Fancy&Happiness

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エピローグ 1



飯澤 空輝さんへ

先日はありがとうございました。あなたの話を聞いて、私達は救われた想いがします。
何よりも、娘があなたに出会って、生きているうちに人を愛する幸せを見つけられたこと
思えば、これほど喜ばしいことがあるでしょうか?
華乃が華乃として生きた時間はとても短かったけれど、それでも、幸せだったのだとあの日記とあなたは教えてくれました。
ですから、もう悲しまないでください
あなたが悲しむことを、華乃は望んでいません。
けれど、忘れないであげてください
華乃がこの世界にいたことを。

どうか心身ともに健やかであられますように  吉村 律子

ある日、それは届いた。
綺麗な字が書き連ねられた短い手紙は、大事だった人の母親からだった。
・・・・・あの日記を、僕はまだ読めずにいた。
怖かったんだ、彼女の想いを知るのが。
読めるようになるのは、きっと華乃のことで心の整理がついた時

『ねぇ、空輝ちゃん?私は大丈夫だよ!・・・だから、笑って?』
華乃はいつも笑っている。
ああ、桜が満開だ・・・
散りゆく桜の中で微笑む彼女は、何よりも美しい
「華乃・・・・?」
『空輝ちゃんは、笑って生きて大往生するの!』
華乃はとても楽しそう。僕に小指を差し出す。
『約束だよ!』
僕も小指を絡める

そこではっと目が覚めた。
いつの間にか眠っていたらしい。
なんだか、不思議な気分だ。
世界が違って見える気がする。
・・・・なんだか、世界ってあったかい色をしてるみたいだ
思わず笑みが漏れた
・・・・・・今日は、あの桜を観にいこう

そしてその日の夜
僕は赤い日記帳の表紙をめくるのだった。   END


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