月浮かぶそら、輝くひかり。 -静かな夜空の小さなトモシビ。

第三章-登校路。


「おはよ、陽介君」
家を出てまっすぐ行ったところの一番最初の曲がり角。そこには、里緒がいた。
「・・・おはよう」
「?どうしたの、元気ないよ?」
里緒は心配そうに僕に聞いてきた。
「別に。なんでもない」
「そっか」
なんで彼女は僕にかまうんだろう。よくわからない。
「・・・いつから?」
「へ?」
「いつから待ってたの?」
「今歩いてたところだよ」
「嘘だ」
「む~、ばれてたか~」
えへへ~、と彼女は言った。
「えっとね、5分前」
「・・・。なんで?」
「なんでって?」
「何で待ってたの?」
「一緒に行きたかったから」
彼女はニコニコしながら言った。
行きたかった?一緒に?
この人は何を考えているんだろう?
「まぁまぁ、いいじゃないですか」
彼女は冗談っぽく笑いながら言った。
「何が良いんだか・・・」
「陽介君って、なんでいつも暗いの?」
いきなりの質問だった。
「・・・。生まれつきだよ」
「んー、本当?」
「嘘ついてどうするんだよ」
「そっか。そうだよね」
彼女は笑った。本当にこの人はよく笑う。
「君は、なんでそんなに明るいんだ?」
「楽しいから」
「は?」
「明るく振舞ってたら、相手も楽しいし自分も楽しくなるでしょ?」
「・・・知らないよ」
「あはは」
また笑った。一日に何回笑うのか、数えてみたいものだ。
「学校、着いたよ」
「・・・早いな」
「誰かと話してると、話してない時より早く感じるでしょ?」
「まぁ」
確かにそうだった。一人で登校したときは、学校が凄く遠く感じた。でも、彼女と話していると、10分が、5分しか経っていないような感じだった。
「今日も一日頑張るぞー」
彼女は思いっきり伸びをした。校門の前で。
「元気だな」
また、笑った。


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