06/12/24 イブは長者で。


素晴らしい朝が来た。希望の朝だ。

きれーやのー

眩しい太陽は遮られることも無く、朝の凍った空気をほぐすように体をほんのりと温めていく。
そして、風に乗って、鼻腔をくすぐる香ばしい牧場の香り・・・・

め゛ぇ~~~~~~

羊。

・・・夕べは気づかなかったけど。
このふもとっぱらの周りが牧場?のようになっている。(; -y-)ツ)) クチャイクチャイ

実はあたし。かなり気合が入っていた。
今日はクリスマスイブだから、昼過ぎには殿が迎えに来る事になっていたから、
昼くらいまでにはあがらなきゃいけないのだ。

なので、リフライトは許されない一本勝負!!

早めに行って準備をしようと思い、H多さんに猪之頭へ降ろしてもらうと、
既にやる気全開のフライヤーが集まっていた。
そして二日酔いで飛ぶどころじゃなくなってるフライヤーも死屍累々・・・

ざっと見る限り40人以上いるだろうか。

テイクオフへの車も満員で1台あがり、2台あがり、3台あがってもまだあたしが乗る番がこない。
4台目にやっと乗り込みテイクオフへ。
早くも上がりだし、西富士方面へ走らせている機体が居る。
今日はなかなか良さそうだわ!!

前回同様、そそくさと準備をしていつでも出れるようにして待っていると。
いつもの、風がきっちり入って来るテイクオフの真ん中らへんが空いた。
しかも、前山が空いていて、なおかつ誰も出ようとしていない「間」があった。

チャーンス!

出ないの?出ないの?じゃあ、出ちゃいま~す!!

ささーっとキャノピーを広げると、クロスで立ち上げ開始。
すいーっとまっすぐ立ち上がり、くるりと向き直るとてこてこと前に向けて走り出したのだ・・・が。

なんだかラインのテンションが弱い。

???おかしいなぁ~と思いつつ、てこてこてこ・・・。
(多分、この次点で棒立ちなの、前傾で加重かけて無かったかも)
もう走れないっていうとこまで来た時も、焦りからか、まだテンションが弱かったのにそのまま飛び出してしまった。
するとこの場合、どうなる?当然、沈下。
それも、テイクオフの崖下にある大きな岩を目掛けて。

あ。ヤバイ…かも?と思った。

猪之頭テイクオフの前のこの大きな岩にぶつかって怪我した人の話や顔が
一瞬脳裏にフラッシュバックする。
それは、とてもとても怖いハナシ。
ああ、だからあたし。猪之頭ではきっちり立ち上がってからじゃないと絶対出ないって・・・決めていたのに。

ぼすーん!!

という音と共に、ハーネスごしにお尻をぶつけた衝撃が伝わってくる。
しかし、そのままなんとか滑空に入り、セーフ・・・

一歩間違えば、そのままグライダーに抜かれて崖下に真っ逆さまだっただろう。
ああ。ああ。危なかった・・・。

すでに何機かのベテラン達は前山を抜けて西富士へと走り出していた。
あたしを含めて数機が前山でソアリング。
まだそんなに強くはないが、上昇はきちんとあるカンジ。うん、粘れる粘れる。

混む前に抜けたいなぁ~(-_-)ウーム<がんばれ。俺。

サーマル自体は強くないが、結構しっかりとした南風が入っているようで
回しているとどんどん風下へ流される。

15分ほど尾根の左側でねばねばしていると、サーマルも次第に強いのが出るようになってきた!!
まだそんなに混んでなかったので、思いっきり回して回してなんとか1300mまでゲイン。

やったー!あたしってば、前山でもかなり高い位置にいるわ~おほほほほ
まだまだサーマルが途切れないので、さらに回しながら機体を西富士方面へ向ける。
・・・前山が遠ざかっていく。うふふうふふ。今日も天子取っちゃうもんね!!

しかし、だ。

前山とから西富士の間の尾根にあるハングのランチャー台の上まで来た途端、「ブーッブーッ・・・」バリオが下降音を奏でたと思ったら、急にスッ、スッと下がってしまった。

あれ?あれ?おかしいなぁ。
この尾根の上を飛んでいれば、そのまま西富士まで一気に登りエスカレーターなのに・・・
もうちょっと奥まで行けば上がるかなぁと思っていたけど、とうとう1200mほどになってしまい、慌てて前山に戻るとるとまたすぐ上がりだした。
よし、また1300まで上がったぞーと思って、再びハングのランチャーに向かうと・・・同じようなところで下がるのだ。

そんなのを繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し。

前山から西富士へ抜けていく他のフライヤーは、前山でかなり高さを稼いでから渡っているようだが・・・
それでも西富士の裾にはついても、トップを取っている人があまり居ない。
あたしはというと、未だに1400からがなかなか上がらないのでそれもできない・・・

かなり強いサーマルが出ていたので、上がっている時は回していないと怖いので、常に回しっぱなし。
上げ下げがきつい上に、寒さが確実に体力を奪い、精神的に磨耗していくのが判る。

なんであたしだけこれ以上上がらないんだろう(´;ェ;`)
もう30分以上ココで粘っているのに・・・
西富士の上に居た何機かのグライダーを見上げる。
あそこに居る人たちとあたしと何が違うんだろう。。。

グローブ越しに指がかじかんで来たし。防寒が甘かったせいで、寒い。
・・・引き返そうかなぁ。。。

と、へこたれて前山に戻ろうとした時だ。
あたしが居る西富士とハングのランチャーがある尾根の、向かいの尾根側に向かって一機、二機と走らせている。
1400ほどのあたしとほぼ変わらない高度で、その向かいの尾根に着くと、するすると上げてあっという間に稜線の上に出て行った。

(・∀・)ほう

西富士を取らずに谷を越えてそのまま稜線に出るのかぁ。
そっちで上げてから西富士を取りに行くのかな?そうか、そういう手もありなのか。
あたしもちょっとだけ・・・ちょっとだけ行ってみようかな。下がるようだったら戻れば良いんだもんね。

大丈夫かな~と思いつつも、機体をじりじりと反対の尾根へと向けた。
すると、尾根が近づいてきたと思う間もなくバリオが
ピーッピーッピーッピーッピ・ピ・ピ・ピ・・・と喚き始めた。
すい。すい。とセンタリングすると上がりだし、みるみる稜線の上に出た!

あっという間に1600まで上昇。よっしゃ~~~~~~~~。

しかし、まだバリオは鳴り止まない。サーマルから外れるのが怖いので、引き続き回す回す回す。

少しずつ下界が遠くなり、うっすらと山が白く霞み、ずうっと遠くに雪を頂に乗せた南アルプスが連なり、富士山が大きくそびえたっている。

回し続けている。上がり続けている。
景色がくるくると回り、目が追いつかなくなると視点は遠く定まらなくなる。
上下左右の感覚が失われ始めると、時間の感覚がなくなり、世界の音が急速に窄まり、あたしから遠ざかって行く。

その、おそらくは数十秒から数分の間。
あたしは寒さも、ブレイク引きっぱなしの腕のしびれも気にならなくなり、
肉体の重さから開放されて、魂が飛翔するような。意識が遠く離れていくような感覚に陥る。これはトリップ?

頬にあたる冷たい風だけがリアリティを持って、あたしと現実世界を繋ぎとめている。

圧倒的孤独。絶対的浮遊感。

あたしはこのカンジがたまらなく好きだ。

「危ない危ない。」

はたと気づいてわざと独り言を言って、集中力を取り戻した。
ぼけーっとしていたら、気づいたら山梨側に飛ばされてた、と言うことになりかねないからね。
見ると、バリオは1700を示していた。迷うことなく天子方面へ機体を向ける。

鉄塔を難なく越えたあたりで、また上昇を発見。ピ・ピ・ピ・ピ・ピ・ピ・・・!!
毎秒5mのサーマル。とりあえず、上げられる時に上げとこうかな。高いに越した事ないし。。。
しっかり体重を入れ、ブレイクを当てるが、重い。重い。
バリオを見つめながら更に回す。

ここで本日の最高高度、1800をマークした。d(*-*)b イエイ

上げなおしたところで更に奥へ。
田貫湖が近づいてきた。

あれ?なんだか、前に出ていないような・・・・
荒れては居なかったのでちょっとだけアクセルを踏んでみた。
くっ。くぅ~~~~重い。すっと前に出た感じがあったが、足がプルプルしてすぐ止めてしまった。
それほど沈下もしてないケド・・・うーむ。長者岳までいけるかな。

しかし、ひとつふたつとこぶを越えるとみるみる沈下。
うーん!何故だ!長者まで行けば上がるかな。と、沈下音にびびりながらも
なんとか長者ゲット。しばらくウロウロしていたが・・・上昇がない!
このとき1600m程。
行けなくもない高度かもしれないけど。天子で上がるとは限らないし、やっぱまだこの高度で突っ込むのは怖いなぁ。。
帰りの事も考えないといけないし・・・やーめた!今日はココまで!!
年末だし、怪我とか怖い思いするの、いやだもーん!!

慌ててきびすを返したが、ますます落ちる。ブーッ・・・ブーッ・・・って憎らしいほどの沈下音。

ヤバイ。ヤバイ。

鉄塔で1500。鉄塔で1500。バリオを見ながら呪文のように唱える。

あー足りるかな?越えられるかな?

しかし、願いも虚しくさらに高度は落ちて、鉄塔前で1400m。
うぅ。鉄塔の高圧電線がリアルに見えるよー怖い。怖すぎる。
出来ればもう少し上げて越えたい。
うう。どっかにサーマルないかーっとウロウロしていたが、ますます下がって行く始末。
とうとう1300台になってしまった。

どうしようどうしよう。越えられないよー。帰れないよー。だれかー!

と、軽くパニックになり、泣きそうになりながら、誰かに助けを求めたい気持ちで周囲をキョロキョロしていると
西富士~長者~天子の尾根から45度ほど横の尾根の先に、一機グライダーを発見。
あ。そうか!なにも一番高いところの鉄塔を越えなくても、その尾根の先端に行くほど低いなっていてランディング側にあるのだから、そっちから越えればいいんだ~!!!

と、まあ。よく考えれば判ることなんですがね。
まだ稜線のうえを通る事しかアタマにないもんで。。。
というわけで稜線から45度右へ折れて。尾根伝いに下っていくイメージ。
丁度、尾根の中間くらいでガツンとサーマルにヒットしたので、少し上げなおしなんとか鉄塔越え完了。
ああ。ランディングも見えてきた。よかったよかった。
あまりにほっとして早く降りたくなり、ランディングの上まで来ると、翼端を折って高度を落としランディング。

というわけで、フライト時間にして、1時間45分!なげーし!
天子は取れなかったけど、長者までだったけど。二回連続で走っちゃうなんて、一体全体どうしちゃったの??あこさんてば!
あたしってばかなり上達しちゃったのかしら?うひひ。

でも今回はコレまでと違って、ちょっと苦労(?)したけどね。
いよいよ応用編?ってカンジ???

でも、でも、苦労しながら移動するって、なんてなんて面白い♪

さて。これで今年は飛び納め。
本年もお世話になりました。皆様来年もよろしくお願いしますね。
来年は毛無取るぞ!大倉行くぞ!エイエイ (ι´Д`)ノ オー!!




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