ファンタジー・SF 0
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紙の梟貫井徳郎 著「人ひとりを殺したら死刑」という世の中を舞台にした短編のミステリ小説。死刑制度の是非を問うお堅い社会派小説なのか?とちょっと構えて読んでしまったが、それは小説内で登場人物たちが自問自答する様子を描いているだけで、読者に特定の思想を押し付けるような印象はなかった。悪い意味の例えではないが、薬丸岳さんの作品のように繰り返しこの種のテーマを扱った作品が書かれるようなら、著者の思想も見えてくるだろうが、そういうのはあまり見えない方が読む側としては純粋に物語を楽しめるのでうれしい。決して愉快な話ではないが、小説として娯楽性がある作品で楽しめた。「人ひとりを殺したら死刑」この「設定」を逆手に取った残虐極まりない猟奇的な犯罪、そしてその動機には実にミステリ小説らしいオチを用意している。また地震で閉ざされた別荘地で起こる連続殺人事件などなど、ミステリ好きにはたまらないような話もおさめられているので楽しい。最後はさすがにこのテーマに対しての主人公の葛藤があれこれと描かれるが、そのこと自体より、それによる社会的リンチや、分断、ネット社会の闇などなど、むしろ現代社会の病巣に対する皮肉が込められた作品である。(ように思った)新年早々いい小説読んだ。紙の梟 ハーシュソサエティ [ 貫井 徳郎 ]
Jan 5, 2024
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風精の棲む場所柴田よしき 著こういう設定のミステリが好きな人は多いはず!!【中古】 風精の棲む場所 光文社文庫/柴田よしき(著者) 【中古】afbミステリ作家の浅間寺竜之介は、ファンを自称する17歳の少女「美夢」と、メールでのやりとりを続けるうちに、彼女の村で行われる祭りを見に行くことになります。メールに添付された地図を頼りに、愛犬のサスケと共に、向かった先は、車も入ることができない山深い村でした。美夢は数人の村の少女達と共に、祭りで奉納舞踊をすることになっていました。美夢の舞いを楽しみにする浅間寺でしたが、村に逗留中のある若者から妙な話を耳にします。その話とは、舞手となった者のうち、一人は一年以内に死ぬというものです。そして浅間寺他、村人が見守る中、通し稽古が行われますが、直後舞手の一人が遺体で発見されます。警察が到着するまでの間、浅間寺が捜査をすることになります。地図にない村、独特の風習、殺人。ミステリにはこれ以上ない設定で、「桜さがし」とは、また違った面白さがあります。
May 20, 2018
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模倣密室〜黒星警部と七つの密室〜【電子書籍】[ 折原一 ]価格:648円 (2018/5/5時点)模倣密室折原一 著叙述トリックが多い折原さんには珍しく、密室トリックもので、短編7話構成です。有名な密室トリックを模倣した事件に挑むのは、密室殺人が大好きという変わり者の黒星警部。7話ともに、黒星警部や竹内刑事ら、おなじみ(なのかな?)キャラが活躍し、どことなく赤川次郎さんの三毛猫ホームズシリーズ等にみられる、ユーモアミステリの雰囲気が漂う小説です。
May 5, 2018
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シャドウ道尾秀介 著シャドウ【電子書籍】[ 道尾秀介 ]価格:594円 (2018/5/3時点)物語は、洋一郎の妻の咲枝が癌で他界し、荼毘にふされるところからはじまります。洋一郎と息子の凰介、洋一郎と共に相模医科大学を卒業し、友人でもある水城徹、妻の恵、そして娘の亜紀の5人の視点をそれぞれ描きながら話が進んでいきます。洋一郎と凰介が、なんとか日常を取り戻すかに思えたころ、家族ぐるみの付き合いでもあった水城の妻、恵が謎の自殺を遂げます。洋一郎は妻の死後、不眠のため薬にたよるようになっており、また凰介は何かの拍子に奇妙な映像が頭に浮かぶようになります。水城徹も奇妙な夢に悩まされ薬を服用するようになり、娘の亜紀の様子もおかしくなっていきます。二章からは、洋一郎と凰介視点で描かれ、そして物語が進むにつれ、どこかしら違和感を覚え始め、それがだんだんと大きくなっていきます。何かが狂っていることはわかるのですが、それがなんなのかはっきりせず、不気味な雰囲気が漂ったまま終盤へと突入します。しだいに凰介の推理が中心になって、この叙述トリック的な話の核心が明らかになっていきます。何を言っても種明かしになりそうなので、説明するのが難しい小説ですが、不気味さが漂っていて、とても面白い小説です。
May 3, 2018
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小野不由美 著夜ごと街に跋扈する魔物によって、幾人もの人が惨殺される。新聞記者の平河が事件の謎を解き明かそうと奔走する中で、狙われたのは、やんごとなき家柄の跡継ぎだった。事件の背後に潜むものは人知を超えた魔物か、それとも・・・・。十二国記の作者による伝奇ミステリ。ファンタジー要素が強いのかな?なんて事を思いながらよんでいましたが、意外に硬派な時代推理小説です。指紋やDNAの鑑定なんてものがない時代を舞台にしたミステリは、カラクリを使った密室トリックもの等、文字情報だけでは理解しにくい作品も多く、その分事件の背景に潜む人間関係や動機の部分がしっかりしていないと、読んでも印象に残りません。この話に出てくる犯罪は、大半が通り魔的犯行なので、本来であればトリックとよべるような要素が少なく、読み応えがないはずなのですが、そこに魑魅魍魎の類を用いることで、上手く謎を作り出し、話を面白くしています。プロローグを読んで、てっきり妖怪ものだと思ってしまったので、その後のまじめな展開に、やや飽きを感じてしまいましたが、純粋なミステリだと知っていれば、もっと楽しめたかもしれません。(あまりに十二国記の印象が強かったので、はやとちりです)宗教的なホラー要素を含んだ「黒嗣の島」のほうが、ミステリとしては入りやすいように感じます。本当に怖いのは、人の心。そういう話かな?
Mar 17, 2018
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ぼくのメジャースプーン辻村深月 著児童書かと思いきや、けっこう重たい内容になっています。主人公は、ある特殊な能力を持った小学4年生の男の子です。その能力とは、他人に二つの条件を提示して、必ずどちらかを実行させる事ができる呪いのようなもので、この力を使えば、相手を死に追いやることも可能です。一族の中で、ごく稀にその力を持ったものが生まれることを母親から告げられ、力を使うことを固く禁止されます。そんなある日、学校で飼っていたウサギが、一人の大学生の手によって惨殺され、第一発見者となった幼馴染の「ふみちゃん」は、あまりのショックから心を閉ざしてしまいます。犯人は逮捕されたものの、悔悛の情が見られらない犯人に対し、主人公は激しい憤りを覚えます。能力を使って、犯人にどんな罰を与えるのか・・・という漫画っぽい設定の小説なのですが、ここからがなかなか深い話になっていきます。主人公の能力を危惧する母親は、同じ能力を持った親戚の秋山を紹介します。そこで能力の詳しい説明を受けた主人公は、秋山と「命」や「罪の重さ」について、さまざまな事を話しあいます。そのうえで、犯人に与える罰を自分で決めることになるのですが・・・。一緒に考え、苦しみ、思わず泣いてしまう小説です。読んでください。そしてこれを読んだら「名前探しの放課後」も是非読んでください。面白い発見があるでしょう。ぼくのメジャースプーン (講談社文庫) [ 辻村深月 ]価格:831円(税込、送料無料) (2018/2/15時点)
Feb 15, 2018
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夜想曲(ノクターン)依井貴裕 著役所勤め時代の同期の集まりが山荘で行われることになり、現在俳優をしている桜木も参加することに。ところがそこで三日連続して殺人事件が発生。なぜか事件当日の記憶がない桜木に、後日脅迫めいた手紙が届く。それは桜木が犯人だと告発するものだった。誰かの首を絞める生々しい記憶だけが残る桜木。脅迫者の正体は!単行本 「夜想曲 ノクターン」 依井貴裕 初版 【中古】山荘での連続殺人事件は、ミステリ小説としてはなかなか面白い設定です。ただ、いろいろと無理があるかな〜っと思ってましたら、そこが解決のカギでもありまして、ちょっと変わった推理小説です。何者かが、桜木に事件の詳細を記した手紙を送ってきます。これは彼が犯人だと告発する内容でもあるわけですが、小説風にしたためてあり、これがこの小説の本文というか、読者はこの手紙の内容で事件を理解して推理していくことになります。しかし桜木に事件当日の記憶があったとしたら、まったく意味をなさない手紙でもあり、また桜木以外の人は記憶があるわけですから、このあたりからオチだけは容易に想像できます。しかしそれを論理的に説明しろといわれると、そこで語られる内容一つ一つをいちいち疑ってかかって検証しないと無理かもしれません。手紙という形で、一通り事件の内容を記したあとで、「読者への挑戦」というタイトルで作者からのメッセージが挿入されているわけですが、犯人がわかっている状態でも、手紙の内容の矛盾点に気づくのは至難の業ではないかとおもわれます。考察力が試される推理小説です。
Feb 13, 2018
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渇いた夏柴田哲孝 著伯父の自殺によって福島県の西郷村の家を相続することになった神山健介は、学生時代母と過ごした西郷村へ移り住みます。伯父の知人の証言等から、伯父の自殺に疑問を持った主人公は、興信所勤務の経歴を活かし、「神山探偵事務所」を立ち上げます。最初の依頼は、妹を殺して逃亡している男を探してほしいという、女性からの依頼でした。その男、谷津誠一郎は、高校時代神山が共に遊んだ仲間の一人でした。調査を進めるうちに、伯父の自殺や、過去に近隣で起こった事件との関連性が見えてきて、面白くなってきます。ハードボイルド・・・かな?渇いた夏 私立探偵 神山健介【電子書籍】[ 柴田哲孝 ]価格:594円 (2018/2/4時点)
Feb 4, 2018
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傷痕矢口敦子 著傷痕【電子書籍】[ 矢口敦子 ]価格:700円 (2018/2/2時点)目黒区一家殺害事件の加害者の家族と、被害者の遺族が皮肉にも巡り合い、そしてある男の出所がきっかけとなり、この事件に関係する者たちの平穏な日々が失われることになります。小田島は妻に暴力をふるい、逃げた妻をかくまっていた弁護士一家を殺害します。ところが、実際に事件の首謀者として処刑されたのは、小田島ではなく、同行していた知也の父、正実でした。母の真理恵は、幼い知也を養子に出し、知也は本当の父と母、そして事件の事を知らずに成長します。そんなある日、知也を引き取った一色家に衝撃が走ります。知也のガールフレンドの桜井香子が、知也の父がかかわった事件の被害者と同じ名前であることを知ったからです。そして、何も知らない知也の前に、小田島が現れ、すべてが白日の下にさらされることになります。主犯が本当はどちらだったのかが、関係者の証言だけという曖昧な状態の中で、知也は父の刑が妥当であったのかを考えることになります。死刑制度の是非をめぐるやりともあり、裁判員裁判についても考えさせられる深い内容の作品です。
Feb 2, 2018
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ソロモンの犬道尾秀介 著ちょっと怖い雰囲気が漂いつつも、けっこう笑えるミステリ小説です。ソロモンの犬 【電子書籍】[ 道尾秀介 ]価格:640円 (2018/1/28時点)大学生の秋内は、同じ大学の羽住智佳に一目ぼれ。自転車配達便のバイトに精をだす一方で、同級生と友江京也と、羽住の友達の坂巻ひろ子の協力で、羽住との距離を縮めようと努力する。そんなある日、彼らの小さな友人、小学生の陽介が事故に会い死んでしまう。現場に居合わせた秋吉は、事故の直前、ある人物の不可解な行動を目撃し、陽介の事故が仕組まれたものではなかったかと疑念を抱く。物語は、秋吉がたまたま立ち寄った喫茶店で、京也、智佳、ひろ子の三人と会い、陽介の死をめぐり「この中に、人殺しがいるのかいないのか話し合おう」という重い出だしで始まります。ここからが本編で、彼らの出会いから陽介の事故までのあらましが描かれますが、全体としては、羽住智佳に思いを寄せる秋吉の様子や、京也とひろ子の関係を中心に、恋愛小説のような感じで進んでいきます。会話の中にもふんだんにジョークが登場し、重い出だしとは対照的に、ユーモアがあって、かなり笑えます。そして四人の関係に、少しずつ亀裂が見えはじめたころ、陽介の事故が発生します。すると一転、みんな、なにかしら隠しごとをしているような怪しさで、ミステリ小説らしくなっていきます。いよいよ終盤、事件の核心へとせまってきたあたりで、とんでもない展開がまっています。それありですか?!と、絶対思うはず。これをどうやってまとめるんだ?と思ったときに、ああなるほど・・・一見大した意味を持たないと思われた伏兵がこんな形でオチを・・・。「うまい」と思わず感心。最後は、青春ミステリっぽく、すがすがしく終わっていくのが、これまたにくい。おすすめです。
Jan 28, 2018
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神の狩人柴田よしき 著【中古】 神の狩人 2031探偵物語 /柴田よしき【著】 【中古】afb価格:108円(税込、送料別) (2017/12/4時点)西暦2031年を舞台にした探偵の物語です。このままいけば日本はこうなるだろう・・・という感じの、けっこうリアルな近未来を舞台に、サラという女探偵がさまざまな事件に挑みます。最初の事件は、戸籍上存在しているのに、親さえもその存在を否定する、依頼者の「姉」を探すお話です。この過程で、昔探偵をやっていた風祭という男と知り合い、その後の事件で彼が何かとサラを助けてくれます。最初はちょっと切ないお話で、その後だんだん謎が多い事件へと突入していきます。やがて世界に暗躍する謎の組織の存在が浮かびあがり、そしてサラとの深いかかわりが明らかになっていきます。スリルがあって、目が離せない面白さです。これからまだまだ続いていきそうな感じです。
Dec 4, 2017
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レベル7宮部みゆき 著ある若い男女が目を覚ますと、そこは見知らぬマンションの一室。二人は記憶を失っていた。部屋には大金と拳銃、そして血のついたタオルが残されていた。(自分たちは犯罪者かもしれない)そうおもうと警察に訴え出るわけにもいかず、あることがきっかけで知り合ったマンションんの住人三枝の協力のもとで、自分たちの過去を調べるはじめる。レベル7改版 (新潮文庫) [ 宮部みゆき ]価格:1069円(税込、送料無料) (2017/11/15時点)一方、保険会社の一部署で、「電話駆け込み寺」のネバーランドで働く真行寺悦子は、電話で知り合った、みさおという少女が行方不明になったことを知る。彼女の日記には、「明日 レベル7まで行ってみる 戻れない?」という謎の言葉が残されていた。無関係な二つの事件が、やがて、過去に起きた凄惨な事件「幸山荘事件」へとつながっていく。謎が多く、スリルがあって、読み応えがある小説です。ちょっと無理があるんじゃないかな〜という設定も、最後の最後で納得してしまうような、驚きの展開がまっています。
Nov 15, 2017
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