Fancy&Happiness

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第4章


僕は華乃のいった言葉を頭の中で繰り返す。
・・・・・つまり、死を待つ場所・・・・ということだろうか?
そして、目の前の彼女がこの場所にいるという事は―
「私、ガンなんです。」
目の前の少女は僕の心中を察したかのように、こともなげにそう言った。
驚く僕にはにかむように笑って見せて、華乃は続ける。
「見つかったときにはすでに手遅れでした。だから、私はここに入ることにしたんです。」
僕は何もいえなかった。この元気そうな少女が、死を待つ身だなんて。
「やだ、そんな顔しないでください。そりゃあ、訊いたときはショックで、自殺を考えるほどでしたよ?でも、たくさん考えて、私は私なりに納得したつもりでいます。」
彼女はそう笑ったが、見知らぬ僕にそのことを話してしまっているあたり、平気そうになんて見えなかった。
それでも、そのことを言ってしまえば彼女が余計傷つくと思って、僕は何も言わなかった。
「・・・・そうなんだ・・・、」
「はい。・・・でも、だんだん体が弱ってくるのが自分でもわかって・・・・、」
華乃は俯くと、僕に背を向けて綺麗に広がる庭を見た。
「外はすごく綺麗だし、散歩したり、買い物したり、いろんなことしたいのに、・・・・出来なくて・・・・っ」
声が途切れて、嗚咽に変わる。
僕はどうすることもできなくて、呆然と彼女の震える肩を見つめていた。

「ごめんなさい、私はじめてあった人にこんな事いうなんてどうかしてました。」
暫し泣いてから、彼女ははっとした様子で顔を擦り、まだ潤んだ瞳でこちらを見た。
「こんな話されて、戸惑われたでしょう?本当にごめんなさい。」
華乃はそう言って深めに頭を下げる。素直さ、のようなものがにじみ出ている気がした。
「いや、話し相手くらいにはなるよ?僕も今日は暇だしね。」
はっきり言って、本心からの言葉だった。同情でも、なんでもなく。
「本当ですか!?嬉しい、」
華乃はそう言って、やはり笑みを浮かべた。
ああ、この笑顔、好きだなぁ
僕は無意識にそんな事を思っていた。

その日。僕達は他愛のないことを話した。今流行ってるものとか、面白いテレビの話とか、本当に他愛の無い話だったと思う。
彼女は聞き上手で話し上手で、話しているととても楽しかった。
それに、彼女は始終笑顔を絶やさなくて。
・・・・・神様がいるのなら、なんて意地悪なんだろう?
こんなに若くて綺麗で素直な少女の命を今にも摘み取ろうとしているなんて。
僕はまだ心のどこかで、目の前で笑っていた彼女が死んでしまうという事実を受け入れられないでいた。  5へ続く


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