の作業者は、鋏まれたら絶対そのままで我慢しろ!という。切断という最悪の状況にならない為のものだが、現実はそうはいかない。どっちにしても明らかに労災である。

                     下巻へ続く




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