キミと僕が知り合ったのは いつだろう

キミと僕が出会ったのは なぜだろう

キミと僕が仲良くなったのは いつからだろう



キミと僕がこんなにもお互いを信頼するのは   なぜなんだろう…


今日もまた、キミは僕の名を呼ぶ。



*友という名の命綱*   4





一体何が彼女を悲しくさせるのだろう。




今の曹操と夏侯惇にはそれを知る方法がなかった。











『…夕繕よ。何かあったのか?なぜ笑顔の中に悲しみを隠す…?』


『………………。』


『曹操殿…この夕繕のことだ。いつか話してくれるだろう。お気になさらずに…』



『う、ウム… いや、その…すまぬな夕繕。今のは無しだ。』









微妙に慌てる曹操を見、また夕繕は微笑む。…やはり悲しみを添えて。



そのまま夕繕は、桔梗の方を見たまま動こうとしなかった。






そのうち女官が声をかけてきた。

『夏侯惇様、夏侯惇様。申し訳御座いませんが、ちょっとこちらへ…』


『ん?…どうした?』



しかし夏侯惇はすぐに女官がいるところへ行こうとはしない。


いくら自宅でも何があるかわからないので、曹操から離れるわけにはいかないのだ。




曹操はすぐそれに気づいた。



『惇…わしのことならそんなに気にせんでよいのだぞ』


『いや、しかし…』


『女官が困っているではないか…。』


『むぅ…………』





夏侯惇はしぶしぶその場を離れた。

そして女官から話を聞きながら歩き、曹操達から姿が見えなくなった。









残された二人に、沈黙が続いた。






































やがて沈黙を破ったのは、夕繕だった。







『……そ……様、…許し……さい』




『?  …夕繕?』






なにかが喉に詰まっているかのような声で聞き取りにくかった。




だが、次の瞬間、それははっきりと聞こえた。夕繕の鋭い視線と共に。







『曹操様、お許しくださいっ!!!』




『…な…っ!?』







曹操の体に、激しく鋭い痛みが走る。



夕繕が、懐に隠し持っていたであろう小刀を曹操の左肩に突き刺していたのだった。






『せき…ぜん…?………なに…を…』


しだいに曹操の呼吸が速くなる。

彼は片膝が地につき、とっさに肩に刺さった小刀を抜き、傷口を右手で押さえた。








曹操を見つめたまま、夕繕は返り血のついた唇で話し出す。



『ずっと、我慢していました…。今、私の昔の夫の名を教えて差し上げます』



『夫の…名…?』





曹操には何がなんだかわからない。





『…陳宮という男をご存知ですか?』









曹操はハッと息を呑んだ。








『では…ではまさかお主は…』



『そうです…。…夫に置いていかれた、妻です』





まだ少し若い頃の曹操は、とある事件で陳宮と会い、共に逃げ延びた。

城下から逃げ出すその時、陳宮はたしかこう言っていた。


「妻や子は捨ててきました」…と。







『あのとき…あなたが夫を誘わなければ…私達はまだ普通に暮らしていけました。』


『…………………』



『あなたが逃げる日に夫が帰ってきたとき…夫は、私達を斬ろうとしました。女子供な私達では…逃げ切れないでしょうから…。私達は必死で逃げました。でも…今思うと、あれも夫なりの愛情だったのかもしれませんね…』


『…………………』



『あなたが私の夫を変えたのですよ…。…夫を失った妻は、この乱世でどうやって生きろというのでしょうね?』



『…………………』



『私は生きるために…まだ幼い子供達を、売りました。私は、なにをしてでも生き延びたかった。夫を変えたあなたに、復讐するためにね…』



『…………………』



『何も…言えませんか。曹操様。』



『…………………』



『その首…いただいてもよろしいですか?』





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