月浮かぶそら、輝くひかり。 -静かな夜空の小さなトモシビ。

第二章─不良の誤解


正直、焦った。戸惑った。

「オイオイ、お前いつの間にあいつと仲良くなったんだぁ?」

すぐさま孝太が喰らい付いてきた。

「あ?さっき話しかけられた以外に話したことなんかねぇよ」

「ふ~ん。まぁ、いいか」

孝太がこうもあっさり認めるとは……。やっぱり、今日はどこかおかしい。

「お前あいつとデキてんじゃねぇの~?」

今度は英貴がニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべて話しかけてくる。

「茶化してんのか、それともただバカか?見てわかんねぇなら殴っていいか?」

英貴は脅せば大抵黙る。わざとキツイ言葉を連発する。

「……。」

英貴は数秒固まっていたが、はっと我に返ったと思えば、半泣きで孝太の方へ走っていった。

あの竹内春香が話しかけてきたんだ。多少の誤解はされるだろうと思ってはいたが……、『デキてる』なんて……ねぇ?


そうこうしている内に授業は始まったが、さっき話しかけられたせいで授業に集中できず春香の方をチラチラみてしまう。
別に疚しいことを考えているわけではないけど。
春香は僕の席から二列前の窓側。
黒板の文字を一生懸命写している春香をずっと見ていたせいで時間の流れに気付かず、いつの間にかチャイムは鳴り終えていた

「オイオイ、お前授業中かなりみてたじゃん」

「なんのことやら?」

「はぐらかしてんじゃねーよ。竹内だよ」

「あの竹内春香が話しかけてきたんだ、見てしまっても仕方ないだろ?」

「ふ~ん。やけに冷静だな」

一言言い残して孝太は去っていった。で、どうせいつものパターンで英貴もくるだろう。

「お前、かなり意識してんなぁ」

ほら、来た。ニヤニヤしながら。単調なんだよな、こいつ。

「ふむ。一度殺した方がいいのかな?」

「……!?」

英貴はまた半泣きの状態で孝太の方へと戻っていった。

英貴には悪いと思うが結構気弱なので多少脅せば去っていく。
わざわざ孝太を真似て不良気取らなくてもいいと思うのだが。
そうこうしているうちにまた次の授業のチャイムが鳴る。
今度は結構集中することが出来た。
慣れたせいかこの後の授業や休み時間も何事もなかったかのように終わる。
昼休み、彼女は朝に貸した本を読んでいた。
彼女がいつ読み終わって二巻を借りにくるかわからないので、いつもより二倍のスピードで読む。
そのおかげで昼休みが終わるギリギリ直前に読み終えた。
チャイムが鳴り終えた時に彼女がこちらへ向かってくる。

「ありがとう。結構深い内容だね」

「まぁ、そうだな。と、いうか。読むの早いな」

「まぁ、暇な時はいつも本読んでるから」

「そっか」

「……二巻、読み終わった?」

「うん。ついさっき。はい」

僕は彼女に二巻を手渡し、そして一巻を受け取る。

「三巻はまだないんだ。二巻は明日には読み終わってる?」

「多分」

「そっか。じゃあ今日中に本屋で買って読んどくよ」

「ありがとう」

彼女は一礼して自分の席に戻った。
ふぅん。無口なだけで結構普通の女子と変わらないんだ?
なんか意外かも。

色々なことを考えながらも表には出さない。
五時間目の授業はまたいろいろ考えていたせいで集中できず終る。
そして掃除へ。掃除の時間、サボっている生徒は約二名。いわなくても分かるだろうけど。

「死ね市ね師ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

「死んでぇ!!たまるかぁぁぁぁぁ!!!」

あいつらは餓鬼か。いまどき箒で格闘する中学生がいるとは思わなかった。
しかも死ねって。殺す気なのかよ……。
まぁ、そんなこんなで掃除もHRも終わり部活なのだが。
所属部は……まぁ、いわゆる帰宅部ってやつ。
まぁ、入ってないって事なんだけど。

学校が終わればあまりにも暇なわけで。
すぐに家に帰り私服に着替えて本屋へ向かった。

(ん?あれは……?)


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