おばさんが作った死語ブログ。人生いろいろに語ります。

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巡回検診車 (上)


 別に年に一度の検診なんかで命が救われるわけでもないんだけど。別にホントは健康なんだってわかってるんだけど。
 病院での検査も健康のうちにやっておくほど楽しいものはない。おばさんにとって観察の宝庫でもあった。
 誰もが嫌がるあの「胃の検査」もおばさんは「一時の我慢」と心得て臨んでいた。
 まず、炭酸を飲む。あれが曲者で、どうにも目が白黒してしまう。次に何がイヤだって、あのバリウムのまずさ。昔は「いちご味がいいですか、ヨーグルト味がいいですか?」と聞かれた時代もあった。最近は聞かないなぁ・・・。何と例えたらよいか?そう、小学校の頃、体育の時間になるとグランドに先生が一生懸命白線を引いていた。「石灰」だったろうか、あれを水に溶かして飲んだらきっとこんな感じだろう。と考えながら、いつも飲む。飲む。飲む。一気に飲む。
 「胃の検査」で何が嫌いかって、おばさんはこの「炭酸」と「バリウム」、ではない。おばさんはこの「胃の検査」の検査員が好きになれない。
 まず、事務的な言葉。マニュアルどおりの対応。
 「はい、こちらに前を向いて立ってくださぁい。」
 「はい、こちらが炭酸。はい、舌の上に乗せて、この水で一気に流し込むぅ~。」「は~い。はい、はい。」「ゲップだめですよ、だめですよぉ、(げっ)、だめって言ったでしょ、我慢してくださ~い。」
 「ではバリウムですよ。はじめは一口ゴックン。」
 「はい、横を向いて、はい、肩と頭はこちら~。はい、前ねぇ~。」
 「はい、残りのバリウム、コップを手に持ってぇ~、はい飲んで、飲んで、飲んでぇ~。ぜぇんぶのんでぇ。」
 ・・・これはまさにアダルトビデオの編集中かと思わせる会話である。ましてや検査が始まり、
 「もっと横、そう右右。」
 「はい今度はくるっと一回転して~。そうそう、その調子~。」
 「肩は正面向けてぇ~、あ、顔もこっち向きでいいの。そうそう、はい写真とりますねぇ。」
 ・・・などと言われていたら、検診用の薄いガウンは羽織っているものの、一枚脱げばパンツ一丁のこの裸。へへへへ、ヌードモデルになったような気分である。
へ?むしろ楽しそうだって?いやいや、これは最初の頃の記憶で検診も回を重ねるといやになってくる。こんな人を小馬鹿にしたようなやりとりはうんざりだ。

 さて、これくらいはまだかわいいとして、問題は巡回健診車、である。
 ある公共施設をほぼ貸し切って健康診断が行われる。おばさんは早めに出掛ける。息咳きって時間ぎりぎりに飛び込んで最初に行う血圧測定で随分困ったことがある。早めに出掛け、のんびり静かに順番を待つのだ。
 今回も椅子に座り、待ち時間を利用しておばさんは例の如く人を観察していた。すると視界に場違いな男が現れた。まだ、受付の始まらない会場を気障な格好(ビジネスマンとも思えない派手なスーツ、派手な時計)をした、かなり色黒の男。(あれはどうみてもゴルフ焼けでもない、海で焼いたでもない、今時の何て言うんだっけ、機械の光でわざと肌を焼くお店・・・えぇいめんどくさい、日焼けショップにしておこうか。それで焼いたもんだとおばさんは推測する。)口ひげも蓄えている。受付会場を入ったり出たりして、私たちの前を何回か往復している。ただ通り過ぎるのではなく、私たちを物色しているようにも見える。だって、時々口元がゆるみ、笑っているのか、喜んでいるのか、傍からみていて不気味な笑いを浮かべている。おばさんが見つめているのには気付いていない。男の視線が、受付を待つ女性の中でも一番若い女性に向けられているのをおばさんは見逃さなかった。「なんだあいつは。」そして男はなんだかおばさんの中に「不快」という漢字と感じを残していなくなった。
                  (下巻につづく)



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