Fancy&Happiness

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第5章


今思えば、運命的な出会いかもね?
「空が輝く、と書いて『あき』と読むんだ。変わってるだろう?」と笑って言ってくれた彼は、初対面であまりに失礼な行動を取ってしまった私に何をいうでもなく、ただ話を聞いて、泣く私をただ見守ってくれた。
はっきり言って、意外だったよ。
だって、同情したり、嫌気が差して部屋を出てってしまったりするのかと思ったから。
そして、今日は暇なんだ、って言って、私の話し相手にまでなってくれた。
本当に嬉しかった。
だって、私のところへ面会に来てくれる人なんて、私の病気のことでだんだんやつれていく母か、ホスピスの入院費を必死に稼ぐ父ぐらいだったから。
それにね、割と年が近い男の人と話す事なんて今までなくて、少しドキドキしたの
「また来てもいい?」
去り際の飯沢さんのその言葉、私は涙が出そうなくらい嬉しかった。
うん、また来てね?残された短い時間、1人で過ごすのは寂しすぎるから―

「また来ちゃったけど・・・、迷惑だった?」
「全然!!」
出会ってからすぐの日曜日。彼は仕事が休みなんだ、と言って、お花を持って私の前に現れた。
私たちはやっぱり他愛の無い話や、お互いのことをたくさん話した。
家族構成や彼の仕事の話、好きなものや嫌いなもの
この日、あなたのことたくさん知ったよ。
「空輝って誰がつけたの?」
不意に思いついた私の問いに。
「僕の父が。僕が生まれたのは夜明けだったらしくて、父は病院から上ってくる朝日を見て、それがすごく綺麗だったからこの名前にしたらしい。」
単純だよね?と飯澤さんは笑ったけど、私はすごく素敵な名前だと思うよ?
「ねぇ、・・・・空輝ちゃんって呼んでもいい?」
なんとなくそう言ったら、彼は人のよさそうな顔に苦笑を浮かべた。
「別に構わないけど。・・・・じゃあ、僕は華乃って呼び捨てにするよ?」
「うん、いいよ!」
・・・・今の私たちの関係ってなんだろうね?
だけど、本当に少しづつだけど、変化してる気がするよ。
・・・・・でも出来るなら、もう少し早く、出会っていたかったな・・・・・・  

空輝ちゃんは、仕事が休みで自由な時間ができた時、私のところに来てくれるようになった。
話す話題が尽きることもなかったし、笑いのツボも一緒みたいで、2人でいると時間は瞬く間に過ぎていく。
不思議だね、空輝ちゃんと話してる時は自分が病気だって事忘れてる。
親が来ると、自分が病気だって改めて実感させられるんだもの。
・・・・・・だけど・・・・、最近は1人の時間にそれを強く感じるの。
いうなれば、砂時計の砂の落ちる音のような
ほんの些細な音なんだけれど、だけど確実に減っていくのが分かる。
目の前の庭に咲く桜は、もう散ってしまった。

私の命の時間
・・・・神様、あとどれくらいでしょうか?

どんなに願っても、祈っても、時は止まらない。
わかってる
砂時計の砂が止まるのは、すべてが終わった時だけだってことくらい。 6へ続く


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